日本映画
■①ディア・ドクター ☆☆☆☆
★ 西川美和監督の人間観察が光る前作「ゆれる」に続いての秀作。笑福亭鶴瓶や存在感ある余貴美子は演技賞候補。「ニセ物」というテーマは深いがラストシーンは不要。
■② ヴィヨンの妻 ☆☆☆☆★
妻役の松たか子が代表作といえる好演で女優賞レースの先頭に。夫婦の生き方に共感できないが、太宰治の世界と時代を見事に再現し、日本映画の底力を示した。
■③沈まぬ太陽☆☆☆☆★
ジャンボ機墜落事故に焦点をあてた原作の再構成が成功。対照的な2人の男のドラマが見応え十分。日本航空のあり方を考える問題提起としても必見。
■④ 誰も守ってくれない ☆☆☆☆★
「容疑者家族の保護」を題材に、日本社会の現実に迫った社会派ドラマの秀作。佐藤浩市が代表作となる熱演。マスコミの過剰取材も批判的に描かれている。
■⑤ 小三治 ☆☆☆☆★
小三治の生き様と芸を追ったドキュメンタリーの秀作。弟子との関係、旅先の姿、私的な遊びなど人間性がうきぼりに。語る言葉は含蓄に富んだ名言集。
■⑥ サマーウォーズ ☆☆☆☆ 日本のアニメ映画の充実を示す快作。「地球の危機」を救うある家族の絆とチームワークを描き後味は爽やか。30人近くの登場人物もしっかり描き分けられている。
■⑦ いのちの山河 ☆☆☆☆
岩手県沢内村での老人医療費無料化、乳児死亡ゼロのとりくみを描いた秀作。村長と妻の夫婦の物語としても楽しめ、とよた真帆が妻役を爽やかに好演。
■⑧ 劔岳 点の記
☆☆☆☆
まるでドキュメンタリー映画のような映像で、本物にこだわった木村大作監督の執念がにじみ出た力作。ただし、登頂の瞬間の映像をもう少し見せてほしかった。
■⑨ フィッシュストーリー ☆☆☆☆
続々と映画化される伊坂幸太郎の原作。荒唐無稽なホラ話だが、後味は爽やか。人と人のつながりをじっくりと描き、もう一度見直したくなる面白さ。
■⑩ ハゲタカ ☆☆☆☆
予想以上に見ごたえのある社会派の力作。複雑な経済問題を描いたドラマだが、テンポがよく、最後まで一気に見せる。
■次席 風が強く吹いている ☆☆☆☆ 箱根駅伝のシーンが見事で、正月の楽しみが増えた。
日本映画
■①母べえ ☆☆☆☆★★ 治安維持法違反で父親が弾圧された一家の母と娘たちの生き様を描いた反戦映画の秀作。脇を固めるキャストが揃っての好演で、浅野忠信は助演男優賞の有力候補にあげたい。
■②おくりびと ☆☆☆☆★★
納棺師の仕事・世界を描いた秀作で「お葬式」を超えた。本木雅弘が行う納棺の場面だけでも一見の価値あり、夫婦の物語としても楽しめる。映画史に残る名作。
■③闇の子供たち
☆☆☆☆★★ タイにおける幼児売買春、臓器密売を描いた渾身の力作。主役の2人、脇を固めるキャストが揃っての好演。日本人の責任を問いかけるラストに監督の思いが込められている。必見の映画。
■④ぐるりのこと ☆☆☆☆★★
ある夫婦の10年を優しく描いた屈指の秀作。法廷画家という設定が効果的で、夫婦のドラマと社会的背景を巧みに交差させる。リリー・フランキーと木村多江が好演。
■⑤トウキョウソナタ ☆☆☆☆★ 黒沢清監督が家族映画に挑んだ力作。リストラ、失業、家庭崩壊、イラク戦争など日本が直面するテーマを背景に描いている。香川照之が巧さを見せ、小泉今日子もぴったりの演技だ。
