mardidupin

記憶の欠片あるいは幻影の中の真実。

《鈴虫》

2014-09-09 10:07:14 | 〈薄紅の部屋 (和歌)〉
いづこにも草の枕を鈴虫はここを旅とも思はざらなん /伊勢

年経ぬる秋にもあかず鈴虫のふりゆくまゝに声のまされば /公任

鈴虫の声の限りを尽くしても長き夜飽かず降る涙かな /源氏物語・桐壺

鈴蟲の聲ふりたつる秋の夜は哀にもののなりまさるかな /和泉式部

数ならでふりぬることを鈴虫のなきかはしても明かしつるかな /俊頼

おもひおきし淺茅が露を分け入ればただわずかなる鈴虫の聲 /西行

草ふかみ分け入りて訪ふ人もあれやふり行く宿の鈴むしの聲 /西行

鳥辺山ふり行くあとをあはれとや野辺の鈴虫つゆになくらむ /定家

音にのみ鳴かぬ夜はなし鈴蟲のありし昔の秋を思ひて /良寛

秋の野に誰れ聞けとてかよもすがら聲降り立てて鈴蟲の鳴く /良寛

秋風の夜毎に寒くなるなべに枯野に残る鈴蟲の聲 /良寛

飼ひ置きし鈴虫死で庵淋し /子規

鈴むしは釈迦牟尼仏の御弟子の君のためにと秋を浄むる /晶子

鳴かずなりしすず虫放ちわが童庭を見つめる小腰かがめて /窪田空穂

鈴虫のひげをふりつつ買はれける /草城

鈴虫に須磨の人とて遙かかな /かな女

雨来り鈴虫声をたたみあへず /亞浪

鈴虫を聴く庭下駄を揃へあり /虚子

夫とふたり籠の鈴むし鳴きすぎる /貞

太柱鈴虫の声飼はれゐて /静塔

最新の画像もっと見る

コメントを投稿