前回の”前編”では、「タイタニック」の駄作度を再検証し、作品そのものと監督のキャメロンを辛辣に揶揄しました。
そこで今日は”タイタニックの舞台裏”を探り、少し視点を変えて検証しようかなと。
というのも、タイタニックの製作中にアメリカのメディアは、”1億ドルもかかる女の子向け映画"だと、鋭いメスを入れていたのです。
まさに、この言葉こそが”タイタニック”の真の代名詞でもあり、これ程の褒め言葉と貶し言葉は何処にあろう。
そういう視点でこの映画の駄作度を探ると、少し違った見方が出来ますね。
キャメロンという人
ただ私が気に入らないのは、キャメロンの”稚欲”を支えたハリウッドの”金欲”だ。
「タイタニック」に続き、一攫千金を狙った「アバター」(2009)は見事に大当りした。タイタニックが約1年半かけて達成した興行記録を、公開僅か39日で踏破した。
「タイタニック」が”22億ドルを稼いだ女の子向け映画"なら、「アバター」は”28億ドルをも稼いだお子ちゃま向けの映画”となる。
しかし、この2つの子供向けの超大作こそが、タイタニックのその後の運命をも大きく変えた。そしてキャメロンの監督としての運命は、非常に怪しいものとなる。
そしてこの「アバター」にこそ、タイタニックの愚作としてのDNAが、しっかりと受け継がれていたし、キャメロンのいや、ハリウッドのエゴが大きく表出した作品でもあった。
薄っぺらな白雪姫系”動画”が、一瞬にして世界中の大衆の心を奪ったのだから、ハリウッドもキャメロンも笑いが止まらんかったろう。そして、女の子を感動させた次は、お子様向けの感動で大金を掘り当てた。
稚弱なメルヘンチックな感動から、滑稽でコミカリックな感動にシフトした結果が、再びこの大当たりなのだ。
さて、このジェームス•キャメロンという人。そんなに悪い人なの?いや全然悪い人じゃない、とても凄い人だったんです。
元はと言えば、あの「ターミネーター」(1984)を世界中に売り出した、スッゴク優れた脚本家だったんです。
その後、「エイリアン2」や「ターミネーター2」といった、雑で安直なアクション活劇が運悪く?大ヒットし、不幸にもキャメロンの旦那は、映画に質よりも量を求めた。
密度や奥行きより、表面的で薄っぺらな派手さを追及し、貧困層が夢見る、右上がりの安価な感動に迎合したのだろうか。
派手なプレミアと素人受けするCGに大金を注ぎ込めば、世界の大衆はハリウッドのリッチで壮大なスケールにひれ伏すと考えた。”1人の映画通よりも99人の映画難民”に照準を絞ったのだ。
そしてキャメロンのいや、ハリウッドのこの策略は見事に大当りした。お陰で、2010年には210億円を手にし、ハリウッドで”最も稼いだ男”に目出度くランクイン。これこそインスタントなアメリカンドリームでした。
質より量、創造よりもカネをハリウッドは選んだ。キャメロンの旦那は映画がヒットする度に奥さんを替えた。アカデミー作品賞の「ハートロッカー」(2008)という駄作も、3番目のカミさんの作品だ。
観客を侮辱した金儲け路線と
それ以降、プレミアと映像に大金を掛け、CGやデジタル音響を大胆に駆使した超大作を作る傾向が、ハリウッドの主流となる。
間抜けな脚本でも無能な役者でも、ド派手なデジタル映像と宣伝に金を掛ければ、大ヒットする様になる。
しかし、こんな陳腐なお金儲けの路線を走るハリウッドに限界を見た人も多いだろう。
見る者の想像を刺激するというより、観客を侮辱し、映画を侮蔑し、作る側の創造力と見る者の想像力を踏みにじった、ハリウッド史上最悪の、そして史上最高の愚作こそが「タイタニック」だったのだ。
ハリウッド以上に、このカナダ生まれのキャメロンはどうしたら、自分より下等な人種からお小遣いを巻き上げるか?を知り尽くしてた。
彼は映画の質やディテイルよりも、表面上の偽善的なスケールを重視した。規模が大きければ、それだけで宣伝になる。世界の注目も浴び、大きな称賛に包まれる。
そこで、期待を膨らませるだけ膨らませ、群集心理という媚薬を噛ませ、妄想を悦楽に、幻想をファンタジーに、そして、凡作を超大作に見せかけた。
メディアの辛辣な中傷や、一部評論家の罵詈雑言などは無視すればいい。プレミアで絶賛されれば、ジャーナリストは掌を返す”動物”である事を、キャメロンもハリウッドも見抜いてた。
