象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

弱者こそが進化を支える〜個性と多様性こそが生き残る武器となる

2022年02月05日 03時33分53秒 | 読書

 ”進化に成功したのは実は強い生き物ではなく、オンリー1になれる場所を見つけた(誰よりも)弱い生き物でした”(Amazon)

 勝者は戦い方を変えないし、変えない方がいい。変わる事は負ける事に繋がり、劇的な変化は常に敗者によってもたらされてきた。
 つまりこの本、いや”はずれ者”が言いたいのは、環境は多種多様で、どの環境にもナンバー1が君臨する。故に、最も自分らしさを発揮できる”オンリー1”を見つけるのが得策であるという事だ。
 ナンバー1やオンリー1にならなくとも今を生き伸びる為のヒントを、この「はずれ者が進化をつくる」(稲垣栄洋 著)では熱く語られている。

 それに今更だが、”雑草魂”とは何なのか?
 弱者の遠吠えか?それとも、強者を駆逐する生存戦略なのか?
 雑草の研究者である著者は、この雑草魂こそが弱者の多様性を支え、しかも雑草の弱さこそが繁栄する為に役立ってると説く。


ナンバー1からオンリー1へ

 何だかSMAPの歌を聞いてるようで、(私はどうも)”オンリー1”という響きが好きになれないが、以下の3つのケースを紹介すれば、なる程と思えてくる。

 ①飛べなかったキウィ
 キウィの祖先は飛ぶ事のできる鳥だったとされる。が、その中に飛ぶ事の苦手な個体が生まれた。鳥なのに飛べない”はずれ者”。
 ただニュージーランドには、キウィを襲う天敵がいなかったので、飛んで逃げる必要がない。飛ばないのでエネルギーを使わない。その分、エサも少なくてすむし、節約したエネルギーで沢山卵を産む。こうして飛ぶのが苦手な”鳥”が(飛ぶのが苦手な)子孫を沢山産み、飛べない鳥に進化していった。

 ②元々あった足を捨て、土の中で生き残れたミミズ
 ミミズは肉食でも草食でもなく、土の中で土を食べて生きる。土の中では(手も足もない)最強のミミズだが、その祖先は元々は頭や足の様な器官を持つ生物だったとされる。しかし、土の中で土を食べて生きるというナンバー1になる為に、足を捨てた。

 ③踏まれても立ち上がらないから成長できる雑草
 踏まれる場所で生きていく上で一番大切な事は、立ち上がる事ではない。”踏まれたら立ち上がるべき”というのは、人間の勝手な思い込みだ。勿論、踏まれっ放しという訳ではなく、踏まれて上に伸びる事ができなくても決して諦めない。(雑草は自ら)横に伸びたり、茎を短くし、地面の下の根を伸ばす事で、何とか花を咲かせようとする。
 もはや、立ち上がる事などどうでもいいかの様だ。雑草は花を咲かせ、種を残すという大切な事を忘れないし、諦める事もない。だからこそ、どんなに踏まれても必ず花を咲かせ、種を残す。つまり”踏まれても踏まれても大切な事を見失わない”事こそが本当の雑草魂なのだ。

 結局、(敢えて)頑張らなかったから、彼らは生き残れた。この頑張らない事がどうやって個性と多様性に結びつき、最強のオンリー1を獲得できたのか?
 今日は、そういう事を探ってみる。


個性と多様性

 雑草は勝手に生えてくるが、育てるとなると難しい。品種改良された野菜や花の種とは異なり、芽が出たとしても時期はバラバラ。
 ”くっつき虫”の別名を持つ雑草”オナモミには、早く芽が出る種となかなか芽を出さない種の2種類の種子があり、芽を出す時期を変える事で、どんな条件下でも生き残っていける。
 自然界において何が正解なのか?は、その時になってみないとわからない。だからこそ生物は、”個性”とも呼ぶべき遺伝的多様性を持つ様になった。
 個性がなければ、環境の変化に耐えられない。実際に(19世紀の)アイルランドでは、(病気に弱いが)収量の多い(優秀な)ジャガイモだけを栽培した結果、その種だけが病気に侵され、壊滅状態になった。
 これは数学も同じで、答えがないから多様性を持つようになり、現代数学や応用数学としてとして大きく拡散し繁殖した。つまり、数学にも各分野に個性が存在する。
 以下、「生き物をめぐる個性の秘密」より一部抜粋です。