■⑥歩いても 歩いても ☆☆☆☆★ 1年ぶりに長男の命日に集まったある家族の1日を淡々と追った秀作で、是枝裕和監督が新境地を開いている。出演者が揃っての好演で、演技賞レースを賑わせそう。
■⑦花は散れども ☆☆☆☆★ 95歳の新藤兼人監督による自伝的作品で柄本明が熱演。同窓会シーンで戦争と原爆に対する怒りをぶつけている。ラブ・ストーリーとしても秀逸で、大竹しのぶが久しぶりにいい味。
■⑧人のセックスを笑うな
☆☆☆☆★
永作博美の小悪魔的魅力と蒼井優の存在感ある演技で、今年の収穫の1本。長回しの多用とカメラを引いた構図が、2時間をこす長さを感じさせず見応え十分。
■⑨アフタースクール ☆☆☆☆★
「日本版スティング」の快作で気持ちよく騙される。大泉洋と佐々木蔵之介が代表作といえる巧演で脇を固めるキャストも揃って好演。見直すたびに新たな発見が。
■⑩花はどこへいった ☆☆☆☆★ ベトナム戦争での米軍による枯葉作戦の傷跡を追ったドキュメンタリー映画の力作。演出はシンプルだが、強く訴えかけてくる。
次 ブタがいた教室 ☆☆☆☆ 「ブタを食べるか、食べないか」。教室でのディスカッション場面が圧巻だ。妻夫木聡が教師役を好演している。
日本映画
■①それでもボクはやってない ☆☆☆☆★★ 痴漢冤罪事件の裁判の経過をリアルに描いた問題作。綿密な取材をもとに、日本の刑事裁判の現状と問題点を鮮やかに浮かび上がらせている。加瀬亮が代表作ともいえる好演で、脇を固めるキャストもそろって巧い。
■②犯人に告ぐ ☆☆☆☆ 「劇場型捜査」を描いた本格的な刑事映画の力作で、マスコミの現状に対する批判的な視点も含めて、見応え十分の映画。キャストもそろっての好演で、主役の豊川悦司が初めての刑事役で新境地を開いている。
■③パッチギ! LOVE&PEACE ☆☆☆☆ 井筒和幸監督の「憲法9条」への熱い思いがみなぎる力作。乱闘場面に疑問が残るが、「在日」と「戦争賛美映画批判」というテーマは今日では貴重な存在。キョンジャ役の中村ゆり、国鉄マン役の藤井隆が収穫だ。
■④陸に上がった軍艦 ☆☆☆☆ 新藤兼人監督の戦時中の体験を本人の証言と再現ドラマとで描いた力作。軍隊生活の非人間性と狂気をリアルに再現し、戦争の本質を分かりやすく告発している。大竹しのぶが全編のナレーションをつとめている。
■⑤河童のクゥと夏休み ☆☆☆☆ 河童のクゥと少年とのひと夏の出会いと別れを描いた日本版「E.T.」だ。さすが「オトナ帝国の逆襲」の原恵一監督。鋭い洞察力とリアルな描写は見応え十分。大人の鑑賞に堪える久しぶりのアニメの登場だ。
■⑥夕凪の街 桜の国 ☆☆☆★★★ 広島における被爆体験を二つの世代に分けて、新しい視点で描いた原爆映画の佳作で、今年の反戦・反核映画の収穫の一本。被爆者として命を絶つヒロイン役の麻生久美子がベストともいえる好演を見せている。
■⑦サッド・バケーション ☆☆☆★★★ 「Helpless」「ユリイカ」に続く青山真治監督の「北九州サーガ」の集大成的な作品。特に、母親役を演じる石田えりの存在感が圧巻で、すべてを包み込んで美しくたくましく生きる女たちのドラマを見せている。
