映画のせかい

私が最近見た映画 ※ネタバレあり

殺人の追憶 #297

2005-04-16 | さ行の映画
2003年 韓国 130分

ついちょっと前までお隣の韓国は軍事政権下におかれてた。ソウル五輪のころ民主化されてたなんてことは当時気にもしなかった。この話はちょうどその頃、6年にも渡って10人もの女性ばかりを狙った猟奇殺人事件が起こり、韓国警察をあげて捜査したにもかかわらず、結局迷宮入りしてしまった事件を映画化したものだ。

容疑者に自白を強要したり、すぐに蹴飛ばしたり(レスラー顔負けの綺麗なフォームのドロップキックだった^^)、無茶な捜査方法が目立つ。日本もこんなこときっとしてたんだと思うけどそれはさておき、実はこういうシーンが後になって活きてくる。いつまで経っても捕まらない犯人、捕らえても決め手がない容疑者、という進展しない捜査に焦る捜査員の象徴として描かれているのである。そしてあくまでも冷静だった刑事もついには拳銃を手にし・・・。

次々に犯人らしき人物が浮かび上がるが、その個性的なキャラに翻弄されるかのごとく、刑事たちは振り回されていく。中でも田舎の刑事役のソン・ガンホ、コミカルな面も出しつつ、(犯人は無毛症だと言い出して相手にされず自分で銭湯に調べに行ったり・・)シリアスに迫る姿は、つい魅入ってしまう。韓国の男優さんって迫真の演技をする方多いね。

韓国の田舎の村の情景が昔っぽいのと、薄暗い映像が加味して、なるほど追憶って感じの映画に仕上がってる。結局尾をひいてる最後の女の子の発言もまた良かったが、じれったさも残ったのは実感。なかなかこういう映画も貴重だ。


世界大戦争 #281

2005-04-03 | さ行の映画
1961年 日本 110分 東宝SF特集


大戦争シリーズの特撮SFバンバン!ってやつを期待してたんだけど・・・。東西の国の対立でついに第三次世界大戦が起き、平和だった一般家庭が・・・、というストーリー。これをSFシリーズに位置づけるべきではなく、社会派作品と捉えるべきだろう。

製作時は戦後16年、その後この映画が作られてから44年、当然戦争に対する感じ方は今よりもシビアであっただろう。主人公は普通のタクシー運転手・ 田村茂吉(フランキー堺)。戦後何一つ曲がったことはせずコツコツと真面目に生きてきて一軒家を建て家族と質素に暮らすことが幸せだった田村は、戦争が起こるとは夢にも思ってはいない。もちろんその思いのほとんどは願望からきているわけだが、そんな田村の思いも、田村の娘と結婚する宝田明の被爆国である日本は戦争を反対すべきだという思いも、すべて吹っ飛んでしまうことになる。

中盤で一旦沈静化した世界情勢が同盟国と連邦国という二分する国々によって戦争が再開される。道は逃げ惑う人々で溢れ、パニックとなる。最後まで希望を失わず・・というラジオから流れるアナウンサーの声も虚しく、ミサイル攻撃が始まってしまう。田村家はどこにも逃げずに家族でご馳走を食べながら最後の日を過ごす。母子家庭の母親が保育園に娘を迎えに行く途中で爆発に逢い死んでしまう。また母を待っていた保育園には同じように親がお迎えに来れない子どもが何人もいる。

世界各国の建築物の破壊(ウェハースで作ったらしい凱旋門も見事にぶっ飛ぶ)やマグマに流れていってしまうシーンときのこ状の雲、それでも打ち上げられるミサイル。ショッキングだった。そして焼け野原となった東京へ帰ろうとする船に流れるお正月の歌。もうお正月を一緒に迎える人たちはいない。そして土砂に埋もれてしまった日本の某建築物で映画は終わる・・・。

印象的だったのは田村家の最期だ。我先にと東京を脱出しようと急ぐ人々を横目に、いつも通りの食卓に、一番のご馳走を並べ家族で過ごそうとする。もしも明日死ぬとわかっていたら、あなたは最期の1日をどう過ごすだろうか?どうせ死ぬんだからと欲望の限りを尽くして犯罪に走ったり、なんて昔はよく考えていたものだが、最後の日もいつもと変わらず家族と過ごす、こっちの方が幸せなんだろうな。

JFK #277

2005-04-01 | さ行の映画
1991年 アメリカ 188分

1963年11月22日午後12時30分過ぎ、ジョン・F・ケネディ大統領がテキサス州ダラスで暗殺された。当時のフィルムを交えながら、ジム・ギャリソンの著書『JFK/ケネディ暗殺犯を追え!』を元に、ギャリンソン演じるケビン・コスナーが大統領暗殺という大事件の謎に迫る。

すごーい!パレードの真っ最中に銃で撃たれて犯人が捕まって、その犯人も搬送中に殺される。教科書ビルから撃ったオズワルドの単独犯行として処理されるが、真相なんて一つしかないはずなのにいくつかの説が出てくる。今まで政府が犯罪を裏で操作してきたという映画を2つ(「皇帝のいない八月」「クリープゾーン洗脳モルモット」 を紹介してきたが、今度の被害者は大統領である。大統領をも闇に葬ってしまう巨大な力とは一体何だ???