 人間社会も、個性があるからこそ成り立つ。アナタの個性も世界でたった一つ。私たちの特徴は親から引き継ぐ染色体により形作られるが、その組合せは70兆を超える(但し、外観的特徴を決めるDNAは5千種ほど)。更に、染色体を構成するDNAが変異する事で、オンリー1のアナタだけの個性が生み出されていく。
 人間は物事を数値化し、序列をつけ並べる事で、複雑多様な世界を理解しようとする。
 ”平均”もその1つである。
 平均があるから、人間は大きさや長さを判断できる。平均とは”ふつう”の事だが、自然界には、平均値も普通もない。あるのは多様性だけだ。が、中には平均から大きく外れた”はずれ者”もいる。こうした(多様性の一部である)はずれ者も環境の変化に適応し、生き残る。
 やがて、そのはずれ者が新たな標準となり、生物は進化していく。
 しかし、人は”ものさし”を使い、優劣をつけたがる。だが、そこにあるのは優劣ではなく、単なる”違い”だ。この(違いという)バラツキがなければ、種を存続させる事はできない。
 人間には、ものさしでは測れない価値がある。管理しやすい”ふつう”(=平均)ばかりを評価するではなく、もっと”違い”を大切にするべきだろうに。

 著者の稲垣氏は、人間は対象を理解しやすくする為に、”物事を分類し、境界を引き、比較しがちだ”と書いている。この様な管理手法は人間自身にも及び、個性を失わせ、画一的な人間を生み出す社会を、私たち自身が創り出してるとしたら・・・
 生物多様性やマイノリティといった言葉に代表される様に、私たちは次第に”いろいろな物事”に目を向ける様になってきた。そうした視線を私たち自身に向け、”自分の個性を自由に発揮すべき”ではないだろうか。
 稲垣氏は雑草の研究者である。
 ”雑草は強い”と思われがちだが、実は決してそんな事はない。しかもその弱さが生き残り、繁栄する為に役立ってるのだ。
 人間からは邪魔者扱いされがちな雑草だが、本書を読むとその強かさには目を見張る。著者はきっと雑草を研究する過程でその強かさに驚愕し、深い愛着を持つ様になったのだろう。
 以上、flierからでした。


最後に〜多様性なくしては生き残れない

 生物たちは生き残る為に(敢えて弱者のふりをし)、オンリー1になれる居心地のいい場所を見つけ、結果的にナンバー1に君臨する。
 強い事は生き残る為の必要条件ではないし、生物にはものさしでは測れない様々な強さがある。つまり、(弱い事こそが、いや)人とは違う多様性こそが、今を生き抜く必要十分条件なのだ。

 だったら、強さは何の為にある?
 強さとはものさしで測った強度に過ぎない。その上、そのものさしに多様性が欠けてれば、それぞれに正確で最適な強度が測れる筈もない。
 つまり、環境に応じた柔らかな強さってものが、いや臨機応変な弱さが必要なのだろう。
 故に、弱さこそが多様性の核となり、弱者こそが生き延びる。強者とはものさしで測っただけの数値に過ぎないし、生き延びる上で必要十分な強さではない。むしろ、その強さは生きる上での弊害になる。
 つまり、弱者が多様性の中で生き延びる事よりも、(自らをナンバー1とほざく)強者が多様性の中で生き延びる事の方が、ずっと困難な筈だ。
 やがて、弱者の中でもオンリー1が強者の中でのナンバー1を食いつぶし、その弱者は多様性を拡散する。そして、その広大で複雑多岐な多様性という大海原の中で、弱者は優雅に強かさに生き延びる。

