福田康夫前首相は今、「なぜ私は辞めたんだろう?」と考え込んでいるかもしれない。
自ら身を捨て、自民党総裁選をにぎやかに行って、その勢いで新首相の下で総選挙に打って出るはずだったのに、解散日程は後ずさりするばかり。
麻生太郎首相は景気対策やインド洋での給油活動延長法案に加え、福田氏の金看板だった消費者庁設置法案の成立にも意欲を見せている。ならば福田氏が続けていても変わりなかったのでは、と私などは思う。
筋書きが狂ったのは総裁選が狙いに反して盛り上がらず、麻生内閣の支持率が思いのほか伸び悩んでいるからにほかならない。そこに米国発の金融危機が押し寄せた。
「解散・総選挙などしている場合か」という声があるのは当然だ。だが、考えてみよう。2代続きで政権投げ出しを余儀なくされたのは、衆参のねじれで国会運営が思うに任せなかったからだ。麻生首相が本腰を入れようと思っても、今のままでは国会は動かず、何も決められない状態が続く可能性が大きい。
政治家が国会を動かせないのなら、衆院選を通じて有権者が動かすしかない。
自民・公明連立の継続か。民主党中心の政権に交代か。仮に数が減っても自・公が過半数を取れば麻生内閣は信任されたことになり、民主党も参院での対応を考え直さないといけなくなるだろう。そこで初めて、麻生首相は自らの政策を自信を持って遂行できるようになる。
まさか、与党も来秋の任期満了まで時機をうかがい、麻生首相でだめなら再び首相を代えるというわけではあるまい。やはり、解散する方が近道なのだ。
毎日新聞 2008年10月9日 0時05分
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