以下ミステリアスな部分を抜き出しておく。
・教科書ビルから木が邪魔して狙えない
・オズワルドからは硝煙反応が出なかった
・変更されたパレードのルート
・目撃者はすべて4年の間に死んでしまった

などなど、どう考えてもアヤシイエピソードが満載なのであるが、それをギャリソンが一つずつ追っていく。関係者が死んでいく中、ギャリソンはケネディ事件を告発、法廷で長い長い解説をするのです。ここだけ見ても興味津々なのだけど、やっとそれまでの2時間でギャリソンの取材していたのが、ああこれだったのか、とわかるわけで、映画としての構成も抜群にうまい。実際のフィルムと再現フィルムのかぶせ方や、事件を丁寧に紐解いていくのに見入っていく。

見る前にある程度の情報を整理してから見たほうが面白いと思う。でも何にも知らなくてもラストの法廷シーンは楽しめるはずだ。関係者の一人にジャック・レモンが出てた。目元のアップが変わらず元気そうで良かった^^ウォルター・マッソーもいたなあ。

作品の中ではベトナム戦争に反対したケネディを戦争は産業であるとした政府が暗殺したかのような捕らえ方をしていたが、他にもアポロ計画、ロズウェルUFO墜落事件、キューバ危機などとの関わりが指摘されている。これだけ多くの謎を残しておきながら、暗殺真相究明委員会の調査した全資料は2039年まで完全公開されないらしい。そしてこの映画の主人公であるギャリソンはすでに死亡しているため、それを見ることはできない。

ジョン・F・ケネディに関しては以下の映画が作られている
『JFK』 - JFK
『13デイズ』- 13 Days
『ダラスの熱い日』

地獄の黙示録 #274

2005-03-29 | さ行の映画
1979年 アメリカ 153分(特別完全版203分)

夕焼けのオレンジの空。爆発する炎の黄色。薄暗い夜の闇。川面に写るそれぞれの景色に反し、川の流れは妙に美しい。夜明けのジャングルの青。発炎筒の紫。朝霧の白。多様な色が幻想的に現れると共に、風景そのものがうなされた悪夢のようで、ベトナム戦争の狂気を反映している。この後の戦争映画ではこういう手法の元、なんだかよくわからないけど狂乱さが伝わるというものが多くなったが、映像が伝える迫力ではこの作品もいまだ上位に位置するだろう。

カーツ大佐を追うウィラード大尉(マーティン・シーン)と4人の部下を乗せた河川巡視艇はナン川を上っていく中で、途中で立ち寄るいくつかのエピソードから構成されている。

「ワルキューレ」に乗って登場するヘリ部隊から出てくるのはキルゴア中佐。銃弾が飛び交う中、サーフィンをやれと命じ、部下が逃げていく。
「スージーQ」に乗せて踊る慰問したプレイメイトは、燃料と引き換えに兵士とヘリコプターの中でSEXに興じながら、悩みを打ち明ける。
フランス軍の停留地では冷静にアメリカ軍の動きを分析される。

奥に行くにつれ、陸地からの攻撃は激しさを増し、一人また一人と巡視船の部下が倒されてしまう。そしてついにカーツ大佐の住む帝国へ到着する。

ジョセフ・コンラッドの小説「闇の奥」を映画化したものだが、「闇の奥」は戦争モノではない。ジャングルの奥地で帝国を作る主人公の話なのであるが、それをベトナム戦争と結びつけ、川を上がっていきながら、戦争の狂気を映し出しつつ、そこにたどり着くというストーリーにうまく変えている。カーツ大佐のモデルは日本におけるマッカーサーだとも言われるが、当てはめようと思えば誰でも当てはまる。私でもあなたでも・・・。主演のマーティン・シーン(当たり前だけど息子チャーリーそっくり!)を通して、映し出すカーツ大佐という人物像を想像を膨らませた上で、あのような形で登場してくるとは思いもよらなかった。マーティン・シーンの冷静であくまでも第三者的な視線は、この映画を見ている大多数の人々の視線でもあり得ると思うが、その行く先にあるのは、果たして滅亡か存亡か?


