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朝刊フジ

本やテレビ雑記に加え、英語で身を立てようと奮闘中の筆者が読者と自分に(笑)エールを贈る。

三谷幸喜『エキストラ』はシビアな内容!?

2006-11-16 02:41:51 | 演劇
おはようございます!『朝刊フジ』編集長は、夕べあまりにも眠くて10時に寝たら、1時40分に起きてしまった、濃い睡眠の(?)フジでございます。

しかし、未だにヴォジョレ・ヌーヴォー解禁なんていうニュースが流れるんですから、日本は平和と言うかなんと言うか・・・それにしても、昨日の夜の津波警報は驚きましたね。各局みんな日本地図を表示している。番組やりながら、果てはCMやりながら警報、注意報を表示している。えらいね、テレビ局。対応が早いね。皆さんのお住まいのところは、津波、大丈夫でしたか?

さて私こと編集長フジは、昨日の『朝刊フジ』にも書きましたように、佐藤B作主宰の劇団、東京ヴォードビルショーの最新作『エキストラ』を見てきました。
三谷幸喜さんの最新作です。
三谷さんと来ればシチュエーションコメディが有名で、今回の作品もまあ、それに近かったです。笑いの要素がふんだんに盛り込まれていました。
しか~し!今回はカラッとした笑いというより、ブラックユーモアと言いますか、
非常にブラックな構成となっていました。

エキストラ達が古い建物の中で自分の出る順番を待っています。
次から次へと指示されるまま、宇宙人の格好をさせられたり、原始人の格好をさせられたり(そのドラマがタイムスリップの話という設定)していきます。
エキストラの中でもベテランがいたり、今日初めて参加する方もいます。
みな、それぞれの思いを込めてやってくるのですが、テレビ局のスタッフにとっては、彼らは出演者ではなく、いかに主役の演技を邪魔しないで画面を通り抜けるか、という、いわば”背景”でしかありません。
言われたことをさっさとやればいいんだよ、という局側。もっと我々を人間扱いしてくれというエキストラ側。
しかし、エキストラには珍しくセリフのある役をもらった人が、突然セリフをカットされてから、エキストラの反乱が始まります・・・

最後に印象的なシーンがあるんですね。
エキストラで来ていたある夫婦。旦那は病気で、もう今後出演できるか分かりません。夫婦揃ってテレビに出るのが夢だったという奥さん。
そこへ、死体の役が必要だと連絡が入ります。実は死体専門の役者がいて、その人がやる気満々なのですが、病気の旦那が息耐えてしまいます。
エキストラの芸能プロの若手マネージャーが、死体の役を死んだ旦那にやらせよう、と提案します。
ばれないだろうか。というほかのエキストラの心配に、ベテランのエキストラが静かに言います。
「大丈夫。だって私達は、エキストラなんだから」

私はこの場面を見たとき、背筋がぞーっとするのを感じました。

三谷幸喜という人は、コメディ作家として有名ですが、実はこういう社会派ドラマを非常に得意としている方です。とてもシニカルで、登場人物を突き放します。私が三谷氏を好きになったのも、笑いはもちろんですが、そういう現実的な部分をちゃんと書ける方だからです。「どん底」という有名な舞台を意識して書いた、という今回の作品、見終わったあと、何か心に残る作品になっています。

まだ公演は続きます。当日券は必ず20枚は用意すると佐藤B作さんが言っていました。とにかく内容満載のこの舞台、是非ご覧になっては如何でしょうか?
ちなみに、私は『12人の優しい日本人』同様、最前列で見る事ができ、伊東四郎さんや角野卓造さん、佐藤B作さんのベテランの演技・・・正直皆さんお年なようで、最後のカーテンコールでは肩で息をしていましたが・・・を本当に間近で見る事ができて、最高でした。

それでは今日はこの辺で。
フジでした。

今日は三谷幸喜作『エキストラ』を見に行きます!

2006-11-15 00:02:11 | 演劇
おはようございます!『朝刊フジ』編集長は、ふたたび席は1列目!のフジでございます。

何だか”しょこたん”ブログみたいになってしまいますが・・・
今日、紀伊国屋サザンシアターに、東京ヴォードビルショー(佐藤B作が主宰の劇団ね)の『エキストラ』を見に行きます。
久々の三谷幸喜作・演出なので、期待してま~す。

しょこたんブログは、もっと短いもんね。

それでは今日はこの辺で。
フジでした。

『12人の優しい日本人』テレビ放送決定!

