こんにちは!『朝刊フジ』今日は号外でお届けいたします!編集長は、先日新宿に4軒ほど並んでいる金券ショップに行ったら、後藤真希のコンサートチケットがどの店にも有り余るほど置いてあってビックリ!のフジでございます。チケットって、売りたい人のものほど余って、買いたい人のものほど少ないものなのですねえ・・・
さて、私こと編集長フジは、既にお伝えしていますように、三谷幸喜脚本・演出の舞台『12人の優しい日本人』のチケット入手に、先々行・先行ともに大失敗していたのであります。やはりインターネットで買うのは無理なのでしょうか。フジの頭の中には、超原始的な方法しか浮かばなくなっていたのです。
チケットぴあに並ぶのです。
でも、私以前も並んだことがありましたけれど、朝7時前に行ったら、既に長蛇の列で、結局チケットは買えませんでした。
で、金曜日の夜、「並ぶとしたらどこに並ぶのかなあ」と調べてみることにしました。
何と駅のコンコースの一番隅っこ。ATMのすぐ横です。
チケットぴあ側からのチラシが貼ってありました。『前日から並ぶ方は、荷物などでの場所取りはトラブルの元となるため、認められません』。
前日・・・?
発売は10月30日の日曜日です。私はせいぜい、前の教訓を生かして当日の午前4~5時に並べばいいと思っていました。ところが、前日から並ぶ人がいるのでしょうか!?
家に帰って、ネットで検索してみると、体験談を載せている方がいました。何と『前日の午後4時頃に行ったら、前から3番目でした。でもおかげでいい席ゲット!』
前日の4時い!夕方じゃないですか。チケットぴあの発売は朝10時ですから、お泊りじゃないですか!駅の隅っこで!
自信ないなあ・・・
私、一応レジャーシートなどを用意して、その日は寝ました。明日の気分で、前日から並ぶか決めよう、と思ったのです。
そして次の日、目が覚めました、ちょうど昼の11時。
私は、どうせ中途半端な時間に行って取れないのなら、いっそ昼頃出かけて、徹夜してやろうじゃないか!と思いました。私は基本的に寝なきゃダメな人間です。駅で眠れるとは思えません。でも、意地です。行ってやろうじゃないか!
駅に着きました。午後1時すぎ。
そしたら、オイオイ、もう一人いるじゃねえか!
でっかいなりをしたその男性は、しかも立って待っていたのです。
座らないのかよ・・・
私はちらっと黙礼をして、その人の次に並びました。これから明日の10時まで(正確には、9時にチケットぴあの方が来るので、連続して並ぶのは9時まで)の21時間、ここでじーっと過ごさなければならないのです。
私、携帯電話というものを持っていません。ですから友達にメールしまくって、暇をつぶすこともできないのです。
ボケーっと過ごすこと数時間。よく芸能人などで「趣味は人間ウォッチングです」などとのたまう人がいますが、そういう人はチケットぴあに並べ!駅に行きかう人々を嫌というほどウォッチングできるぞ!
いやあ、いろんな人がいますよ。部活帰りの女子高生たち。なんかやたらスカートの丈が短いじゃないか。脚の上の方しか隠れてないじゃないか。私は地べたに座っていますから、見えちゃうぞ!見てもいいのか?それとも見せたいとでもいうのか?(まさか)
何か、同じ人が駅を何周もしてますよ。北海道と書かれたお土産袋をしょい、お守りをポッケからぶら下げて、シャネルズ時代の鈴木雅之みたいな顔をしている男の人。暇なのか?だったら私の代わりに並んでくれないか!
午後5時。並び始めてから4時間経ちました。何かねえ、人を見てると意外とあきないんですよねえ。あと私、一応持参してきたお菓子の類(私、お菓子というものを食べるの、もう過去に思い出がありません)やみかんなどを頬張っていましたので、何とかなったのです。買って来たお菓子は600円近く。よく遠足の時「お菓子は300円以内」などといったものですが、今もそうなんでしょうか。何にも買えないぞ!今はポッキー買うだけで200円越えちゃうんだぞ!
でも、先頭の人、本を読んでいます。私も『極ミス』用の本を一冊持ってきたのですが、何だか人通りのする中、孤独に浸って本を読むことはできません。バリアーが張れないのです。ATMに入る人をボーっと眺めています。みんななんで金曜日までに下ろしておかないんだ。手数料かかっちゃうぞ!
