千葉ロッテの唐川は凄い

いやいや凄いピッチャーが現れましたね。千葉ロッテの高卒ルーキーの唐川侑己が、初登板初勝利を上げたソフトバンク戦に続いて、５月３日に首位の埼玉西武を相手に３安打１失点、１０奪三振無四球のプロ初完投と鮮烈なデビューを飾りました。試合をＴＶで観ていたのですが、ゆったりとしたフォームは大物感いっぱいで、ロッテは地元出身（成田）のスーパースター候補をよく獲りました。（ドラフトは広島と抽選だった）

唐川は中田翔・佐藤由規と並んで超高校級のＢＩＧ３と称されていたので、「彗星の如く」という表現は適切ではありませんが、３年生時に甲子園に出ていないこともあり、他の２人に比べるとそれほど騒がれてはいませんでした。かの小関順二センセイも、近著の中で「佐藤由（ヤクルト）のように、始動時に捻りのある投手は左肩の早い開きを呼び、ストレートの抜け球につながるので、右打者の内角に腕を振ってストレートを投げ込めない。唐川にはその悪弊がないし、他にも特別悪いクセがみられないので、３年目の１軍定着が可能になる」と同期の佐藤と比較しても、一線に出てくるのが早いであろうことを予想していましたが、それにしてもこんなに早く出てくるとは・・・。

フォームは埼玉西武の渡辺久信監督や元中日のサウスポー今中慎二の全盛期を思わせるほど、ヒジの使い方が抜群に素晴らしく官能的ですらあります。ムチのようにしなる腕から繰り出されるストレートはスピードガン表示以上の伸びがありそうです。それに唐川が優秀なのはコントロールがよいことで、これは球数が少なく野手のリズムも呼び込めるので、貯金の多いエースになれると思われます。

これと逆なのが松坂です。たしかに彼は好投手ですが、凄い凄いといわれつつも、遂に今のダルのような絶対的な存在にはなれませんでした。それは制球力のなさに原因があります。日本でもデビュー年と日本最終年以外は、負け数が多くチームに貯金をもたらせないエースでしたし、球数制限のあるメジャーでは尚更苦労していて、イマイチ欲求不満が残る内容に終始しています。周辺経済効果以外の素のピッチング内容が獲得価格に見合っているとは思えません。だから日本製のピッチャーのクオリティーはこんなもんじゃないよと、本当は今のダルをすぐにメジャーに行かせたいんですが、本人にその気がないようなので、９年後の唐川に期待しましょうか。

あらためて現在の一線級である若いピッチャーたちの、高校時代の映像を見ると、結構興味深いものがあります。松坂のこれは春の選抜時なので、フォームがちょっと幼い感じです。涌井は今の方が腕が下がってスリークオーター気味ですが、この時は力感溢れる本格派の風情です。ダルのピッチングテンポは変わっていませんね。マー君は、ハンカチ王子と投げ合った３年次よりも数段良かったと専門家筋が口を揃える２年生夏と比べても、現在の洗練ぶりは成長の速さを感じます。佐藤由のこれは、たしかに決め球はほとんど全部外の変化球です。プロはこれを振りませんから・・・。でもフォームに矯正すべきポイントがいくつもあって150キロを投げられるのですから、大した素質だというべきなんでしょう。そして唐川ですが、今とほとんど変わっていません。２年春なのに、このフォームの完成度は！　パリーグは本当に若いピッチャーの台頭が著しいですね。

プロ野球中継というものは投手を鑑賞するためのものであるという持論を、何度かこのブログにも書いていますが、ＴＶ朝日の社長が先日の会見で「巨人戦を減らしてパリーグ中継を増やすことを検討」と語っていたそうです。実に正解だと思いますよ。