砂の女 #263

2005-03-21 | さ行の映画
1964年 日本 147分

原作の安部公房の同名小説は私がかつて感銘を受けた作品の一つである。好きなシーンが自分の思うのと違った映像になったり、はたまたカットされたり、結末が変わったり、好きな小説が映画化されるのを嫌う人は多いと思うが、私もこの「砂の女」が映画化されてたと聞いて、見たいような見たくないような複雑な気持ちに駆られた。舞台となる砂丘の砂に埋もれていく家は、想像力の中の存在でいて欲しいし、謎多き女は頭で思うのと実際に見るのとでは印象が変わってしまうだろう。

結論から言えば良い意味で期待を裏切った。オープニングのタイトルバックは安部公房の小説の表紙のデザインっぽい。あの家は、ああでしか表現できなかったろうし、若かりし日の岸田今日子はとても自然にあの家の住人を演じている。砂に埋まっていく家の中のじめじめ感、体にこびりついた砂を拭くシーンはモノクロながら明瞭な映像が実に効いている。

さて、この映画の本質はとても深いと思う。どう感じるかは書かないが、もし映画が手に入らなければ文庫版で数百円で出てるので原作を読んで欲しい。お勧めです!

スピード #258

2005-03-16 | さ行の映画
1994年 アメリカ 115分

最初の日本上映を劇場に見に行った。その後TV放映も含めて何度か見たが、何度見ても色褪せない。タイトル通りスピード感溢れるストーリー展開は一瞬も目を話せない。バスのイメージが強いだろうが、バスの中は正味1時間だ。冒頭のエレベーターからラストの地下鉄まで正VS悪の構図がわかりやすく何も考えずに映画に没頭できる。

知能犯の爆弾犯人をデニス・ホッパー、たまたまバスに乗り合わせ、運転手の怪我で免停中にもかかわらず、50マイル以上でバスをぶっ飛ばすドライバーのサンドラ・ブロックと、今や押しも押されぬスーパースターとなったキアヌ・リーブスが出演している。

バスの乗客も最初の混乱から最後は力を合わせて、という定番をきっちり果たしているが、もっと彼らを複雑に絡み合わせたらバスだけで2時間の映画になりそうだ。でも、それをするとせっかくのスピード感が失われてしまうわけで、あの位がベストだったんだろう。

忘れた頃に何度でも見てみたい作品である。

修羅雪姫 #254

2005-03-14 | さ行の映画
1973年 日本 97分

タランティーノ監督の「キル・ビル」のベースとなった70年代の作品。大ヒットという点では同じ梶芽衣子の「女因さそり」のほうが上だし、隠れた名作といった感じ、よくこういう作品に目をつけたものです。

明治時代。夫殺しの復讐に一人は葬ったものの、残り三人への恨みを残し投獄された女。投獄先で片っ端から男を漁り、孕んだ子供に自らの恨み晴らしを託した。物心ついたときから復讐を目的に生きていき、修行を受け(これがまた凄い。転がる樽に入って坂を落ちていったり、ロープでつないで剣術特訓したり・・!)、美しく成長した雪(梶芽衣子)。
標的は竹村伴蔵、塚本儀四郎、北浜おこの、の3人。一人、また一人と追い詰めていく。

首吊り死体がこっちを見てる!そこを斬りつけ胴体が真っ二つ!刀を握ったままの手首が飛ぶ!戦っている男を二人まとめて串刺しにする!
番傘から出てくる日本刀、返り血を浴びる白い着物、積もる雪が赤く染まる、など凄惨な中にも美を意識したカットが印象的だ。

キル・ビルVol1へ

ザ・ドリフターズのカモだ!!御用だ!! #245

2005-03-06 | さ行の映画
1975年 日本 91分  ドリフ&クレイジー映画

松竹のドリフ映画シリーズの第15作。万年ヒラ刑事のいかりや、義理の弟の仲本は部長刑事に出世する。部下の志村らは仲本にゴマをすって、いかりやの立場は悪くなる一方。チンピラの加藤を捕まえ説教の日々を送っていた。宝石を密売組織の下っ端である加藤は摘発の際宝石を持ち逃げする。

加藤茶がいつもとおなじヒデオ役なんだけど、とぼけたキャラから一歩進んだ知能犯(でもちょっと抜けてる)を演じる。ラストの結婚式でのパイ投げドタバタまで一気に見せる展開は相変わらずだが、コントの延長を期待してみてるので、ストーリーよりギャグを多くして欲しいなと正直思った。悠木千帆って誰かと思ったら樹木希林だった。