それにしても、これってトイレはどうするんだろう。物だけ置いて行って来て大丈夫なんだろうか。その辺は先頭の男性は考えているんだろうか・・・
すると。
人の流れの中から、どうも見覚えのある人間が。黒い服を着て、メガネをかけ、キャップをかぶっています。
何と、私のオヤジです!!
噂を聞きつけ、応援に来てくれたのです!
ありがとう、オヤジ!
「こんな所で並んでるの?」と苦笑するオヤジ。代わりに並んでてやるから、ちょっと休んで来いというのです。
私、お言葉に甘えて、1時間ほど喫茶店でコーヒーを飲んだり、トイレを済ませたりしてきました。
帰ると、オヤジがちょこんと座っていました。先頭の人と2人で。私もこんな風に惨めに見えているのか、と思いました。
オヤジは「メシ食いに行ってこい」といいました。しかしオヤジ、いつのまにか口にマスクをしていたのです。かぜを引いているのでした。待たせるわけにも行かず、さっさと近くの丼物屋でネギトロ丼を食べて戻ってきました。
「こんな所で待たせといて、何かあったらどうするの」とオヤジ。本当です。ここは治安は決して悪くはありませんが、だからといって何もないとは限りません。
「何か、早く来すぎちゃったよ。もっと後ろに並んでくれなきゃ、張り合いないよ」と私。ニコリのオヤジ。
しかし・・・オヤジがちょっと歩いてきた間に、私の後ろに女の子が並びに来たのです!ビーチに敷くようなシートを置き、釣りの時座るような小さなイスをしっかりと持ってきて、毛布を巻いてイスに頭を乗せて、さっさと寝てしまったではありませんか!
戻ってきたオヤジとにっこりの私、オヤジと別れる事になりました。ありがとう、かぜ早く治せよ・・・
すると、ここからが長いんだ。時計を見ても10分くらいしか経ちません。お菓子も少なくなるし、一行に並ぶ人が増えるようにも見えない。
こんなに苦しいとは・・・
家でインターネットで取った方がどれだけ楽か。でもアクセスが集中して、どうせ取れるわけありません。
時間との闘い。
しかし、そんな私に潤いをくれた方がいるのです。
私の右手に、”お忘れ物取り扱い所”というのがあったのですが、そこの窓口には、髪の長くて、キリッとした制服のとっても似合うステキな女性がいたのです!
私、恋してしまいそうでした。いや、本当に。
その人、時々現れては、奥に引っ込んでしまいます。出てこないかなあ、まだかなあ。男性駅員と笑顔で話しています。「仕事、精が出るねえ」「いいえ、どうってことないです」「土曜なのに、今日はデートの約束でもあったんじゃない?」「いやだ、そんな人、いませんよお」な~んて話でもしてるんじゃないのかなあ・・・
気が付くと9時です。窓口の女性はまだいます。時々頭を掻き掻きしています。かゆいのかなあ。髪はやっぱりビダル・サスーン使ってるのかなあ、それともパンテーンかなあ。でもパンテーンの宣伝は、髪の毛CGで作ってるぞ。あんなのいいのか!許されるのか!・・・と、私、完全に妄想モードであります。妄想しかすることがないのです!
そして10時。私の次の女性目が醒めたらしく、ふらっと出かけていきます。荷物だけの席取りは大丈夫なのか?でもこの人、何かチケット取り、慣れてるっぽいからいいのかなあ。
そして、先頭の本を読んでいる男性に、近寄ってくる一人の女性。まんま光浦靖子のその方、先頭の男性に「よ~、来たよう」と話しかけます。
やっぱ、この人にも援軍がいたのか・・・
すると男性がしゃべりかけるのですが、声が高い!「待ったわよ」
なな何と、この人、女性だった!
だって、でかすぎるんだもん。男性だって思うじゃん!
後ろの人が帰ってきました。何と吉野家の弁当を持っています。豚肉の香りがすごいです。
そして先頭のデカイ女性も、光浦が順番を取っている間に「吉野家行ってきた」。なんだ、みんな吉野屋なのか!