2005-12-26 00:00:31 | 演劇
おはようございます!『朝刊フジ』編集長は、やっぱヤマザキのクリスマスケーキはヤマザキのクリスマスケーキだわ、のフジでございます。来年はデパートで探すか・・・

さて、クリスマスも終わり、『朝刊フジ』は平常営業に戻りました。懐かしいなあ、このペパーミント。

ところで、皆さんに朗報です!
あのチケット入手が異常に困難だった舞台『12人の優しい日本人』を、テレビでご覧いただけます!!

1月28日(土)夜7時から、大阪での楽日の様子をWOWOWが生放送してくれます!
既に舞台の様子は『朝刊フジ』にて面白い部分は報告してしまいましたけれども、実際の舞台を是非ご覧頂きたい!
未加入の方は、いい機会ですから是非WOWOWへ!

それでは今日は速報をこの辺で。
フジでした。

『12人の優しい日本人』突撃レポート!②~10分で分かる本編~

2005-12-01 00:00:03 | 演劇
おはようございます!『朝刊フジ』編集長は、腕時計のベルトに刺す細い金属が取れてしまった、フジでございます。これ、2個目なんですよねえ。やっぱり1000円の腕時計じゃ、しょうがないか!

それにしても今日から12月。月日の経つのは早いですねえ。日本の上空に寒気が入ってきているそうですから、暖かくして当誌をお読み下さいね。

さ~て、『朝刊フジ』では、昨日から『12人の優しい日本人』という、三谷幸喜脚本、演出の舞台に行った過程を皆さまにレポートしています。昨日はなぜか電車移動の途中で体がおかしいことになってしまった様子をお伝えしました。
何々?フジの体調なんてどうでもいいから、早く舞台を?そりゃそうだ!早速昨日の続きを見てみましょう。
(注:私は事情により、メモを全くとっていないので、全部記憶から引っ張り出して書いています。内容はあっている自信がありますが、セリフや順番などは全然違う事がありますので、以下はあくまでダイジェストだと思ってください。実際は笑い満載で、以下に書いた情報量の30倍くらいあります)

さあ、いよいよ開演の時間です。開場は超満員!アナウンスが入り、次第に場内が静かになっていきます。
そして定刻の夜7時。突然、舞台の真ん中にスポットライトが。そしてそこに出てきたのは何と・・・

三谷幸喜さんです!
「おお」と出てきた途端に場内から歓声と拍手!三谷さんも人気者になりました。
「今日はプレビュー公演なんですけれども・・・プレビューっていうのは、お客さんの反応をじっくり見るためにあるのですね。『ここで笑いか少ないな』とわかると、急いで書き直ししたり、『ここの役者の演技はどうかな』と思うと、ダメだししたり・・・ですから今日のお客さんが芝居を作るといっても過言ではない。そこで、笑いたい時にはめいっぱい笑ってください。そしてそんなに笑えない時でも、笑ってください・・・『もしかしたらここが笑いどころなんじゃないか』というところでも・・・笑ってください(笑)
昨日からプレビューが始まってますけれども、役者さんはそれぞれ緊張しています。問題はトイレ。2時間ぶっ通しですから。大変です。山寺宏一さん、練習中に2回姿をくらましました(笑)。今日も誰かが消えるかも知れません(爆笑)。そうっとしてあげてください。
それでは、開演です!」
三谷さんが消えます。
舞台上にライトが灯ります。
なかなか俳優さんが出てこない。
しかし、かすかに声が聞こえる。
次第に声が大きくなります。
舞台の奥のドアが開きます。
どどっど、っとなだれ込んだのが、今日の主役の12人です。
「いやあ、朝青龍はなんたって強い!」「本当に」などと、相撲の話をしている饒舌な陪審員。三谷さんも情報をすぐ脚本にいれたりして、やりますね。お喋りの場は、山寺さんがやっぱり目立ってますね。ちなみに山ちゃんはトレードマークのパーマを、加工したのかカツラなのか、いつもよりおとなしい直毛にかえています。
「何か、飲み物頼めるらしいですよ」の一言に、「コーヒー」「アイスティー」などと皆口々に注文します。
「ちょっと待ってくださいね~」と、仕切りだしたのは陪審員3号の伊藤正之さん。紙に注文を書き始めます。しかし注文する側は勝手なもの。「あ、私やっぱりプリンアラモードにする!」「そんなものあるんですか?」「じゃあ、コーヒーを一つ減らして、プリンアラモード、と」
「君は」と他の陪審員に声を掛ける陪審員9号の小日向文世さん。何だかこの人、いつもテレビで見る情けない役と違って、ダンディーです。白いジャケットがよく似合います。
「酒は?」と聞く陪審員。「アルコールはちょっと・・・」と伊藤さん。次第にまるで自分がここのオーナーのように振る舞います。この方、実は喫茶店のマスターなのです。