つまり、”プレミア”こそが勝負の鍵である事を知り抜いてた。宣伝とプレミアの、この2つが大ヒットの全てである事を。
バルザックが言う様に、”作品がその本当の価値で評価される事はない”のを見抜いてた。不特定多数の薄っぺらな最大量の感動こそが、大ヒットに繋がる事も。
この安直な群衆心理と巧みなプレミア戦術こそが、キャメロンの最大の武器であり、偉大なる功績であり、ハリウッドの夢でもあったのだ。
マクドナルドが僅か15セントのハンバーガーで世界中のファーストフードを支配した様に、僅か15ドルの入場券で20億ドル近い利益を生み出した。
故に、ハリウッド崩壊の序曲は、「タイタニック」から始まったと言っていい。
”不朽の名作”から”普及の迷作”へ
CGに重力がない様に、最近の役者には存在という”重み”が、異質という凄みがない。故に、作品にも重厚感が欠ける。
感動に重さと奥行きと鋭さがなくなれば、それは映画ではなく単なる”動画”である。ハリウッド映画ではなく、ハリウッド動画なのだ。
勿論、タイタニックだけにハリウッド崩壊の全てを押し付ける訳にはいかない。
しかし、重力のない作品と存在感に欠ける俳優と、安直な脚本の組合せで作り上げたインスタンスな”動画”が、世界中をアッと言わせ、涙と感動を誘ったのも事実。
ハリウッドが崩壊しても映画はなくならない。金の掛かり過ぎる駄作が姿を消すだけの事だ。つまり、数多くの怠惰で無機質な娯楽が蔓延り、その無機質な娯楽同士で共食いをする時代は不滅であろう。
でも冷静に振り返ると、「タイタニック」こそが真の名作、いや”迷作”だという評価も出来なくもない。
一方で、映画”タイタニック”の船出がクリスマスの時期にずれ込んだ事が空前の大ヒットに繋がったとの声もある。
そこで、”22億ドルを稼いだ女の子向けの作品”と揶揄された「タイタニック」製作の舞台裏に迫ります。
タイタニック号と同様に、波乱万丈な展開は何時の世も、大ヒットを生み出す原動力になりますね。
「タイタニック」の舞台裏と実像と
「タイタニック」は公開前、歴史上に残る”大コケ映画”になると見られていた。それは製作中、とにかくトラブル続きだったからだ。
製作予算はみるみる膨れ上がり、最終的に当初の2倍に当たる2億ドルに及んだ。138日の予定だった撮影スケジュールは、160日にまで伸びた。
過酷な撮影現場では病人も多く出て、主演女優のウィンスレットまで倒れる始末。厳しすぎるキャメロンへの仕返しか、クルーの誰かが食事に毒を混ぜるという事件も実際に起こった程だ。
最初のスポンサーである20世紀FOXは、危険を避ける為、パラマウントとの共同制作を組むも、パラマウントは6,500万ドル以上までしか出さなかった。
結果的に、パラマウントが逃げ腰になったお陰で、FOXはボロ儲けをするが。当時は背筋が凍り付いた事だろう。
予算が異常に膨らみ、ヤキモチするFOXに対し、キャメロンは彼なりに責任を取る為、”800万ドルのギャラはいらない”と申し出た。
こういったネガティブな展開の中、当然映画の完成は遅れた。予定されていた独立記念日(7月4日)の公開は無理となる。
”公開が遅れる映画は駄作に終わる”というのは、この業界の定説らしい。それこそタイタニック号は、”沈むべき船”であったのだ。
しかし、この”公開の遅れ”が結果として大ヒットに繋がった事を考えると、人生も偶然とタイミングが如何に大切かを教えてくれる。
キャメロンの回想
「タイタニック」にそんな裏話があったとは?公開から20年以上経つ今、キャメロンが当時について振り返る。
“1億ドルもかかる女の子向け映画のリスクを削減する為、FOXはユニバーサルに話を持ちかけたが断られ、紆余曲折の末に、何とかパラマウントに決まった”と振り返る。
一方で、”パートナーを決めるのはアンタ達スタジオの仕事、僕は映画を作るだけだ”と、FOXに言い張ったキャメロンも、製作が始まるやトラブル続きだった。
スタジオのトップが不安と絶望で険悪な空気になると、”僕自身も含め、誰も希望を持つ者はいなかった”と、当時の苦悩を告白する。
パラマウントのトップは、まるで末期ガンを宣告された様な顔になっていく。彼らが考えていたのは、タイタニックの損失で会社が潰れる事だった。皆が皆そう信じていた。
逆に、タイタニックの大成功こそがハリウッドを形骸化させるんですがね、キャメロンの旦那。