しかし光浦は『お絵かきロジック』にはまりっぱなしだ。小さい升目に赤蛍光ペンでマメに色を塗っている。「描き描きしたいの」と言いながら、それはもう夜の10時過ぎとは思えないくらいに熱心だ。
そろそろ、駅も空いて来る。別れられない恋人たちが、手を引っ張りあいっこしている。いいなあ。引っ張り合いしたいなあ。「ねえ、明日も遊んで」「ダメだよ。今日遊んだじゃん」「毎日会いたいの」「電話するよ」「うそ、絶対電話くんないもん」な~んて話してるんだろうなあ。
そこへ駅事務所に一人の女性が担ぎ込まれてて来ます。それを追うように来たのが救急隊員、担架に乗せられて救急車へ。
「そういえばさあ」と光浦。「○○さんも救急車で公演中に運ばれていったんだよね」
「そうそう、出待ちしてたらビックリした」
話を聞いているとこの2人、ありとあらゆる公演を見に行っているらしい。公演だけじゃなく、野球だのコンサートだのみんな見に行ってる。もうチケットぴあに並ぶの、相当慣れているみたいです。「この前さあ、駅が工事中で、シャッターの下から光が漏れて眠れなかったよねえ」
シャッター?
私、ちょっと嫌な予感がしてきました。
駅は終電が終わるとシャッターが閉まるはず、そうしたら私たちはどうなるのでしょうか?
ああ、11時半。もう窓口女性はまったく姿を見せません。やっぱり帰ったのかなあ。家でお風呂に入って、ビダル・サスーンであの長い髪を洗っているのかなあ・・・
それにしても、もう身体が辛抱たまりません。想わず立ち上がって、運動をしました。すると私の寄りかかっていた場所に、チケットぴあの紙が貼ってあったのです。『10月30日ご購入のチケットのお知らせ』なるほど、今日は『12人』以外にも、これだけ色々買う人がいるのです。『12人』には『本公演は人気公演のため、列に並ばれてもご購入できない場合がございます』と書いてある。怖い!しかし”人気公演”はこれだけではありません。Gackt、藤井フミヤ、ポルノグラフィテイなどなど。ビックリしたのは、解散したはずの「聖飢魔Ⅱ」が公演してること。もっとびっくりしたのは、元モー娘の中澤裕子がコンサートを開くこと!どちらも人気公演ではありませんでしたが。
私の身体的、精神的限界ももうそこまで来ていました。大体徹夜できる若さではありません。駅員が「新宿行きの最終電車がまもなく発車致します!」と拡声器でアナウンスしています。気が付けばもう12時をとっくに回っています。
先頭の二人は何を思ったのか、踊りを踊りだしました!壊れてく!
そして私の後ろの人は、起きる気配すら見せません・・・
ATMの電気も消え、下り最終列車も去りました。
すると駅員さんが私たちの方へやって来ます。
「はい、シャッター閉めますから、外へ出てくださいね」
そ、そ、外お!?
外は階段です。夜中の1時半に、駅の外の階段に出されてしまったのです!この駅、本当に治安大丈夫なんだろうな!!
後ろの子はさっさと寝てしまいました。やっぱりこのくらいの図太さがなければ徹夜できないですね。光浦も寝てしまいました。「明日は仮眠してから、テニス行くぞお!」と言い残して。全く元気にも程がある!
結局、男性じゃなかった女性と私がお目目パッチリ。その人は光浦がねたのにも拘らず、一生懸命話しかけています。応答は全くありませんが。
おいおい、そうなんだよなあ、駅といえばハトなんだよ。こっちを見てる。一羽だったのが、いつの間にか3羽になってる。じっとこちらを見据えてる。そして飛んで来るんだよ、バサバサバサバサって音を立てながら!怖い!あんなに風を起こさなきゃ、やっぱ飛べないんですよ、人間に羽をつけても、あれだけ風を起こせないですもん。
何だかヒッチコックの『鳥』って映画みたいになってきたぞ。これで明日チケット取れなかったら、暴動起こすぞ!
チャイナドレスの女性が階段の下の道路を男性と一緒に通っていきます。そういうお店があるのでしょうか。
「お姉ちゃん、何待ち?」と話しかけるやさ男。でかい女性が「チケット」というと「風邪引かないでね」と言って去っていきます。いろんな人がいます。
「始発、何時か分かりますか」と話しかけてきたメガネの男の子、何でも飲み会で遅くなってしまったとか。5時過ぎと聞いて苦笑して去っていきました。
眠いよう。しんどいよう。しかし!