注文が一通り終わりました。
「それでは、みなさん、座りましょうか」と仕切るのは、陪審委員長の浅野和之さん。夫々がさっと近くのイスに座ります。さっきまでやたら高いテンションだった陪審員7号、温水洋一さん、開いているイスに腰掛けようとすると・・・
イス、小っちゃ!!
ああ、このイスは温水さん用だったのですね。座った途端驚愕の温水さん、周りをきょろきょろ見渡しますが、こんな小さいイスは一人だけ。うろたえる様が会場の爆笑をさらいます。抗議したいけど出来ない温水さん。しおれちゃいました。

「それでは、陪審員の心得Q&Aを開いてください」と浅野さん。「え~、陪審制度の目的。陪審制度とは・・・」
そこへ割り込んだのは陪審員6号の堀部圭亮さん。この方舞台初出演ですが、青いスーツが決まっています。「いちいち読まなくてもいいよ。めいめいが家で読んできてるんだから」とクールです。
そうだそうだ、と付和雷同的に同調するのは、陪審員12号の山ちゃん。この方、何にでも足を突っ込みたがります。

「では、決を採りたいと思います」と陪審員長。「被告は無罪か、有罪か・・・無罪の人?」
手が上がります。何だ、全員無罪です。
あ~、と陪審員長。「何か、決まっちゃいましたねえ」
「あっけないものねえ」と言うのは、私の目の前に座っていた陪審員8号、鈴木砂羽さん。この方、テレビではアンニュイな感じのバーのママ、みたいな役どころが多いのですが、今回は思いっきり明るくてノリのいい女性を演じています。そして私の連れ曰く「スタイルがいい!」
何と15分もしないうちに、全員一致で無罪です。タバコを吸っていた陪審員11号の江口洋介さんは、まだ一言も喋っていません。
帰ろうとする陪審員たち。
・・・その時。
「有罪・・・」と声が。
陪審員2号。生瀬勝久さんが手を挙げています。
「ちょっと待ってよ!折角全員一致で無罪が決定したんじゃん」と山ちゃん。これは全員一緒の気持ちです。陪審員なんかに選ばれたから来てるけど気持ちは早く帰りたい。
「話し合いませんか?」と優しく語る生瀬さん。「どうして彼女は無罪だとお思いなのか、根拠を教えてください」
やれやれ、裁判は陪審員の全員一致でしか終えることが出来ません。
陪審員長が「それでは座っていただいて・・・」
今度は温水さんが走って他の席を取ろうとしますが、残念ながらまたコドモイスへ。彼のやりきれない表情が、場内を沸かせます。
「では、一人一人、自分の評決の根拠を教えて頂けますか」と陪審員長。時計回りということに。
私は、と陪審員10号、堀内敬子さん。「よく分からないんですけれど、無罪のような気がしてるんです」
「それじゃ意見になっていない!」と生瀬さん、ちょっとイライラモードです。
続いて陪審員4号、筒井道隆くん「彼女は、夫を・・・元夫を殺していないと思うんですよね」
「だから理由は!」と生瀬さん。
「それは・・・いい人だからです」
「そうそう!」と割って入るのは温水さん。「あんなキレイでか弱い女性が、男を殺すわけがない!」温水さん、舞台ではすっごくテンション高いんですね。
「だから理由は!」とこれも生瀬さんです。
そして順番は陪審員5号、石田ゆり子さん。私、一度石田さんを生で見たかったんですよね!夢かなった!
石田さんは、手帳を取り出します。敏腕秘書風。「あの夜、被告は元夫から大衆酒場に呼び出されました。その後彼女は逃げます。酔っ払った元夫が追いつくと、二人はもみ合いに・・・これは目撃者のおばさんが言いましたね。女性の「死んじゃえ!」という声が聞こえた、と。そして被告は男を道路に押しやった。するとトラックが来て、急ブレーキをかけたがダメだった・・・よって、無罪です」
「ただ経緯を読んでるだけじゃないか!」と完全に切れてる生瀬さん。大爆笑!
「何でも男はドメスティック・バイオレンスの常習者だったというじゃない?被告はかわいそうなのよ」と鈴木砂羽さん。
「あなた方は真実を見ようとしていない!」と生瀬さん。「被告がきれいでうら若き女性だからというだけで無実と決めようとしてるんだ!」
「まあ、まあ」と調子のいい山ちゃん。
室内の右と左に、長椅子があり、右には堀部さん、そして左には、まだ一言も発してない、11号江口さん。
今度は小日向さんの番。「彼女が男ともみ合っているのを見た人がいる。『死んじゃえ!』と言ってる。そして道路に男を押した。これだけの事実がある・・・私も有罪」
ええっ!有罪が増えちゃった。面倒くさいことになったな、という顔の面々。
「これ、もし全員の意見が揃わなかったら?」と堀内さん。
「意見不一致で、次に新しい陪審員が決まり、その方に委ねます」
「いいじゃないの、それで!」と堀部さん。
「君は、どうなのかな?」と生瀬さんにたしなめられる、左の長椅子でマンガを読んでいる江口さん。参加する気ゼロです。
「あんたはよくマンガなんて読んでられるなあ!!」と、生瀬さんがマンガを取り上げ、バッシャン!と床に投げ捨てます。

