百合とオレンヂ城Ⅱ

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風立ちぬ

2013-08-05 22:52:00 | ジブリ 押井守 ハーモニー(伊藤計劃) サマーウォーズ フルメタルパニック

風立ちぬ


 宮崎駿監督が実在する零戦の製作者・堀越二郎と
作家・堀辰雄を交えて描いた作品です。



 
注意・ネタバレありです。




■夢と現実

 はじめは少年・堀越二郎の「空を飛びたい」という
夢を描きます。



 この作品でたびたび描かれますが、
【夢をかなえるというのは素敵なこと】
という明るい演出をしながらも、
どこか暗いイメージもついてまわります。


 そして堀越二郎の夢にあらわれるカプローニ氏。


 カプローニ氏は夢というものの素敵さ、と
現実というものをコミカルなシーン(笑)も交えて
教えてくれます。



 二郎さんの夢は飛行機で空を飛ぶことでした。
しかし二郎さんは近眼で、その夢は叶いませんでした。


 このあたりが夢と現実。






■菜穂子

 堀越二郎と菜穂子さんとのラブストーリー
も描かれますが・・・これが宮崎駿監督の美意識が
高いので、楽しめる基準はこれが合うかどうかだと
思います。


 「白馬に乗った王子様」ですからね(笑)


 あと声に庵野秀明を起用したことについてですが
そんなに悪くはありませんでした。







「庵野カントク、こういう声で奥さんに甘えてる?」
と思えるシーンもあります(笑)



 あと軽井沢のイメージはまんま堀辰雄です。







 もうなんといいますか風に飛ぶ帽子といい
キスの角度といい監督のシュミがでています。


 『ハウルの動く城』にもありますが、少し
自分に酔っている感じでキザです。


 それでいてイヤミじゃないのがすごい(笑)



 二郎さんと菜穂子さんのシーンは美しいんですが
入り込めないところがあるのも事実です。





 例えば2人の結婚式はキレイなんですが同時に
「これはどこの風習??」といささか戸惑うのも
事実です(^-^;)



 そして、あの葉っぱだかカイワレ(?)を食べてる
外人さん(スパイ・ゾルゲがモデル)が良い人だけど
ちょっとブキミ(笑)






■零戦

 もちろん零戦の開発も描かれます。


 まず驚いたのは飛行機の輸送に牛を使っているところ
でした。


 『風立ちぬ』の舞台の大正時代はまだ江戸時代の雰囲気
も残る牧歌的な時代、といいますかのどかな感じです。


 こういう時代で最新鋭の零戦を作るのですから
驚きです。


 この時代の人がドイツに留学するんですから
そりゃドイツの技術や文化に驚くのも無理は
ありません。



 そして二郎さんが三菱に入社し頭角を現し
海軍からの要請で零戦作りを始めます。


 軽くて丈夫なジュラルミンや沈頭鋲のEPなど
基本はおさえています。


 ちなみに『となりのトトロ』でトトロとさつきが
立っているバス停のある場所は、中島飛行機が
三鷹から所沢まで牛で飛行機を運んだ道にある
そうです。








 そして零戦の試験飛行。
 






 ここで出てくる戦艦は「長門」「鳳翔」
だそうです。


 おそらく涼宮ハルヒの長門有希の名前になった
戦艦です。


 艦これファンは大喜びのシーンですね。






■インテリ

 インテリらしい理屈っぽいシーンもあります(笑)


 例えば二郎さんと親友の本庄の会話。


 おなかを空かした子供とお菓子「シベリア」と
お金についての話ですが、こういう話は
ガイナックスのデビュー作品『王立宇宙軍』にも
ありましたね。


 そして、このときの問いが二郎さんと菜穂子さんの
結婚式の場面での伏線になっているんですよね。







 『風立ちぬ』に出てきたお金とお菓子の
「シベリア」と、お腹をすかせた子供の話。


 『エヴァ』のガイナックスの『王立宇宙軍』にも
「王立宇宙軍がなければ3万人が飢え死にしない」
というセリフがあります。


 わりと年配の人にはよくある考えのようで
例えば上の画像も同じようなことを言ってますが
これは新田たつお先生(静かなるドン)の
『隊務スリップ』からの引用です。







 インテリだから他の引用も豊富です。


 まず作中にもあるトーマス・マンの『魔の山』


 また二郎の上司・黒川家にある「天上大風」は
良寛禅師の書です。


 そして二郎さんの夢にあらわれるカプローニさん
の言う「ベストを尽くしているかね?」は
堀田善衛の随筆「空の空なればこそ」からの
引用です。


 ちなみに宮崎駿は堀田善衛を尊敬しており対談
までしました。


 実は宮崎吾郎が堀田善衛の作品を映像化しようと
したところ難解すぎて上手くいかず、代わりに
映像化したのが『山賊の娘ローニャ』です。





■セリフ

 よく宮崎駿は「説明セリフが少ない」と言われます。


 宮崎駿「高畑勲さんはここでこういうセリフを入れるだろう
けど私はいれないよ」


 とか言っているので、高畑勲に対抗(ライバル?)して
セリフを少なくしているのかもしれません(笑)





■「お前、聞いていないな」「はい」

 宮崎駿は『風立ちぬ』の堀越二郎について、


「この人は制約を絶対のものと思っていない」
「世界がいろいろ動いていても、あまり関心を持たない人」


と設定しているので、あの軍部やスポンサーの意見を
さらりと流すような人にしているのでしょう。






■会議は踊る

 軽井沢のシーンで流れる音楽の題名『唯一度だけ』
これは映画『会議は踊る』で使われた音楽です。


 元々「会議は踊る」とはウィーン会議についての格言
「会議は踊る、されど進まず」から引用されたものです。


 宮崎駿は「この映画には会議のシーンは出さないと
決めていました。大事なことは喫茶店で決まるもの(笑)」


 と発言しています、確かに『風立ちぬ』では重要なことは
喫茶店や定食屋で決まっていることが多い気がします。


 もしかしたら「会議は踊る、されど進まず」だから
会議で大事なことが決まらないで、
喫茶店で大事なことが決まる、ようにしたのでしょう
かね(笑)