ついに来ました!5人目の参列者が!私の次の人が起きます。「私、昨日も並んでたんですよ」と5人目。次の人はまだ眠いのでしょうが、話しています。どうやらこの二人は、『12人」が目当てではなさそうです。
3時半。さっきのメガネの男の子がまたやってきました。「ちょっと寝てきました」ですって。「アルコール抜きました」ですって。いろいろ話しかけてきます。私も眠いのに応対。正直、私、吐きそうでした。リッツのチーズサンドなんかたべてしまったばっかりに、気持ちわるくなってしまったのです。
吐きたい。でも話は続く。その男の子、階段の一番下から話しかけてくるのです。私は上から3段目。声を張らなければなりません。もうしんどいよお!
その時、いきなり「ピューンピュ-ン!!」とけたたましい音が!
駅の警報機が鳴っているのです!
何、何が起こったの!
もうチケットなんて2度と並ばないから許して!!
ハトが一斉に飛び去っていきます。多分ハトがシャッターに激突したのです。苦笑する男の子。
それでも起きない光浦。ものすごいいびきです。私の次の人さえもう寝ていないと言うのに・・・
さあ、もう1時間も男の子と喋って限界の私。しかしシャッターが開くのはもうすぐです。
グイーン!
開いた!
先頭の人から、サササっと滑り込むようにシャッターをくぐります。
「じゃ、がんばって下さい」と男の子。
私も「お気をつけて!」。
何か、駅の中っていいじゃん、と思ったその時!
ハトの大群が歩いてきます!
このあと、ハトはずうっと私たちの前を歩いたり、突然飛んだりして困らせたのでした。
シャッターが開いたあたりから、にわかに列に並ぶ人が増え始めました!次から次へと人が来て、昨日のたった2人で並んでいたのがウソのよう。やっぱり早く来てよかった!
何だか急に活気を帯びてきた列。そして駅も次第に活気付いてきます。
朝も早くから、窓口の女性が復活!ああ、ゆっくり寝られたのかなあ、今日は頭、かゆくないのかなあ・・・
寒い。今日は何だか寒いです。でも先頭の女性は元気そのもの。寝てもいないのに、袖をまくって「今日は暑いねえ」。
さあ、このあとは忍耐だ!すでに時は朝8時。あと1時間でぴあの方がくる!
8時55分にその人は来ました。チケットぴあの発券用紙を持って。私は③と書かれた紙を渡されます。書いて渡すと「一応解散していただいてますので、9時50分までにここへ再集合して下さい」。
私、列を離れるとビックリ。列に並んでいる人はそれはもうたくさんいたのでした。これだけいると、買えない人も出てきますよ。でも仕方ない。20時間並んだ人間もいるのですから。
時間になると、一足早くデパートに通されます。そして開店!
同時に一番目の人から販売開始です。私、てっきり1、2番目の二人は同じものを買うのかと思っていたら、一番目の人は『12人』を1人分だけ買ったのです。2番目の人は何を買ったのか不明。それどころではありません。だって次は私の出番!
来ました!
「M列になります」と指されたのは、何と一番後ろの席!
どうやら、2枚買うと前のほうが難しいみたいなのです。
私、「前のほうで見られる日はありませんか」というと「プレビューがあります」との答えが。
会場となるPARCO劇場は、初日の二日は「プレビュー」と題して、役者がなれていないことを考慮して500円安く販売するのです。
「X列をお取りできますが」
何と、ド先頭!
「プ、プレビューでもいいです」
やったああああああ!
取ったどおおおおお!
あの『24』ならぬ『21』を過ぎて、ようやく2枚のチケットを取ることができました!
今日の格言:
『チケットは取れるものではない。取るものだ』
やはり、チケット取りには情熱が必要なんです。インターネットで抽選を待っているだけではダメなのです!
さて、読者の皆さんで『12人』にトライした方、いかがでしたか?
「私、取れなかったの。くやしい!」と言う方。
「オレ、インターネットで当たっちゃった。フジ、世の中楽に生きなきゃ」という方。
「『12人』?知らない。それより藤井フミヤの大晦日、取っちゃった」と言う方。
「オレはなんと言っても中澤裕子。人気公演でなくても中澤裕子!」という方。
是非是非コメントをお寄せ下さい!思いのたけをフジにぶつけて下さい!大歓迎しております!
