★ベルの徒然なるままに★

映画、ゲーム、アニメ、小説、漫画・・・管理人ベルの、大好きな物をいっぱい集めた徒然日記です。

『バチカン奇跡調査官 終末の聖母(デイー・ゲニトリクス)』

2013年11月26日 | 小説・漫画・書籍
先月の25日に発売されました、藤木稟さん著の『バチカン奇跡調査官 終末の聖母(デイー・ゲニトリクス)』。

表紙のイラストは、前作で失踪したローレンの後任としてバチカンにやって来た、チャンドラ・シン博士なる人物。



シリーズ8巻目ですね。


あっ、でも、前回出た『天使と悪魔のゲーム』が外伝でしたし・・・続きの物語としたら7作目になるのかな。

ちゃんと発売日当日に買っていたのですが、ここの所、バタバタとしてて、なかなかゆっくりと本に向かえず・・・読み終わるのが遅くなっちゃいましたですA^^;;

という訳で、遅ればせながら、感想です。


今回の物語は、ちょっとタイムリー(?)なお話。
法王選挙(コンクラーベ)で真っ最中のバチカンから物語は幕を開けます。


突然の法王の引退に伴い、バチカンはコンクラーベの準備などで慌ただしさと緊張に包まれます。

そのため、本来予定されていた、メキシコの教会で行われる、有名彫刻家の作品の除幕式に参列するはずだった枢機卿が参加できなくなり。
また、時期が時期だけに、他の枢機卿・司教たちも、バチカンを離れられない・・・。

さりとて、バチカンから、誰も参加しない訳にも行かない。

そんな訳で、本来、メキシコに行くはずだった枢機卿の代理として、平賀神父とロベルト神父が選ばれるのでした。

彼らは、今回においては、正式な枢機卿の代理として、「司祭」の地位を与えられ、メキシコへと旅立ちます。

・・・って!

今回は、平賀司祭とロベルト司祭ですかっっ!!??(^m^)


で。

除幕式で挨拶だけする予定だった彼らですが。

その式典の最中、寄贈された何百kgもあるであろう彫刻の十字架が、空中に浮き、静止する・・・という自然の摂理ではあるまじき自体が発生!

さらに、それと同時期。

突如、地盤沈下が起こり、式典が行われていた教会と、そこから6kmくらい離れた教会とを結ぶかのような、地底の道が瞬時に現われます。

しかし、その道は、単なる地盤沈下ではなく、一定の深さ・幅できちんと整備されており・・・まるで、人工的に作られたような道。なぜ、この様なものが一瞬で出来たのか?

これは「神の道」なのか?

しかも、空中浮遊する十字架のある教会からは、どこからともなく、天上の音楽の様な美しい調べがずっと鳴り続けている。
そして、その歌詞を分析すると、日本語やイタリア語、はたまた複数の言語で、同じ内容が歌われていた。・・・翼を広げ、天へと飛び立とう・・・と。


この突如として起こった奇跡を目の当たりにした、平賀とロベルトは、すぐさまバチカンへ報告。

そして、そのまま、現地にとどまり、この奇跡を調査をすることになるのでした。

しかし、調べれば調べるほど、不可解なことばかり。

なぜ、巨大な十字架は空中に浮遊したまま落ちてこないのか?

どこからともなく聞こえる、天使の調べは一体何なのか? どうして、同時に複数の言語で、同じ内容の歌詞を歌っているのか?

突如として現われた「神の道」は、誰がどのようにして、一瞬で作ったのか? 本当に神の手によるものなのか?


はたまた、教会で見つかった大量の血痕。

連続して起こる、聖歌隊の子供達の飛び降り自殺。

新たに発掘されたマヤの地下神殿の遺跡。そして、そこから忽然と消えた大量の重機の謎。しかも、重機を一飲みにした巨大な蛇を見た・・・という目撃証言。



・・・元々はマヤの文化・文明・信仰だった地をスペインが侵略し、そして、キリスト教が布教されたメキシコという地。

古くから伝わる現地信仰と、キリスト教とが混ざり合ったような独特な風土の中、そこに隠された真実を平賀とロベルトが解き明かしていきます・・・!


というようなお話。

で。

今回は、独特なお話だったと思います。

っていうか、このシリーズ、1~4巻までは、普通に奇跡認定の申請があり、それを平賀とロベルトが調査する・・・という形を取る物語でしたが。


5巻では、ちょっと変わってて、奇跡調査の帰りに土砂崩れの事故に遭い、足止めを喰らった街で起こる吸血鬼騒動を、奇跡調査とは関係なく平賀とロベルトが調べるという話で。

そして、前作6巻(7巻目は外伝なので)では、FBIからの依頼を受け、偽名を使ってゴーストハウスの調査をするという、ちょっと刑事物っぽい話であり。

そして、今回。

今回も、最初は奇跡調査のために、メキシコへ赴く訳では無いのですよね。

単に、枢機卿代理として、式典での挨拶をするために行ったところが、思わぬ奇跡に出くわしちゃう!・・・というストーリー。

毎回、色々と物語の趣向が変わってて面白いですね!

今回の様な展開は、予め「こうこうこういう奇跡があって」という前知識を持って現地に赴くのではなく、予期せぬところで、突如として奇跡に遭遇する平賀とロベルト、2人の姿が興味深くて・・・こういう展開も良いなぁと思っちゃいましたです(^m^)


それにしても。

今回の奇跡の謎は、いつになく手ごわいです。

重力の法則に反して、宙に浮き続ける巨大十字架。

もちろん、何か、ワイヤーで釣ってある、とか、下に磁石を用いた装置がある、とかいう訳でもないです。

本当に浮いてるんです!

