maidoの”やたけた”(ブログ版)

ジジイの身辺雑記。今日も生きてまっせ!

44-残留2日目-01-U.S.A.1964-No.44(8/1)

2022-05-31 18:26:32 | 虚々実々-U.S.A.-1964

最初の1ッ歩

昨夜は1人でアメリカに残ったという実感がジワジワと湧いてきて、強気と弱気、楽観と悲観に揉みくちゃになって、コラリアとキッチンで盗み食いをしながら話し込んでしまいました。
自分の出身、人種、地域に誇りを持っている人、引け目を感じている人。
自分たちの固有の風習、習慣を護ろうとする人、忘れたいと願う人。
この国には出身、人種に加えて様々な思いが絡み合って居るんですね。
「無闇に人種や出身を聞くのは考え物かなぁ?」といったら、
「姓(family name)である程度は判断できるわ。ヨーロッピアンでない顔立ちで、如何にも英語的な姓を名乗っている人には聞かないほうが無難ね。自分の出身や人種に誇りを持っている場合は、元々の姓をそのまま使うんじゃない?」
なるほどそう言えばそうですね。

ヤマダ とか マオ、キム、パク、クワテモック、カストロ、マルチネスなんてのが英語的でないのは判りますが、聞いたことも無いような姓の場合、如何にも英語的な姓とそうでないのの見分けが付かないんです。
顔を見ただけでも判る人種も有りますが、一度「日本人ですか?」と聞いたら「私はアメリカ人です」とムッとしたような感じで返事された事がありました。
お互い名乗りあうような事も無かったので、明らかにモンゴロイド、黄色人種には違いなかったのですが、果たして日系、韓国系、中国系か何系だったのか判らず終いでした。
今にして思えば、何系であっても、それがどうと言う事は無かったんですが、話の糸口の積りで話題にしたのは軽率だったんですね。
今までは、何も考えないで話していたけれど、今後は注意しよう。

お腹が膨れても、頭の中では掴み所の無い雑多な思いがひしめいて眠くなりません。
夜に強いコラリアは親切に付き合って起きていてくれるのですが、明日は8:00出発。
そうそう何時までも起きているわけには行きません。
「もう寝るよ、おやすみ」というと、私をフワーッと抱いて「心配ないわよ、大丈夫、おやすみ(Don't worry, have a good sleep.)」と言ってくれました。
この時ばかりは、全く sex を感じずに、素直に暖かい身体を抱いて、何とも言えない安心感で涙が出そうになりました。

「起きた?」とエフィの声で目を覚ますと7:30。
大慌てで身支度をして、寝る前に準備したサブザックを持ってキッチンに行って慌しく朝食を食べていると、Hinman さんの車の音が。
エフィがお腹が空くといけないからと、サンドイッチを紙袋に入れて渡してくれました。

車の中には、都合で遅れてキャンプに参加する子供が2人既に乗っています。
フルサイズのステーションワゴン、こういう車にはアメリカに来て初めて乗ったのですが、外観も走り方もいかにもアメリカらしい車ですね。
行く先はシスコの約150 miles 東北東に当る Calavera County の Angels Camp という町の近く、シェラネバダ山脈の裾の ED BARRAR という名前のキャンプ場です。
走り出して30分もしないうちに眠ってしまったようです。

目を覚ますと、2人の子供たちはまだ眠っています。
「すみません、眠ってしまいました」
「いいさ、昨日カナダから帰ったんだって?どうだった」
「Native American のトーテムが面白かったです」
「へ~、そういうの好きかい?」
「はい、シートン(Seton)の”二人の小さな野蛮人(Two little savages)”を子供の時から何度も読みました。日本語でですけど」
「ほ~、日本でも出版されてるのか、あれは野外活動をする者のバイブルみたいな本さ」
「そうなんですか、最初に読んだ時にはヤンと同じようにインディアンに憧れました」
「皆んなそうさ!私も何度も読んだよ」
アメリカでそれほどポピュラーな本だとは知りませんでしたね。
最初に下巻を見つけて買ったのは良かったんですが、上巻を手に入れるのに苦労したのを思い出します。

周りは全くの田舎、シスコ周辺と違って山は緑で自動車もほとんど走っていません。
道端に小屋掛をしてスイカを売っています。
日本のスイカの2つ分はありそうな楕円形の大きなスイカです。
「何か飲もう」と Hinman さんが車を停めました。
「Wake up!」と起こされた子供たちはまだ眠そうです。
スイカを切ったのが並んでいますが、見事にタネの多いスイカですね!
楕円形なので半月というよりも、まるでカヌーみたいです。
「ルートビァ(Root Bear)でいいかい?」
「ビール(Bear)ですか?」
「酒じゃないさ」
「じゃあ、試してみます」
冷凍庫から取り出した霜が付いて、カッチンカッチンに凍ったガラスの大きなジョッキに、真っ黒な液体を入れて手渡されました。
何処かで嗅いだような、匂いがします。
漢方薬?咳止めの水薬?一口飲んでみると、ワーッ、美味しい!