それでは、号外はこの辺で。
フジでした。
さて、私こと編集長フジは、既にお伝えしていますように、三谷幸喜脚本・演出の舞台『12人の優しい日本人』のチケット入手に、先々行・先行ともに大失敗していたのであります。やはりインターネットで買うのは無理なのでしょうか。フジの頭の中には、超原始的な方法しか浮かばなくなっていたのです。
チケットぴあに並ぶのです。
でも、私以前も並んだことがありましたけれど、朝7時前に行ったら、既に長蛇の列で、結局チケットは買えませんでした。
で、金曜日の夜、「並ぶとしたらどこに並ぶのかなあ」と調べてみることにしました。
何と駅のコンコースの一番隅っこ。ATMのすぐ横です。
チケットぴあ側からのチラシが貼ってありました。『前日から並ぶ方は、荷物などでの場所取りはトラブルの元となるため、認められません』。
前日・・・?
発売は10月30日の日曜日です。私はせいぜい、前の教訓を生かして当日の午前4~5時に並べばいいと思っていました。ところが、前日から並ぶ人がいるのでしょうか!?
家に帰って、ネットで検索してみると、体験談を載せている方がいました。何と『前日の午後4時頃に行ったら、前から3番目でした。でもおかげでいい席ゲット!』
前日の4時い!夕方じゃないですか。チケットぴあの発売は朝10時ですから、お泊りじゃないですか!駅の隅っこで!
自信ないなあ・・・
私、一応レジャーシートなどを用意して、その日は寝ました。明日の気分で、前日から並ぶか決めよう、と思ったのです。
そして次の日、目が覚めました、ちょうど昼の11時。
私は、どうせ中途半端な時間に行って取れないのなら、いっそ昼頃出かけて、徹夜してやろうじゃないか!と思いました。私は基本的に寝なきゃダメな人間です。駅で眠れるとは思えません。でも、意地です。行ってやろうじゃないか!
駅に着きました。午後1時すぎ。
そしたら、オイオイ、もう一人いるじゃねえか!
でっかいなりをしたその男性は、しかも立って待っていたのです。
座らないのかよ・・・
私はちらっと黙礼をして、その人の次に並びました。これから明日の10時まで(正確には、9時にチケットぴあの方が来るので、連続して並ぶのは9時まで)の21時間、ここでじーっと過ごさなければならないのです。
私、携帯電話というものを持っていません。ですから友達にメールしまくって、暇をつぶすこともできないのです。
ボケーっと過ごすこと数時間。よく芸能人などで「趣味は人間ウォッチングです」などとのたまう人がいますが、そういう人はチケットぴあに並べ!駅に行きかう人々を嫌というほどウォッチングできるぞ!
いやあ、いろんな人がいますよ。部活帰りの女子高生たち。なんかやたらスカートの丈が短いじゃないか。脚の上の方しか隠れてないじゃないか。私は地べたに座っていますから、見えちゃうぞ!見てもいいのか?それとも見せたいとでもいうのか?(まさか)
何か、同じ人が駅を何周もしてますよ。北海道と書かれたお土産袋をしょい、お守りをポッケからぶら下げて、シャネルズ時代の鈴木雅之みたいな顔をしている男の人。暇なのか?だったら私の代わりに並んでくれないか!
午後5時。並び始めてから4時間経ちました。何かねえ、人を見てると意外とあきないんですよねえ。あと私、一応持参してきたお菓子の類(私、お菓子というものを食べるの、もう過去に思い出がありません)やみかんなどを頬張っていましたので、何とかなったのです。買って来たお菓子は600円近く。よく遠足の時「お菓子は300円以内」などといったものですが、今もそうなんでしょうか。何にも買えないぞ!今はポッキー買うだけで200円越えちゃうんだぞ!
でも、先頭の人、本を読んでいます。私も『極ミス』用の本を一冊持ってきたのですが、何だか人通りのする中、孤独に浸って本を読むことはできません。バリアーが張れないのです。ATMに入る人をボーっと眺めています。みんななんで金曜日までに下ろしておかないんだ。手数料かかっちゃうぞ!
