映画のせかい

私が最近見た映画 ※ネタバレあり

チャップリンの独裁者 #300

2005-04-18 | た行映画
1940年 アメリカ 120分

オープニングは戦地コント。戦場に赴いた床屋のチャップリンが、手榴弾を自分の洋服の中に落としてしまって必死で探すシーンや、不発弾を調べるシーンにつかみはOK!ところ変わってヒトラーを模した総統の演説シーンでは何語を話してるのかわからないが、一気にまくし立てる一人二役のチャップリンの独裁者ぶりが際立つ。一転、地球の風船で遊ぶシーンや隣国の総統にいいようにやられてしまうシーンでは、実は独裁者もたいした人物ではないように描いている。

話は独裁者と床屋の二つのエピソードが交互に入り、その二つをつなぐ役割として、冒頭の戦地で飛行機で床屋がたまたま助けた将校が登場する。ユダヤ人の床屋は突撃隊の兵隊らにやりたい放題にいたぶられる。兵隊に立ち向かうのは床屋の隣に住む娘ハンナ(モダン・タイムスのポーレット・ゴダード)くらいで、窓からフライパンで応戦する。ある日床屋は兵隊に連行されそうになるが、通りかかった将校に命の恩人と助けられる。一時期町は平穏になるのだが、将校が逮捕されるというニュースが入り、床屋らは将校を匿うことに・・・。

笑えたのは総統と討死にする男を選ぶのに、コインが入っているケーキを食べた男が当たり、というシーン。何気に重さを比べてケーキを分配したり、結局みんなの分にコインが入っていたようでそれぞれが隣のケーキにこっそりコインを忍ばせたり、コインを飲み込んで知らない振りをするチャップリンがチャリチャリ言わせるところ。屋根に将校を隠そうとして荷物で顔が隠れてしまい、板の上を渡っていくところや、ブラームス ハンガリー舞曲 第5番に合わせての髭剃りなどもも可笑しかった。毒のある映画を笑いでうまく包み込んでいる。


さて、この映画が作られたのはヒトラーもちろん存命中。こんな映画を作っちゃって大丈夫?とついつい心配してしまうほどの出来栄えだ。ラストで独裁者にすり替わった床屋が感動の演説で平和を唱えるが、その甲斐なくして?翌年には第二次世界大戦が始まってしまう。また当時のユダヤ人迫害もそのまま描いていて、ユダヤ人を憎むことは我々の義務であるとまで言わせる。かなり風刺のきいた作品で、当時の影響力も凄かったんじゃないかと想像する。チャップリン初のトーキー映画。

ドライビングMISSデイジー #296

2005-04-15 | た行映画
1989年 アメリカ 99分 アカデミー賞


元教師のユダヤ人未亡人と、黒人ドライバーの心の交流を描いてアカデミー賞を受賞した作品。何十年かの間の話なんだけど、ダン・エイクロイドの頭の禿げ具合で判断しないとモーガンフリーマンは年齢不詳でよくわからない。要所にヒントが映されてるみたいだけど、気付かなかったなあ。老人が老人を介護するという点では、日本版も作れそうだけど、召し使い的な職業は日本には馴染まないかもしれない。また黒人やユダヤ人といった人種的な問題も日本で表現するのは難しいだろう。社長と運転手の立場を超えた友情、ってところくらい。

というわけで、この映画の意図するところの半分くらいしか理解できなかったのかもしれないが、元教師で博識があってプライドが高いデイジーのキャラクター設定はなんだか本当にいそうで個人的にはリアルに感じた。神様の命令でもあの人に仕えるのはごめんだと家政婦にまで言わせる個性的なキャラだが、捌かれる前のブタを相手にしていたが自分に反抗するブタはいなかったと、ドライバーは自信満々。でも彼にはデイジーの優しさを理解できていた。

この映画のいいところは死で終わらないところ。かなり要介護な状態になっちゃうんだけど、信頼できる人がいるっていうこと。ハッピーな老後とは?を考えちゃいます。

トッツィー #295

2005-04-14 | た行映画
1982年 アメリカ 113分

演技にこだわりがあるばかりに製作者と衝突ばかり、ついに食えない役者となってしまったマイケル(ダスティン・ホフマン)、起死回生の策に女装してオーディションを受けることに。ところがこれが大当たり!昼メロの女王となっていく。