■⑧続・三丁目の夕日 ☆☆☆★★★ 2年前に各映画賞に輝いた話題作の完全な続編で、前作ファンには大いに楽しめる内容。昭和30年代の東京を再現した映像に新鮮な驚きはないが、不作続きの邦画の中では佳作か。薬師丸ひろ子が相変わらず巧い。
■⑨東京タワー オカンとボクと、時々、オトン ☆☆☆★★★ オダギリ・ジョーが主演で、地方から東京に出て働いている息子の母親孝行をテーマにした佳作。子育てに苦労する母親役の樹木希林がピッタリの適役で、今年の助演女優賞の有力候補の一人だ。
■⑩日本の青空 ☆☆☆★★★ 日本国憲法誕生を巡る真実を明らかにした力作で後味爽やか。憲法草案をめぐるGHQと日本政府とのやりとは手に汗を握る。鈴木安蔵らの「憲法研究会」案がGHQ案の手本となった事実が分かりやすく示された。
次 天然コケッコー ☆☆☆★★★ 過疎の進む片田舎での中学生の初恋と成長をゆったりと描いた佳作。ヒロインを演じた夏帆が新人賞ものの好演で、今後が楽しみだ。
日本映画
■①ゆれる ☆☆☆☆★★ 32才の女流若手とは思えない西川美和監督の鋭い人間観察が冴える見応えある人間ドラマ。オダギリジョーと香川照之が熱演し、兄弟の愛憎と葛藤を見事に演じきっている。「地方と東京の対立」という隠されたテーマも深い。
■②紙屋悦子の青春 ☆☆☆☆★★ 黒木和雄監督の遺作。終戦を間近に控えた鹿児島の田舎町を舞台に、戦時下の庶民の日常生活、若者たちの恋、戦争の悲劇を淡々と描いている。ヒロイン悦子に扮する原田知世、義姉役の本上まなみは演技賞ものの巧演。
■③ 武士の一分 ☆☆☆☆★★ 山田洋次監督が夫婦愛をじっくりと描き、時代劇の新境地を開いた。木村拓哉が幼少から学んだ剣道を生かし殺陣にも冴えを見せる。美しき妻役の壇れいが爽やかで新人賞の候補。笹野高史の演技も助演男優賞ものの存在感。
■④フラガール ☆☆☆☆★ 素直に感動でき、老若男女にお薦めできる秀作。閉鎖の迫る炭坑まちで、起死回生のプロジェクトに参加した青春群像を、笑いと涙たっぷりに描いている。時代背景への目配せもあり、後味は爽やか。最大の収穫は蒼井優か。
■⑤三池 終わらない炭鉱の物語 ☆☆☆☆★ 市民と行政、撮影スタッフの共同で完成させたドキュメンタリー映画の屈指の力作。「負の遺産」といわれていた三池炭鉱の歴史を「プラスの遺産」に変えた。とくに、三池争議にかかわる当時のニュース映像と関係者の証言は必見。
■⑥博士の愛した数式 ☆☆☆☆★
小川洋子のベストセラー小説を小泉堯史監督が映画化。寺尾聰、深津絵里、吉岡秀隆らが好演し、透明感ある映画に仕上がっている。映画に登場する数学の内容について、専門誌「数学セミナー」が特集を組んだほどだ。
■⑦虹の女神 ☆☆☆☆ 岩井俊二監督が初めてプロデューサーをつとめた青春ラブストーリーの秀作。ひとりの青年と大学時代の親友だった女性との回想の旅をリリカルに描いている。今年の邦画の収穫の1本で、上野樹里にとっても代表作となる作品。
■⑧佐賀のがばいばあちゃん ☆☆☆☆ 「明るい貧乏」を生き抜くがばいばあちゃんの人生哲学の数々に不覚にも涙してしまった。島田洋七の自伝小説の映画化で、島田紳助・緒方拳ら、そうそうたるメンバーが友情出演。吉行和子の熱演に★一つおまけ。
■⑨カミュなんて知らない ☆☆☆☆ 柳町監督の新作は映画ファンを楽しませる「遊び心」満載の力作。大学のワークショップによる映画制作のプロセスを描いているが、現実との境界線が一瞬にして突破されるラストの衝撃は、最近では味わったことのない体験。
