つづき
「節分の声掛けは、どうする・・・」
みんな困っています。
横で雑巾がけをしながら聞いていた小坊主が、手を止めて、いきなり「鬼も内”にすれば”」のひと言”
「・・・・」「・・・・」
「それしか無いか」「今年はそれでいこう」の和尚の言に
寺の方針は決まりました、僧たちは、豆をいったり、甘酒をたいたり、準備は整いましたが、それだけでは収まりませんでした。
そのころ・・・鬼将軍はと、いえば
子の誕生祝いの行事も、行わず、姫と子のために、城の裏山にある「鬼神社」に通い、祈願詣での毎日です。
この神社は、鬼将軍の妹鬼が代々神主を務めており、すべての鬼たちを守る役割を担っています、全国にたくさんの「忍び鬼」を配下に置き、情報を集めと、鬼将軍の裏の仕事を、人知れず果たしている宮です。
さて、年に一度の大切な、節分の段取りの方は
集落の長老鬼たちが毎夜、お城(鬼が城)に集まって会議をしています。
「どの鬼連を、どの村に派遣」「この鬼連はこの寺」「あの連はあの宮に…」の相談です、
そうなんです、集落ごとに「鬼連」があって、昔から人間たちとのあいだに、年に一度の暗黙の了解?と言うか、契約まではいかない、「約束ごと」が、あっての、節分祭だったのです。
当日になりました、日暮れすぐの頃から、
「鬼は外」で、豆をぶつけられ、追い出された鬼達が、この寺
に集まりだしたのです、
例年は、鬼村に帰るのには夜道を半日掛けで歩いていたのに・・・「今年はあの寺で集まり泊まろう」
「福は内 鬼も内」の寺の噂は、町の近隣では、すっかり広がっていたのです。
当然、寺は大混乱””大変な騒ぎになります。
ついには、宴会が始まるしまつに、酒とにぎやかな事が好きな和尚は、鬼たちと一緒になって大盛り上がりです、
酒とタクワン漬け、煎り豆は、それぞれが、家々での頂き物で充分にありますが、お坊さんたちは、酒の肴づくりに追われて気の毒”なことでした。
節分の夜が明けると鬼達は三々五々山に帰って行きます、「来年は料理も持ち込みで、来ますので、よろしく」と、勝手に約束をして・・・
そして入れ替わるように、そんなことは知らない、鬼将軍が、少数の共を連れて、嫁子の迎えに来ました、荷車には、お礼にと、いっぱいの食料を積んであります。
昨夜の出来事を、和尚から聞いた、鬼将軍は、「来年からは私たちも来させて下さい、費用は全部おまかせ下さい」
「我々の先祖、夜叉は元々は、釈迦に仕える者でもあり・・・」
と、寺への、臣従を誓い、嫁子を連れ、別れを惜しむように帰っていきました、積んできた、米俵をおろし、嫁鬼を乗せて・・
こんな理由で、毎年この寺での節分祭は、
「福は内、鬼も内」に、決まったのでした。
頃は「天正」信長が台頭してきた時代の、お話です。
おわり
全国に「鬼は内、福も内」のところ、たくさんありますが、
こんな事があったんです?ね、キット。
おことわり・・・この童話、後日写真挿入、差し替えします、