数学教師の書斎

自分が一番落ち着く時間、それは書斎の椅子に座って、机に向かう一時です。

大学の微積分の教科書から(2)

2020-09-24 17:28:42 | 数学 教育
 受験生を教えていて、時々思うことは、高校でどのように教えてもらったのかということです。予備校の講師の中には、受験生ができないのは、高校での教え方に問題があるというニュアンスで話す人がいたりしますが、多くの場合は、生徒の学び方に問題があるのが、現実のように感じます。生徒がきちんと聞いていないとか、それを先生のせいにしてもらっても困るのですが。いずれにしろ、私が教える時には、高校の教科書の記述に即して、わかりにくいところは掘り下げてわかるように詳しく説明するしかないのですが、合成関数の微分法の証明などでも、教える時には、こちらも勉強することで、自分の勉強にもなります。そんな際に、大学の微積分の教科書を参考にしますが、たくさん出版されている微積分の本でも記述の仕方にいろいろ工夫や違いを見つけることは、ある意味楽しいことでもあります。最近買った本でスチュアートの本で以下があります。
3巻の本ですが、その第2巻がこの本です。「微積分の応用」がテーマになっていますが、受験生や高校生の微積分を教えるのに教員として参考になる記述がたくさんあるようです。もちろん全部に目を通していませんが、例えば、逆関数の記述などは、高校生や受験生がきちんと理解していないところですが、高校の教科書に記述もわかりにくかったりする中で、参考書も問題を解くための記述が多く、教えにくいところかもしれません。逆関数の説明から、逆関数の微分法の説明や逆三角関数、双曲線関数とその逆関数の積分、積分に関するヤングの不等式など、受験生にも問題を解く中で言及したいことがあります。

 逆関数に関する説明は、このスチュアートの本は高校の教科書風に記述されていて助かります。こんな記述です。
 1対1の関数fの逆関数の求め方
ステップ1 y=f(x)と書く.
ステップ2 可能ならばこの方程式をxについて解き、yで表す.
ステップ3 f^{-1}をxの関数として表すために、xとyを入れ替えてy=f^{-1}(x)とする。
これなどは、高校の教科書より丁寧な記述です。

日本の大学の微積分の教科書などには、あまりこういう記述は見られません。
ラングのこの教科書も同じように親切な記述で、ゆったりとしたアメリカの教育の雰囲気が感じられます。このラングの本は、高校の授業でも生徒に読ませたこともあり、高校生でも十分に読めると思います。問題を解くための授業よりは、数学を教える授業の中で問題演習も含めて、数学を教えたいと高校ではいつも思っていましたが。。。。

 私が大学に入学した時の1回生の時の数学1(微積分)の授業は週2コマで、一コマ90分の授業でしたが、使ったっ教科書は、
この本の初版本でした。先生は塹江誠夫先生で、友人が最近書いたのでという理由でこの本を使われました。教科書の初めから進めるのではなく、終わりの方の付録の部分から厳密に説明をしながらの授業でした。本に関しては、のちに読み直してみても、結構よくまとまっていて、もっと勉強しておくのだったと後悔しています。当時、京大の教養部の数学1(微積分)では次の笠原先生の本がたくさん使われていました。
カバーはなくしてしまいましたが、今でも座右の書です。もう45年になりますが、いまだにアマゾンの書評を見ても評判にいい本です。lim {θ→0}sinθ/θ=1の証明では、面積を使わない方法で書かれていて、この証明は、一松先生の「解析学序説」と難波誠先生の「微分積分学」くらいしか書かれてないので、貴重でもあります。
 今は上製本ではなく簡易な製本になっていますが、写真のように上製本だと長持ちします。簡易な製本では背表紙のところから、糊が乾燥して割れて、バラバラになりかねません。以前紹介した、滝沢先生の本も簡易な製本の方は糊が乾燥して、割れて来て何度も木工ボンドで修理しながら読んでいます。同じように上製本で内容も格調が高い本として、溝畑先生の以下の本も座右の書として使っています。

読み返すたびに新しい感覚になる本で、双曲線関数の記述など素晴らしいと思いました。また、e^xのテーラー展開も部分積分を使った説明で、高校生にも使える内容で、これを利用して、e^xのテーラー展開を示して、いろいろ高校生にも話ができます。

 また去年買った本で、小林昭七先生の
この本もゆったりと書かれてあり、教師が参考にする本としては、何度も読み返したい本です。コーシーの平均値の定理とその応用としての、ロピタルの定理の紹介など参考にしています。微積分を教える中で、いろいろな教科書も参考にしながら教える中で毎回なにがしらの発見や面白みを見つけるのが楽しみの一つでもあり、そんな気持ちは大切にしたいものです。

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