議論は続きますが、根拠を求める生瀬さん側と、根拠を見出せない側が鋭く対立します。
「被告は無罪です!」と言い放つ石田ゆり子さん。
「では」と小日向さんが近寄って。「あなたは人のことなら何でも分かるんですねえ・・・私の職業、分かりますか?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「歯医者さん?」
「(ため息をついて)銀行員だ」
座ってしまう石田さん。
「いいですか」と生瀬さん。「被告は、出かけるときにドミソピザにピザを頼んでるんですよ。子どもの夕食用にです。これが何を意味するか分かりますか?被告は、夕食は作るつもりがない。つまり、帰ってくるには時間がかかることを知っていたんです!家から居酒屋まで行き、男と会って、そして道路まで行き、殺人を犯す。この時間を計算していたんです!」
ゆらぐ無罪派。
「では」と陪審員長。「ここで決を取りたいと考えますが」
賛成、賛成。
「では、挙手で行うか、紙に書いて投票するかで、決を取りたいと思います」
「あんた決を取ってばかりじゃないか!」と山ちゃん。場内爆笑!
一人一人に紙を配る浅野さん。喫茶店のマスター、伊藤さんのところで「あんた、何やってんですか!」
「いやあ、話し合いながら食べようと思って、甘栗買ってきたんですよ。やっと向き終わりましたから。どうぞ!(笑)」
テーブル、散らかしちゃってます。

開票です。
陪審員長が読み上げ、マスター伊藤さんがホワイトボードに書いていきます。
伊藤さん、”有罪”の有の字を、明朝体で書こうとしています。
「普通でいいから!」
すると今度は、ただ”ゆ”と”む”とでっかい字で書きました。大雑把なのか細かいのか掴めません。
「有罪」
「有罪」
「無罪」
「無罪」
「無罪」
・・・・・・
そして最後の一票が「有罪」
「誰だよ!だれ!」と山ちゃんが大騒ぎ。
そこへ今までほとんど喋らなかった江口さんが近づいてきます。
「ほら、この紙、他の紙に比べて小さいでしょう。投票用紙を半分に折って、切って二枚にしてるんです。だから全部で13票になる」
皆の視線が生瀬さんに集まります。
「もっと話し合いましょう」と生瀬さん。

休憩を入れます。
先ほど頼んだ飲み物が来ます。
しかし、他のものと違い、プリンアラモードが異常にデカイ!(笑)「いいんですか?こんなに食べて」
「頼んじゃったんだから仕方ないじゃないの」と鈴木さん。「ピザ、頼まない?」