■⑩六ヶ所村ラプソディー ☆☆☆☆ 鎌仲ひとみ監督が「ヒバクシャ」に続いて完成させたドキュメンタリー映画の秀作。本格稼働を目前に控えた六ヶ所村の核燃料再処理工場をめぐり、住民らの様々な反応と生き様を温かいまなざしで追っている。問題提起の映画だ。
■次席ガーダ パレスチナの詩 ☆☆☆☆ パレスチナ・ガザ地区での女たちの生き様をリアルに描いた秀作。女たちの日常生活を追いながら、パレスチナ問題の全体像に迫っていく。映画を通して成長するヒロイン・ガーダを描き、女性映画としても秀逸な出来映えだ。
日本映画
■①いつか読書する日 ☆☆☆☆★ 邦画に珍しい大人の恋愛を描いて、今年の収穫の一本。「火火」に続いて田中裕子の好演が光っており、主演女優賞の最有力候補かも。対する岸部一徳のうまさも見事だ。朝の通勤時の市電のシーンが巧みに使われている。
■②理由 ☆☆☆☆★ 「映画化は不可能」と言われていた宮部みゆきの長編ミステリー小説を見事に映像化した大林宣彦監督の渾身の力作。100人をこえる主要登場人物の織りなすドラマが日本の社会と家庭の縮図を示している。
■③蝉しぐれ ☆☆☆☆★ 黒土三男監督が藤沢周平の原作を読んで映画化をと考えてから15年。その執念が見事に結実。ラブストーリー、青春と友情、父と子、お家騒動など、日本映画の要素がてんこもり。市川染五郎と木村佳乃、その子役たちと、そろっての好演。
■④火火 ☆☆☆☆
女性陶芸家の生き様をリアルに描いた秀作。久しぶりに登場した田中裕子の熱演が光り、高橋伴明監督が新境地を開いた。実在のモデルや医療機関の協力を得て可能となった窯業シーン、骨髄移植シーンに注目。
■⑤カーテンコール ☆☆☆☆
昭和30~40年代の映画館で活躍した幕間芸人が主人公。若き記者の目を通し、映画全盛期を生きた芸人一家のその後の人生を追う。「在日」の問題を描いた後半の展開が新鮮。映画への想いと家族を描いた力作。
■⑥海女のリャンさん ☆☆☆☆
戦前、済州島から日本に渡り、大阪で暮らすリャンさんの半生を追う。38年前の未完成フィルムを生かし、一人の母親の生き様をリアルに紹介。53年ぶりに実現した済州島墓参り、息子たちの住む北朝鮮の映像も。
■⑦映画 日本国憲法 ☆☆☆☆
憲法制定の経緯や憲法第9条の意義に光をあてた映画で、アメリカ、中東、中国、韓国等の知識人が、日本国憲法について語ったインタビュー集。世界から見た日本国憲法の位置、第9条の先駆性が浮かび上がる。
■⑧ALWAYS 三丁目の夕日 ☆☆☆★★★ 東京タワー建設が進行中の昭和33年の東京の下町が舞台。CGを駆使した特撮による東京の街や上野駅などの忠実な再現が見事。少年の目を通して下町の人情と家族を描く。吉岡秀隆、堤真一、薬師丸ひろ子らがそろって好演。
■⑨メゾン・ド・ヒミコ ☆☆☆★★★
ゲイたちの老人ホームを舞台に愛のあり様を描いた異色作で、犬童一心監督のオリジナル。オダギリジョーと柴咲コウがともに難役を好演しており、詩情あふれる映像も見もの。
■⑩フライ,ダディ,フライ ☆☆☆★★★
少年と中年男のひと夏の奇妙な師弟関係を爽やかに描いた異色作で、中年のダメ親父にエールを贈る佳作。平凡なサラリーマンが、娘の敵をうつために、トレーニングに励むシーンが秀逸な出来。
