谷村新司が亡くなって,少し年下の自分ではあるが,自分の死というものを身近に感じ,考えざるを得ない.他人事のように感じていた人の死について,その対象として自分を考えることが多くなってきた.
ちょうど受験生のころだったか,ラジオの深夜放送で,谷村新司とばんばひろふみの「天才秀才バカシリーズ」を聞きながら,一人馬鹿笑いをしていた自分,同じような経験を持たれた方も多いのではないでしょうか.
アリスというより,谷村新司という個性,語り口からの歌.一番印象的なのが「青春時代」と「チャンピオン」,ばんばんなら「イチゴ白書をもう一度」.
「青春時代」というタイトルから,森田公一とトップギャランが登場するのに違和感を常に感じていた自分,「イチゴ白書をもう一度」の歌詞の中の”授業をさぼって学生集会云々”での「授業」は大学では「講義」だろう?と荒井由実の作詞の軽薄さに白けていた自分.
そして「チャンピオン」の歌詞の意味,そこにはプロボクサーのカシアス内藤そのもののがうたわれていることに気が付いている人は少ないのでは.カシアス内藤は,黒人とのハーフのミドル級のボクサーで将来を嘱望された当時の一人です.このリングネームからも分かるように,モハメド・アリことカシアス・クレイをその目指すボクサースタイルとして,蝶のように舞い蜂のように刺すを目指していました.順調に戦績を積んでいったものの,本物のカシアスにはなれず,負けていくキャリア後半の姿を歌ったのが,この「チャンピオン」です.当時のカシアス内藤を知ってこそこの歌詞の意味が分かると思います.
カシアス内藤はその後引退して,今もボクシングに関わり,後進の指導にあたっていますが,一時,がんを患い,危ないと言われたようですが,今も健在だそうですが,まさか谷村新司が先に逝くとは,だれが想像したことでしょう.
こんな思いを巡らしていた最近,
を読みました.
小学校の4年生頃からですから,もう60年近く,ボクシングがずーっと好きで,大学でも最初ボクシング部のドアをノックしたものの,近視でだめだと言われ,あきらめたことも有りましたが,ボクシングへの思いは変わらず,たまにボクシング通に出会うと,我を忘れるくらいに饒舌にボクシングを語ってしまう自分です.
いつかボクシングに関して,じっくり書いてみたいと思うのですが.そしていつかボクシングで語り合いたいと思う人物としては,北野武,香川照之,片岡鶴太郎,ジョー小泉かな.
このモンスターこと井上尚弥は説明もいらないくらい,今やボクシング界では有名でPFPでも1位にランクされるくらいの選手ですが,私もまだ彼がデビューしたての頃から観ていますが,最初は田口良一との日本タイトル戦だと記憶しています.そこで思ったのは,井上選手ではなく,対戦相手の田口選手の打たれ強さというか,根性というかそんな姿でした.判定で井上選手は日本タイトルを奪取しましたが,田口選手ものちに世界チャンピオンになっていることでもその素質が伺い知れた一戦でもあります.
そんな井上選手と対戦してきて,当然敗者ではありますが,対戦相手へのインタビューとその後の様子を集めたのがこの本の内容です.観戦した人や評論家の話よりも対戦相手の話には当事者しか知りえない,感じ得ないボクシングの真髄が詰まっています.それをどこまで引き出すかは,筆者の技量ではありますが,それ以上にボクシングへの筆者の憧憬等が左右すると思います.
あくまでもノンフィクションとして記事の面白さを感じさせてくれるのが,この種のほんですが,これまでも
等も紹介してきましたが,この井上尚弥の本は今やPFPの一位にランクされる現役のボクサーであり,現在進行形での話でもあり,より臨場感もあります.
さらに,ドラマに近いくらいに印象的に表現されたものに,有名な
山際淳司の作品があります.野球通,ボクシング通にはたまらない本ですが,オタクという言葉で片付けられない読書感はたまりません.