女装ならではネタ満載。女優に恋して相手も好意を持ってくれてるけどそれは女としての自分に対してで、男のときは全然相手にしてもらえない。とか、その女優のお父さんに求婚されちゃった、とか。で、人気はうなぎのぼり、このまま女優として生きていかねばならないのか、という壁にぶち当たってしまう。昔見た記憶がまんま残ってるベタなストーリーなので、本当に面白かったっけ?と思って今回見直してみたが、これがなかなかどうして面白い。ネタは直球、ひねりがあるわけでもないが、逆にそういうストーリーをほとんど一人で引っ張るダスティンホフマンに感心する。声といい、メイクといい(自分の歯の上からさらに入れ歯を入れてた)、なりきってて、見ようによっては違和感もない。トッツィー(カワイ子ちゃん)だ。

昼メロの「病院物語」の怪しいストーリーも笑えたし、台詞を覚えない院長役のジョージ・ゲインズもいい味出してた。この人といい、思いを寄せる彼女の父親といい、ころっと騙されてホフマンに惚れてしまう男たちの「その後」に注目して見ると、また違った面白さがある。登場してくる男たち、ホフマンも含めて、渋かったです。

チルソクの夏 #293

2005-04-12 | た行映画
2003年 日本 114分

いいねー青春映画。主演の水谷妃里ちゃん、澄んだ瞳がキラキラ輝いてます。

主人公が1977年に下関釜山友好陸上競技大会で出会った韓国人の彼との淡い恋を振り返るところから始まり、26年振りに下関で再会するラストまで、透明感のある映像が誰もが通ってきた青春時代を浮き彫りにして、美しい思い出に浸れること間違いなし!

・・・

ヒロインの郁子はなんにも持ってない。朝の新聞配達に行く際帰ってくる父(山本譲二、下関出身!)は流しの歌手だが、最近導入されてきたカラオケ機器に押され仕事がない。進学したいけど経済的理由からそれも覚束ない。でも陸上部の仲良し4人組は心を許せる親友だ。

下関釜山友好陸上競技大会で目をつけた韓国の高飛びの選手アン君と、心を通じた郁子はトイレットペーパーに口紅で住所を渡し、日本語と韓国語での文通が始まる。新聞配達の途中に手を合わせる海沿いの神社にも、来年の七夕(チルソク)の競技会でまた会えることをお祈りする。

・・・

今でこそヨン様だが、77年と言えば日韓の溝が深く戦争の敵対国のイメージが残っている時代。日本語の歌も禁止されてる。アン君の母親は弟を日本兵に殺されたと反対する。郁子の父も朝鮮人だけはダメだと言い張る。今の世代には関係ないことなのに、とつぶやくアン君に、大人の影を見た郁子は夜中抜け出した火の山公園で・・・。

歩道の方の関門トンネルや関門橋をバックに、当時の歌を主人公たちが口ずさむのが、とても懐かしかった。部屋でラジオを聴きながら歌うツイストの「あんたのバラード」、夜のベランダで歌う山口百恵の「横須賀ストーリー」、流しの父がスナックで歌う「津軽海峡冬景色」、交流会で歌う「カルメン77’」に「なごり雪」。

韓流が流行りの昨今、ちょっと前の時代に戻って日本と韓国の関係を見直してみるにはとてもいい映画です。

つばさ #286

2005-04-05 | た行映画
1927年 アメリカ 140分 アカデミー賞

記念すべき第1回アカデミー賞作品賞受賞作。第一次世界大戦中のパイロットの恋愛や日常、そして空中戦を描く。飛行機の銃弾戦、火を噴いて落ちていくところや、爆弾投下して破壊される町など、サイレント映画であることを忘れさせるほどリアルで大迫力となっている。ジャックとメアリーのほのぼのとした恋愛ドラマと戦争の容赦ない攻撃のギャップが対象的だった。

主な登場人物は4人。ジャックとメリーそしてジャックの親友のデビットとシルビアである。シルビアを巡って張り合っていた2人がだんだんと親友になっていき、悲しい運命へと繋がっていく。「それが戦争なんだ」という台詞が印象的だった。

ラジオドラマのような女性一人のナレーションがずっと入っていたが、オリジナルにはないのだろうか??ないとわかりにくいが、ちょっと過剰?!

