『目白台サイドキック 女神の手は白い』 太田忠司 著(角川文庫)
わたしにとっては久しぶりの太田ミステリ。長編ですが、この文庫書き下ろしです。
面白かったよー、本格ミステリ好きを満足させてくれました。
いやでもこれ、感想書けば書くほどネタばらしになりそうで、書きたいことの半分も書けないかもしれません。
真相やなにやらにできる限り触れないようにしますけど、カンのいいかたには分かってしまうかも。読了後にお付き合いいただいて、ツッコミをお願いします。
また新しいシリーズが生まれましたねー!それもバディもの、というかホームズとワトソンの定型からちと外れてるけど、いいコンビですわ。
あ、この「コンビ」は二組です。無藤くんと南塚さん。北大路さんと南塚さんの組み合わせはたぶん対等に探偵同士。
名家の若い当主と、その居候で名探偵刑事。
視点人物の無藤くんはワトソン役だと思うんですけど、まさかワトソンも名探偵2人を一気に背負い込む設定は予想外だったでしょうねえ(笑)
で、太田先生の本格ミステリらしく、本当に隙がない。
キャラ設定にしても、事件の発端から次第に加速していく展開も、そして真相も。サプライズも。どこかが、何かが浮いてるわけでもなく、綺麗にモザイクになって、そして次への期待を持たせるところまでしっかり。
書かなくてもいいことをあえて書くなら、この警察と探偵の設定はあのシリーズのと似てる、とか、この展開はあの作品と同じだよね、とか。あるんですけど。
(このふたつ、わたしが伏せたシリーズ名か作品名が分かったら間違いなくわたしと同じ読書傾向のお友達ですw)(なんでしたらメッセージで耳打ちしてください)
変わってるけど名探偵、誠実で正直で囮にさえできそうなワトソン君、個性的な刑事さんたち。お屋敷のメイドさん、じゃなかったお世話してくれる女性と料理の腕も人生も深いコックさん。そして当主。
みんな個性的で、でも反感を買うような奇矯さはなくそれぞれがプロフェッショナルで。
そして事件の方も、本格ミステリという謎解きものと、警察小説がうまく混ざり合ってて自然に加速していくので一気読みしたのでした。
読者もね、南塚さんに「考えろ」といわれてるようで考えるんですよ、一応。
で、少しずつ明かされていく繋がりに、あれ?と思うこともしばしばなのですよ。
ただ、わたしはてっきり別の人だと思ってたあ★
コイツかー!
でも読み返してみたら確かにそうとしか導けないようになってるし。
ふー、またやられたわ……気持ちいいわ……ふふふ(ミステリ好きはたいていこんなもんです)
終盤のサプライズ、これはええと、たまにありますね♪で、だからこそ南塚さんが居候してるわけですよね。
真相究明には関わらないところでこの手を使って、それが続編につながりそうな雰囲気です。期待しますよそりゃ☆
太田先生の作品を全部読んだわけではないんですけど、好きです。
読み心地がいいの。
繊細とか丁寧とかいう言葉じゃなくて、…んー……評判のいいフレンチレストランで、めっちゃバランスのいい美味しいコース料理を食べて満足、みたいな?
添えられたソースも付け合せのパセリも、デザートにいたるまで、五感をぜんぶ使って堪能していただく感じ。
本格ミステリを読みたい、読むぞーって意気込みで読んで、裏切られない安心感と満足感。
これは早くもシリーズ第二弾が出ることが決まってます。9月25日発売予定ですって、オビに。
楽しみですー、どんな料理が出てくるのかなw