それにしても、これってトイレはどうするんだろう。物だけ置いて行って来て大丈夫なんだろうか。その辺は先頭の男性は考えているんだろうか・・・
すると。
人の流れの中から、どうも見覚えのある人間が。黒い服を着て、メガネをかけ、キャップをかぶっています。
何と、私のオヤジです!!
噂を聞きつけ、応援に来てくれたのです!
ありがとう、オヤジ!
「こんな所で並んでるの?」と苦笑するオヤジ。代わりに並んでてやるから、ちょっと休んで来いというのです。
私、お言葉に甘えて、1時間ほど喫茶店でコーヒーを飲んだり、トイレを済ませたりしてきました。
帰ると、オヤジがちょこんと座っていました。先頭の人と2人で。私もこんな風に惨めに見えているのか、と思いました。
オヤジは「メシ食いに行ってこい」といいました。しかしオヤジ、いつのまにか口にマスクをしていたのです。かぜを引いているのでした。待たせるわけにも行かず、さっさと近くの丼物屋でネギトロ丼を食べて戻ってきました。
「こんな所で待たせといて、何かあったらどうするの」とオヤジ。本当です。ここは治安は決して悪くはありませんが、だからといって何もないとは限りません。
「何か、早く来すぎちゃったよ。もっと後ろに並んでくれなきゃ、張り合いないよ」と私。ニコリのオヤジ。
しかし・・・オヤジがちょっと歩いてきた間に、私の後ろに女の子が並びに来たのです!ビーチに敷くようなシートを置き、釣りの時座るような小さなイスをしっかりと持ってきて、毛布を巻いてイスに頭を乗せて、さっさと寝てしまったではありませんか!
戻ってきたオヤジとにっこりの私、オヤジと別れる事になりました。ありがとう、かぜ早く治せよ・・・
すると、ここからが長いんだ。時計を見ても10分くらいしか経ちません。お菓子も少なくなるし、一行に並ぶ人が増えるようにも見えない。
こんなに苦しいとは・・・
家でインターネットで取った方がどれだけ楽か。でもアクセスが集中して、どうせ取れるわけありません。
時間との闘い。
しかし、そんな私に潤いをくれた方がいるのです。
私の右手に、”お忘れ物取り扱い所”というのがあったのですが、そこの窓口には、髪の長くて、キリッとした制服のとっても似合うステキな女性がいたのです!
私、恋してしまいそうでした。いや、本当に。
その人、時々現れては、奥に引っ込んでしまいます。出てこないかなあ、まだかなあ。男性駅員と笑顔で話しています。「仕事、精が出るねえ」「いいえ、どうってことないです」「土曜なのに、今日はデートの約束でもあったんじゃない?」「いやだ、そんな人、いませんよお」な~んて話でもしてるんじゃないのかなあ・・・
気が付くと9時です。窓口の女性はまだいます。時々頭を掻き掻きしています。かゆいのかなあ。髪はやっぱりビダル・サスーン使ってるのかなあ、それともパンテーンかなあ。でもパンテーンの宣伝は、髪の毛CGで作ってるぞ。あんなのいいのか!許されるのか!・・・と、私、完全に妄想モードであります。妄想しかすることがないのです!
そして10時。私の次の女性目が醒めたらしく、ふらっと出かけていきます。荷物だけの席取りは大丈夫なのか?でもこの人、何かチケット取り、慣れてるっぽいからいいのかなあ。
そして、先頭の本を読んでいる男性に、近寄ってくる一人の女性。まんま光浦靖子のその方、先頭の男性に「よ~、来たよう」と話しかけます。
やっぱ、この人にも援軍がいたのか・・・
すると男性がしゃべりかけるのですが、声が高い!「待ったわよ」
なな何と、この人、女性だった!
だって、でかすぎるんだもん。男性だって思うじゃん!
後ろの人が帰ってきました。何と吉野家の弁当を持っています。豚肉の香りがすごいです。
そして先頭のデカイ女性も、光浦が順番を取っている間に「吉野家行ってきた」。なんだ、みんな吉野屋なのか!