しかし、休憩は生瀬さんの言葉で中断します。
「皆さん、女性だって強いんだ!しかも男は居酒屋で酔っ払ったあげく、道路のところまで走らされたんだ。もうフラフラなんです!」
「あなた、奥さんいるの?」
「いると言うか、別居中です」と生瀬さん。「男は女性の力で簡単に道路に押し出すことが出来たんです!彼女は学生時代陸上で体を鍛えています」
「男は、被告が買ってきたジュースを飲んだそうじゃないですか。殺そうとする男に、そんなことしますかねえ」
事態は混迷を極めます。次第に無罪派も、有罪派の勢いに飲まれてしまいます。
「じゃ、ここは一つ決をとることで・・・」
「またか!」

しかし、決を取った結果、無罪派は5人しかいませんでした。
「いいか」と堀部さんが無罪派を集めて作戦会議です「俺は会社で会議というものをイヤと言うほどやって来た。こういうときには、”ダンマリ作戦”が一番有効なんだ!」
再び座ると、無罪派は口をつぐんで何も喋ろうとしません。
「ちゃんと話し合いましょうよ!」と生瀬さん。
その時・・・
「私は無罪にする」と小日向さんが突然言いました。
「どうしてですか!私の意見に賛成だと言ったじゃないですか!」
「私はね、ただ話し合いがしたいだけなんだよ。有罪でも無罪でも、話が続けばそれでいい」
これで賛成:反対=6:6になってしまいました。
「意見が分かれてきましたので、決を取りたいと思います」
「はい!そんなこともあろうかと思って、投票用紙作ってみました!」と元気いっぱいの伊藤さん。「ちゃんと有罪か無罪のどちらかに丸をつければいいようになってます!!」
「今回は、意志をはっきり表明していただくために、挙手にしましょう」
崩れていく伊藤さんに会場は大爆笑!
「それでは」と、浅野さんが一人一人意見を聞きます。
「無罪」
「無罪」
「有罪」
「有罪」
「むーざい」
エッ?
陪審員長が「今、何と?」
堀内さんが小さな声で「むーざい」。会場大爆笑!
「どっちかにしてくださいよお」と山ちゃん。
「音の響きが有罪に近いから、有罪!」
「だって、分からないんですもの」と堀内さん。

無罪は堀内さん、筒井くん、そして今までほとんど喋らなかった、江口さん。
「陪審員長は?」との声が。
「私は司会ですから」
「ダメですよ。12人の意見が揃わなければ帰れないんですから!」
「では・・・無罪」
「何故ですか!!」と生瀬さん。
「・・・3年前に、私は一度陪審員になったことがあります。全員一致で有罪でした。被告は死刑になりました。後味、悪かったです」
誰も、この言葉の持つ意味を前に、何も言えません。

さあ、私はいつ出てくるかと待ち望んでいた瞬間がやってきました。
ついに江口洋介さんが、長椅子から立ち上がったのです。
「よく聞いてください・・・男は酔っていた。そして店を出ると、走って逃げる被告を追いかけて、道路で追いつくことが出来た」
「何が言いたい?」
「彼女は学生時代陸上をやっています。俊足です。泥酔した男が、逃げる彼女に簡単に追いつけられるでしょうか?」
「もしかして・・・酔っていなかったんだ!」と伊藤さん。よりを戻そうなどと考える人は、ついつい酔っ払っちゃったふりをして告白したりしますよね。
「目撃者がいる!」と反対派。
「あの居酒屋」しかし伊藤さんは続けます。「あそこは、料理がメチャクチャうまいところなんだ。だから一度あの店でガッツリ食べて、飲みたい人は店を変えるんだ!」
「そう!」と江口さん。「それに彼女は男にジュースを買ってあげている」
「そんな女が『死んじゃえ!』なんて言うはずがない」
筒井くんがボソボソ言っています。
「死んじゃえ、しんじゃえ、しんじゃえー・・・しんじゃえーる、ジンジャエール!」
「ジンジャエール!」と思わず反対派も乗り出します。
「ばかな、目撃者のおばさんは、語気を荒くして『死んじゃえ』って言ったと証言してる」
「だから、買ってから怒って追いかけながら渡したんですよ」江口さんの独壇場です。「やってみてください」
陪審員長が「(怒りながら遠くに)ジンジャエ~ル!!」
「聞こえる(笑)」
小日向さんが「こんな茶番に付き合ってられるか!」
「でも」と堀内さん。「酔ってない男の人を、道路に押し出させることが出来るのかしら」
「分かった!」と伊藤さん。「彼が自分で車に飛び込んだとしたら・・・」
「エッ、自殺!?」
「よりを戻したい女性に振られ、絶望した男が、刹那的に自殺をしたとしたら・・・」と筒井くん。
「仮にそうだとしても」と生瀬さん。「轢いたトラックの運転手は、ちゃんとクラクションを鳴らし、急ブレーキをかけて止まったと証言している」

