私の大好きな小説に、宮本輝の「流転の海」というのがあります。野菜の花の写真を撮りながら、主人公松阪熊吾が息子の伸仁に心斎橋の居酒屋で耳にした話を聞かせてやる回想シーンを思い浮かべました。
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「こないだ心斎橋の飲み屋で、誠に含蓄のある話を聞いた。人相とか、その人間がもっちょるたたずまいというものの大切さについての話じゃった。」と熊吾は言い、田園を見渡して、遠くにキュウリの畑とおぼしきところをみつけてそれを指差した。
「野菜の花っちゅうのはじつに可憐で品があって美しいもんじゃという話題から始まってのぉ…」とつづけた。
居酒屋の主人は、その野菜の花の美しさは、人々に季節の味や栄養をもたらし、人々の役に立つ働きとか使命を担っているが故に天から与えられた徳のような気がすると言った。
そうとでも解釈しなければ、あの野菜の花の可憐な品の由来は説明できない、と。
すると客は強く同意し、人々を楽しませ、人々の役に立ち、人々を癒すために生まれたからこその品格が小さな花にも厳と存在するならば、人間もまた同じではあるまいかと言った。そしてそれは見事なまでに人相にあらわれるのではないだろうか、と。(中略)
人間の相、そして目の深さは、その人の心根や教養や経験や修練や、とりわけ思想や哲学といったものに培われていくもので、決して生まれつきのまま不変であったり、また毀誉褒貶によって変化するものでもない。品も徳も、それによってもたらされる人相も目の深さや力も、野菜の花と同じく、人々のためになるかならないかの、その存在の意義に依っているのかもしれない……。
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「流転の海」シリーズには、我が意を得たり!と思わず膝をぽんっと打ってしまう人生論がたくさん出てきます。この一節を読み、なるほど世の中が野菜の花のような人間ばかりならよいのになぁとつくづく感じました。最後にトマトの花と茄子の花を。(冒頭はじゃがいもの花です)可憐ということでは、スナックえんどうの花もぴったり来ますね。
楽しかったらポチッと押してね。やる気が出ます!
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「こないだ心斎橋の飲み屋で、誠に含蓄のある話を聞いた。人相とか、その人間がもっちょるたたずまいというものの大切さについての話じゃった。」と熊吾は言い、田園を見渡して、遠くにキュウリの畑とおぼしきところをみつけてそれを指差した。
「野菜の花っちゅうのはじつに可憐で品があって美しいもんじゃという話題から始まってのぉ…」とつづけた。
居酒屋の主人は、その野菜の花の美しさは、人々に季節の味や栄養をもたらし、人々の役に立つ働きとか使命を担っているが故に天から与えられた徳のような気がすると言った。
そうとでも解釈しなければ、あの野菜の花の可憐な品の由来は説明できない、と。
すると客は強く同意し、人々を楽しませ、人々の役に立ち、人々を癒すために生まれたからこその品格が小さな花にも厳と存在するならば、人間もまた同じではあるまいかと言った。そしてそれは見事なまでに人相にあらわれるのではないだろうか、と。(中略)
人間の相、そして目の深さは、その人の心根や教養や経験や修練や、とりわけ思想や哲学といったものに培われていくもので、決して生まれつきのまま不変であったり、また毀誉褒貶によって変化するものでもない。品も徳も、それによってもたらされる人相も目の深さや力も、野菜の花と同じく、人々のためになるかならないかの、その存在の意義に依っているのかもしれない……。
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「流転の海」シリーズには、我が意を得たり!と思わず膝をぽんっと打ってしまう人生論がたくさん出てきます。この一節を読み、なるほど世の中が野菜の花のような人間ばかりならよいのになぁとつくづく感じました。最後にトマトの花と茄子の花を。(冒頭はじゃがいもの花です)可憐ということでは、スナックえんどうの花もぴったり来ますね。
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お花、綺麗に咲いていますね。
野菜の花は見ても綺麗、
散っても実がなって美味しい、
言うことなしですね。
本当に、花が咲いて終わりじゃないですもんね。
でも今年は、ほんと育ちが悪いです。
まあ、そんな年だからこそ、成ってくれたら嬉しさも倍増かも知れません。
本当、同じ題名でしたね。偶然の面白さ。。
同じだけど違うから、とっても楽しく読みました
小説は昔は読みました。
結婚してからは読まなくなりました。
読み出すと読みふけってしまう悪癖があります
宮元輝・・久しぶりに読んでみようかなぁ。
私もTBさせてくださいね。
>読み出すと読みふけってしまう悪癖があります
私もまさにそうです。ハードカバー1日で読んでしまいます。家事も仕事もそっちのけになること(笑)。
宮本輝の「流転の海」はシリーズもので、今第4部まで出ています。とても、とてもお勧めですよ~。
今回の本はここで初めて拝見しましたが、宮本輝さんのとても素敵なお話の本ですね。私なんかは普段「食べる対象」でしか野菜を見ないし、花にも目をやりませんが、そんな野菜にも「生」があって、人に命を与えたいと願って美しい花を咲かせているのかなと考えさせられました。
宮本輝さんといえば、「幻の光」を読んだことがあります。そしてそれを、以前love_train様がレビューを書かれた是枝監督が実写化していますよね★宮本輝と是枝監督繋がりでコメントしてみました。