朝刊の日経新聞の「私の履歴書」はいつも目を通すコーナーですが、執筆者は以前は私の父親と同じくらいの年代の人が多かったのですが、最近はどうも自分の年代に近い人の記事が多くなってきたように感じて、自らの歳を考えることになります。
思い出すと、友人が私のために、昭和30年代?の数学者「岡潔」のものを図書館で調べて、コピーを送ってきてくれたこともあります。また、今まで読んで記憶に残っている印象的な人では、物理学者の米沢富美子さんや佐藤文隆さん、益川利英さんがあります。
それまで知らなかった人で、このコーナーを読むことで、その著作を読むことになり親しみを覚える人も少なくありません。岡潔は高校時代に「春宵十話」などで知っていましたが、佐藤文隆さんは同じく高校時代に講談社のブルーバックスで読んで知っていた。米沢富美子さんは女性の物理学者として、その名を聞いていましたが、佐藤さんと同じく、湯川秀樹に憧れて京大を目指し、物理を専攻したそんな心意気に感動を覚えたものでした。偉大な科学者の生い立ちや学びの履歴を読むにつけて、勇気をもらえるのが好きです。益川さんにも同じような気持ちを抱いていました。今の受験生と違って、普通の公立中学、公立高校から大学受験をしていることなど、自分とも重なる中学高校時代にも共感を覚えるのでした。その意味では今の受験生は東大京大など私学の中高一貫校出身者が多く占める状況からは違和感があります。
そんな日経の「私の履歴書」の中で、美術史研究家の「辻 惟雄」を初めて知りましたが、その書かれていく文章が素朴で読みやすく、気がつけば毎朝楽しみにしている自分がありました。その内容に関しては、実は
の本に書かれているのですが、その時は知らずに後で、この本も読むことになりました。「辻 惟雄」は若い時に書かれた
が有名で、この本で伊藤若冲が今のような人気が出たとも言われる本ですが。この本は私の高校時代に出版された本ですが、装丁も素晴らしく、装丁だけでも価値があると思われるほどですが、当時の値段は1000円です。この本を読み始めたのですが、この本の文庫版があり、それが
ですが、この文庫版では写真もカラーがあり、若干写真も多いので、こちらを読むことにしました。この本で紹介されている「曾我蕭白」が実は私の住んでいる三重の松阪と縁があり、市内の朝田町(あさだちょう)の朝田寺(ちょうでんじ)に収めれれている唐獅子図壁貼付
は有名で、昨年一般公開された際にも地元の利を活かして、しっかり観ることが出来ました。また市内の継松寺に収められている雪山童子図
も有名で、そんな名画が地元にあることも、この本を通して教えていただきました。
辻さんは、アメリカのプリンストン大学時代に数学者の志村五郎とも交流があり、その記述も上記の「奇想の発見」にはありますが、日経の「私の履歴書」にはその記述はなかったようですが、短い記述にも志村五郎先生の人となりが伝わって来ます。確かに、数学者の志村五郎は古美術にも審美眼があり、蒐集されていたようです。志村五郎を知っている者からすると、思わず感心した箇所でもあり、こんなところでも数学者との関わりもあるのかと関心しました。
私自身を思い出すに、小学校の頃、流行っていた切手集めで、浮世絵に関心があり、高校でも江戸の文化史にも興味を覚えたこともあり、江戸時代の日本画の説明にも素直に聞けるように読めるのですが、この本を通して、自分の学校時代の思い出を掘り起こしてもらい、そこから新鮮なあの頃の感性を思い出すきっかけになったと思っています。そんな経験を本を通してもらえるのも一つの楽しみでもあります。最近は、高校から大学時代に書かれた本を渉猟しながら今の時代からの時代考証をその本を通して自分の一つの楽しみにしています。それも一つの読書の楽しみ方かなと最近は思っています。