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記憶の欠片あるいは幻影の中の真実。

与謝野晶子和歌 【火の鳥】その五

2014-05-27 08:00:33 | 〈薄紅の部屋 (和歌)〉
花さきぬ昔はてなき水色の世界にわれとありし白菊


なつかしき魔法使の春の雨わが思ひさへ桃色にする


おほらかに此処を楽土となす如し白木蓮の高き一もと


人の云ふ美くしさにはやや遠きつりがね草のゆらぐ夕風


如何にして児は生くべきぞ天地も頼しからず思ふこの頃


物云へば今も昔も淋しげに見らるる人の抱く火の鳥


若き日の心の騒ぐおもむきに桜ちるなり風立ちぬらし


雲に行き靄に隠れんここちしてなつかしきかな朧夜の路


悲しみの巡礼其処を此処を問ふ灰色の塔あまた立つ胸


わが庭の小米桜が薄より弱げになびく夕月夜かな

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