何の匂いだったかなぁ?
そうだ!子供の頃食べた事のある、進駐軍の横流しの、色とりどりの薄い円盤状の砂糖菓子に有った真っ黒な色のと同じ匂いです。
どの色のも、如何にも外国風の馴染みの無い香りがしていました。
その中で黒いのは、姉妹に全く人気が無くて、もっぱら私が頂いていたんです。
仁丹の匂いにも少し似ているような気もします。
「何の匂いですか?」
「リケリス(Licorice)だよ」
リケリス?植物なんでしょうが、木か草か、果実か?何なんでしょうね。
質問して、折角答えてもらっても、何の事か判らないのがほとんどなのにはまいります。
少し休憩して、出発。

しばらく行くと、何か湿気たような黴臭い?いや生臭い匂いが・・。
Hinman さんが慌てて窓を閉めました。
「スカンク!(skunk)」
エ~ッ、スカンク!何処に?
「車に轢かれたんだな、オッ、あそこだ!」
「是非見たいんです!お願いです、停めてもらえますか?」
「一体、何故あんなのが見たいんだ?通り過ぎてからなら良いけど、ここじゃ風下だから駄目だ!」
「日本にスカンクは居ないんですよ。動物園には居るけど、この機会に匂いを嗅がなかったら一生嗅げないかも知れないんです!」
「Ha、Ha! 一生スカンクの臭いを知らないほうが幸せだと思うけどね」
そう笑いながらも、50mほど行き過ぎて車を停めてくれました。

ドアを開けて走って戻ると、可哀想に縞模様も判らないくらいペッタンコになった死骸が有ります。
風上だからか話に聞いていたほど猛烈な臭さではないような感じがします。
Hinman さんも子供たちも車から出てこようとしません。
余りゆっくりしていると気の毒なので車に戻りました。

「もういいのかい?(Enough?)」
「はい、ありがとうございました。スカンクの匂いを嗅げて嬉しかったです」
「う~ん、君は変ってるなぁ、けど、きっと良い野外生活の指導者になれるよ」
誉められたのか、呆れられたのか・・。
あれなら、イタチの方が臭いと思いますね。
もっとも新鮮な「生スカンク」の匂いを知らないから、大きな事は言えません。
道路でスカンクが撥ねられて死んでいるなんて、感激です。

この分だとアライグマなどと言うのにも遭えるかも知れません。
「アライグマはキャンプ場のあたりで見られますか?」
「見たくなくても夜になったらいくらでも居るよ」
ひゃ~、夢みたいですね、デビィ・クロケットが被っていたあの帽子のアライグマですよ!。
そいつが生きてウロウロしてるんですよ。
「まさか、クマとかクーガーは居ないでしょうね?」
「そう言うのは夏にはあの辺りには出てこないね」
それなら安心、そんなのが出てきたんでは危なくって仕方ありません。
「そうだ、滅多に居ないけどバジャー(Badger)には気をつけなさい。あいつは気が強いから掛かって来るからね」

また変なのが登場しましたね、聞いたことの無い奴ですね。
「どんなのです?」
「うーん、どんなのといっても、アライグマより少し大きいくらいで、体は太い黒と灰色の縞が有って、足が短くてズングリ(short and fat)してるよ」
イメージが湧きませんね、日本に似たのは居ないのかなぁ?
タヌキのデッカイの?いや、タヌキは縞模様は無いしこげ茶色ですね。
ハクビシンは小さいし、どっちかと言えばスマートだから違うでしょうね。
「キャンプ場に写真が有るからそれを見ればわかるさ。確か毛皮もあったはずだよ」
どんな奴なんでしょうね、楽しみです。
あまり凶暴だとそんな呑気な事も言って居れませんが、そんなのがウヨウヨ居るような所にまさかキャンプ場をつくらないでしょう。

「気をつけるといえば、ヘビには充分注意してくれよ。スタッフは蛇用の救急キットを何時も持っている事になってるんだ」
「ガラガラ蛇(Side Winder)も居るんですか?」
「いやアレは森林にはほとんど居ない、その代わり Pit Viper 何かが居るのさ」
「その蛇は大きいんですか?」
「いや、まぁ大きくても36インチ(約90cm)までかなぁ」
それだけ大きければ充分です。
「今までに噛まれた事故は無いけど、結構色々な種類が居るから、写真と標本で先ず覚えて貰わないとね」
蛇は子供の頃、味付け海苔の空き瓶で、シマヘビ、アオダイショウ、ヤマカガシを飼っていたくらいで、どちらかといえば好きなんですが、毒蛇はねぇ・・・。

「スカンク」といえばロジャーが得体の知れないもののを「スカンク」と呼んでいました。
アメリカ海軍で未確認船舶を「スカンク」と言っていたんだそうです。
大西洋でUボートにやられた輸送船を救援に行くとき、正体不明の船を見付けて、見張りが「スカンク!」と怒鳴ると船中が緊張したと言っていました。

2003/06/01:初出
2022/05/31:再録

45-残留2日目-02-U.S.A.1964-No.45(8/1)
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