『COW HOUSE』小路幸也 著/(ポプラ社)
ふふふ~~♪♪
またまたいいお話でした~~www
連載時も読んではいましたが、やっぱり単行本にまとまった方が読みやすい。これも繋がったからかな。
それにしても、小路さんの頭の中では、一体どれくらいの世界があるんでしょう。もちろん皆いい人で、生きてることが幸せな人たちばっかりなんですけど、それこそ現在の私達が必要としてるものだと思う。そこをちゃんと自覚して掬い取って、幸せでふわふわするような物語を紡ぎ続ける小路さんに、心から敬服します。
実は。
連載時もそうだったんですけど、一番最初のシーン、誰もいないはずの屋敷のテニスコートで遊ぶ老人と女の子、そして部長。このやりとりが、実はめっちゃ苦手だったんです私。こういう掴みどころのないキャラクタって、馴染むまではどうにも気持ち悪い。
でも、読んでいくうちにそんなのすっかり忘れたように、この屋敷を俯瞰する第三者視点で、愉快に笑っておりましたよ。
思うに、根っこは私、視点人物であるクロちゃんこと畔木くんと、考え方というか性質が似てるんだと思う。もちろん私は、これほど誠実じゃないけども。
とにかくきちんと現状把握したいし、なあなあで済ませたくはない。よく知らない人に、訳も分からないのにペースに巻き込まれたくもない。なにより私、自他ともに認める頑固者です。
でもクロちゃんはやっぱり、ちゃんと小説の中のキャラクタで、みんなから好かれるように、助けてあげて助けてもらえるように、人間として責任をもって関わってる。似てるかもなんておこがましくて、見習わないといけない資質であり美点。
他のキャラクタもみんないい!
美咲ちゃんも、じいさん(むっさん)もタケさんも、長谷川くんも、そしてふうかちゃんも可愛いw
でも一番ウケたのは、やっぱり萩原くんでした(笑)
うーん、このまま還暦になったら、『東京BW』の我南人さんそっくりじゃないですか。ってことは別にして、音楽を好きでいるために、人間の女性との関わりを面倒だと言いきれる幸せなところや、なんと言ってもヘンな体操!どんなんでしょうか。見てみたいわーw
アフロが可愛いったらww
対照的なのが、坂城部長で、ちょっと意外。
私の好みからいくと、どんぴしゃなんですけどね。でも実は、会社での触れれば切れそうな怜悧な表情の方が、より好きな私は…なんでだか、畔木くんを気に入っているのも美咲ちゃんに優しいのも、過去の若気の至りをずっと引きずって未だに罪の意識が抜けないのもそれはそれはツボなんですけど、部長としてのリーダーシップとかカリスマとか、質問に質問で返すなとか2度訊くな言わせるなとかエクスキューズのこととか企画書を熟読する姿とかプレゼンのこととか。そういう「ばりばり働く男」っていうのが、ふにゃふにゃになるほど好みなんですけど私。…これだけ区切らずに書いてて、自分で寒くなった…。
もちろん、主人公のクロちゃん、じゃなくて畔木くんも、緩急ついてて素晴らしいというかイケてますw
さすが《第三の切り札》。
仕事というものをちゃんと理解して、自分のためだけじゃなく周囲のためにと納得していないと、これだけの能力は開花しないはず。あの震災の体験をこんな風に捉えられた子ども達って、実際いるのかなあ。
多分、将来は今の坂城部長よりもたくさんの伝説と大きなカリスマを持つリーダーになってる人です。断言。
まあキャラ語りはこれくらいにして。(もう十分です)
これね、読んでるあいだ、何回か指が止まるところもあるんですけど(神戸って出てきた時点でヤバイと思った)、好きですこのお話。
で、小路さんのdiaryとかbbsで書かれていたことでもありますし、確かにこれまでの作品と比べて緩くまったり感が全体を覆ってるんですけど。
でも、私には昨年のあの名作『空へ向かう花』の、対のような二卵性の双子のような印象をひしひしと感じました。
えーと、『空へ向かう花』の方は、心の痛みや軋み、諦観とか遣り切れない感情、そしてその先にある光、みたいな。がちがちに組み合わさった形のブロックの余計な部分を外して形の意味はそのままに重量を軽くしたような、または、噛み過ぎて動かなくなった歯車にオイルをさしてベアリング一個抜いても動けるように設計し直すような、そんな感じのするお話だったんです。