その時・・・

ガッシャーン!!とけたたましい音が!
凍りつく12人・・・いや、正確には11人。
江口さんが、飲み物を運ぶのに使うトレイを床に落としたのです。

「いいですか、これだけ大きな音がすれば、誰でも振り返る」
「・・・・・・」
「目撃者のおばさんだって、クラクションの大きな音が静かな夜にこだましたら、絶対その方角を見るはずです」
「そうか!運転手はクラクションを鳴らさず、あわてて急ブレーキを踏んだんだ!」
「何故?」
「居眠り運転していたんだとしたら?もしホントのことを言ったら、自分にも火の粉が降りかかる。それでウソを・・・」

「何言ってるんだ、あんた達は!」と生瀬さん。「被告は出かけるときにピザを頼んでいるのを忘れたんですか?彼女は殺人を犯してから家に帰る。夕飯には間に合わないと分かっていたんです!」
「思ったんだけど」と鈴木さん。「どのくらいの大きさのピザを頼んだのかしら」
「それが何か?」
「ドミソピザって、とっても大きいんですよ。子ども一人じゃとても食べられない」
そこへ先ほど鈴木さんが頼んだピザが到着します。
「これ、Sサイズなんです」
「子どもには無理だな」
「つまり」と鈴木さん。「被告は自分もすぐに帰ってきて、一緒にピザを食べようとしていたんです!殺人を犯しにわざわざ遠い遠い道路まで行こうなどとは思わなかったんです!」
「じゃあ、どうしてすぐに帰らなかったんだ。居酒屋から家まではホンの短い距離だ。なぜ遠回りをした?」
「そうだ!」と伊藤さん。「居酒屋から彼女の家までは、とっても急な坂道なんだ!遠回りした方が、ずうっと楽だ!」

「無罪だ」と、小日向さんが言います。疑わしきは罰せずです。殺していないという解釈が成り立つ以上、ここで有罪には出来ません。

「決を取りましょう」と陪審員長。「無罪だと思う人?」
手を挙げたのは、生瀬さん以外の全員。
「彼女が殺したのは事実なんだ。全ての状況証拠が物語っている。真実を見なきゃダメだ!確かに被告は若い、見た目も悪くない。でも・・・人を外見で判断するんじゃないんだよお!」
「そんな人間」と江口さん。「もう誰もいませんよ」
「君は話し合いをしたいんじゃない」と堀部さん。「自分の意見を押し付けたいだけなんだ」
「彼女は罰せられて当然の人間なんだ!どうしてそれが分かんないんですか!あの女は自分のことしか考えない、そういう女なんだ!自分の都合で夫を捨てた女に同情なんて要らないんですよ!!」

「ここで裁かれているのは被告です」と、江口さん。「あなたの奥さんじゃない」

「・・・無罪」と生瀬さん。
「無罪と決定しました」と陪審員長。「お疲れ様でした」

一人、また一人と、陪審員室を去っていきます。
「う~ん、やった」と伊藤さん。「裁判って面白いですねえ」
「やれば出来るものね」と鈴木さん。
「話が来たら、またやりたいですか?」と山ちゃん。
「ご冗談を。絶対イヤだ!

「本当は歯医者でね」と小日向さんが石田さんに言います。「あなたの、人を見る眼は確かだ」
「ありがとうございます」
「差し歯入れるときは、私のところで(笑)」

小日向さんが、うなだれる生瀬さんに言います。「望んでたことじゃないかな。満足すべきだな」

生瀬さんが、ホンの少しだけニコリ、とします。
立ち上がって・・・ドアから外へ出て行きます。

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明かりがつきます。
みんな、手を高くあげて大拍手です!
出演者がドアから出てきます。横一列に並んで、礼!
帰っていく出演者に、また拍手。
出演者がもう一度出てきます。さっきと並びが正反対です。私、江口洋介さんと眼をあわせようとしましたが、向こうはお客さんの中心を見ているため、失敗!
そして出て行く出演者。それでもまだ拍手が鳴り止みません。
出てくるかなあ。
私の体験では、2回は出てくるんです。でも3回は・・・
と思っていたら。出てきた!
深くお辞儀をして、去っていきます。

