おぉきに。

気が向いたら読書感想を書き、ねこに癒され、ありがとうと言える日々を過ごしたい。

『神様の御用人』

2014-06-26 16:03:17 | 本の話・読書感想





『神様の御用人』 浅葉なつ 著(アスキー・メディアワークス文庫)
 これはラノベレーベルなんでしょうか?まずはソコから(苦笑)
 というわけで、初めて読みました浅葉なつさん。
 ついったーで三省堂京都駅店さんが大プッシュされてまして、へーと思って読んでみたんですが、面白かった!ラノベに偏見はまったくないんですけど知らなかったので、いい拾い物っていうと失礼かな。
 先日の小路さんの新刊に続いてなにやら神様づいてますが、うん、神様って、居ると楽しいかもしれないですねw


著者プロフィール欄とあとがきを読むと、浅葉さんって、ええと……神社フェチ?←フェチ言うな
パワースポットガイドブックとは違う、それでも神社に行きたくなる小説です(笑)

社会に出たとたんにちょっと挫折して、バイトで人生を模索しながらなんとか社会復帰を願いつつ、神社に神妙に手を合わせる姿が印象的な主人公、良彦くん。
たまたま出会ったおじいさんから託された一冊の書。

あああ誰か北海道土産にある、キツネのモフモフ、いっちばんでっかいやつ送ってくれませんかー!
と思ってしまった、モフモフモフモフ、もとい、黄金様。狐神。

ヘタレですが素直で直球でお人よしでイマドキな若者のくせにハートは暑苦しい(苦笑)良彦くんと、狐神・黄金様の世直し二人旅♪(盛り過ぎです)

出会うのがみんな由緒正しき神様で、それも日本古来の旧い旧い神様となるともう御神体は山でしょうがイケメンだったりするし(笑)、義彦くんの親友・孝太郎くんともいい友情育んでるし、

えっと、良彦くん、きみかなり恵まれてるよ。

ラノベらしくご都合主義っぽかったりするし、神様も眷属もヴィジュアルイメージが結構前面に出てるけど、書きたいテーマもちゃんと伝わってくるので、いい小説だと思います。

神社で二礼二拍手一礼すらちゃんとしてる人少ないこのご時勢、神頼みの何が悪い?と逆ギレしそうなおっかない人もいると思うんですけど、一方でちゃんと心静かに手を合わせてお願い事をしてその願いが叶うが叶うまいが報告と御礼に来るような人もいるでしょう。
わたし達人間にしてみれば、ああ確かにいろんな人がいる、と思うんですけど。

神様にとっては、人間など木の葉と同じ。神とは人の子にとって理不尽なもの。

そうなのかー……。

と、そこにある厳然とした壁のようなものに悄然としてしまいそうです。でも。
良彦くんは、そんな儚い人間として、冷然とした神様の心に熱く鮮やかな何かを残しているんです。
そんな良彦くんを、ちょっとね、「火」に似てるなあって、思った。
プロメテウスじゃないけど、良彦くんのような心が、理屈も感情も吹き飛ばして本質に迫ってくるんだと思う。神様にとってはある意味危険人物ではあるかもしれない。木の葉の一枚一枚にすぎない人間に愛惜の気持ちというか好きになってしまうでしょうから。
それくらい、良彦くんは神様からも信頼されるようになっていきます。言葉も視線も真っ直ぐで嘘がないからね。

神様は人間にとって理不尽なもの、ということは、わたし達が感じる理不尽な出来事、理不尽な言葉っていうものは、どこかに学ぶべき何かがあるってことなんですね。もちろん、無理無茶でアンフェアな要求とか痴漢も含めた犯罪とかいう理不尽は許容すべきじゃない。わたしが思ったのは、窮地に陥ったとき、理不尽な目に遭ったときにわたし達はそれを許せるか?受け止めて昇華できるか?という人生の試練のようなもの。
運命を乗り越えることで強くなれば、神様に頼らなくても自分でなんとかできるでしょう?と。

良彦くんにとって理不尽なこと、というのはもちろん野球ができなくなったという挫折もあるけど、お人よしで損ばかりしてしまいそうな彼を怒りや悲しみで繋ぎ止める力のことなのかも。
神様には違いなんてほとんどない木の葉の一枚一枚にも、人間の目にはそれぞれに個性があってそれぞれの色づき方や散り方があるんですよ。良彦くんのおじいさんは、神様の世界では上質な木の葉の一枚だったんでしょう。

いい人代表の良彦くんは、俺様というかワガママというかそもそも次元の違う神様に振り回されっぱなしなんですけど、
神様が本来の姿と力を良彦くんに見せるのはたぶん最大級の信頼の証でしょう。
そしてまた、その畏怖を素直に感じられる良彦くん。どこまでも心が綺麗な青年です。

現代社会に普通になじんでる神様もいれば、黄金様のように人間社会の知識が江戸時代あたりでとまってる神様もいて、神様の世界と人間の世界のクロスオーバーっぷりが楽しいです。そしてまた、PCの使い方に馴染んでいく黄金様もかわいいですw

食い意地の張ってる黄金様はじめ、無理難題をふっかけてくる神様たちとのかみ合わなさや脱力気味のやりとりも楽しくて、するする読めました。
そして、ラストにホロリと来ます。これは反則やわ……(涙)

明治維新の廃仏毀釈で忘れられた神々もいっぱいいるんでしょうけど、氏神さんくらいはちゃんとお参りにいって手を合わせるのは間違ってないしね。
神社のお祭りも、愉しめばいい。
でも、大きなものへの感謝の心も一緒にささげないとねって。
抹茶パフェで口の周りをベタベタにしながら感動してる黄金様に、冷たくそっぽ向かれてしまうよ。

いいもの読みました。
早く2巻も読まねば!


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