音次郎の夏炉冬扇

思ふこと考えること感じることを、徒然なるままに綴ります。

サッカー報道の偏向について

2010-03-11 22:33:51 | スポーツ
バーレーン戦での本田△の2点目で、なんとなくずるずると岡田監督のままW杯になだれ込みそうな雰囲気です。でもこの1ヶ月の動きを見ていると、普段は漠然としていたものがくっきりしてくることがあります。その一つは大マスコミの偏向報道です。

東アジア大会惨敗の遥か前に、『0勝3敗』というわかりやすいタイトルのムックが辰巳出版から出されて、私はつい買って読んでいたのですが、杉山茂樹氏の『日本サッカー偏差値52』と並べて売っている書店もありました。岡田更迭を唱えているのは専門誌系がほとんどですが、フリーのサッカーライター達の危機感は相当なものです。拠って立つ市場の盛り下がりが甚だしく、これでワールドカップがボロ負けで終わったら、本当に日本サッカー界は沈んじゃうかもしれない。必然的に彼らはおまんまの食い上げになってしまうから必死です。

一方、新聞というメディアは世論に鈍感です。雑誌は部数に一喜一憂し、スポーツ紙も駅売りの要素が小さくはありませんが、一般紙はほとんどが宅配制度ゆえに記事の反響があろうがなかろうが、部数に影響しません。日本サッカーが沈没しようがしまいが新聞記者の給料は変わらないのです。もっともそれは一昔前の話で、現在の新聞社は広告の減少などで深刻な経営状況にあるのですが。

2週間ほど前の『サッカーマガジン』という専門週刊誌で、岡田続投の是非を問う特集が組まれましたが、これがある意味面白いものになっていました。サッカーの世界ではスター記者と目される、日経の武智幸徳氏と朝日の潮智史氏という編集委員級の大物二人による「岡田擁護対談」は噴飯モノで、歯切れが悪いことこのうえない。続投支持の論拠としては、ひたすら「too late」 と「後任がいない」の繰り返し。本当にそう思ってんの? と訊いてみたい気がしました。さらに「日本代表サッカー番記者による緊急アンケート」という企画で、主要約30紙の担当が顔写真をさらして「岡田続投にYES or NO」の回答をしているのですが、なんと、ほとんどの新聞記者が「YES」にマルをつけている! 立ち読みの記憶ですが、わずか産経、東京、スポ二チ、東スポの4紙のみが「NO」でした。(産経をはじめとして、この顔ぶれは勇気があるというのとも違うような気がしますが・・・)これはかなり一般人の感覚とズレがあるのではないでしょうか。

ネット世論と新聞論調がまるで違っているのは先の検察リーク報道にそっくりで、似たような構図も透けて見えてきます。メジャー媒体の社員記者たちは、日本サッカー協会に睨まれて取材しにくくなるのを怖れて、岡田監督批判を封印しているのでしょう。先の武智・潮クラスにもなれば、川淵前会長や犬飼会長などの最高首脳にお呼ばれして、どうせ普段から高級フランス料理店かなんかで「意見交換」しているんでしょ。潮記者に至っては「監督 岡田武史」なんてヨイショ本も上梓してますから批判できるはずがない。ダラ幹たちと気脈を通じている大マスコミ記者のペン先は、結果的に選手に向かうことになります。先の韓国戦の翌日の日経スポ面において、武智記者は「地金の差が出た」などと評して、あくまで選手の実力と気迫の差であると嘆いてみせています。この人も選手に厳しい傾向があります。

ワールドカップの舞台に立つのは、フットボーラーとして最高の栄誉でしょう。有力選手にとっては品評会の場でもあるそれは、自分を高く売るチャンスでもあります。しかし、代表招集による日当は微々たるもので経済的には報われませんし、万が一負傷してクラブの試合に出られなくなってもそれは自己責任となります。一方で、代表監督は独裁者でありながらノルマらしいものもなく、結果が出なくても責任は問われず高給をもらうという。トルシエのとき、事あるごとに新聞が「解任、解任」と大騒ぎしていたのとはエライ違いで、大手各紙は監督人事に対して沈黙を守っています。これは不公平ではなかろうかと思うのですよ。

先のエントリーで「サッカーは監督が全て」という杉山学派の説を紹介しましたが、私もそれが全て正しいと考えているわけではありません。どこかでプレーヤーの能動性や才覚、意地に期待しているところがあるのです。サッカー通のkappaさんがコメントされていたように、「フットボールはシステムでやるものではない」というのもその通りでしょう。でもヘボ監督に生殺与奪を握られ、間違った(適切でない)条件設定で不毛な走りを強いられ、おまけに負けたら「決定力不足、フィジカルの差」などと叩かれる今の日本代表は気の毒です。監督が強者で選手が弱者なのですから。

日本代表は弱くなっていると、岡田解任論を唱えるのに躊躇しないセルジオ越後氏は唯一信用できますが、新聞には相当バイアスがかかっているということです。




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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2010-06-26 00:05:22
結果論ですけどあなたの心配はまったくの杞憂でしたねwwご苦労様です^^
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Unknown (Unknown)
2010-07-16 13:24:34
揶揄するつもりは毛頭ないのですが
南アWカップについての記事が皆無なのは
なぜですか?

奥田英朗氏然り。
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