maidoの”やたけた”(ブログ版)

ジジイの身辺雑記。今日も生きてまっせ!

50-ED BARRAR-05-U.S.A.1964-No.50(8/2)

2022-06-03 15:36:48 | 虚々実々-U.S.A.-1964

歌唱指導?

国旗降納の18:00前の早い時間に夕食が終ってしまったので、ミーティングが始まる19:30まで Tanaka さんとお話をしました。
あまり野外活動の経験は無いんだそうです。
息子さんが Troop に入ったので何か手伝う事は無いか?と思っては居たそうですが、まさか Troop Master をすることになるとは思わなかったそうです。
アメリカはBSAの組織が確りしていて、層が厚いので、こういうキャンプ場を利用するのならば、Troop Master は引率者としての仕事に専念して、訓練や、その他の事はスタッフを利用すれば良いんですね。
もっとも、私みたいな、会話もままならない変なスタッフも居るので、安心はできませんねぇ。

「明日の午前中はゲームをしたいんだが、何かアイディアは無いかい?」と訊かれたので、以前日本でやった事がある「人間綾取り」はどうかなぁ?と思って説明しました。
ところが、この説明に苦労しましたねぇ。
早い話、人間一人一人が指の役をして大きなロープの輪で綾取りをするんです。
「そんなのは聞いた事も無い!しかし面白そうだからやってみよう」と簡単に採用されてしまいました。
子供が24人居ますから、指役が10人、ロープをかけたり外したりする役が2人、合計12人づつ2組で丁度うまく行きます。
対抗戦にしたら結構子供たちは大騒ぎで楽しんでくれます。
「じゃあ明日。明日はスクランブルエッグとパンケーキの朝飯だけど、一緒にどう?」
こうなりゃここにどっぷり浸かろうと、朝7:00に来る約束をしました。

食堂 に行くと リックが1人で食事中。
スタッフは全員何処かの Troop で晩御飯にありついているようです。
「どうだい?」
「最高です。楽しんでますよ」
「そりゃ良かった。水曜日にキャンプファイヤーをするんだ。ボブとバードはその準備が有るんで、出来たら明日の午後はサン・マテオ Troop 45 を手伝ってくれないか?」 「Troop 7 は多分大丈夫だと思います。明日 Troop Master に訊いておきます」
と話していると、残りのスタッフが集まって来ました。
水曜日にはいま来ている3つの Troop 合同のキャンプファイヤーをするんですって。
ボブとバードは森の倒木をチエンソーで切って、そのための薪作りをするそうです。

「外国から来たスタッフは珍しいから、何かキャンプファイヤーでやってくれないか?」
エ~ッ!どんなことをしたら良いんでしょう?
「そうだなぁ、日本の歌を教えてやってくれる?」
エライ事になりましたよ。
簡単に言うけれど、選曲が大変です。
まず、歌詞をちゃんと覚えている歌で、意味も簡単でないと、今までの経験では、必ず歌の意味を訊かれるんです。
簡単なメロディーでないと私がうたえませんし、う~・・。
第一、口移しで歌詞がまともに伝わりそうな気がしません。
紙にローマ字で書いて配るか?それは大変ですね・・。
「各 Troop に1枚渡して、後はそれを写させれば良いさ。じゃぁ頼んだよ!」
頼む方は簡単に言いますが、頼まれた方は悩みます。

自分のテントに帰って、知っている歌を片っ端から思い出してみるのですが、元の曲がどうも舶来の疑いがあるのが多いですね。
「星影さやかに・・」みたいに賛美歌をベースにしているのは、具合が悪い。
「アルプス1万尺・・」「雪山賛歌」はまともにアメリカの曲だしね。
いくら困っても軍歌はイカンでしょうねぇ。
そうなって来ると、純日本製の短い曲に中々行き当たりません。
たまに短いメロディーを思い出しても、歌詞の説明が難かしいんですね。
結局残ったのは「富士山」と「海」。
歌詞の簡単明瞭さから「海」に決定。

海は広いな大きいな
月が沈むし、日が昇る

海にお船を浮かばせて、
行って見たいな他所の国

これなら何とかなりそうです。
ボール紙の箱を解体して歌詞カードを書いていると、ボブがやってきました。
ローマ字で書いたのをちゃんと読んでくれるでしょうか?

