ケニチのブログ

ケニチが日々のことを綴っています

窪薗晴夫「通じない日本語」

2019-05-21 | 日本語・言葉
 先日買った本を読み終えた.窪薗晴夫・著『通じない日本語』.

 歴史的にも複数の源流を持ち,たえず混血と分裂を続けてきた日本語という言語の多様さを,世代や地域の差によってどれほど「通じない」ものであるかという視点で語る.このごろ新出した若者ことばや発音・イントネーションの話題,外国語との比較など,その内容はキャッチーかつ豊富であるが,著者の関心はもっぱら単語一つ一つの分析へ向いており,文法あるいは言い回しといった,日本語の運用面への言及が少ないのは残念.とくに,この十年か二十年ほどで急速に起こっている日本語表現の「曖昧化」は,ことば自体の誤用というよりは,それを操る精神性の問題であり,このことはそろそろ一つの研究テーマとして,体系立てて点検・批評されるべき時機を迎えていると僕は感じるのだ.


窪薗晴夫: 通じない日本語 世代差・地域差からみる言葉の不思議
平凡社,2017,
ISBN978-4-582-85861-7
コメント (2)
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中西進「ひらがなでよめばわかる日本語」

2019-03-27 | 日本語・言葉
 先日買った本を読み終えた.中西進・著『ひらがなでよめばわかる日本語』.

 私たちの日本語に現存する「やまとことば」の音韻から,ほんらい似た意味だった語群を取り上げ,神話と稲作に親しんだ祖先の生活や精神性を読み解く.その内容は網羅的で,なかには現代人にとって意外なものを含んでいるが,肝心の分析が多分に推測に頼っており,到底研究と呼べる代物ではない.また,現在の日本語が,さまざまな文化を節操なく採り入れた「混血語」であることにこそ魅力を感じる僕としては,著者が各トピックでいちいち「やまとことば」を礼賛し復興を呼びかけるのが心底うっとうしく,却って興醒めしてしまった.


中西進: ひらがなでよめばわかる日本語
新潮社,2008,
ISBN978-4-10-134851-3
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劇団いがいと女子「いがいと女子」

2019-02-10 | 日本語・言葉
 夜,青少年交流プラザにて行なわれた,劇団いがいと女子の公演『いがいと女子』を観た.短編・中編ともにシリアスな題材を採りながらも,明るくたあいないラストへ導く笑いのステージ.


劇団いがいと女子: いがいと女子
【日時】2019.2.10 18:30-
【場所】青少年交流プラザ ユースクエア
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梯久美子「原民喜 死と愛と孤独の肖像」

2019-02-08 | 日本語・言葉
 先日買った本を読み終えた.梯久美子・著『原民喜 死と愛と孤独の肖像』.

 自らの体験を詩と小説に投影し続けた民喜の一連の創作を丹念に追いながら,その私生活および思想のありようを読み解く.人付き合いが極端に下手で,近親者との死別が立て続いた彼の生涯は孤独そのものだったが,1945年広島で被爆して理不尽な虐殺を目の当たりにしたことで,ようやく生に執着を持つようになったのだという.いっぽう,彼のストイックな人生にも,病弱だった妻の入院先に足繁く見舞った話や,晩年に知り合った若いタイピストの女性と遠藤周作との不思議な三角関係など,密やかながらも幸福な時期があったことが伺われる.とくに,後者に関しては著者は今も健在だという彼女を訪問しており,そのインタビューでの受答えがまた,民喜への懐かしさと深い理解に満ちており胸を打つ.


梯久美子: 原民喜 死と愛と孤独の肖像
岩波書店,2018,
ISBN 978-4-00-431727-2
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山口仲美「犬はびよと鳴いていた」

2019-01-17 | 日本語・言葉
 先日買った本を読み終えた.山口仲美・著『犬は「びよ」と鳴いていた』.

 日本語の特徴であり,かつ魅力の一つである豊富なオノマトペのボキャブラリーについて,近代以前のみならず以後の歴史的な用法および変遷の観点から詳述したルポルタージュ.そこから受ける印象としては,私たち日本人の擬態・擬音への感覚は古今和歌集の時代にすでにほとんど確立しており,揺るぎないという意外なものである.いっぽう,後半の動物の鳴き声論は,著者が自身のマニアックな好奇心を暴走させただけの,内容の煩雑さと読みにくさ.


山口仲美: 犬は「びよ」と鳴いていた ―日本語は擬音語・擬態語が面白い―
光文社,ISBN 978-4-334-03156-5
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