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風立ちぬ
宮崎駿監督が実在する零戦の製作者・堀越二郎と
作家・堀辰雄を交えて描いた作品です。
注意・ネタバレありです。
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■夢と現実
はじめは少年・堀越二郎の「空を飛びたい」という
夢を描きます。
この作品でたびたび描かれますが、
【夢をかなえるというのは素敵なこと】
という明るい演出をしながらも、
どこか暗いイメージもついてまわります。
そして堀越二郎の夢にあらわれるカプローニ氏。
カプローニ氏は夢というものの素敵さ、と
現実というものをコミカルなシーン(笑)も交えて
教えてくれます。
二郎さんの夢は飛行機で空を飛ぶことでした。
しかし二郎さんは近眼で、その夢は叶いませんでした。
このあたりが夢と現実。
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■菜穂子
堀越二郎と菜穂子さんとのラブストーリー
も描かれますが・・・これが宮崎駿監督の美意識が
高いので、楽しめる基準はこれが合うかどうかだと
思います。
「白馬に乗った王子様」ですからね(笑)
あと声に庵野秀明を起用したことについてですが
そんなに悪くはありませんでした。
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「庵野カントク、こういう声で奥さんに甘えてる?」
と思えるシーンもあります(笑)
あと軽井沢のイメージはまんま堀辰雄です。
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もうなんといいますか風に飛ぶ帽子といい
キスの角度といい監督のシュミがでています。
『ハウルの動く城』にもありますが、少し
自分に酔っている感じでキザです。
それでいてイヤミじゃないのがすごい(笑)
二郎さんと菜穂子さんのシーンは美しいんですが
入り込めないところがあるのも事実です。
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例えば2人の結婚式はキレイなんですが同時に
「これはどこの風習??」といささか戸惑うのも
事実です(^-^;)
そして、あの葉っぱだかカイワレ(?)を食べてる
外人さん(スパイ・ゾルゲがモデル)が良い人だけど
ちょっとブキミ(笑)
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■零戦
もちろん零戦の開発も描かれます。
まず驚いたのは飛行機の輸送に牛を使っているところ
でした。
『風立ちぬ』の舞台の大正時代はまだ江戸時代の雰囲気
も残る牧歌的な時代、といいますかのどかな感じです。
こういう時代で最新鋭の零戦を作るのですから
驚きです。
この時代の人がドイツに留学するんですから
そりゃドイツの技術や文化に驚くのも無理は
ありません。
そして二郎さんが三菱に入社し頭角を現し
海軍からの要請で零戦作りを始めます。
軽くて丈夫なジュラルミンや沈頭鋲のEPなど
基本はおさえています。
ちなみに『となりのトトロ』でトトロとさつきが
立っているバス停のある場所は、中島飛行機が
三鷹から所沢まで牛で飛行機を運んだ道にある
そうです。
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そして零戦の試験飛行。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6d/f8/50b7eb025adbc42786c3027cb559a7b9.jpg)
ここで出てくる戦艦は「長門」「鳳翔」
だそうです。
おそらく涼宮ハルヒの長門有希の名前になった
戦艦です。
艦これファンは大喜びのシーンですね。
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■インテリ
インテリらしい理屈っぽいシーンもあります(笑)
例えば二郎さんと親友の本庄の会話。
おなかを空かした子供とお菓子「シベリア」と
お金についての話ですが、こういう話は
ガイナックスのデビュー作品『王立宇宙軍』にも
ありましたね。
そして、このときの問いが二郎さんと菜穂子さんの
結婚式の場面での伏線になっているんですよね。
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『風立ちぬ』に出てきたお金とお菓子の
「シベリア」と、お腹をすかせた子供の話。
『エヴァ』のガイナックスの『王立宇宙軍』にも
「王立宇宙軍がなければ3万人が飢え死にしない」
というセリフがあります。
わりと年配の人にはよくある考えのようで
例えば上の画像も同じようなことを言ってますが
これは新田たつお先生(静かなるドン)の
『隊務スリップ』からの引用です。
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インテリだから他の引用も豊富です。
まず作中にもあるトーマス・マンの『魔の山』
また二郎の上司・黒川家にある「天上大風」は
良寛禅師の書です。
そして二郎さんの夢にあらわれるカプローニさん
の言う「ベストを尽くしているかね?」は
堀田善衛の随筆「空の空なればこそ」からの
引用です。
ちなみに宮崎駿は堀田善衛を尊敬しており対談
までしました。
実は宮崎吾郎が堀田善衛の作品を映像化しようと
したところ難解すぎて上手くいかず、代わりに
映像化したのが『山賊の娘ローニャ』です。
■セリフ
よく宮崎駿は「説明セリフが少ない」と言われます。
宮崎駿「高畑勲さんはここでこういうセリフを入れるだろう
けど私はいれないよ」
とか言っているので、高畑勲に対抗(ライバル?)して
セリフを少なくしているのかもしれません(笑)
■「お前、聞いていないな」「はい」
宮崎駿は『風立ちぬ』の堀越二郎について、
「この人は制約を絶対のものと思っていない」
「世界がいろいろ動いていても、あまり関心を持たない人」
と設定しているので、あの軍部やスポンサーの意見を
さらりと流すような人にしているのでしょう。
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■会議は踊る
軽井沢のシーンで流れる音楽の題名『唯一度だけ』
これは映画『会議は踊る』で使われた音楽です。
元々「会議は踊る」とはウィーン会議についての格言
「会議は踊る、されど進まず」から引用されたものです。
宮崎駿は「この映画には会議のシーンは出さないと
決めていました。大事なことは喫茶店で決まるもの(笑)」
と発言しています、確かに『風立ちぬ』では重要なことは
喫茶店や定食屋で決まっていることが多い気がします。
もしかしたら「会議は踊る、されど進まず」だから
会議で大事なことが決まらないで、
喫茶店で大事なことが決まる、ようにしたのでしょう
かね(笑)