次 運命じゃない人 ☆☆☆★★★
日本映画になかったタイプの快作で、練り上げられた脚本の勝利。遊び心いっぱいの演出
■①ディア・ドクター ☆☆☆☆

■② ヴィヨンの妻 ☆☆☆☆★
妻役の松たか子が代表作といえる好演で女優賞レースの先頭に。夫婦の生き方に共感できないが、太宰治の世界と時代を見事に再現し、日本映画の底力を示した。
■③沈まぬ太陽☆☆☆☆★
ジャンボ機墜落事故に焦点をあてた原作の再構成が成功。対照的な2人の男のドラマが見応え十分。日本航空のあり方を考える問題提起としても必見。
■④ 誰も守ってくれない ☆☆☆☆★
「容疑者家族の保護」を題材に、日本社会の現実に迫った社会派ドラマの秀作。佐藤浩市が代表作となる熱演。マスコミの過剰取材も批判的に描かれている。
■⑤ 小三治 ☆☆☆☆★
小三治の生き様と芸を追ったドキュメンタリーの秀作。弟子との関係、旅先の姿、私的な遊びなど人間性がうきぼりに。語る言葉は含蓄に富んだ名言集。
■⑥ サマーウォーズ ☆☆☆☆ 日本のアニメ映画の充実を示す快作。「地球の危機」を救うある家族の絆とチームワークを描き後味は爽やか。30人近くの登場人物もしっかり描き分けられている。
■⑦ いのちの山河 ☆☆☆☆
岩手県沢内村での老人医療費無料化、乳児死亡ゼロのとりくみを描いた秀作。村長と妻の夫婦の物語としても楽しめ、とよた真帆が妻役を爽やかに好演。
■⑧ 劔岳 点の記
☆☆☆☆
まるでドキュメンタリー映画のような映像で、本物にこだわった木村大作監督の執念がにじみ出た力作。ただし、登頂の瞬間の映像をもう少し見せてほしかった。
■⑨ フィッシュストーリー ☆☆☆☆
続々と映画化される伊坂幸太郎の原作。荒唐無稽なホラ話だが、後味は爽やか。人と人のつながりをじっくりと描き、もう一度見直したくなる面白さ。
■⑩ ハゲタカ ☆☆☆☆
予想以上に見ごたえのある社会派の力作。複雑な経済問題を描いたドラマだが、テンポがよく、最後まで一気に見せる。
■次席 風が強く吹いている ☆☆☆☆ 箱根駅伝のシーンが見事で、正月の楽しみが増えた。
日本映画
■①母べえ ☆☆☆☆★★ 治安維持法違反で父親が弾圧された一家の母と娘たちの生き様を描いた反戦映画の秀作。脇を固めるキャストが揃っての好演で、浅野忠信は助演男優賞の有力候補にあげたい。
■②おくりびと ☆☆☆☆★★

納棺師の仕事・世界を描いた秀作で「お葬式」を超えた。本木雅弘が行う納棺の場面だけでも一見の価値あり、夫婦の物語としても楽しめる。映画史に残る名作。
■③闇の子供たち
☆☆☆☆★★ タイにおける幼児売買春、臓器密売を描いた渾身の力作。主役の2人、脇を固めるキャストが揃っての好演。日本人の責任を問いかけるラストに監督の思いが込められている。必見の映画。
■④ぐるりのこと ☆☆☆☆★★
ある夫婦の10年を優しく描いた屈指の秀作。法廷画家という設定が効果的で、夫婦のドラマと社会的背景を巧みに交差させる。リリー・フランキーと木村多江が好演。
■⑤トウキョウソナタ ☆☆☆☆★ 黒沢清監督が家族映画に挑んだ力作。リストラ、失業、家庭崩壊、イラク戦争など日本が直面するテーマを背景に描いている。香川照之が巧さを見せ、小泉今日子もぴったりの演技だ。
