mardidupin

記憶の欠片あるいは幻影の中の真実。

《秋の情景》

2014-09-27 01:42:59 | 〈薄紅の部屋 (和歌)〉
押し照れる月夜さやけみ鳥網張る秋田の面に霧立ちわたる /節

霧立つや大沼近き宮柱 碧梧桐

群山の尾ぬれに秀でし相馬嶺ゆいづ湧き出でし天つ霧>かも /節

久方の天つ狹霧を吐き落す相馬が嶽は恐ろしく見ゆ /節

はり原の狹霧は雨にあらなくに衣はいたくぬれにけるかも /節

秋の霧身をまく時にくろ米の飯のにほひをおもひ合せつ /晶子

江上に月のぼりたる夜霧かな /蛇笏

杣の戸をしめきる霧の去来かな /蛇笏

さ夜ふかき霧の奥べに照らふもの月の下びに水かあるらし /赤彦

霧明りかくおぼろなる土の上にとほく別るる人やあるらん /赤彦

この朝け障子ばりする縁先の石のはだへにさ霧ふりつつ /赤彦

何の木か節細き木の木立より大文字山につづく霧かな /晶子

霧はるるかど田の上のいなかたのあらはれわたる秋の夕ぐれ /経信

鶉なく真野の入江の浜風に尾花なみよる秋の夕暮れ /俊頼

吹きわたる風も哀をひとしめていづくも凄き秋の夕ぐれ /西行

なにとなくものがなしくぞ見え渡る鳥羽田の面の秋の夕暮 /西行

ながむれば袖にも露ぞこぼれける外面の小田の秋の夕暮 /西行

心なき身にもあはれは知られけり鴫たつ澤の秋の夕ぐれ /西行

篠原や霧にまがひて鳴く鹿の聲かすかなる秋の夕ぐれ /西行

風の音にもの思ふわれか色染めて身にしみわたる秋の夕暮 /西行

さびしさはその色としもなかりけりまき立つ山の秋の夕暮 /寂蓮

村雨の露もまだひぬまきの葉に霧たちのぼる秋のゆふぐれ /寂蓮

詠れば衣手涼し久方の天の河原の秋の夕暮 /式子内親王

ふきむすぶ露も涙も一つにてをさへがたきは秋の夕暮 /式子内親王

蟲の音もまがきの鹿も一つにて涙みだるる秋の夕暮 /式子内親王

露深き野辺をあはれと思ひしに蟲にとはるる秋の夕暮 /式子内親王

見わたせば花も紅葉もなかりけり浦のとまやの秋の夕ぐれ /定家

虫のねにはかなき露のむすぼほれところもわかぬ秋のゆふぐれ /定家

うらめしやよしなきむしのこゑにさへひとわびさする秋のゆふぐれ /定家

うづら鳴くまくずが原のつゆわけて袖にくだくる秋の夕ぐれ /定家

年毎のつらさと思へどうとまれぬただ今日あすの秋の夕ぐれ /定家

いくかへりなれてもかなし荻原やすゑこすかぜの秋のゆふぐれ /定家

さを鹿のなくねのかぎりつくしても いかが心に秋のゆふぐれ /定家

露おつる楢の葉あらく吹く風になみだあらそふ秋のゆふぐれ /定家

これもまた忘れじものを立ちわかれいなばの山の秋の夕ぐれ /定家

みむろ山しぐれもやらぬ雲の色のおくれうつろふ秋の夕ぐれ /定家

きよみがたひま行く駒もかげうすし秋なき波のあきの夕ぐれ /定家

なほざりのをのの浅茅におく露も草葉にあまる秋のゆふぐれ /定家

なにゆへとおもひもわかぬ袂かなむなしき空の秋の夕暮れ /良経

われのみやわびしとは思ふ花薄ほにいづる宿の秋の夕ぐれ /実朝

秋を経てしのびもかねに物ぞ思ふ小野の山辺の夕ぐれの空 /実朝

かくて猶たえてしあらばいかがせん山田もる庵の秋の夕ぐれ /実朝

なく鹿のこゑより袖にをくか露もの思ころの秋の夕ぐれ /実朝

秋霧の立ぬる時はくらぶ山おぼつかなくぞ見え渡ける /貫之

花見にと出でにし物を秋の野の霧に迷て今日は暮らしつ /貫之

晴れずのみものぞ悲しき秋霧は心のうちに立つにやあるらん /和泉式部

穗に出づるみ山が裾のむら薄まがきにこめてかこふ秋霧 /西行

をしこめて秋の哀にしづむかな麓の里の夕霧のそこ /式子内親王

ながめする夕の空も霧立ちぬへたたりゆくはむかしのみかは /定家

秋のきて風のみ立ちし空をだにとふ人はなき宿のゆふぎり /定家

初雁のくもゐのこゑははるかにて明方ちかきあまのかはぎり /定家

さざなみやしがのうらぢのあさぎりにまほにも見えぬおきのともぶね /定家

飛鳥川ふちせも知らぬあきのきり何にふかめて人だつらむ /定家

山里はひとり音する松風をながめやるにも秋の夕霧 /良経

月よみに門田の田居に出て見れば遠山もとに霧たちのぼる /良寛

夕霧にをちの里べは埋れぬ杉たつやどに帰るさの道 /良寛

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