mardidupin

記憶の欠片あるいは幻影の中の真実。

《蜻蛉》

2014-09-09 07:47:37 | 〈薄紅の部屋 (和歌)〉
赤羅曳く朝日かがよふ花原の園のまほらに秋津群飛ぶ /左千夫

豆干す庭の筵に森の木のかげる夕に飛ぶ赤蜻蛉 /節

水泡よる汀に赤き蓼の穗に去りて又來るおはぐろ蜻蛉 /節

小波のさやさや來よる葦村の花にもつかぬ夕蜻蛉かも /節

火事あとの黒木のみだれ泥水の乱れしうへの赤蜻蛉かな /牧水

待つ人に裾野にあへり夕蜻蛉 /碧梧桐

事なくて見ゐる障子に赤とんぼかうべ動かす羽さへふるひ /茂吉

まもりゐのあかり障子にうつりたる蜻蛉は去りて何も来ぬかも /茂吉

赤蜻蛉風に吹かれて十あまりまがきのうちに渦巻を描く /晶子

ましろなる蕾ばかりの貝がらを蜻蛉羽ふりとびめぐるかな /晶子

胡桃とりつかれて草に寝てあれば赤とんぼ等が来てものをいふ /牧水

ふるさとの幼なじみを思ひ出し泣くもよかろと来る来るとんぼ /晶子

秋の来てとうしみとんぼ物思ふわが身のごとく細り行くかな /晶子

ただひとつ風にうかびてわが庭に秋の蜻蛉のながれ来にけり /牧水

まかがよふひかりたむろに蜻蛉らがほしいままなる飛のさやけさ /茂吉

水のへの光たむろに小蜻蛉はひたぶるにして飛びやまずけり /茂吉

くれなゐの蜻蛉ひかりて飛びみだるうづまきを見れどいまだ飽かずも /茂吉

ついと去りついと近づく赤とんぼ憎き男の赤とんぼかな /晶子

錆びし釜二つ三つ門に置かれたる上を飛ぶなり銀のとんぼは /晶子

水いろの秋のみそらを行くとんぼめでたく清したをやめのごと /晶子

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