■⑥歩いても 歩いても ☆☆☆☆★ 1年ぶりに長男の命日に集まったある家族の1日を淡々と追った秀作で、是枝裕和監督が新境地を開いている。出演者が揃っての好演で、演技賞レースを賑わせそう。
■⑦花は散れども ☆☆☆☆★ 95歳の新藤兼人監督による自伝的作品で柄本明が熱演。同窓会シーンで戦争と原爆に対する怒りをぶつけている。ラブ・ストーリーとしても秀逸で、大竹しのぶが久しぶりにいい味。
■⑧人のセックスを笑うな
☆☆☆☆★
永作博美の小悪魔的魅力と蒼井優の存在感ある演技で、今年の収穫の1本。長回しの多用とカメラを引いた構図が、2時間をこす長さを感じさせず見応え十分。
■⑨アフタースクール ☆☆☆☆★
「日本版スティング」の快作で気持ちよく騙される。大泉洋と佐々木蔵之介が代表作といえる巧演で脇を固めるキャストも揃って好演。見直すたびに新たな発見が。
■⑩花はどこへいった ☆☆☆☆★ ベトナム戦争での米軍による枯葉作戦の傷跡を追ったドキュメンタリー映画の力作。演出はシンプルだが、強く訴えかけてくる。
次 ブタがいた教室 ☆☆☆☆ 「ブタを食べるか、食べないか」。教室でのディスカッション場面が圧巻だ。妻夫木聡が教師役を好演している。
日本映画
■①それでもボクはやってない ☆☆☆☆★★ 痴漢冤罪事件の裁判の経過をリアルに描いた問題作。綿密な取材をもとに、日本の刑事裁判の現状と問題点を鮮やかに浮かび上がらせている。加瀬亮が代表作ともいえる好演で、脇を固めるキャストもそろって巧い。
■②犯人に告ぐ ☆☆☆☆ 「劇場型捜査」を描いた本格的な刑事映画の力作で、マスコミの現状に対する批判的な視点も含めて、見応え十分の映画。キャストもそろっての好演で、主役の豊川悦司が初めての刑事役で新境地を開いている。
■③パッチギ! LOVE&PEACE ☆☆☆☆ 井筒和幸監督の「憲法9条」への熱い思いがみなぎる力作。乱闘場面に疑問が残るが、「在日」と「戦争賛美映画批判」というテーマは今日では貴重な存在。キョンジャ役の中村ゆり、国鉄マン役の藤井隆が収穫だ。
■④陸に上がった軍艦 ☆☆☆☆ 新藤兼人監督の戦時中の体験を本人の証言と再現ドラマとで描いた力作。軍隊生活の非人間性と狂気をリアルに再現し、戦争の本質を分かりやすく告発している。大竹しのぶが全編のナレーションをつとめている。
■⑤河童のクゥと夏休み ☆☆☆☆ 河童のクゥと少年とのひと夏の出会いと別れを描いた日本版「E.T.」だ。さすが「オトナ帝国の逆襲」の原恵一監督。鋭い洞察力とリアルな描写は見応え十分。大人の鑑賞に堪える久しぶりのアニメの登場だ。
■⑥夕凪の街 桜の国 ☆☆☆★★★ 広島における被爆体験を二つの世代に分けて、新しい視点で描いた原爆映画の佳作で、今年の反戦・反核映画の収穫の一本。被爆者として命を絶つヒロイン役の麻生久美子がベストともいえる好演を見せている。
■⑦サッド・バケーション ☆☆☆★★★ 「Helpless」「ユリイカ」に続く青山真治監督の「北九州サーガ」の集大成的な作品。特に、母親役を演じる石田えりの存在感が圧巻で、すべてを包み込んで美しくたくましく生きる女たちのドラマを見せている。
