数学教師の書斎

自分が一番落ち着く時間、それは書斎の椅子に座って、机に向かう一時です。

数学の世界史

2024-09-14 14:15:06 | 日記
 著者の数学者の加藤先生の本は,啓蒙書もこれまでもたくさん執筆されていて,総じて,読みやすいというのが正直な感想です.今回の「数学の世界史」という表題からして,意識的な内容になっています.具体的には,「はじめに」にその意図が書かれておられますので,読んでもらえればと思います.古代の数学史的な内容に関しては,これまでにも,訳本ではありますが,
があり,そこでの内容と当然重複するところはありますが,今回は翻訳本ではないので,加藤先生の主張がはっきりしています.内容に関しては,数学的な部分では,自分でも確認しながら読んでいくと面白く感じられます.その分,読むスピードは遅くなりますが.
 上の翻訳本の著者は,世界的に有名な数学者ですが,私も学生時代に手に取った本,
は世界的に有名な代数の本ですが,今でも,推薦される本でもありますね.フィールズ賞を受賞された森重文先生も,大学の1回生の頃,ストで授業がない時に,この本を読破されたそうです.
 ファン・デル・ヴェルデンには,以前にも

という古代の数学史ともいえる著作がありますが,これは加藤先生の翻訳ではなく,上述の「古代文明の数学」よりも20年ほど前に翻訳本が出版されていますが,世界的に読まれている本として,目を通しておきたい本の一つです.どちらも加藤先生の今回の「数学の世界史」を読んでから,それらを読んでも面白いかとも思えます.
 高校生でも,公式の証明等,考えながら読めるところもあるので,高校の先生も生徒に紹介してあげて欲しいです.高校の先生からの,受験ではない数学の本の紹介は生徒が,特に意欲的な生徒にとっては,目を輝かせてくる瞬間でもあります.残念ながら,私の高校時代では,そんな数学書を紹介してもらった記憶は全くなく,そのことが私の教員生活で反面教師の役割をはたしていて,積極的に生徒には紹介していきました.こういうところに,本質的な教師の役割の一面があると思います.そのためには,教師も日頃から研鑽をしないとそれはできません.総じて,私の高校時代の数学教師や数学の授業は,私にとっては,反面教師でしかありませんでした.もっとも,担任で英語の先生にはその学問的な内容等は教科は違えども,尊敬に値するものでした.
 さて,「数学の世界史」の中で,「プラフマグプタ」の公式として,次の公式が紹介されています.
 円に内接する四角形の四つの辺長をa,b,c,dとし,その面積をSとするとき,次が成り立つ.
S=√(s-a)(s-b)(s-c)(s-d)
 (ただし,2s=a+b+c+d)
三角形の面積の公式のヘロンの公式は,以前は高校の教科書にも記述はありましたが,最近はなくなっていますが,それの四角形版ともいえる公式ですが,私もヘロンの公式を証明する場合のように,ノートに書いていきましたが,ヘロンの公式の証明よりは少し難しいのですが,生徒にはチャレンジして欲しい問題でもあります.計算力も必要ですが,こういう問題から計算力をつけるのも現実的な方法かとも思われます.ついでに,トレミーの公式などにも言及しておくことも意味があるかと思いました.