ひとり井戸端会議

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どっちの味方なのですか?

2013年12月12日 | 死刑制度
死刑、またスピード執行 確定から1年4カ月(朝日新聞) - goo ニュース

【西山貴章、大野晴香】法務省が12日、安倍政権下で4度目の死刑を執行した。昨年12月に就任した谷垣禎一法相の下で執行されたのは、これで計8人となった。今年4月には確定から約1年4カ月の死刑囚に対して死刑が執行され、今回執行された一人である加賀山領治死刑囚(63)も、約1年4カ月。早期に執行する法務省の姿勢が顕著になっている。
 加賀山死刑囚は、死刑廃止派の福島瑞穂参院議員(社民党)の事務所が昨年実施したアンケートに回答。「私が今一番謝罪したい相手はこの世にいない。被害者の遺族の方たちにはどんな謝罪の言葉を書き連ねても赦(ゆる)してくれることはないだろう」と記していた。今後、再審請求する予定だとも明かしていた。
 回答では死刑制度について「反対」とし、「執行方法も残酷で、事前通知もないままいきなり執行するのは人道上問題」と記した。また、「悩みは、昔別れた2人の子どもたちと再会できるかどうか」と心情を明かしていた。
 12日に死刑が執行されたもう一人、藤島光雄死刑囚(55)の再審請求を担当したことがある秋田一恵弁護士(東京弁護士会)によると、1995年6月の死刑確定後、少なくとも5回、請求したという。藤島死刑囚は子供のころに虐待を受けていたといい、秋田弁護士は「虐待が犯行に影響を与えていた。執行を聞き、ショックを受けている」と話した。



 朝日新聞は被害者の人権よりも加害者の人権のほうが大事なようですね。この記事は全くもって外れです。一言でいえば、「だから何なの?」です。この記事はあまりにも酷い。

 私は過去にも死刑制度について私見を述べてきましたが、死刑廃止派の主張は、どれも詭弁にしか聞こえないのです。根本の部分を言わせてもらいますと、「人を殺しておきながら自分は生きたいなんて虫が良すぎる」ということです。正当防衛や尊属殺違憲事件判決のように親族から筆舌にし難い虐待を受けていたといった場合や、遺族の方が死刑を望んでいないというような場合を除き、原則は人を一人でも殺したら死刑でいいと思います。

 敢えて死者のことを悪く言いますが、この加賀山死刑囚の主張は、私の心には全く響いてきません。それどころか、随分と都合の良いことを言ってると感じました。他人の命を勝手にも奪っておきながら、よくも死刑は人道上問題などと言えるものですね。その身勝手さには心底呆れ、軽蔑します。


 それから、しばしば死刑囚の虐待などの過去の出来事が犯罪の要因になっているという指摘をみます。確かに、それが一つの要因であることは間違いないのでしょう。しかし、だからといって死刑は廃止されるべき、あるいはそういう加害者には死刑を執行すべきでないというのは、論理の飛躍というものでしょう。

 当たり前ですが、どんなに虐待を受けた人でも、辛い過去を持っている人でも、殺人など犯さずに生きている人はたくさんいます。にもかかわらず、私の邪推かもしれませんが、こういう過去の要因を持ち出し、死刑(制度)を批判するというやり方は、虐待などの辛い過去を持っている人を馬鹿にしているものだと常々感じています。虐待を受けていたから―これではまるでそういう人を犯罪者予備軍のように見ているのと変わらないと思います。


 再審請求をしていたのに、という指摘もよくありますが、これもどうかと思います。再審請求中で、しかもほぼ間違いなく冤罪だったのに死刑が執行されてしまったという場合もあり、これは私も問題だと思います。しかし、再審請求の予定だったというのは、些か死刑執行を批判する論拠としてどうかと思います。その理屈でいけば、再審請求さえすれば、いたずらに死刑執行を無期限に延期することができてしまいます。それこそが死刑廃止派の「狙い」なのでしょうが、このような「戦術」は、絶対に多くの人の支持を受けることはないでしょう。


 死刑の「スピード執行」という批判も失当です。刑事訴訟法475条では、死刑の執行までの期間を6ヶ月と定めています。確かに、判例によれば、この規定は訓示規定であり、これに反したからといって特に違法の問題は生じないといいます(東京地裁判決平成10年3月20日)。実際、この期間内に死刑の執行が行われることはまずなく、執行まで平均して約7年かかっているといいます。

そして、刑事訴訟法475条の6ヶ月という期間は、死刑が一度執行されてしまうと取り返しがつかないため、法務大臣が政治的・人道的な視点から恩赦の可能性も含めて検討するために設けられた期間であるといいます。と同時に、刑の迅速な執行とも調和をとったものだとされています。

 つまり、法制度的にも政策論的にも、熟慮をして死刑を執行すべきであるとの点で共通しているのです。谷垣大臣も事件の重大性および「記録を精査した上で慎重に判断した」とのことですから、朝日新聞の「スピード執行」という批判は全く的外れということが分かります。



 むしろ、私は、このような「お前はどっちの味方なんだ!」と言いたくなるような死刑廃止論こそ、逆に死刑制度の存置に貢献しているのではないかと思う次第です。

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