mardidupin

記憶の欠片あるいは幻影の中の真実。

《きりぎりす》

2014-09-09 07:44:13 | 〈薄紅の部屋 (和歌)〉
秋風の吹くる宵は蛬草の根ごとに声乱れけり /貫之

わがごとく物やかなしききりぎりす草のやどりに声絶えず鳴く /貫之

きりぎりす丘の萱根に夜もすがらなくね身にしみ秋は来にけり /俊頼

きりぎりすわがよもきふに生い立ちてなぞや主にねをなかすらん /俊頼

鳴きかへせ秋に遅るなきりぎりす暮れなばこゑのよはるのみかは /俊頼

夕されや玉うごく露の小ざさ生に聲まづならす蛬かな /西行

ひとりねの寢ざめの床のさむしろに涙催すきりぎりすかな /西行

きりぎりす夜寒になるを告げがほに枕のもとに來つつ鳴くなり /西行

物思ふねざめとぶらふきりぎりす人よりもけに露けかるらむ /西行

ひとりねの友にはならで蛬なく音をきけば物思ひそふ /西行

月のすむ淺茅にすだくきりぎりす露のおくにや秋を知るらむ /西行

身にかへて秋やかなしきりぎりすよなよなこゑををしまざるらむ /定家

別れなむゆくへやいかにきりぎりす秋はねざめの友と頼みて /定家

秋ふかみ露さむき夜のきりぎりすただいたづらにねをのみぞなく /実朝

あさぢ原露しげき庭のきりぎりす秋ふかき夜の月に鳴なり /実朝

秋の夜の月の都のきりぎりす鳴は昔のかげやこひしき /実朝

野辺見れば露霜寒ききりぎりす夜の衣のうすくやあるらん /実朝

きりぎりす夜はの衣の薄き上にいたくは霜のをかずもあらなむ /実朝

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