2009/9/14~12/6(京都・相国寺承天閣美術館)

昨年、同じ場所で山口伊太郎遺作展があった。安次郎氏は、その弟さんで、間もなく105歳になるそうだ。プロデューサーだったお兄さんとは異なり、生涯一職人に徹して黙々と機を織り続けて来た。
玉三郎が失われた昔の装束の意匠を探り出して安次郎さんに復元を頼む過程をTVのドキュメンタリーで観たことがある。ダイアナ妃も来日した際には安次郎さんの工房を訪ねて、水仙の柄の唐織を所望された。人間国宝に指定されかけたのは、仕事しづらくなるからと断った。そんな感じのすごいおじいさんなのだ。
展示会には見事に能装束ばかりが、贅沢に展示されていた。能装束が展示されることはよくあるけれども、これだけまとまった数となると、そうはないだろう。105歳にかけて105領を展示するようだ。
一般公開は明日からで、今日は、後述の演能チケットを持つ人だけが一足早く入れてもらえた。さらにその前には招待客のみ(お得意様なんだろうなぁ)の内覧会もあった。そんなわけで、まだ図録は売ってもらえず、詳細データが手元にないのだけれど、朝長用の厚板、秋草の唐織(なぜか春の能によいと金剛さんの先代はおっしゃったらしい)、紫色の几帳がよかった。それと、10/1の能で使われる半蔀の唐織もそれはそれは美しかった。
依頼主に合わせてだろうか、すこしずつサイズの違うのも、当たり前とはいえ面白かった。裏を見せる展示もあって、唐織は実は見かけよりずっと軽いということが納得できた。
余談)
実は、安次郎氏の会社山口織物さんの事務所裏に拙宅はあり、ご本人とお話したことはないのだけれど、娘さんとはときおり庭越しにお話をする。安次郎氏ご愛用の作務衣の刺し子はみな彼女の作品だ。
そこで伺う父親としての安次郎氏のお話はほんとうに素晴らしい。こんなに立派なお仕事をされているのに、三食自分のことは自分でするどころか、お総菜を作って子供に届けることさえよくあったそうだ。戦時中は仕事や自分のこだわりは捨てて、ひたすら子供たちの食料を確保することに心を砕いてくれた。
夜になると、トンボ玉を楽しそうにつないで孫子への贈り物にしたりする。面倒な取材などはいやがるけれど、若くて綺麗な女性は大好きみたい、この間は女優の誰々さんと機嫌良くお話をしていた……などなど。
お父様を深く尊敬し愛していらっしゃるのが、ほんのちょっとの立ち話からも伝わってきて、こんなふうに人生の最晩年まで、子供や孫たちから大切にされるおじいさんは立派だなぁとつくづく思うのだ。
最近の若い人は年寄りを大事にしないと非難されるけれど、大事にされるにはされるだけの理由もあるのではないかな、と。
もっともっと長生きしていただきたいです。
展示替えになった頃、また行ってみようと思っている。
山口安次郎展
京都新聞の記事

昨年、同じ場所で山口伊太郎遺作展があった。安次郎氏は、その弟さんで、間もなく105歳になるそうだ。プロデューサーだったお兄さんとは異なり、生涯一職人に徹して黙々と機を織り続けて来た。
玉三郎が失われた昔の装束の意匠を探り出して安次郎さんに復元を頼む過程をTVのドキュメンタリーで観たことがある。ダイアナ妃も来日した際には安次郎さんの工房を訪ねて、水仙の柄の唐織を所望された。人間国宝に指定されかけたのは、仕事しづらくなるからと断った。そんな感じのすごいおじいさんなのだ。
展示会には見事に能装束ばかりが、贅沢に展示されていた。能装束が展示されることはよくあるけれども、これだけまとまった数となると、そうはないだろう。105歳にかけて105領を展示するようだ。
一般公開は明日からで、今日は、後述の演能チケットを持つ人だけが一足早く入れてもらえた。さらにその前には招待客のみ(お得意様なんだろうなぁ)の内覧会もあった。そんなわけで、まだ図録は売ってもらえず、詳細データが手元にないのだけれど、朝長用の厚板、秋草の唐織(なぜか春の能によいと金剛さんの先代はおっしゃったらしい)、紫色の几帳がよかった。それと、10/1の能で使われる半蔀の唐織もそれはそれは美しかった。
依頼主に合わせてだろうか、すこしずつサイズの違うのも、当たり前とはいえ面白かった。裏を見せる展示もあって、唐織は実は見かけよりずっと軽いということが納得できた。
余談)
実は、安次郎氏の会社山口織物さんの事務所裏に拙宅はあり、ご本人とお話したことはないのだけれど、娘さんとはときおり庭越しにお話をする。安次郎氏ご愛用の作務衣の刺し子はみな彼女の作品だ。
そこで伺う父親としての安次郎氏のお話はほんとうに素晴らしい。こんなに立派なお仕事をされているのに、三食自分のことは自分でするどころか、お総菜を作って子供に届けることさえよくあったそうだ。戦時中は仕事や自分のこだわりは捨てて、ひたすら子供たちの食料を確保することに心を砕いてくれた。
夜になると、トンボ玉を楽しそうにつないで孫子への贈り物にしたりする。面倒な取材などはいやがるけれど、若くて綺麗な女性は大好きみたい、この間は女優の誰々さんと機嫌良くお話をしていた……などなど。
お父様を深く尊敬し愛していらっしゃるのが、ほんのちょっとの立ち話からも伝わってきて、こんなふうに人生の最晩年まで、子供や孫たちから大切にされるおじいさんは立派だなぁとつくづく思うのだ。
最近の若い人は年寄りを大事にしないと非難されるけれど、大事にされるにはされるだけの理由もあるのではないかな、と。
もっともっと長生きしていただきたいです。
展示替えになった頃、また行ってみようと思っている。
山口安次郎展
京都新聞の記事
晴耕雨織な暮らし、理想です。
よく祇園祭のことを動く美術館だと言いますが、能もそうじゃないかと思いました。
3回の展示替え、ぜひ105領すべてを目に残しておきたいと思います。
あのあと入手した図録を少しずつ読んでいるところです。
わたしも、後半にもう一度行ってみます♪
手の技、身体の技、全身全霊から来る魂の技なんでしょうね、
見ているだけで、織り糸の中に吸い込まれそう、