allcinema

地球防衛軍 #278

2005-04-02 | た行映画
1957年 日本 90分 東宝SF特集

本多猪四郎監督と円谷英二特技監督が送るSF映画。ゴジラ、ラドンに続く作品である。謎の怪獣モゲラが富士山麓に出現した。なんとか倒す日本軍(=地球防衛軍)だが、同時期に現れたドーム型の基地の周りでは次々と異常な現象が起こる。安達博士(志村喬)ら五人は中に招かれ、そこで異星人ミステリアンたちの地球侵略を知るのであった。

ミステリアンたちは色分けされたゴレンジャーのようないでたちだ。ヘルメットの中に素顔が見え隠れする。日本人女性との結婚と基地の半径3キロの土地といういささかセコイ要求をするのだが、それに隠されたものは・・・。

基地をめがけてレーザー光線で攻撃するバトルはゴジラなど怪獣を倒すのとはまた違ったカッコ良さがあった。

モゲラはゴジラvsスペースゴジラ(ゴジラ21) #196で復刻された。なんか歩きにくそうだったぞー。

第三の男 #273

2005-03-28 | た行映画
1949年 イギリス 105分

第二次世界大戦後の焼け野原となったウィーン。ミステリー作家のマーティンス(ジョゼフ・コットン)は親友のハリーライム(オーソン・ウェルズ)の元を訪れるが、彼は事故で亡くなったと言う。マーティンスはハリーの死が信じられず、真相を突き止めようとハリーの恋人のアンナ(アリダ・ヴァリ)らを訪ねる。目撃者の証言からハリーの死体を運んだのは3人いることが判明するが、2人は誰かわかるが、3人目の男の行方が不明である・・・。

上から下から、映像の構図が面白い。目玉のような螺旋階段。なぜか時々斜めになるのは主人公の迷走の象徴かな。シンメトリーな観覧車、下水道、遊歩道。鼠が出そうな下水道もなぜかキレイに写ってる。迷路のような下水道を画面の上と下、右と左に同時に映し出す。ニョキっと出てくる指。そして響き渡る銃声!軽快なリズムの音楽に乗せてミステリーが展開する。

さて、この映画の主人公は誰だろう。ぶっ通しで出てくるマーティンスは、かっこよさげだが、実はお間抜けだ。逆に予想通り姿を現したハリーの悪人面。こっちは存在感大だ。音楽も「ハリーライムのテーマ」なわけだし、出演時間半分でかっさらっていったかな?!で、勝者はどちら?美女アンナが舞い降りるのはどっち?・・・第三の男が出てきたりして。しないって。その答はラストシーンで!


チャーリーと14人のキッズ #271

2005-03-26 | た行映画
2003年 アメリカ 92分 Eマーフィー

ブロッコリーとニンジンの着ぐるみで新製品のお菓子の試食会したら、食べた子供が不味いと暴れだし、結局会社を首になってしまった主人公チャーリー(エディ・マーフィー)。自分の子供の保育園探しに疲れて、自らダディズデイケア(パパの保育園)をはじめる。最初は子供たちに手を焼くチャーリーだったが、次第に大人も子供も活き活きしてくる。

「ドクター・ドリトル」系のファミリー・コメディ。最近は低年齢児からの早期教育を施行することも増えているようだが、子供は自分のしたいことをして楽しみながら育てる、という早期教育、管理型教育に反する保育園の奮闘記となっている。反対に象徴的に描かれているのは5ヶ国語を教え、素行不良児は「雑草を間引き」するかのように退園させる保育園だ。1人、また1人と児童は減っていき、チャーリーの保育園へと移っていく。困った園長は密告などの嫌がらせをはじめ、最後にはパーティーに乗り込み会場を混乱させる。一度は保育園を諦めるチャーリーだったが、自分にとって一番大切なものはなにか、に気づき、保育園を再開させる。

知的だったライバル保育園の園長の壊れっぷりが面白かった。チャーリーのロックパーティーに乱入し、食べ物に虫を入れたり、動物を逃がしたり風船を割ったり容赦ない攻撃!このおばちゃん、いいわー。ラストカットもこの人だし。それから手紙フェチ(手紙の匂いフェチ!)の郵便係の人。オタク知識が子供とマッチして、保育園の仕事に生き甲斐を感じる姿、うーん、よかったよかった。最初のうちは、ガキどもの傍若無人さにあきれ返っていたが、チャーリーともどもだんだんと愛着が沸いてくる。子供って能力を伸ばせる人がいたらどんどん伸びるんだよね。一番大切なのは自分の子供だと言い切ったチャーリー、出世よりも大事なものが見つかって良かったね!


