★ベルの徒然なるままに★

映画、ゲーム、アニメ、小説、漫画・・・管理人ベルの、大好きな物をいっぱい集めた徒然日記です。

映画『告白』

2010年06月14日 | 映画鑑賞記
先週見てきた映画の感想です。

原作小説は読んだこと無かったのですが、映画館で予告を見て以来、ずっと気になっていた『告白』、先週見てきました。

いやはや、実に怖い映画でした。
相当にダークで、衝撃的、そして、救いすらない話なので・・・結構、評価は賛否両論に別れるのじゃないかなぁ~と思いますが。

わたし的には、そのダークさを楽しみ、そして、「命」について考えさせられた映画でした。

物語は、とある中学校の教室から始まります。

終業式のホームルーム中にも関わらず、誰一人として、真面目に先生の話を聞こうとしない生徒達。
私語をする者、誰かをイジメて楽し者、ケータイでメールを打つ者・・・ざわついた教室の中で、担任の女教師・森口悠子は、衝撃的な内容を語り出します。

「私はシングルマザーです。娘の愛美は死にました。警察は事故死と判断しましたが、娘は事故で死んだのではありません。殺されたのです。このクラスの生徒によって。犯人は2人。私は、その犯人の名前を挙げる気はありません。これから、その犯人をAとBと呼びます」


シングルマザーだった彼女は、職員会議で遅くなる日には、4才の娘・愛美を学校の保健室で待たせておくのが習慣になっていました。

けれども、ある日。
保健室で待っているはずの愛美の姿が見えなくなり。

見つかったのは、学校のプール。

誤ってプールに落ちて、溺死した・・・・・・という事故で処理されます。

けれども、それは事故ではなく、彼女の担任のクラス、1年B組の生徒2人によって殺された殺人事件である・・・と彼女は語るのでした。

しかし、彼女は、警察の下した判断を蒸し返す気は無いと言います。
なぜなら、仮に、彼らの「殺人」が明るみになったとしても、14歳以下の人間は少年法によって護られているから。たいした罰は下せない・・・と。

だから、彼女は、法律ではなく、自分自身のやり方で、娘を殺した犯人に復讐する・・・と宣言し、学校を去っていくのでした。

そして。

彼女が辞めた学校で・・・。
少年AとBに対する、壮絶な復讐が展開されるのでした・・・。


結構、衝撃的な内容&結末なので。
ネタバレになってはいけませんし、感想は、反転仕様にしておきますです。

あっ。
でも、このブログ、ケータイか見た場合は、反転にならないので、ご注意をば。


ではでは。
以下、私の感想↓↓↓


原作小説も未読でして、前知識無しで見てきました。なので、映画のポスターにダマされちゃってましたですよ~。

映画ポスターでは、「娘を殺したのは誰?」みたいなことが書いてあるじゃないですか? なので、てっきり、娘を殺した犯人は、誰か分からず、先生がそれを炙りだしていく・・・ような話なのかなぁ~と思っていたのですよ。

でも、実際は、そうではなくて。

犯人は、もう、最初から分かっているのですよね。
そして、その犯人に対して、彼女が復讐する話。

最初の約1時間くらいかな・・・。延々と続く、先生のホームルームでの告白。

淡々と抑制されていて。でも、その抑制された中に、物凄い恐ろしさを感じましたです。

もう、とにかく、子役も含め、役者さん達、超名演技です。

感情を抑え、それでいて冷酷に復讐に徹底する女教師役の松たか子さん。

空気を読めない、勘違い熱血教師の岡田将生さん。

息子を溺愛する余り、正しい診断が出来なくなっている母親の木村佳乃さん。

そして、理由もなく・・・いや、本当に自分勝手でどうでも良い理由で、たった4才の子供を殺した少年A、B役の子役さん達。

そんな少年A、Bと、クラスメイト達を、少し冷めたところから見ている少女。

皆さん、本当に、スゴイ演技でした! 凄すぎて怖かったくらいです。


この作品は、娘を殺された女教師の衝撃的な告白から始まり、それに関わってる人達の告白が後に続き。1つの事件が、色んな人の視点、色んな人の言い分を交えて語られていきます。

