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A.バッティストーニ+東京フィル=伊福部昭「シンフォニア・タプカーラ」他

2018-05-04 | 音楽 - 伊福部昭
 先日買ったCDを聴いた.A.バッティストーニ指揮+東京フィルハーモニー交響楽団による,伊福部昭「シンフォニア・タプカーラ」ほか.

 全編とも極めて遅いテンポを採り,スコアを丁寧に再現した演奏であるが,その慎重な足取りが裏目に出て,音楽の流れがとかく疎かである.とくに,内声パートが終始うるさく,下手なアナリーゼを聴かされているような気分で,この曲が湛える北の大地の広々とした情景や,それを讃仰する人々の歌と踊りがまったく見えてこないのだ.東京フィルは安定した技術を聴かせるものの,ところどころで管打楽器セクションに譜読みのエラーあり.また,ラスト近くのピッコロの見せ場では,16分音符に勝手なレガートを付けており,ひたすらなオスティナートで駆け抜ける本来のニュアンスが殺されているのは残念.録音は鮮明であるが,各楽器群に近接しており,残響も少ないため,全体的な雰囲気に欠ける.
 併録の「新世界交響曲」についても,同様の感想.なお,終楽章コーダにシンバルの一撃が追加されているが,これは絶対に要らない.

 それにしても,『BEYOND THE STANDARD』と題されたこのシリーズ,クラシックのスタンダードナンバーと日本の作曲家によるオーケストラ曲をカップリングするものらしいが,いったいどのような購入者層を想定しているのだろう?日本の音楽を取り上げてほかとの差別化を図りたいが,それでは売れないので誰でも知っているような名曲をくっつけた,というような歯切れの悪さを感じるといえば邪推だろうか(ブックレット中の解説者もドヴォジャークと伊福部昭の共通点を何とかこじ付けようと躍起になっており,読んでいて気の毒なほどだ).実際,このアルバムの尻にも伊福部の「SF交響ファンタジー」からゴジラのメロディのみを抜粋して収録しており,聴き手はどうせ「タプカーラ」なんか知らねえだろうから,ゴジラでも入れておけば喜ぶだろう,という浅はかな発想が見え透いてしまうのだ.


ドヴォルザーク:「新世界より」/伊福部昭: シンフォニア・タプカーラ (UHQCD)
アンドレア・バッティストーニ (指揮),
東京フィルハーモニー交響楽団,
日本コロムビア,COCQ-85414

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