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僕&macbexとIFの世界

小説や遊戯王(インフェルニティ)や日常の事などを雑記していきます。

G線上のアリア

2012-12-10 04:36:46 | 小説
冒頭だけ晒してみます。

 G線上のアリア

              1

 終戦から一ヶ月がたった今も、僕は望んで前線に立っている。でも、それは彼と同じ立場に身を置いているというわけではない。弾が当たらない場所で気まぐれに引き金を絞る。そんな身勝手な狙撃手が僕だった。
 ある人は僕のことを「勤勉だ」と褒めるかも知れない。でも、そんな賛美は僕のことを何一つ理解していない証拠だ。両親、昔の塾講師、学校の教師、皆が僕のことを真面目で優等な兵士だと勘違いしている。――愛国心無き銃弾には、何も守れはしない。その事を理解しているのは僕と、恐らく彼だけだ。
「……戦場か……」
 そう呟いたのは僕じゃない。彼の口からそんな単語が出るとは思っていなかったので、僕はやや困惑しながらも「確かに受験は戦場と言えるかも知れないね」とやや興奮しながら同意する。彼は吹き出したように笑うと「その戦場じゃないよ」と言った。
「G線上のアリア。バッハの管弦楽組曲第三番の『アリア』につけられた愛称の事だよ」
 彼は埋め込み型メガホンを指さしながら言う。そこからは荘厳なヴァイオリンの音がながれていた。注意して聞いてみると、それがG線上のアリアであることはすぐに分かった。最近コマーシャルで起用されているから記憶に新しい。僕は少し得意げになって「この曲は知ってるよ」と言った。
「確か、ヴァイオリンの一本の線だけで弾くことができるんだろう?」
「よく勉強してるじゃないか」
 彼はそう素直に感心して褒めた。そして「一本の線って言うのはG線のことな」と付け足す。僕には、この壮大なクラシック音楽がたった一本の線で奏でられる様を想像する事はできない。
「アリアには『独唱』って意味がある。G線上のアリアは、G線の独唱って事だね」
 彼はそう言うとすっかり機嫌を良くして鼻歌なんて歌いながら教科書をめくった。
 僕は彼の言葉を踏まえてこの曲を聴くことにした。ヴァイオリン一丁で演奏されるこの曲は、手に震えが走るほどの高音がサビに存在する。思わず息を飲んでしまう高音、まるで細いG線上の上を綱渡りで行くような切迫感があった。
 ――アリアは独唱って意味がある。
 ならば「G線上」を「G戦場」といっても間違えではないはずだ。なぜなら、戦場だって独りなんだから。


第二章の始まりだけです。
まだ推敲足りてないから、一応ってことで載せときます。
第二章は、起承転結の「承」に当たる部分なので、
ここで沢山「伏線」を張っておきたいですね!

俺的小説賞の公募が決定したみたいです。
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