clover note

徒然なる日々の覚え書き。

土瓶にまつわる想い出

2008-09-30 03:40:04 | 食べる楽しみ飲む喜び
これは土瓶である。
何の土瓶かと言うと、『土瓶蒸し』用の土瓶である。
今はもう無くなった築地の器屋から買って来た土瓶、との事だ。





この土瓶は特別な土瓶。
何が特別なのか?
別にどこぞの有名な陶工が作った土瓶、と言う訳ではもちろんない。
そういう意味では単なる土瓶。
でも、家に来てからすでに40有余年経った土瓶である。
・・・自分より長生きしている土瓶だ。


この土瓶、昔はもっと数が多かった・・・そうだ。
十数個はあった、そうだ。
時は流れ・・・今では3つしか残っていない。
そんな土瓶。


子供の頃は、この土瓶で『松茸の土瓶蒸し』をよく食べさせてもらった。
秋になると必ずと言って良い程食べさせてもらった。
近年はめっきり食べる機会も減りましたが・・・
手前味噌になるが、自家製の土瓶蒸し以上の土瓶蒸しは今まで味わった事がない。
それ程に美味しい物だった。



中身はいたってオーソドックス。
出汁は鰹節と昆布がベース。
具材は、それぞれ茹でて下処理した「鶏肉のささ身」、「小海老」、「甘塩たら」、「ぎんなん」。
それと「三つ葉」、「庄内麩」。
もちろん主役は「国産松茸の薄切り」。
添えるのは四つ切りした「酢橘」、これは土瓶の蓋を兼ねた「猪口(ちょこ)」の上に。



風味が十分開いた汁を猪口に注ぎ、そこに酢橘を2滴程・・・
具をつまみつつ、仄かに酢橘の香りのする汁を味わいながら、良い純米酒のぬる燗をお供に。
・・・正にこの世の至福ですな。



当然の事ながら、子供の時は酒はなかったですけどね。(笑)
でも、とても美味しかった記憶があります、土瓶蒸し。
・・・所が今は・・・
まず国産松茸が買えない。
高過ぎる。
良質な物だと一箱数万円なんて安い方みたい。
こうなって来ると売り物には出来ない。
原価が高過ぎる。
もちろん自家用として楽しむにもハードルが高い。(苦笑)
昔は季節物として、特別に珍しくはない料理のイメージがあったのに・・・



出来れば国産松茸の方が良いよなぁ~
香りが違うし。
カナダ産松茸は香りがいまいち。
中国産松茸は・・・信用ならない。
今はどうか知りませんが・・・
昔は、目方を誤魔化すために松茸内部に釘や鉛玉が入っている事もままありました。
チャイナクオリティーは昔から変わらず、と言った所でしょうか。





時代と共に食の風景も移り変わる訳ですが。
家の土瓶が生き延びて約40年・・・
その間、食の文化も激しく変遷して来ました。
今からさらに40年後、果たして『松茸の土瓶蒸し』なる料理は存在してるんでしょうか
それとも、文献にしか残らない料理になってしまうんでしょうか
このまま消え去ってしまうには余りに惜しい料理な気がします、松茸の土瓶蒸し。




・・・唐突に思ったんですが。
タイトル含め、今回、記事中に「土瓶」という単語はいくつ使っただろう・・・?


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コメント (4)
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