■⑧続・三丁目の夕日 ☆☆☆★★★ 2年前に各映画賞に輝いた話題作の完全な続編で、前作ファンには大いに楽しめる内容。昭和30年代の東京を再現した映像に新鮮な驚きはないが、不作続きの邦画の中では佳作か。薬師丸ひろ子が相変わらず巧い。
■⑨東京タワー オカンとボクと、時々、オトン ☆☆☆★★★ オダギリ・ジョーが主演で、地方から東京に出て働いている息子の母親孝行をテーマにした佳作。子育てに苦労する母親役の樹木希林がピッタリの適役で、今年の助演女優賞の有力候補の一人だ。
■⑩日本の青空 ☆☆☆★★★ 日本国憲法誕生を巡る真実を明らかにした力作で後味爽やか。憲法草案をめぐるGHQと日本政府とのやりとは手に汗を握る。鈴木安蔵らの「憲法研究会」案がGHQ案の手本となった事実が分かりやすく示された。
次 天然コケッコー ☆☆☆★★★ 過疎の進む片田舎での中学生の初恋と成長をゆったりと描いた佳作。ヒロインを演じた夏帆が新人賞ものの好演で、今後が楽しみだ。
日本映画
■①ゆれる ☆☆☆☆★★ 32才の女流若手とは思えない西川美和監督の鋭い人間観察が冴える見応えある人間ドラマ。オダギリジョーと香川照之が熱演し、兄弟の愛憎と葛藤を見事に演じきっている。「地方と東京の対立」という隠されたテーマも深い。
■②紙屋悦子の青春 ☆☆☆☆★★ 黒木和雄監督の遺作。終戦を間近に控えた鹿児島の田舎町を舞台に、戦時下の庶民の日常生活、若者たちの恋、戦争の悲劇を淡々と描いている。ヒロイン悦子に扮する原田知世、義姉役の本上まなみは演技賞ものの巧演。
■③ 武士の一分 ☆☆☆☆★★ 山田洋次監督が夫婦愛をじっくりと描き、時代劇の新境地を開いた。木村拓哉が幼少から学んだ剣道を生かし殺陣にも冴えを見せる。美しき妻役の壇れいが爽やかで新人賞の候補。笹野高史の演技も助演男優賞ものの存在感。
■④フラガール ☆☆☆☆★ 素直に感動でき、老若男女にお薦めできる秀作。閉鎖の迫る炭坑まちで、起死回生のプロジェクトに参加した青春群像を、笑いと涙たっぷりに描いている。時代背景への目配せもあり、後味は爽やか。最大の収穫は蒼井優か。
■⑤三池 終わらない炭鉱の物語 ☆☆☆☆★ 市民と行政、撮影スタッフの共同で完成させたドキュメンタリー映画の屈指の力作。「負の遺産」といわれていた三池炭鉱の歴史を「プラスの遺産」に変えた。とくに、三池争議にかかわる当時のニュース映像と関係者の証言は必見。
■⑥博士の愛した数式 ☆☆☆☆★

■⑦虹の女神 ☆☆☆☆ 岩井俊二監督が初めてプロデューサーをつとめた青春ラブストーリーの秀作。ひとりの青年と大学時代の親友だった女性との回想の旅をリリカルに描いている。今年の邦画の収穫の1本で、上野樹里にとっても代表作となる作品。
■⑧佐賀のがばいばあちゃん ☆☆☆☆ 「明るい貧乏」を生き抜くがばいばあちゃんの人生哲学の数々に不覚にも涙してしまった。島田洋七の自伝小説の映画化で、島田紳助・緒方拳ら、そうそうたるメンバーが友情出演。吉行和子の熱演に★一つおまけ。
■⑨カミュなんて知らない ☆☆☆☆ 柳町監督の新作は映画ファンを楽しませる「遊び心」満載の力作。大学のワークショップによる映画制作のプロセスを描いているが、現実との境界線が一瞬にして突破されるラストの衝撃は、最近では味わったことのない体験。
