わが輩も猫である

「うらはら」は心にあるもの、「まぼろし」はことばがつくるもの。

カーリングの真価=中村秀明(編集局)

2008-04-04 | Weblog

 今年の新入社員は「カーリング型」だそうだ。

 社会経済生産性本部の分析。冬の新しいスポーツ、カーリングのように「育成の方向を定め、そっと背中を押し、氷をブラシでこするように周囲は働きやすい環境作りに心を砕く。少しでもブラシの手を休めると、減速したり停止しかねない」とか。

 「超」がつく売り手市場で、お客様扱いをしてきただけに、入社後も引き続きお世話が必要ということなのか。テレビ局の入社式に小島よしお、くりぃむしちゅーらが登場したほか、キリングループでも女優が飛び入り。新しいCMを大々的にPRする戦略の一環で、約400人の新入社員はサプライズを喜び、大いにわいたという。

 そんな入社式のニュースを見て丹羽宇一郎・伊藤忠商事会長の言葉を思い出した。

 「新入社員に給料を出すのが、どだい間違っている。こっちが授業料をもらって、ちょうどいい。仕事はできないし、逆に教えてあげているわけですから」。ある会合で同席した丹羽さんは持論を語った。「若い人にはビシビシ厳しいことを言って、がんがん鍛えないと、会社も日本もほんとにダメになる。ただし、根底に愛がないといけませんよ」とも。丹羽さん独特の、ある意味乱暴な言い回しだが、経営者や上司の本音はこちらに近いのだろう。

 実は、カーリング型との分析も締めは辛口だ。

 「就職は楽勝だったかもしれないが、経済の先行きは一気に不透明。自分の将来は、自らの努力で切り開いていくという、本人の意志(石)が大事になるだろう」




毎日新聞 2008年4月4日 0時26分


民主党VS社説=与良正男(論説室)

2008-04-04 | Weblog

 民主党議員は不満のようだ。今度のガソリン税問題。毎日、朝日、読売、日経、産経各紙の社説はそろって「道路特定財源の一般財源化には大賛成、暫定税率撤廃にはこだわるな」の論調で、同党の対応に批判的だったからだ。

 この主張には読者からも「庶民の暮らしの厳しさが分からないのか」といった批判が寄せられた。世論調査でもガソリン値下げを歓迎する人が大半。そんな中、「教育や福祉、環境などまだまだ予算が足りない分野がある」とか、「税率は欧州に比べて低い」とか、「それが脱石油社会の構築につながる」とか言ってもなかなか通じない。それを痛感する日々だ。

 福田康夫首相の立場はもっと厳しい。少なくとも税金の無駄遣いをどうやめるのか、官僚社会にどうメスを入れるのか、極めて具体的に示さないと税率を戻すのに納得する人はほとんどいないだろう。

 よって、政治戦略のうえでは、ここまでは小沢一郎民主党代表の勝ちである。与野党の歩み寄りを求めてきた私たちの社説も敗北したといえるのかもしれない。

 それでも、と思う。ともかく、政界は緊張感がようやく増して、衆院解散・総選挙のムードが少し出てきたことだけはよかった。

 やはり、今の政権の方が安定していると思うのか。「小沢首相」に一度託してみようと考えるのか。次の衆院選は文字通りの政権選択選挙。もちろん、自民党でも民主党でもない、第三極の新党が現れる可能性もなくはない。

 いずれ、有権者が選挙で政治を動かす。「次」に進むために私もあきらめない。




毎日新聞 2008年4月3日 0時08分