波士敦謾録

岩倉使節団ヨリ百三十余年ヲ経テ

米PBSの第二次大戦戦勝60周年番組: Victory in Pacificと「海ゆかば」

2005-05-02 14:45:09 | 米国事情
 4月上旬にNHKが放映した元寇に関する歴史番組が常軌を逸した媚支那的構成であることが網路上で批判されている.この元寇失敗の裏に何らかの天佑神助を感じたことから,日本人の語彙の中に「神風」という言葉が定着し,更に,此れより数百年の時を経た大東亜戦争末期に「神風特別攻撃隊」として日本人の人口に再登場した際には,日本を越えて世界的に広まることになった.ところで,Googleしてみると分かるのだが,この「神風特別攻撃隊」という語中の「神風」部分についての発音は,旧海軍では,明治初期の不平士族の反乱として有名な「神風連(しんぷうれん)の乱」同様,「しんぷう」と音読みしていたそうだ.しかし,実際のところ,特攻隊の現場やメディアに対しての周知が不徹底だったようで,訓読みの「かみかぜ」の方が世間に定着し,その後世界に広まった模様である.
 今年は第二次世界大戦終結60周年の年にあたり,旧連合国では様々な記念行事等が催されている.先日中共から繰り出された反日攻勢も当該60周年に託けていたし,台湾の国民党主席の中共国家主席との本土での第三次国共合作と呼ばれる会談も此れに託けているのであろう.ましてや,十干十二支が一回りした60年ならば尚更であろう.このような状況において,米公共放送局PBSがVictory in Pacificという番組をヨーロッパ戦終了にあたる5月上旬に放映する.米国の放送界は,6月から8月までの間は夏季休業という教育界と同じく,報道番組以外は新番組の放送は殆どなく昨年9月から5月まで放映した番組の再放送等のみになる.太平洋戦での日本降伏はこの夏季休業期間中の8月なので,時期を繰り上げての放映が決定されたのであろう.日本のメディアが大東亜戦争を扱った番組の放映を年毎に切り詰めているのに対して,戦勝国ということもあろうが,米国では第二次世界大戦を扱った番組は毎週何処かのチャンネルで放映されているくらいの頻度でお目にかかれる.敗戦国として屈辱的な裁判を甘受し,主権回復後も自国の軍事一般について正面から堂々と論じることがタブーになってしまった国としては,戦前の話は全て封印して沈黙を決め,中・韓(+北)が定期的に強請り的外交を仕掛けてくれば反射的に平身低頭の御詫びを繰り返すのが関の山で,昭和の戦前部分について温故知新を積極的にやろうという心構えなど日本の主流メディアには微塵もないようだ.
 これまでの米国の戦史番組を見た限りでは,未だに連合軍=正,日本=邪という従来の二分法的な構図から完全に抜け出したものはない.ただし,今回の放映予定のPBS番組の様に,日本の扱い方が徐々に変化している印象も受ける.往事を知る世代が番組制作の第一線から去り,戦中派世代にとって当たり前の常識だった事柄も後世の人間にとっては不可解で疑問を呈せざるを得ないことも沢山出てきたのに違いない.場合によっては,戦中派世代よりも,より俯瞰的な視座から当時の国際状況を第三者的に把握できるようになった,ということも十分考えられる.また戦後米国における日本製品・大衆文化の受容を通して,米国人の対日観が改善し,戦時プロパガンダによって形成された「亜細亜で暴れ回っている凶暴な反っ歯・眼鏡ゴリラ」とか,「すぐ壊れる玩具の製造国」というような往時の対日イメージが過去の物になったことも挙げられる.
 今回の番組が上記特別攻撃隊について焦点を向けているのは,9.11事件の影響だろうか?当該番組のサイトでは,わざわざ『海ゆかば』を試聴できるようになっている.ただし,サイトに掲載されている歌詞は旧海軍が明治時代に制定した儀仗用のもので(続日本紀によるもの),日支事変,大東亜戦争中に斉唱された昭和版(万葉集によるもの)ではない.しかし,試聴用録音は後者の昭和版になっている.両者の違いは,曲が全く違うことは別として,歌詞の最後で,「長閑(のど)には死なじ」となるのが明治版,「顧みはせじ」と歌うのが昭和版だ.旧海軍の特攻隊員が出撃直前に斉唱したのは,どちらだったのか.海軍である以上やはり明治版だろうか.昔,当時の映像ニュースを見た記憶では,背景音楽として昭和版が演奏されていたような気がする.隊員の斉唱を拾っていても編集で昭和版に上書きされていたかもしれないが.因みに当番組が掲載しているローマ字化した歌詞中に一部間違いがあり,気になり訂正依頼のコメントを送っておいた.

註:

東儀季芳作曲の海軍(明治)版の『海ゆかば』の楽譜は以下の網站で閲覧可能

http://school.nijl.ac.jp/kindai/CKMR/CKMR-00053.html

同曲の実際の歌唱は以下の網站の第4作目のFlashファイルで鑑賞可能

http://kaga226.hp.infoseek.co.jp/


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浦志強:中國的選擇性記憶(China's Selective Memory)

2005-05-02 13:53:37 | 米国事情
 先日『溶解する日本』という網誌を覘いてみると,NYタイムズ掲載の支那人弁護士による日支教科書絡みの投稿記事が取り上げられていた.産経新聞の古森特派員が同紙上で前記NYT記事を紹介していたそうだ.NYTの原文をみると,原文は支那語という脚注があったので,台湾系のGoogleで著者の「浦志強」を検索してみると,ネットニュース系の「多維新聞」に掲載された支那語版(原標題は『中國的選擇性記憶』コラム記事がオリジナルのようだ.内容を掻い摘むと,「日本兵沢山悪いことした.中共もそれと同じくらい悪いことしたけど,黙っている」的な論調であり,産経新聞あたりが本来期待している論調から外れているように思われる.中共政府にフリーパスを与えてきた過去からすると,米国人が中共の教科書に強い疑念を抱くようになることは,望ましい流れかもしれない.しかし,日帝=中共悪党同士という相変わらずの日本悪党説が不動では,第二次大戦後の日本の名誉回復も遥かに遠い先のことになりそうだ.
 この検索の件で気付いたのだが,Google検索の癖というか,正字(繁体)表現の漢字列検索では,英語,日本語による検索ユーザー・インターフェイス(UI)では全くヒットせず,中文(繁體)のものでないとヒットしないことである.エンコーディングの問題もあるのだろうが,同じ漢字でも支那語文字列検索は,日本語用では駄目で,専用検索UIでやって下さい,ということか.