ザ・ドリフターズの極楽はどこだ #244

2005-03-06 | さ行の映画
1974年 日本 94分 ドリフ&クレイジー映画

ドリフシリーズ14弾。♪俺たちゃぎっちょんちょんでパイのパイのパイ!というテーマ曲が懐かしい。

いかりやの上司が仲本。部下が高木。息子が加藤でその仲間に志村。という配役なんだけど、いかりやと加藤以外はあんまり展開に絡まない。親子のふれあいや、スナックのママとの恋愛といった人情劇がメインに置かれ、ドタバタコメディはおとなしめ。笑えるシーンも少なかったなあ。退職金は息子のバンド費用に使われ、ママには振られ、自殺しようとしたいかりやが極楽はどこだ、と探し求めるのが題名に使われてる。もちろん、汽車はいやだ~とか言って死ねないんだけど。

いかりやと加藤がブランコで話し合ったり、加藤が朝食を作るのを見るに見かねたいかりやが代わってあげたり、70年代の日本の家庭像が見られ、のどかな気分にさせられる。6度目の大学受験よりバンドで一花咲かせる加藤茶が市民ホールみたいなところで行うコンサートをこっそり見てたいかりやの涙と、その後娘と飲みに行くシーンが好きでした。

シャークテイル #242

2005-03-05 | さ行の映画
2004年 アメリカ 90分

スティーブン・スピルバーグ監督が1994年に作った映画製作会社DreamWorksのシュレックに次ぐアニメーション。豪華俳優が声優を務めることで話題になった。本日3/5(土)日本公開だったので、珍しく劇場へ行ってきました。

・・・

主人公のオスカー(ウィル・スミス/香取慎吾)は大きな魚のお口の中を掃除するホンソメワケベラ。海底の大都会リーフシティでホエールウォッシュという(文字通り鯨の掃除屋)で働いている。同僚のアンジー(レネー・ゼルウィガー/水野美紀)はひそかにオスカーに思いを寄せている。一方、リーフシティを牛耳るボスの鮫ドン・リノ(ロバート・デ・ニーロ/松方弘樹)は、息子のフランキーとレニー(ジャック・ブラック/山口智充)に次世代を期待するが、レニーは実はベジタリアンの優しい鮫で、魚を襲うことが出来ない。そんなレニーを鍛えようとフランキーはリーフシティに向かう。そこには上司のサイクス(マーティン・スコセッシ/西村雅彦)から借りたお金をアンジーにもらったパールで返す予定が競馬に突っ込んでしまい、部下のアーニーとバーニーに縛られたオスカーがいた。オスカー大ピーンチ!偶然落ちてきた碇がフランキーを一刺しして難を逃れるのだが、この日からオスカーはシャークキラーとして一躍スターダムにのし上がる・・・!

大スペクタクル、ハラハラドキドキとまではいかないが、シュレック同様ハズレない堅実な童話的な教訓を含んだストーリーだ。主人公のオスカーは鯨の掃除を20年間やり続けて表彰された父親を誇りに思っていたが、学校で舌掃除と笑われたことから、いつかはスターになりたいと夢見ている。結局は~大切なものは、気づかないまま、いつもそばにある。~というコピーの通りなんだけれど、不況でも自分の仕事をしっかり頑張ろうという大人へのメッセージにも見える。実は作品の中で大人向けの玄人好みな?台詞が目立つ。ドン・リノのことを「まさかゴットファーザーでは?」と言ったり、ドンリノとサイクスのまるで私生活のような掛け合いだったり、鮫たちは沈んだタイタニック号に住んでいたりする。権威があると途端に尻尾(尾ひれというべきか?)を振ってくる美女(アンジェリーナ・ジョリー/小池栄子)が出てきたり、ヒーローとなった後はシティの一番高いビルの一番上の階のオフィスから世間を見下ろしたり、なんだか大人対象?という場面も多かった。

もちろん、ラクガキの得意な3匹の子魚や、競馬(想像ください。走ってる魚はなんでしょう?)シーンなど、子ども向けも盛りだくさん、特に優しい鮫のレニーなんかはそうだろう。(ちょっとファインディング・ニモとかぶってるけど)無理やり魚の世界を人間界に当てはめてショップやTVCMがあったりレポーター魚がいたりするのは理屈抜きで面白かった。魚たちの顔もうまく描いてて、それぞれの声優そっくりの表情になってる。腰のくびれなんてウマイ!海面の揺れ動く波なんてすごくキレイだった。「シュレック」が好きだったら是非見て欲しい。