■⑩六ヶ所村ラプソディー ☆☆☆☆ 鎌仲ひとみ監督が「ヒバクシャ」に続いて完成させたドキュメンタリー映画の秀作。本格稼働を目前に控えた六ヶ所村の核燃料再処理工場をめぐり、住民らの様々な反応と生き様を温かいまなざしで追っている。問題提起の映画だ。
■次席ガーダ パレスチナの詩 ☆☆☆☆ パレスチナ・ガザ地区での女たちの生き様をリアルに描いた秀作。女たちの日常生活を追いながら、パレスチナ問題の全体像に迫っていく。映画を通して成長するヒロイン・ガーダを描き、女性映画としても秀逸な出来映えだ。
日本映画
■①いつか読書する日 ☆☆☆☆★ 邦画に珍しい大人の恋愛を描いて、今年の収穫の一本。「火火」に続いて田中裕子の好演が光っており、主演女優賞の最有力候補かも。対する岸部一徳のうまさも見事だ。朝の通勤時の市電のシーンが巧みに使われている。
■②理由 ☆☆☆☆★ 「映画化は不可能」と言われていた宮部みゆきの長編ミステリー小説を見事に映像化した大林宣彦監督の渾身の力作。100人をこえる主要登場人物の織りなすドラマが日本の社会と家庭の縮図を示している。
■③蝉しぐれ ☆☆☆☆★ 黒土三男監督が藤沢周平の原作を読んで映画化をと考えてから15年。その執念が見事に結実。ラブストーリー、青春と友情、父と子、お家騒動など、日本映画の要素がてんこもり。市川染五郎と木村佳乃、その子役たちと、そろっての好演。
■④火火 ☆☆☆☆
女性陶芸家の生き様をリアルに描いた秀作。久しぶりに登場した田中裕子の熱演が光り、高橋伴明監督が新境地を開いた。実在のモデルや医療機関の協力を得て可能となった窯業シーン、骨髄移植シーンに注目。
■⑤カーテンコール ☆☆☆☆
昭和30~40年代の映画館で活躍した幕間芸人が主人公。若き記者の目を通し、映画全盛期を生きた芸人一家のその後の人生を追う。「在日」の問題を描いた後半の展開が新鮮。映画への想いと家族を描いた力作。
■⑥海女のリャンさん ☆☆☆☆
戦前、済州島から日本に渡り、大阪で暮らすリャンさんの半生を追う。38年前の未完成フィルムを生かし、一人の母親の生き様をリアルに紹介。53年ぶりに実現した済州島墓参り、息子たちの住む北朝鮮の映像も。
■⑦映画 日本国憲法 ☆☆☆☆
憲法制定の経緯や憲法第9条の意義に光をあてた映画で、アメリカ、中東、中国、韓国等の知識人が、日本国憲法について語ったインタビュー集。世界から見た日本国憲法の位置、第9条の先駆性が浮かび上がる。
■⑧ALWAYS 三丁目の夕日 ☆☆☆★★★ 東京タワー建設が進行中の昭和33年の東京の下町が舞台。CGを駆使した特撮による東京の街や上野駅などの忠実な再現が見事。少年の目を通して下町の人情と家族を描く。吉岡秀隆、堤真一、薬師丸ひろ子らがそろって好演。
■⑨メゾン・ド・ヒミコ ☆☆☆★★★
ゲイたちの老人ホームを舞台に愛のあり様を描いた異色作で、犬童一心監督のオリジナル。オダギリジョーと柴咲コウがともに難役を好演しており、詩情あふれる映像も見もの。
■⑩フライ,ダディ,フライ ☆☆☆★★★
少年と中年男のひと夏の奇妙な師弟関係を爽やかに描いた異色作で、中年のダメ親父にエールを贈る佳作。平凡なサラリーマンが、娘の敵をうつために、トレーニングに励むシーンが秀逸な出来。
次 運命じゃない人 ☆☆☆★★★
日本映画になかったタイプの快作で、練り上げられた脚本の勝利。遊び心いっぱいの演出