ドラえもん のび太のワンニャン時空伝 #270

2005-03-25 | た行映画
2004年 日本 80分

ドラえもんがこれほどまでに人気だとは思ってもみなかったぜー。この映画、公開2日目に見に行ったのだが、いつもはガラガラの近所の劇場が満杯、立ち見客も何人もいた。約1年ぶりにTVで放送されていたけど、ハラハラドキドキあり、感動あり、で映画館でもみんな泣いてたけど、やっぱりほろりとさせられる。80分と子ども向けに短いけれど、無駄な部分もなく完成度の高いものとなってる。

ドラえもんシリーズの一つのキーはタイムマシンである。ご存知のび太君の机の引き出しから発進するタイムマシンで過去未来に行けるのだが、この映画もタイムパラドクスを楽しめる展開だ。3億年前に、今以上の文明を持った社会の遺跡が発見された。実は捨てられた犬猫をのび太たちが3億年前に逃がしてやった際、置いてきた進化光線で人間のような能力を身に着けたワンニャンたちの社会だった。そしてのび太たちが出会った犬のハチこそ、何を隠そう・・・。

子ども向けとばかにしてたら、泣いてるのみんな保護者じゃん。25年も続く理由がわかるよねー。お父さんお母さんたちのほとんどが子どもの頃見てたドラえもんの世界が変わらずに展開されているんだから。あの頃とはちょっと変わってしまった私たちも、映画館の中では25年前に戻れちゃう。スクリーンを離れて子どもと手をつなぐとき、ふと現実に戻るんだけど、見る前よりも優しくなれてる気がするよね。親子で時空を超えておんなじ映画で感動できるなんて、感謝!

タワーリング・インフェルノ #266

2005-03-22 | た行映画
1974年 アメリカ 165分

サンフランシスコに138階建ての超高層ビルが落成!現在の日本で言えば六●木ヒ○ズが落成記念日に・・って感じだろうか。それよりも実際に起きてしまった911事件のビルが燃える映像がショッキングで、この映画もリアルに感じられてしまう。一酸化酸素に耐えられず窓ガラスを割って飛び降りる女性など・・・。

3時間弱という長い映画でありながら、最初の10分くらいで最初の火が点く速い展開。緊張感高まりっぱなしなのである。中でも好きなシーンは、ポール・ニューマンが単身で家族を助けに行く所。どこなんだか良くわからないけれど、非常階段の裏っかわのビルの中によくありそうな空間で爆発がおき、金属のポールを伝って降りていく。そのあとの配管がズーっと上まで続いている構図は綺麗だった。

それからスティーヴ・ マックイーンがエレベーターをヘリコプターにつないで地上に降ろすシーン。あのエレベーター、絶対止まりそうだなあと思ってたけど、あんなチャチな作りでいいの?マックイーン、手を離すなよ!と手に汗握るシーンだった。

この両雄、当初はPニューマンが人気先行だったが、撮影時はほぼ互角の人気。どちらをメインにするかでポスターの右か左か、気を遣ったようだ。結局Pニューマンがやや上に配置されているが、これは正解だと思う。出てる時間が長いから(単純)!でもお互いのカッコよさが引き立っててよかったです。

その他の巻き込まれて人たちも多彩で、物語に厚みを増す。夫婦や恋人が別れ(死別)たり、再会したり。ロビーで恋人を探す詐欺師のおっちゃん(フレッド・アステア)は可哀想だったなあ。社長は最初は嫌な奴だったけど、腹を括ってからはよかった。その分下請けの嫁婿が、憎まれ役だったかな。期待通り?ぶっ飛びます。


「ポセイドン・アドベンチャー」で豪華客船を作ったスタッフが今回は地上33メートルのビルを作り、138階に見せたそうなので、実際にあの橋の近くに高層ビルはないみたい。あったら誰も行かないだろうなあ。強風でヘリが屋上に着地できないという悪条件の中、最後にウルトラCで奇跡を起こす。全員救助できるのか?

パニック映画の中でも制作費、キャスト、ストーリーどれをとっても絶品の一作で間違いない!