『或るエジプト十字架の謎』 柄刀 一 著(光文社)
いやいやいや、柄刀先生凄いっす!
こういう場合も本歌取りっていうのかな、いやもしかしたら本家よりゴリゴリの本格じゃないでしょうかっ。
海外ミステリは苦手…という人でも、EQ関係なしに普通に面白い本格ミステリなのでぜひ。
本家エラリー・クイーンが遺した本格ミステリの代名詞みたいな【国名シリーズ】、その初期四作品が、
『ローマ帽子の謎』
『フランス白粉の謎』
『オランダ靴の謎』
『エジプト十字架の謎』
なわけですが。
……今だから言うけど~、みたいな感じで(笑)、現在のわたし達が読むと、EQの国名シリーズってもローマやフランスやオランダやエジプトが舞台なわけじゃなし、ローマ帽子やフランス白粉やオランダ靴やエジプトに至っては十字架ってコプト教か?シリーズタイトルの由来になったモチーフがこってりと使い込まれて骨までしゃぶられたようなストーリーでもないし(平成のエラリー・クイーンと呼ばれる青崎有吾さんが、事件の鍵となったアレやアレをと謎解きにとことんまで使い倒したのは凄いことだと思う)。名作のエジプト十字架なんて、謎解きの一番のキーワードはエジプトも十字架もまったく関係なかったアレだし。
エラリー・クイーンの継承者のおひとりである有栖川先生の【国名シリーズ】は、ロシア紅茶やスウェーデン館やペルシャ猫英国庭園ブラジル蝶マレー鉄道スイス時計モロッコ水晶インド倶楽部(アカシックレコード)、マレーを除き本家クイーンと同じく日本国内での事件ですが、クイーンよりもお国柄を出すというか被害者や容疑者達の行動にそれぞれのモチーフが絡み付いててタイトルを見ただけでどんな事件でどんなお話だったか細部まで思い出せる……のはわたしが有栖川先生の大ファンだからでしょうかw
わたしねえ、柄刀先生のミステリってかなりトリッキーな作品が多いと思ってて、だからクイーンというよりはカーの系図に連なるミステリ作家さんだという認識なんですよね。
その柄刀先生が真正面どころか道場破り(?!)みたいなこの作品を、それも短編集で、ってびっくりしたんですよ。
EQの国名シリーズ、ぜんぶ長編です。
謎解きだけで一章の行数びっしりです(笑)※井上さんの旧訳
それを。
短編で、「ローマ帽子」も「フランス白粉」も「オランダ靴」も「エジプト十字架」もたっぷり捏ねて使って、トリッキーながらロジカルもばっちり!
何だかんだ言ってもEQの国名シリーズが聖典で本格ミステリが大好きなわたしは、本家を思い出してニヤニヤしつつも美希風くんの謎解きにブラボーブラボーのスタンディングオベーション!
元々、美希風くんのシリーズが好きなので、そこにEQと来りゃもう誰得ってわたし得ですよ♡
あ、そうそう。
わたしはEQの初期作(国名シリーズ)は創元推理文庫で馴染んでるので『~の謎』でスッと入ってきますけど、早川版贔屓のかたは『~の秘密』ですよね、そんな読者にも気を使ってかそういう説明をしてるくだりもあるので創元版タイトルでも許してくださいね(誰に言ってる)
これ、国名シリーズの後半(チャイナ橙、スペイン岬、アメリカ銃、シャム双生児、ニッポン樫鳥(思い出すまま書いたので順不同))(そういえばこの短編集、ギリシア棺が飛んでますよね)も美希風くんシリーズで出るのかな、ジャーロの紙版がなくなってからは読んでなくて情弱……。
出るといいなあ。
感想というよりブラボーしか書いてなくてすみません。
面白かったです!
久しぶりに本格ミステリの感想書きたいなーと思った作品でしたよ。(有栖川作品以外で)
この作品が年末の各ミステリランキング本に出たら嬉しいし、来年の本ミス大賞の候補作品になったらもっと嬉しいです。
10月14日 大垣書店 イオンモール桂川店
(14日のみ 有栖川×綾辻×北村薫トークショー)
返コメがめっちゃめちゃ遅くなってすみません!(土下座)
有栖川先生のサイン会と、翌日のトークショウ&サイン会の情報、ありがとうございます。
Twitterの、書店さんと版元さん公式アカウントからの情報解禁の時間を確認したら、
確かに6時間ほどAさんからのコメントの方が早かったですねw
わたしは13日には行けなくて、14日の桂川イオンの方にお邪魔します!
たぶん、Aさんともお会いできるんじゃないかなーと思ってるんですけど♡
ちなみにこの桂川の方、予約の電話がなかなか繋がらなくて、20回くらいリダイヤルしまくりました……綾辻先生と北村先生までいらっしゃる豪華なトークショー、そりゃファンは殺到しますよねえ。