わが輩も猫である

「うらはら」は心にあるもの、「まぼろし」はことばがつくるもの。

やはり解散が近道=与良正男(論説室)

2008-10-09 | Weblog

 福田康夫前首相は今、「なぜ私は辞めたんだろう?」と考え込んでいるかもしれない。

 自ら身を捨て、自民党総裁選をにぎやかに行って、その勢いで新首相の下で総選挙に打って出るはずだったのに、解散日程は後ずさりするばかり。

 麻生太郎首相は景気対策やインド洋での給油活動延長法案に加え、福田氏の金看板だった消費者庁設置法案の成立にも意欲を見せている。ならば福田氏が続けていても変わりなかったのでは、と私などは思う。

 筋書きが狂ったのは総裁選が狙いに反して盛り上がらず、麻生内閣の支持率が思いのほか伸び悩んでいるからにほかならない。そこに米国発の金融危機が押し寄せた。

 「解散・総選挙などしている場合か」という声があるのは当然だ。だが、考えてみよう。2代続きで政権投げ出しを余儀なくされたのは、衆参のねじれで国会運営が思うに任せなかったからだ。麻生首相が本腰を入れようと思っても、今のままでは国会は動かず、何も決められない状態が続く可能性が大きい。

 政治家が国会を動かせないのなら、衆院選を通じて有権者が動かすしかない。

 自民・公明連立の継続か。民主党中心の政権に交代か。仮に数が減っても自・公が過半数を取れば麻生内閣は信任されたことになり、民主党も参院での対応を考え直さないといけなくなるだろう。そこで初めて、麻生首相は自らの政策を自信を持って遂行できるようになる。

 まさか、与党も来秋の任期満了まで時機をうかがい、麻生首相でだめなら再び首相を代えるというわけではあるまい。やはり、解散する方が近道なのだ。





毎日新聞 2008年10月9日 0時05分

流通していていいのか=磯崎由美

2008-10-09 | Weblog

 またも幼い命が犠牲になった。三重県伊勢市の村田由佳さん(47)は9月9日、弁護士に「兵庫県でミニカップ入りこんにゃくゼリーを食べた1歳男児が脳死状態」と知らされ、全身の力が抜けていくのを感じた。

 村田さんの長男龍之介君は7歳だった。昨年3月、学童保育所でおやつに出されたこんにゃくゼリーをのどに詰まらせ亡くなった。両親が泣き暮れる日々から立ち上がり、実名を公表し提訴したのは、12年も前から窒息死が相次いでいたと知ったからだ。法の不備で製造中止はかなわず、裁判は和解した。

 国民生活センターは9月30日、兵庫の男児を17人目の死亡例として発表した。数字は被害の一部に過ぎないだろう。実際、村田さんは龍之介君の葬儀で参列者から統計に上っていない死者がいると聞き、のち事実が確認できた例もある。子や孫に与えてしまい、自分を責め、泣き寝入りしている家族もいる。だが、問題は子どもや高齢者が口にすると危険な「おやつ」が流通していることだ。

 龍之介君の事故後、業界は袋に警告を表示して販売を続けた。1年後に繰り返された今回の事故で、マンナンライフはミニカップ型の製造中止を決めた。だが製品自体の危険性は認めず、既に流通しているものは回収しないという。消費者保護の精神からはほど遠い。

 「餅はどうするのか」「交通事故の方が多い。車も製造中止か」。そんな批判も村田さんの耳に届く。「私も龍之介を失うまで消費者被害を身近な事とは感じていなかった。どうか皆さん机の上だけで考えず、もしわが子や孫が口に入れてしまったら、と想像してください」(生活報道センター)





毎日新聞 2008年10月8日 東京朝刊