しかし光浦は『お絵かきロジック』にはまりっぱなしだ。小さい升目に赤蛍光ペンでマメに色を塗っている。「描き描きしたいの」と言いながら、それはもう夜の10時過ぎとは思えないくらいに熱心だ。
そろそろ、駅も空いて来る。別れられない恋人たちが、手を引っ張りあいっこしている。いいなあ。引っ張り合いしたいなあ。「ねえ、明日も遊んで」「ダメだよ。今日遊んだじゃん」「毎日会いたいの」「電話するよ」「うそ、絶対電話くんないもん」な~んて話してるんだろうなあ。
そこへ駅事務所に一人の女性が担ぎ込まれてて来ます。それを追うように来たのが救急隊員、担架に乗せられて救急車へ。
「そういえばさあ」と光浦。「○○さんも救急車で公演中に運ばれていったんだよね」
「そうそう、出待ちしてたらビックリした」
話を聞いているとこの2人、ありとあらゆる公演を見に行っているらしい。公演だけじゃなく、野球だのコンサートだのみんな見に行ってる。もうチケットぴあに並ぶの、相当慣れているみたいです。「この前さあ、駅が工事中で、シャッターの下から光が漏れて眠れなかったよねえ」
シャッター?
私、ちょっと嫌な予感がしてきました。
駅は終電が終わるとシャッターが閉まるはず、そうしたら私たちはどうなるのでしょうか?
ああ、11時半。もう窓口女性はまったく姿を見せません。やっぱり帰ったのかなあ。家でお風呂に入って、ビダル・サスーンであの長い髪を洗っているのかなあ・・・
それにしても、もう身体が辛抱たまりません。想わず立ち上がって、運動をしました。すると私の寄りかかっていた場所に、チケットぴあの紙が貼ってあったのです。『10月30日ご購入のチケットのお知らせ』なるほど、今日は『12人』以外にも、これだけ色々買う人がいるのです。『12人』には『本公演は人気公演のため、列に並ばれてもご購入できない場合がございます』と書いてある。怖い!しかし”人気公演”はこれだけではありません。Gackt、藤井フミヤ、ポルノグラフィテイなどなど。ビックリしたのは、解散したはずの「聖飢魔Ⅱ」が公演してること。もっとびっくりしたのは、元モー娘の中澤裕子がコンサートを開くこと!どちらも人気公演ではありませんでしたが。
私の身体的、精神的限界ももうそこまで来ていました。大体徹夜できる若さではありません。駅員が「新宿行きの最終電車がまもなく発車致します!」と拡声器でアナウンスしています。気が付けばもう12時をとっくに回っています。
先頭の二人は何を思ったのか、踊りを踊りだしました!壊れてく!
そして私の後ろの人は、起きる気配すら見せません・・・
ATMの電気も消え、下り最終列車も去りました。
すると駅員さんが私たちの方へやって来ます。
「はい、シャッター閉めますから、外へ出てくださいね」
そ、そ、外お!?
外は階段です。夜中の1時半に、駅の外の階段に出されてしまったのです!この駅、本当に治安大丈夫なんだろうな!!
後ろの子はさっさと寝てしまいました。やっぱりこのくらいの図太さがなければ徹夜できないですね。光浦も寝てしまいました。「明日は仮眠してから、テニス行くぞお!」と言い残して。全く元気にも程がある!
結局、男性じゃなかった女性と私がお目目パッチリ。その人は光浦がねたのにも拘らず、一生懸命話しかけています。応答は全くありませんが。
おいおい、そうなんだよなあ、駅といえばハトなんだよ。こっちを見てる。一羽だったのが、いつの間にか3羽になってる。じっとこちらを見据えてる。そして飛んで来るんだよ、バサバサバサバサって音を立てながら!怖い!あんなに風を起こさなきゃ、やっぱ飛べないんですよ、人間に羽をつけても、あれだけ風を起こせないですもん。
何だかヒッチコックの『鳥』って映画みたいになってきたぞ。これで明日チケット取れなかったら、暴動起こすぞ!
チャイナドレスの女性が階段の下の道路を男性と一緒に通っていきます。そういうお店があるのでしょうか。
「お姉ちゃん、何待ち?」と話しかけるやさ男。でかい女性が「チケット」というと「風邪引かないでね」と言って去っていきます。いろんな人がいます。
「始発、何時か分かりますか」と話しかけてきたメガネの男の子、何でも飲み会で遅くなってしまったとか。5時過ぎと聞いて苦笑して去っていきました。
眠いよう。しんどいよう。しかし!