対して、この『COW HOUSE』は、全体としては確かに緩いしまったりしてるし、時間の流れもゆっくりで穏やかで、自分の内面を見つめなおしたりするのにはいい場所なんですが、シフォンのような(ケーキじゃないですよ? 笑)ふんわりしてるのに実はしっかり頑丈でゆるぎない。
ぎちぎちに組まれた重さからくる骨組みと、軽妙でも意味の損なわれない強さ。
だから、『COW HOUSE』を読んでいるのに、私の中のどこかが『空へ向かう花』を引っ張り出してきて、まるでパラレルワールドのように思わせる。
これは、有栖川先生の『乱鴉の島』(作家アリス)と『女王国の城』(学生アリス)に感じる対称性と同一です。ヒムラーな私は『乱鴉』を一体何度読み返してることか。有栖川作品の中でも一番です。おかげで通読用の単行本が既にボロボロです(苦笑)
てことは、『空へ向かう花』が大好きで今も何度も読み返してる私は、これからはこの『COW HOUSE』も同じように何度も再読するだろうと思うほど、好きな物語になるってことですね。
もし引っかかりというか毒を注入するなら、じいさんの家族やふうかちゃんの両親をとんでもなくイヤな人間にして描くこともできるはずで、多分その方が作家さんとしては書きやすいと思うんです素人ながら。
でもあえて、いい人ばかりの世界にするというのは、一歩間違えれば嘘臭くて崩壊してしまいかねないと思うんですが、小路さんは絶妙なバランスで素敵な世界を構築される。キャラクタを取り巻く環境は、イヤなことばかり続く現実社会のようにため息が出るんですけど、そんな中でも美咲ちゃんやふうかちゃんや大地くんの自棄にならないで頑張る姿に、私達大人が励まされるんですよね。美咲ちゃんは一応成人してるけど、どうみても少女の雰囲気だし。
それと。
引きこもりシリーズの坂木さんもたいがい食べ物のシーンはすごいけど、小路さんも食べるってことに関して手を抜かないかたですね。
『東京BW』でのあの食事シーンを筆頭に、この『COW HOUSE』でもみんな綺麗にしっかり食べる。そしてそのどれもが美味しそうなんだほんまに。ちゃんとご飯作らんとあかんわーって、小路さんの作品を読むといつも思う。
食べることは生きること。
しっかり食べて、しっかり生きろ。
小路さんの根本のメッセージだと思います。
ふふふ~~♪♪
またまたいいお話でした~~www
連載時も読んではいましたが、やっぱり単行本にまとまった方が読みやすい。これも繋がったからかな。
それにしても、小路さんの頭の中では、一体どれくらいの世界があるんでしょう。もちろん皆いい人で、生きてることが幸せな人たちばっかりなんですけど、それこそ現在の私達が必要としてるものだと思う。そこをちゃんと自覚して掬い取って、幸せでふわふわするような物語を紡ぎ続ける小路さんに、心から敬服します。
実は。
連載時もそうだったんですけど、一番最初のシーン、誰もいないはずの屋敷のテニスコートで遊ぶ老人と女の子、そして部長。このやりとりが、実はめっちゃ苦手だったんです私。こういう掴みどころのないキャラクタって、馴染むまではどうにも気持ち悪い。
でも、読んでいくうちにそんなのすっかり忘れたように、この屋敷を俯瞰する第三者視点で、愉快に笑っておりましたよ。
思うに、根っこは私、視点人物であるクロちゃんこと畔木くんと、考え方というか性質が似てるんだと思う。もちろん私は、これほど誠実じゃないけども。
とにかくきちんと現状把握したいし、なあなあで済ませたくはない。よく知らない人に、訳も分からないのにペースに巻き込まれたくもない。なにより私、自他ともに認める頑固者です。
でもクロちゃんはやっぱり、ちゃんと小説の中のキャラクタで、みんなから好かれるように、助けてあげて助けてもらえるように、人間として責任をもって関わってる。似てるかもなんておこがましくて、見習わないといけない資質であり美点。
他のキャラクタもみんないい!