帰りの電車で連れ曰く「江口さんの目が、真っ赤だった」。
「きっと初舞台で興奮してたんだね」
本当に、江口さんは初舞台とは思えないほど、ステージをいっぱいに使った大きな演技で、今後を充分期待させます。

それにしても、私、具合が直って良かった!こんなステキな舞台を見逃したら、大損ですよ!
多分、もう再演はないでしょう。なぜなら、今度は本当に日本でも陪審制度が出来てしまうからです。三谷さんの作品は、あくまで想像の世界。現実にあることを舞台化しても、何の面白さもありません。私の勘では、誰かがそうやって三谷さんに進言したのだと思います。

ああ、場内でメモを取っていればなあ・・・面白いギャグ満載のこの舞台を、『朝刊フジ』読者の皆さんに余すことなく伝えられたのに!

とにかく、面白い舞台でした。ちなみに三谷さんの次回作は、来年の1月から開演される、”歌舞伎”なのだそうです。

それでは今日はこの辺で。
フジでした。

『12人の優しい日本人』突撃レポート!①~最悪の劇場到着編~

2005-11-30 00:00:11 | 演劇
おはようございます!『朝刊フジ』編集長は、ローソンのあんまんは、あんがちょっと硬いけど、セブンイレブンの方は中村屋の美味しいこぼれそうなあんで、大満足!のフジでございます。昨日も食べました。一昨日も食べました。今日はどうすっかなあ・・・

さ~て、ついに!であります。
一昨日の月曜、11月28日に、私が体を張って捕まえたチケットを持ち、渋谷PARCO劇場にて『12人の優しい日本人』を見てきました!!!
いやあ、私PARCO劇場、もう10年ぶりくらいではないでしょうか。まして三谷幸喜脚本・演出はもう何年ぶりか分かりません。とにかく前日は興奮状態。眠れませんでした。全く。しかしこれが悪夢の始まりだと誰が予想したでしょうか?

ちなみに『12人』って何?とおっしゃる方は、是非ネットで検索してホームページを見てください。あなたの知ってるあの俳優さんがたくさん出てくるのです。残念ながら東京・大阪公演しかありませんけれども、全国の三谷ファンのためにも、できるだけ臨場感溢れる再現をしたいと考えています。しかしながら、今回はメモなど取る余裕もなく(だって最前列ですもん)、私の記憶を頼りに書き綴りますため、一字一句違わない、というわけには行きませんので、ご了承願います。

私、地元を3時くらいに出る電車に乗って、まず新宿へ行きました。私の使う私鉄では、”快速急行”なるものがあって、地元駅とその次に止まると、後はひたすら都心に向けて駅をジャンジャン飛ばすという、田舎者には便利な列車があるのです。私、連れ(といっても、残念ながら相手は恋人未満です)べチャラクチャラ喋っていました。こちらは『12人』の映画版を見ています。だから薀蓄並べて「今日はここが見どころだよ」などと天狗になっていたのですね。

電車が新宿に着きました。そのとき連れが「帰りの電車の中で食べるもの、どうする」と聞いてきたのです。私は行きがけにその辺でおにぎりでも買えばいいや、と言うと「ダメ!劇場は暑くなってるから、おにぎりがだめになっちゃう!」というのです。そこで、新宿駅を方々探して、芝居の終了時刻の9時5分から換算して、新宿に9時半につくと仮定し、それまでやっている弁当屋などを探したのです。ところが新宿は都心部だというのに、店はみんな9時ごろしまってしまいます。二人でグルグル駅を回りました。
この時、すでに私には前兆が来ていたのです。

ようやく一件、夜10時までやっている弁当屋を見つけました!ほっとと一息。しかし、何だか歩きすぎたのか、めまいがしてきました。目的地は渋谷なので、とにかく渋谷まで行こう、ということになったのですが・・・
電車内でも私は、ふと気が付くとまるで気を失っているかのようにポーっとしてしまいました!徐々にですが、体が震えてきました。連れはまだ気付いていないようです。でも、正直座っていられないんです。体が勝手に動き出してしまうのです。まるでリズムを刻むかのように、足がフラフラ動いてしまう。おかしい!