ついに来ました!5人目の参列者が!私の次の人が起きます。「私、昨日も並んでたんですよ」と5人目。次の人はまだ眠いのでしょうが、話しています。どうやらこの二人は、『12人」が目当てではなさそうです。
3時半。さっきのメガネの男の子がまたやってきました。「ちょっと寝てきました」ですって。「アルコール抜きました」ですって。いろいろ話しかけてきます。私も眠いのに応対。正直、私、吐きそうでした。リッツのチーズサンドなんかたべてしまったばっかりに、気持ちわるくなってしまったのです。
吐きたい。でも話は続く。その男の子、階段の一番下から話しかけてくるのです。私は上から3段目。声を張らなければなりません。もうしんどいよお!
その時、いきなり「ピューンピュ-ン!!」とけたたましい音が!
駅の警報機が鳴っているのです!
何、何が起こったの!
もうチケットなんて2度と並ばないから許して!!
ハトが一斉に飛び去っていきます。多分ハトがシャッターに激突したのです。苦笑する男の子。
それでも起きない光浦。ものすごいいびきです。私の次の人さえもう寝ていないと言うのに・・・
さあ、もう1時間も男の子と喋って限界の私。しかしシャッターが開くのはもうすぐです。
グイーン!
開いた!
先頭の人から、サササっと滑り込むようにシャッターをくぐります。
「じゃ、がんばって下さい」と男の子。
私も「お気をつけて!」。
何か、駅の中っていいじゃん、と思ったその時!
ハトの大群が歩いてきます!
このあと、ハトはずうっと私たちの前を歩いたり、突然飛んだりして困らせたのでした。
シャッターが開いたあたりから、にわかに列に並ぶ人が増え始めました!次から次へと人が来て、昨日のたった2人で並んでいたのがウソのよう。やっぱり早く来てよかった!
何だか急に活気を帯びてきた列。そして駅も次第に活気付いてきます。
朝も早くから、窓口の女性が復活!ああ、ゆっくり寝られたのかなあ、今日は頭、かゆくないのかなあ・・・
寒い。今日は何だか寒いです。でも先頭の女性は元気そのもの。寝てもいないのに、袖をまくって「今日は暑いねえ」。
さあ、このあとは忍耐だ!すでに時は朝8時。あと1時間でぴあの方がくる!
8時55分にその人は来ました。チケットぴあの発券用紙を持って。私は③と書かれた紙を渡されます。書いて渡すと「一応解散していただいてますので、9時50分までにここへ再集合して下さい」。
私、列を離れるとビックリ。列に並んでいる人はそれはもうたくさんいたのでした。これだけいると、買えない人も出てきますよ。でも仕方ない。20時間並んだ人間もいるのですから。
時間になると、一足早くデパートに通されます。そして開店!
同時に一番目の人から販売開始です。私、てっきり1、2番目の二人は同じものを買うのかと思っていたら、一番目の人は『12人』を1人分だけ買ったのです。2番目の人は何を買ったのか不明。それどころではありません。だって次は私の出番!
来ました!
「M列になります」と指されたのは、何と一番後ろの席!
どうやら、2枚買うと前のほうが難しいみたいなのです。
私、「前のほうで見られる日はありませんか」というと「プレビューがあります」との答えが。
会場となるPARCO劇場は、初日の二日は「プレビュー」と題して、役者がなれていないことを考慮して500円安く販売するのです。
「X列をお取りできますが」
何と、ド先頭!
「プ、プレビューでもいいです」
やったああああああ!
取ったどおおおおお!
あの『24』ならぬ『21』を過ぎて、ようやく2枚のチケットを取ることができました!
今日の格言:
『チケットは取れるものではない。取るものだ』
やはり、チケット取りには情熱が必要なんです。インターネットで抽選を待っているだけではダメなのです!
さて、読者の皆さんで『12人』にトライした方、いかがでしたか?
「私、取れなかったの。くやしい!」と言う方。
「オレ、インターネットで当たっちゃった。フジ、世の中楽に生きなきゃ」という方。
「『12人』?知らない。それより藤井フミヤの大晦日、取っちゃった」と言う方。
「オレはなんと言っても中澤裕子。人気公演でなくても中澤裕子!」という方。
是非是非コメントをお寄せ下さい!思いのたけをフジにぶつけて下さい!大歓迎しております!
それでは、号外はこの辺で。
フジでした。