流石の平賀神父・・・いやいや、今回は、司祭ですね、平賀司祭も、当初は「わかりません」と壁にぶち当たっていたご様子。

そして、十字架が浮いたのと同時に起こった地盤沈下。そして、そこに出来た、明らかに自然のものとは異なる道。

謎の歌声。

それに関係があるのか、そこでは、聖歌隊の子供たちの連続飛び降り自殺が続いている・・・とか。


そして、平賀は、ひたすら現場を調査し、そして、部屋に籠って色々な成分分析をし・・・と科学調査に没頭し、ロベルトは、色んな人に聞き込みをしたり、マヤの神話とキリスト教に纏わる伝承を調べて行ったり・・・と、結構、2人、別行動が多いのですよね、今回。


でも、今回はキリスト教の話だけではなく、マヤに伝わる神話や伝承、文明のことなども色々と出てきて。
マヤ文明とかが大好きな私としては、とても興味深かったです。

そして、侵略の歴史から、混ざり合った現地の信仰とキリスト教との中に、共通点を見つけ出すロベルトって凄い!!!

っていうか、今回のロベルトは、実にアクティブでしたよね。

書物や古文書の調べ物だけでなく、聞き込みをしたり、受刑者に面会に行ったり。

しかも、歴史的な事情により、白人を毛嫌いして、調査に協力してくれない受刑者さんと、取引をするような形で情報を引き出し、やがて、信頼関係を築いていくとか、なんだか、神父と言うより、刑事さんみたい(^m^)

でも、そういうやり取りって、ロベルトの機転や、人当たりの良さが感じられて好きです。



そしてそして、平賀とロベルトの調査と言う名の冒険は、まだまだ凄いんです、今回。

怪しい犯罪グループのアジトに潜入し・・・身元がバレたのか、強面の皆様に、バンバン銃を発砲されながら脱出したり。

はたまた、爆弾テロに巻き込まれ、平賀が、その時限爆弾を解体し、事なきを得たり。

・・・なんちゅーか、なかなかにハードボイルド(笑)。

っていうか、時限爆弾を解体できる神父様って・・・平賀くらいしかいないのではないでしょうか(^m^)

いやはや、途中は、貴方たち、本当に神父様デスカ?というほど、ハードなあれこれをやってのけるので、かなりドキドキハラハラでした。

奇跡調査も命がけですねA^^;;


しかも、今回は、頼みの綱・ローレンも、前作で失踪したまま。

代わりにインド人のチャンドラ・シン博士が、ローレンの後任として来ているのですが・・・これがなかなか謎な人です。
意外にお茶目な面も垣間見れましたが、なにやら、思惑がありそうなシン博士。

そして、失踪したまま、依然と行方が分からないローレンですが、途中、シン博士からのメッセージを偽って、平賀に寄越してきた情報。。。。。

っていうか、ローレンのことは、未だ謎のままで。

結局、今回のお話でも、ローレンの行方は杳として分かりませんし・・・私、気になります!!




そんな感じで、なかなかハードなアクションの末、二人が辿り着いた奇跡の真実とは・・・!


もちろん、バチカンでは「奇跡」とは認定されませんでしたが、今回の件は、キリスト教とは別の意味での「奇跡」なのかもしれないいなぁって感じです。

これまでの奇跡が、捏造されたり、また、犯罪がらみだったりしたものばかりだっただけに。

今回のは、ある意味、真の奇跡だと思いました。

でも、それはキリスト教でいう所の奇跡ではなく、なんというのかな・・・生命の奇跡・・・みたいな?

そういう結末もまた、面白かったです。


細胞や遺伝子など、人間の・・・いや、生命の根源に関するミステリで。

ちょっと、昔読んだ『パラサイト・イヴ』という小説を思い出しちゃったです。

うん。

細胞レベルでのミステリです。


本当に、今回は、マヤ文明から始まり、生物学・宇宙学など色んな分野のことが語られ、ちょっと難しかった気もしましたが、とても面白かったです。

初読時は、とにかく、続きが気になって、次々と読み進めて行っちゃったので・・・今度はじっくりと読み直してみたいですね。

そしたら、より深く理解できるかも!


ちょっと今までとは違う奇跡の結末で、興味深い内容でした。


あっ! そうそう。
余談ですが、今作でもありましたよ。

毎回お約束になりつつある、ロベルトのお料理コーナー(*^^*)

奇跡調査に出発する前に、ロベルトが平賀に手料理を振る舞うって・・・毎回のお約束になっちゃいましたね。
しかも、その料理が悉く美味しそうで、読んでて、お腹が空きます(*><*)



あと、気になったのが。


前作のラストで失踪したローレンの行方。

はたまた、やはり、前作のラストで、最大の問題に巻き込まれた平賀やロベルトの友人でもある、FBI捜査官ビル・サスキンスのその後。

病床にある、平賀の愛弟・良太の容態。

そして、ジュリア司祭の企み。。。。。。


ここら辺に関しては、今作では一切語られなかったので・・・気になって気になって・・・。


っていうか、私、スマホじゃないので、途中から読めなくなってしまったのですが・・・以前、角川のケータイ小説サイトで連載されていた(今もされている?)、良太の話とか、凄く気になります。

確か、良太の容態が悪いと平賀に連絡が入って、で、平賀か慌てて、ドイツの病院に向かう~っていう所までは読んでいるのですが。

それらは、もしかしたら、外伝として、また別に発売されるのかな、かな??


そんなこんなで、気になる所がいっぱいっ。

読み終わったところなのに、早くも次の展開が楽しみになっている奇跡調査官でした。


これまでの奇跡とは、ちょっと異色な今回の奇跡の真相。

とても面白かったです。