私達、観客は、そうして、様々な人達の「告白」を聴き・・・そうしている内に、殺人事件の真実に辿り着きます。

そして、真実が分かるにつれ、なんとも、なるせなく、切なく、哀しい感情に襲われていくのです。

少年A、Bには、4才の子供を殺した「理由」というのも、あるのですが・・・。
その理由というのが、本当に身勝手で、意味もないことで。
なんで、こんなことで、何の罪もない4才の子供の命を奪わなくてはいけないのか・・・と思います。
もちろん、Aには、母親への愛の渇望という背景があり、それが、歪んだ形になり、こういう結末を招くわけではありますが・・・。
そして、少年Bも。
母親からの過度な愛情、期待、干渉・・・と言った過保護が、彼を歪めてしまったのですよね。
こんな事になる前に、なぜ、周りの人間は彼らを救えなかったのか・・・と切なくなります。
とはいえ、彼らの犯した犯罪は、許せないことですし、同情の余地はないような気がします。

そして、そんな理不尽な理由で、愛娘を殺されたヒロインの女教師。

彼女は、その怒りを、法的手段ではなく、自らの手による復讐で、彼らにぶつけるわけですが・・・。
その復讐方法が、実に綿密で、容赦ないです。
単に、殺されたから殺し返すという単純なものではなく、「これでもか」というくらい彼らをどん底に突き落とし、破滅させていくのです。殺すよりも残酷な方法で。

その復讐の結果、またしても、関係ない人の命が失われ・・・。
復讐をしたからと言って、決して、娘が帰ってくるわけではないですし、復讐は何も生み出さないのでしょうが・・・。
わたし個人としては、別段、ヒロインを責める気にはなりませんでした。

本当に「命」の大切さを理解していない彼らに、「命」の大切さを教える方法・・・それが、ヒロインが採った復讐方法なのでしょう。
彼らに、「命」の重さを知らしめるには、あれしかなかったのかもしれません。

娘を殺されたヒロイン。
そして、彼女は、どういう形であれ、犯人の少年達に、自分たちの母親を殺させた訳ですが・・・・・・。

大切なものを奪われたから、彼らにも大切なものを失わせた・・・という、対照的な復讐。

母親の愛を何より望んでいたAからは母親を。
そして、母親ももちろんのことながら、何より、自分本位で自分が一番可愛かった少年Bからは「自分」を奪ったわけですね・・・。少年Bは、完全に廃人になっちゃってましたし。

物凄く後味が悪いですし、ホント、悪夢に出そうな結末ではありますが・・・。

でも。

本当の意味で、命の大切さを実感していない彼らは。こうして始めて、自分の罪の重さ・・・大切な人を失った時の傷みが分かったのではないかなぁ~と。

ヒロインの復讐は、決して、褒められたものではありません。赦されることでもないでしょう。
でも、なぜか、彼女を責める気にはならない。
そんな印象を受けました。

っていうか、きっと、彼女も、復讐を遂げても、嬉しくないと思うのですよね。寧ろ、より彼女も苦しくなったのでは・・・と。
それでも、復讐をやり遂げようとしたのは、もしかしたら、彼らに、本当に「命」について考えさせようとした「教育的」なことだったのかも・・・。


いかなる理由があろうと殺人はいけないことです。
それなのに、昨今、ニュースなどを見ると、本当に、意味のない殺人が・・・それも、若者による事件が多いような気がします。

そんな世相の中、この作品で描かれていることは、少々、極端・極論ではありますが・・・でも、色々と考えさせられました。

そして。
本当に。
もっと、人が他人の痛みを感じられる、思いやれる・・・そんな世界になって欲しいのになぁと思いましたです。