美咲ちゃんも、じいさん(むっさん)もタケさんも、長谷川くんも、そしてふうかちゃんも可愛いw
でも一番ウケたのは、やっぱり萩原くんでした(笑)
うーん、このまま還暦になったら、『東京BW』の我南人さんそっくりじゃないですか。ってことは別にして、音楽を好きでいるために、人間の女性との関わりを面倒だと言いきれる幸せなところや、なんと言ってもヘンな体操!どんなんでしょうか。見てみたいわーw
アフロが可愛いったらww
対照的なのが、坂城部長で、ちょっと意外。
私の好みからいくと、どんぴしゃなんですけどね。でも実は、会社での触れれば切れそうな怜悧な表情の方が、より好きな私は…なんでだか、畔木くんを気に入っているのも美咲ちゃんに優しいのも、過去の若気の至りをずっと引きずって未だに罪の意識が抜けないのもそれはそれはツボなんですけど、部長としてのリーダーシップとかカリスマとか、質問に質問で返すなとか2度訊くな言わせるなとかエクスキューズのこととか企画書を熟読する姿とかプレゼンのこととか。そういう「ばりばり働く男」っていうのが、ふにゃふにゃになるほど好みなんですけど私。…これだけ区切らずに書いてて、自分で寒くなった…。
もちろん、主人公のクロちゃん、じゃなくて畔木くんも、緩急ついてて素晴らしいというかイケてますw
さすが《第三の切り札》。
仕事というものをちゃんと理解して、自分のためだけじゃなく周囲のためにと納得していないと、これだけの能力は開花しないはず。あの震災の体験をこんな風に捉えられた子ども達って、実際いるのかなあ。
多分、将来は今の坂城部長よりもたくさんの伝説と大きなカリスマを持つリーダーになってる人です。断言。
まあキャラ語りはこれくらいにして。(もう十分です)
これね、読んでるあいだ、何回か指が止まるところもあるんですけど(神戸って出てきた時点でヤバイと思った)、好きですこのお話。
で、小路さんのdiaryとかbbsで書かれていたことでもありますし、確かにこれまでの作品と比べて緩くまったり感が全体を覆ってるんですけど。
でも、私には昨年のあの名作『空へ向かう花』の、対のような二卵性の双子のような印象をひしひしと感じました。
えーと、『空へ向かう花』の方は、心の痛みや軋み、諦観とか遣り切れない感情、そしてその先にある光、みたいな。がちがちに組み合わさった形のブロックの余計な部分を外して形の意味はそのままに重量を軽くしたような、または、噛み過ぎて動かなくなった歯車にオイルをさしてベアリング一個抜いても動けるように設計し直すような、そんな感じのするお話だったんです。
対して、この『COW HOUSE』は、全体としては確かに緩いしまったりしてるし、時間の流れもゆっくりで穏やかで、自分の内面を見つめなおしたりするのにはいい場所なんですが、シフォンのような(ケーキじゃないですよ? 笑)ふんわりしてるのに実はしっかり頑丈でゆるぎない。
ぎちぎちに組まれた重さからくる骨組みと、軽妙でも意味の損なわれない強さ。
だから、『COW HOUSE』を読んでいるのに、私の中のどこかが『空へ向かう花』を引っ張り出してきて、まるでパラレルワールドのように思わせる。
これは、有栖川先生の『乱鴉の島』(作家アリス)と『女王国の城』(学生アリス)に感じる対称性と同一です。ヒムラーな私は『乱鴉』を一体何度読み返してることか。有栖川作品の中でも一番です。おかげで通読用の単行本が既にボロボロです(苦笑)
てことは、『空へ向かう花』が大好きで今も何度も読み返してる私は、これからはこの『COW HOUSE』も同じように何度も再読するだろうと思うほど、好きな物語になるってことですね。
もし引っかかりというか毒を注入するなら、じいさんの家族やふうかちゃんの両親をとんでもなくイヤな人間にして描くこともできるはずで、多分その方が作家さんとしては書きやすいと思うんです素人ながら。
でもあえて、いい人ばかりの世界にするというのは、一歩間違えれば嘘臭くて崩壊してしまいかねないと思うんですが、小路さんは絶妙なバランスで素敵な世界を構築される。キャラクタを取り巻く環境は、イヤなことばかり続く現実社会のようにため息が出るんですけど、そんな中でも美咲ちゃんやふうかちゃんや大地くんの自棄にならないで頑張る姿に、私達大人が励まされるんですよね。美咲ちゃんは一応成人してるけど、どうみても少女の雰囲気だし。
それと。
引きこもりシリーズの坂木さんもたいがい食べ物のシーンはすごいけど、小路さんも食べるってことに関して手を抜かないかたですね。
『東京BW』でのあの食事シーンを筆頭に、この『COW HOUSE』でもみんな綺麗にしっかり食べる。そしてそのどれもが美味しそうなんだほんまに。ちゃんとご飯作らんとあかんわーって、小路さんの作品を読むといつも思う。
食べることは生きること。
しっかり食べて、しっかり生きろ。
小路さんの根本のメッセージだと思います。
読んでからここを見ようと思ってて、こんなに遅くなってしましました。
やっぱりねー。同じだ。
神戸のことは抜きにして、感想がそっくりだぁ。
『空へ向かう花』やはりそうですよね。
午年の彼にしても、こりゃ我南人?
小路さんの作品のファンって、感じる部分が似ているのでしょうか。だとしたら嬉しいです!
この『COW HOUSE』は特に顕著だと思うんですが、会話部分だけじゃなくクロちゃんのモノローグというか文章全体のリズムがめっちゃイイなあと。読みやすいというか、みんなが本当に楽しそうとなのが伝わって読者も楽しいというか。
『空へ向かう花』については、分かってくださいましたかw
自分でも漠然としたものだったんですけど。
ところで、午年の人って、あんな感じなんでしょうか(笑)いやもう、ふうかちゃんとの初対面のシーンなんて、美咲ちゃんの代わりにお腹抱えて笑わせていただきましたよ!