音次郎の夏炉冬扇

思ふこと考えること感じることを、徒然なるままに綴ります。

留まるリスク

2010-03-13 12:49:54 | スポーツ
昨晩なぜかサッカー日本代表監督に大分トリニータ前監督のポポヴィッチが電撃就任した夢を見ました。「おおっ、遂にやってくれたか!」と喜んだのですが・・・。 正夢にはならないのでしょうかねえ。

犬飼会長は先の韓国戦後「リスクが大きいので変えない方がいいと思っている」と解任を否定しましたが、代えないリスクよりも留まるリスクの方が大きいんじゃないかと考えている人は多い。それにしても未だに諦めきれないのは、この期に及んでも監督交代を「出来ないこと」だと思えないからです。日本サッカー協会および犬飼会長は、過去に監督人事に関して重大な決断をしています。

フランスW杯最終予選は、次回が日韓大会ですから何が何でも本大会出場を果たさねばなりませんでしたが、日本代表は大苦戦。1戦目に勝って次にUAEとのアウェー戦を引き分けたところまではいいとして、ホームの韓国戦に痛い逆転負け、そして4戦目の格下カザフスタンに引き分けたところで加茂監督はスパッと解任です。コーチから急遽昇格して指揮をとった岡田監督で、アウェーの韓国戦に勝ったのはもちろんですが、ライバルUAEが最下位ウズベキスタンによもやの引き分けで勝ち点1にとどまったのが大きかった。これは日本が大きな決断をして流れを変えたことによって、相手がコケてくれたという面があるように思います。

加茂監督はネルシーニョ騒動でもわかるように、だいぶ前から技術委員会には見切られており、続投は消極的なものではありました。それでも日産や横浜Fで3度の天皇杯に輝く日本人屈指の名将とされ、有力な弟子もたくさんいる大物でした。一方でジャージがトレードマークの岡ちゃんは、今でこそ無表情で重々しさを装っていますが、元は大阪の気さくな兄ちゃんです。兄貴分コーチというより、当時の代表ではいじられキャラとしてカズなんかによくからかわれていたそうです。(その後、ワールドカップ行きを目前にして岡ちゃんから「カズ、三浦カズ」と外されるなんて夢想だにしなかったでしょうが)もちろん監督なんて未経験です。それだけ当時の協会は必死だったんでしょう。なりふり構わず手を打ったわけです。そこには「今から代えるリスクは・・・」とか「今さら遅い」なんて寝言をいう人はいなかったんですね。


抜擢してくれた川淵サンに遠慮しているのか、今回は優柔不断な日本サッカー協会の犬飼会長ですが、過去には浦和レッズの社長として英断を下したことがあります。彼は浦和レッズをビッグクラブに育て上げた功績によって現在の地位があるわけですが、慶応―三菱自動車というキャリアの持ち主でプレーヤー経験もあります。レッズを任された当時は、親会社は例のリコール隠しでガタガタだった時期です。当然クルマも売れずに業績は最悪だったのにもかかわらず予算を引っ張ってくる敏腕さで、おんぼろクラブハウスを建て替えたり、諸々の改革を断行し、浦和レッズを強豪チームに変貌させました。とりわけその手腕が評価されたのは、監督人事においてです。

当時、浦和レッズの指揮をとっていたのはハンス・オフトでした。彼は初の外国人監督として、ドーハの悲劇で夢潰えるも日本代表をW杯目前まで導いたことで知られています。このオフト監督のもと、レッズはナビスコカップで初のタイトルを獲得するなど上昇基調のように見えました。しかし、犬飼社長はあえてオフトの首を切り、後任にギド・ブッフバルトを招聘します。ドイツの名ディフェンダーとして鳴らしたギドは、現役晩年をレッズで過ごしたOBでしたが、この時点では監督経験はなかった。

このときの犬飼社長のインタビューを、たしか雑誌「NUMBER」で読んだのを鮮明に覚えています。発言は極めて明快で、「レッズはこのままではダメだ。もっと上に行くためには攻撃的なサッカーをしなくてはならない。だから監督を替えるのだ」と。さらに、実績あるベテラン監督を交代させることへの批判があることは承知していると前置きしたうえで、「ダメだったら私が全責任をとる!」とぶちあげていたのです。オファーを受けたギドからも、チェンジの理由をしつこく問われたそうです。オフトは結果を出していないわけではありませんから、自分もそんな憂き目にあうのかと確認するのは当然です。それに対しても、チームづくりのコンセプトを誠実に説明し、目指す方向性を熱く訴求したといいます。

監督交代を断行した浦和は、ギド監督の3年間で2位→2位ときて06年に悲願のリーグ制覇。天皇杯も05、06年と連覇するなどの結果を残し、黄金期を迎えることになりました。ただ、新人監督としてのギドが指導力・采配に卓越した手腕を持っていたとは云い難いです。もちろん現役時代から人望厚かったのは事実ですが、監督として有能だったかはわかりません。スペクタクルなサッカーというよりも力業でしたしね。しかしポイントは、監督を替えたことでフロントが真剣さを内外に示し、自らを追い込んだことにあります。だからこそ闘莉王や阿部やワシントンなどの有力選手を遮二無二補強し、全力でバックアップしたから強くなったのでしょう。これも監督交代の効用だと思います。

成功体験があるのになんでやらないかなあ。

色んなしがらみがあるのかもしれませんが、日本サッカーにとって何がベストなのかだけを、もう一度協会首脳は考えてほしいものです。


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