波士敦謾録

岩倉使節団ヨリ百三十余年ヲ経テ

米最高裁保守・中道派のオコーナー判事の引退

2005-07-02 12:06:51 | 米国事情
 遂に来るべきものが来た趣だ.彼女の引退により,現政権は以前から用意していた保守系候補を直ちに指名するであろうが,米国連邦議会上院民主党議員はフィルバスター等の最終兵器的手段をとっても徹底抗戦するに違いない.なぜならば,1930年~1970年代にかけて民主党政権主導で成立してきた各種の制度を葬る判決を,今後保守派5名対非保守派4名という結果で,下すことが可能になるからだ.更に,現政権は,過去の失敗に学び(保守と思われた判事が,次第に非保守側に歩み寄ってしまった),徹底的な事前調査で,超保守派判事のスカリアやトーマスのように全く揺ぎ無い立場を維持できる人物を篩いにかけて,指名してくるに違いない.過去の指名状況を見ると,能力の優劣が指名の基準ではなく,現政権が標榜する政治的立場に対して,如何に忠実に判決を下してきたか・今後下すか,が最も重要な指名判断基準なのだ.
 日本と違い,最高裁の判決が社会のあらゆる営みに対して甚大な影響を与える米国の場合,判事構成が4対5から5対4に裏返ることによる衝撃は非常に大きい.米国の国政政情も有権者10人中の1人がどちらに投票するかによって決まるというような不安定な状況であり,過去回帰志向の急進路線が米現政権によって選択された場合,米の国論を今まで以上に二分し,政情不安を雪崩的に引き起こす(特に民主党優位の青色州で)可能性が高い.

© 2005 Ichinoi Yoshinori. All rights reserved. [Last Update:07/02/2005/ EST]