 ハーバード大学院では、”ライバルを蹴落とす”様に(いの一番に)叩き込まれるという。
 このボ○クラ大学は、雑草の持つ多様性と強かさを全く理解していない。
 しかし、(蹴落とされてもタダでは起きない)雑草魂を持つ弱者で覆い尽くされたら、エリートはエリートでなくなる。やがてエリートは弱者のエサになり、排泄物として再び雑草のエサになる。
 つまり、ライバルを蹴落とす前に多様性を理解する事が必要なのだが、やみくもにナンバー1を追い求める愚劣な人種に理解出来る筈もない。

 結局、彼らにあるのは、”人の上に立ちたい”という多様性を無視した稚弱な強欲である。
 しかし、そんな人種が生き延びれるほど、自然界の生態系は甘くない筈なんだが・・・



9 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ビコさん (象が転んだ)
2022-02-05 15:34:20
全然構わんですよ。
私も断り入れずフォロワーの記事を引用しますから、お互い様ですね。
返信する
Unknown (びこ)
2022-02-05 15:21:16
この記事もリンクさせていただきたいです。記事にするかどうかは未定ですが、凄く気に入ったから、予約だけでもしておきたいです。
返信する
エンタメさん (象が転んだ)
2022-02-05 13:31:34
こんにちわです。
付け加えれば、
様々な環境に適応すべく変異と淘汰を繰り返した事こそが、生物の進化と多様性を生んだとも言えますね。

福岡伸一氏が主張する動的平衡も、MartinNowakが唱える進化のダイナミズム(動態)も、この多様性の理論に基づいてます(多分)。
しかし、大半がA級戦犯の子孫で占められてる日本政府はこの多様性を全く理解できてないみたいですね。
返信する
ビコさん (象が転んだ)
2022-02-05 13:29:12
追記です。
嫌な事は無視したり都合のいい事だけを考えるというのも、考え方の多様性でもあり、進化の1つなんですかね。
弱者こそが生き延びる。
それが知り得ただけでも、この本に出会えてよかったです。
返信する
ビコさん (象が転んだ)
2022-02-05 13:25:24
日本の受験制度も、一方通行的な単調な物差しで序列を測ろうとするから、(一部の)キチガイや勘違いエリートを生む弊害ともなってます。
知の多様性を無視した今の受験制度は、生存戦略からみても??ですよね。
返信する
腹打てサン (象が転んだ)
2022-02-05 13:23:10
上手くまとめますね。
多様性と個性は人類が豊かで平和に暮らす、最高で最良の形態なんですよね。
でも未だに、優生学を自負する一部の白人が人類をを牛耳ってる。
この優生学も近い将来、多様性に飲み込まれるんでしょうね。
返信する
環境に適したものが生き残る (平成エンタメ研究所)
2022-02-05 08:45:49
「進化論」って間違って理解されているんですよね。
本当は「強い者が生き残る」のではなく、「その環境に適したものがたまたま生き残る」が正しい。

コロナも変異を繰り返していますが、生き残るために変異しているのでしょう。
「強毒性で感染力の低い道」を選ぶか、「弱毒性で感染力の高い道」を選ぶか。
現在のオミクロン株は後者の道を選んだようです。
何しろ感染力が低ければワクチンでたちまち淘汰されてしまいますから、感染力が高い方が生き残れる確率が高い。
返信する
Unknown (びこ)
2022-02-05 07:55:44
今日の記事も非常に示唆に富んだ内容でした。ですから、転象さんの嫌う?ポチ連チャンをやってしまいました。

私など、弱者の代表のような人間ですから、生き延びているのかもしれません。
返信する
平和と多様性 (腹打て)
2022-02-05 04:42:51
一部の白人は人種の多様性を物凄く嫌うんだよ。
しかし、その白人だけで生活すればすぐに共食いし、あっさりと死滅するはず。
そういう単純な事が優性思想主義者にはわからんのだろうな。

色んな個性があり多様性に満ちてることは、それだけで平和で幸せなことだと思うけど。
返信する

コメントを投稿