渋谷に着きました。私は、こんなこともあろうかと、頓服剤を持ってきていたのです。連れが水を買ってきてくれました。私は水で頓服を流し込みましたが、震えが止まりません。震えというより、揺れといった方がいいほど、大きくなってしまいました。連れは「大丈夫?」と言ってくれます。正直こういう姿は見せたくなかった。でもこればっかりは自分の意思ではどうしようもないのです。
その時、私はひらめきました。渋谷には、私のかかりつけのお医者さんがいるではないか!その人のところへ行こう。そして何でもいいから、この異変をとめてもらおう!

医師は私が普段来ない時間に行ったので、ビックリしていました。私は眠れなかったことから、今までのことまでを実演を交え話しました。話しながらも体が言うことを聞かないのです。
とにかく安定剤と筋弛緩剤をもらって、すぐ飲みました。それでも医者のあるビルからPARCO劇場までは、普段と違って相当遠くに見えます。いけるのか!?二人でゆっくりゆっくり歩きます。「これは薬じゃ治らないかもしれない。極度の寝不足なんだ」と言う私。
本当は格好付けて、いいレストランで食事!のはずだったのですが、センター街に入ったすぐそこにあるカレーショップを見て「ここでいい?」

私、具合が悪いのに、カレーの上にクリームコロッケなどをトッピングしてしまったのです。そういうメニューの写真しか見られなかったのです。
「劇場行ける?」と連れ。「とにかく劇場まで行ってみようか。ダメだったら、帰ろ」。
カレーを何とか食べて、ゆっくりPARCOの近くへ。何十分経ったでしょうか。とにかくPARCOにたどり着くことは出来ました。
しかし、売り場に備え付けのイスに座ることしか出来ません。猛烈に襲ってくる眠気。「起こしてあげるよ」と言う連れの一言で眠りに落ちる・・・と良かったのですが、やっぱり緊張して眠れない。だって、考えても見てください。売り場のイスですらまともに座れないんですよ。なのにこれから劇場の狭いイスで、約2時間も拘束されるのです。私、悲鳴をあげてしまうかも知れません。ああ、折角今日のために体調管理してきたのに。風邪も引かなかったのに!

6時半になりました。開場の時間です。エレベーターに乗って7階へ。
ドアが開くと、そこは人、人、人で満員の劇場ロビー。当日券に並ぶ列。そして今から入ろうとするお客さんたち。
とにかく入場すると、そこは『テレホンショッキング』状態。花、花、花!私、この花を見るのが大好きなんです。誰が誰からもらったのかなあ、とか、意外な交友関係が分かるから。江口洋介さんには、ハウスのカレーから来ていてビックリ。今回はとにかく出演者が12人と多いため、花が飾りきれていないようです。本来なら、誰が花を送ってきたか覚えておいて、ここで書くと楽しいんですが、あまりに多くて覚えきれない!

劇場に入りました。まだ3割程度の人しか座っていません。それにしても備え付けの舞台セットが、丸くて大きなテーブルに、12脚のイスが囲むように置かれています。ああ、ここで12人が激論するんだなあ~と、よく見ると、一番手前のイスだけなぜか子供用のような小さなイス。確かにそのイスを入れて12脚です。誰が座るのかなあ?

・・・と、ロビーからテンションが上がりまくって、気が付いたら私、さっきまでの震えや眠気、気持ち悪さなどの全てを全然感じていなかったのです!「とにかくここまで来れば大丈夫だと思ったの」とニッコリの連れ。

私と連れの席は本当にドまん前。最高の席です。私が通路に近い方、連れは奥のほうに座りました。
すると・・・
どこかで見たような男性が前を通り過ぎました。連れの隣に座ります。誰だっけなあ・・・しっかしデカイなあ。それにパンフレット以外にもたくさん買い物をしたようで、危なっかしく持っています。
デカイ?・・・アッ!!
あの巨体は、私がチケットぴあに並んだ時、私の前で並んでいた、男みたいにデカイ女性だったのです!!
私がそのことを連れに耳打ちすると、一言「大きいねえ!」
まさかこんな運命のめぐり合わせがあったとは・・・一言話しかけて見ようかな、と思いましたが、あの時も会話がなかったくらいなので、止めました。

さあ、開演の時間です。開場は超満員!アナウンスが入り、次第に場内が静かになっていきます。
そして定刻の夜7時。突然、舞台の真ん中にスポットライトが。そしてそこに出てきたのは何と・・・

と、今日はここまで。
いよいよ次回、舞台がスタートします。ご期待下さい!
それでは今日はこの辺で。
フジでした。