試しに私が歌詞を言って、ボブに書いてもらいました。
「もう一回言ってくれ」と何度も書いたり消したりした結果、見せてくれたのを見ると、思いもよらないシュールな文字の並びですねぇ。

Woo me what hero in a Oh key now

今度は私が書いたローマ字を読んで貰おうと頼むと「どう読むんだ?」
エッ、私のアルファベットそんなに拙いかな?
「違う!発音は(pronounce)?」
そうか!ローマ字は英語ではないんですね。
ひらかな、カタカナは1字1音ですが、アルファベットは実は違うんですね。
それで、発音記号が要るのか!
残念ながら発音記号で歌詞を書く、なんていう芸当は私は出来ません。
「I」でも「I=アイ」この発音の仲間は「like、yipe(キャァ)、mike(これなんかローマ字ならミケですね)など。「I=イ」のケースは「kick、sick、rib、rich・・・」
そう言えばNIKONをナイコンと呼ぶ人が多いですね。
とにかく読んでみてくれ、と頼んだら、

ユミワハィロイナオキナ
チュカイガシジュムシハィガノォボル

顔面コムラ返りになりそう。
どうした物かと考えたけれど、ローマ字で強行する事にしました。

何やかや話していると、びっくりするような事を言い出しました。
彼は今週末でスタッフのアルバイトを終えて、一旦 Belmont の家に帰って、その後海兵隊に入隊するんだそうです。
Belmont はサンマテオのすぐ南隣の市です。
既に志願(enlist in Marine)して、入隊許可を貰ってるんだそうです。

日本では軍隊というのは判ったような判らない存在で、特に私の年代は親、親戚から聞く悲惨な軍隊と、戦記物や映画で見る軍隊とのギャップが大き過ぎて、グチャグチャになっているんです。
子供の頃、近所で良く見ていた進駐軍と、大阪に爆弾を落とし、叔父貴たちを殺した軍隊とがどうしても同じ物とは思えませんでした。
アメリカの海兵隊は徴兵制ではなく伝統的に志願兵(volunteer=バランティーァ)で組織されているそうです。
志願して満期除隊すると、奨学金(G.I.Bill)が支給されて、大学入学に便宜を図ってもらえるんだそうです。
同じ志願するのなら Marine と決めていたそうです。
Marine の経験者は社会的に評価されるんだそうですね。
けど、Marine ならベトナムに派遣されるのではないか?と訊ねると、可能性は有るけれど、海兵隊でも大部分はアメリカ国内での勤務で、実戦部隊の一部が行っているだけだそうです。
言われてみれば、そうですね、根こそぎ全部ベトナムに行ってしまう筈が無いですよね。
通信を希望していたのが通ったと喜んでいました。
「将来は電気関係のエンジニァーになりたい、除隊したら電気工学の学位を取るんだ」と明るく言うんですが、その前に戦場へ行く可能性があると思うと、人事ながら「良かったな」と手放しで一緒によろこべないですね。

この頃はまだベトナム従軍がマイナスに評価される時代では有りませんでした。
同じ満期除隊でも、海外派遣の実戦部隊は期間短縮の特例が適用されたそうです。
通信部隊ですから、敵とドンパチする事は無いだろうから、ベトナム従軍を志願する積りだと言っていましたが、まさかその後、あのような状態に、アメリカが引きずり込まれるとは、予想もつきませんでした。
結局、ボブは継続志願をして、二期目にベトナムに従軍しました。
主にヘリコプターでの通信任務に付いていたらしく、「神の思し召しめしのおかげで、誰の命を奪う事も無く又一月が過せた、神のお恵みを」と決まって文末に書かれた軍事郵便が、日本に帰った私宛に毎月届きました。
満期の数ヶ月前に帰国してからくれた手紙では「終に海兵隊での勤務中、誰の命をも奪わなくて済んだ。しかしそれは意図して出来た事ではなく、自分を守るために、敵を殺さざるを得ないような状況になって、銃を発射した事もある。その弾丸が敵を殺傷したかどうかは判らない。ただ自分の心の慰めとして、自分が殺した敵はいないと信じたい」と書いて有りました。
その後、フェニックスの大学を卒業し、ベルに就職したのですが、ここ十年来音信が途絶えてしまっています。

サンフランシスコとロスアンゼルスの中間くらいにあるLemoore という所の航空部隊の教育隊に8月の16日に入隊するんだそうです。
21日(土)~22日(日)の Over night 体験入隊にトムが慰問ついでに行く計画なんだそうです。「良ければトムと一緒に来ないか?」というので判らないながらも「行くよ!」と答えました。

「必ず来てくれよ!トムには今晩電話で言っておくからね」と帰って行きました。
体験入隊って何をするんでしょうね?
いずれにしても、トムが一緒なら心丈夫です。

寝るまでに歌詞カードを書いてしまおう!

2003/06/09:初出
2022/06/03:再録

51-BARRAR-06-U.S.A.1964-No.51(8/3)
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