数学教師の書斎

自分が一番落ち着く時間、それは書斎の椅子に座って、机に向かう一時です。

受験生を教えながら2

2022-10-10 07:08:46 | 数学 教育
 先日の受験生への授業では、東大の入試問題を扱いました。内容は定積分に関する不等式の問題でした。定積分に関する不等式では、面積の比較により不等式を導くことがよくありますが、「定積分=面積」のイメージで高校の授業等でも解説されることは多いのですが、今回は定積分の値を近似するために、台形の面積を用いることが主眼でした。いわゆる台形公式です。これを意識できていれば簡単ですが、生徒に聞くと、現場の授業では、ただ問題を解くためだけに終始して、台形公式などは解説されていないようでした。曲線をどう近似するかから、シンプソンの公式なども話することで復習する機会には新鮮な内容として生徒には伝えられると思います。
 数値解析と言われる分野に関して、高校の数学IIIの範囲でも関連するところは少し教師側が意識すれば、見受けられます。例えば、方程式の解を近似するためのニュートン・ラフソン法、微分方程式の近似解を求めるルンゲ・クッタ法なども教師側が意識したいものです。
 次回は、数学IIIの微積分の応用として、大阪大学の入試問題で、eやπの無理数性の証明を完成させる問題を考えます。一つのテーマとして、解析数論の分野でしょうが、押さえておきたいところでもあります。一つの問題の中で、高校で習う色々な分野の復習にもなる、そしてそれがある数学のテーマを扱っているという観点からも大切に扱いたいそんな問題は教師側が意識すれば、入試問題の中にもたくさんあり、まさに宝庫でもあります。大学の先生がよく考えられた問題をただ解くだけでなく、背景までも考えることで、充実した数学の授業になると考えています。
 大学の3回生の時、初めて数値解析の講義で使ったのが当時担当されていた薮下信先生の「初等数値解析」でした。いまだによく利用させていただいています。

 また、数値解析についての解説やπの無理数性の証明に関しては、一松信先生の「解析学序説」

に意識して書かれていたり、初等的な証明の例が紹介されていています。この本は微積分の座右の書ともいうべき本です。また、πの無理数性の証明に関して
において、小平邦彦先生が紹介されて、それまで知らなかったとも書かれています。世界的な数学者でも専門でない分野では知らないことも多くあるので、高校生も高校の先生も素朴に色々調べる中で、興味ある問題も見つけられると思います。整数論では
は色々なところでお世話になっている世界的に有名な本ですね。これも参考になる本ですね。

受験生を教えながら

2022-10-04 15:22:54 | 数学 教育
 週一回、主に日曜の午前中に3時間ほど大学受験生を教えています。ちょうど昨年の11月以来、1年近くになります。色々忙しい高校生で、しかも遠くからお母さんに車で送ってもらって来るため、月に3回ほどしか来られませんが。
 東大志望の理系の受験生ですが、高校ではセンター試験対策くらいしか、対応してもらえないようで、東大受験に対応した内容でお願いしたいということでした。長く高校で教鞭をとっていたものの、東大受験生ばかりではないのが現状で、その中でも難関大学受験用に課外授業等も行って来たので、そのノウハウはあるので、引き受けることになりました。
 数学だけ教えれば東大に合格するわけでもないし、総合点で合否が決まるので、他の教科もそれなりに勉強をしないといけないので、そんなところも含めて教えているというのが実情です。色々なノウハウもある中で、ノウハウだけで、合格できるわけでもなく、そもそも勉強とはから始めて、色々なことを話しながら、さしずめ1対1のゼミのような雰囲気で教えています。そんな中から、今後は色々なトピックを紹介しながら、このブログでも紹介していきたいと思います。
 今日の夜もその生徒は来るのですが、先週の教えた内容から一つ紹介します。教えながらこちらも勉強になるのが、一つの楽しみでもあります。前回は三角関数と数学的帰納法などを問う問題で、九州大学の過去の入試問題を考えました。具体的には、チェビシェフの多項式の問題で、いくつかの性質を証明する問題でした。東大でも1990年代に出題されたこともあり、京大、東工大、都立大学でも過去に出題されていて、受験用の参考書などにも掲載されていることがあるような問題です。数学的には、第1種チェビシェフの多項式と第2種チェビシェフの多項式があり、お互いに関係があるのですが、数学の本で詳しく読んだことはなく、知っている本で言えば、
にチェビシェフの多項式について、その応用も含めたことが書かれています。この先生の本は読みやすく、とにかく易しく書かれているので、読みやすいです。易しく書くということは難しく、それを実践されているこの先生の本は浅学の私には助かります。過去のブログでも同じ先生の本として、
もあります。第1種チェビシェフの多項式と、そこから定義される第1種チェビシェフ曲線では、パラメータを消去することなど、高校数学でも受験問題などでも登場する内容で、それをもう少し発展させることで、終結式の話にも繋がることになり、流石に高校数学ではそこまでなかなか話はできませんが、教師としては勉強しておくと関連することなどが見えてきます。
 よく受験問題等で現れる共通解の問題などでは、二つの実数係数の代数方程式が共通解を持つ必要十分条件などを知っていれば、なぜそういう式変形をするのかも生徒に説明しやすくなると思います。また、生徒からの素朴な質問にも答えることができると思います。また、共通解の問題での式変形でも、違った視点からも考えられて、グレブナ基底を考えることにも発展させることができます。
 いずれにせよ、受験問題を考える中でも、あるいは、教科書の問題を教える中でも、教師の姿勢次第では、いくらでも自ら数学を学ぶことはできると思います。高校の数学の先生にはそんな想いも伝えたいと思います。
 今日はどんな展開になるか、ある意味楽しみでもある貴重な今日の夜の数学の授業、ゼミです。