業界紙もこの”タイタニックこそがハリウッド史上最悪の愚か者”のように書き立てた。しかし、今に至ってもそういう声は多いですが。
”メディアとりわけ業界紙は、容赦なく僕らを叩いた。膨れ上がる一方の製作費、現場の安全問題、公開の延期など。そして公開予定の夏が近づくにつれ、メディアは更に牙を剥いて僕らを迎えたのさ”と、キャメロン。
女の子向けの乱雑な広告キャンペーン
1997年の11月、30秒のTVスポットが作られたが。それは「ポセイドン•アドベンチャー」の様に、全てがアクションと災害で占められてた。
しかしキャメロンは、このスポットがタイタニックを象徴するものではないと考え、女性向けの感情的でメルヘンチックさを強調したプレゼンスを作ってもらう事した。
アクション、スペクタクル、ロマンスがごちゃごちゃに混ざった乱雑な広告キャンペーンは、人を呼ぶ為に必要だったのかもしれない。しかし、キャメロンは映画を完成させるのに必死で、宣伝どころじゃなかったのだ。
しかし、世界プレミアを東京で行なったのは戦略的な勝利でもあった。
タイタニックは公開前に、2つのプレミアを行なう。最初は東京国際映画祭。ここでは、アメリカのメディアとは全く正反対のポジティブな声だった。つまり東京での声は、そのままアジアのそして、”世界の声”となる。
私めがタイタニックを、”アジア受けしただけの大作”と評したのは、全くの正解だったんですな。
次のロンドンでも、すばらしい口コミがあった。そういった良い批評が、東京から発信され、ロンドンを経由し、アメリカに届いた。
ここにてアメリカの辛辣な批評家は、偏見と皮肉と毒舌を脇に置き、映画そのものを判断せざるを得なくなる。
つまり、クリスマスに先駆けて公開された”お嬢様向けの”大作は、絶好のタイミングでの船出でもあったのだ。
お陰でタイタニック号は、史実と同様に絶好のスタートを切る。
公開初週末に1位を獲得し、その後は何と16週も続けて1位に君臨した。勿論そんな事は、過去にも現在に至るまでも例がない。
このタイタニックの世界興収記録を破ったのも、やはりキャメロンによる「アバター」だ。これも夏の公開予定だったが、12月に延期されている。
最後に〜やっぱりタイタニックは沈没する
このアバターの時もキャメロンは「タイタニック」を例に出し、”夏は毎週のようにブロックバスター映画が公開されるが、年明けには失速する。以降は、すでに公開されているオスカーがらみの映画がまだ健在で、新作のライバルがなく、長い間上位に君臨できる”と、延期を正当化していた。
そして、まさにその通りになった。
ここら辺のキャメロンの読みと洞察は凄いですね。まさにキャメロンマジック、頭が下がります。一応褒めときますよ(^^♪
アバターの続編は4本作られるのが決まっている。これらも決まった様に延期に延期を重ねている。予定によると、最初の続編が2020年、最後の5作目が2025年。勿論、全部12月の公開だ。
ま、そこまで長く観客の興味が持つものか?と疑問の声も聞かれるが。ネガティブなメディアの声は、キャメロンにとってはすっかり慣れたものだ。
FOXは、今回もキャメロンと共にタイタニック号に乗っている。
この航海も途中は波乱万丈でも沈む事なく、目的の港にたどり着くのだろうか?それとも史実と同じく、最後には沈没するのだろうか?
全くキャメロンの旦那はここに来ても、5匹目のドジョウを狙ってるのだ。強欲も自惚れもここまで来ると、呆れ返ってものが言えませぬ。
しかし、超大作「タイタニック」が年を重ねる毎に、駄作呼ばわりされ、年々評価はガタ落ちしてる。これこそが実質の”タイタニック号沈没”ではないか。そう歴史は何時の世も繰り返すのだ。
そして、アバター号も結局は製作される事なく、海底深くに沈んでいくのだろうか?いや製作されても、今度は観客によって沈没させられるのだろうか?
それでも、キャメロンのハリウッドの強欲と自惚れはまだまだ続く。そして、クリスマスもクリスマスイブも延々と飽きずに続くのだ。
は非常にアメリカ的と思います。
日本人という人種は、それにまんまと乗せられる愚かな民族?
いつの間にこういう民族に成り下がった?
え、元からそうだった?
嗚呼!
ヤケクソで打ったプレミアが偶然にヒットした。
結局は、女の子と子供にターゲットを絞った結果なんだ。
「スターウォーズ」もそうですが、趣味悪すぎで、映画の方でもアメリカに無条件”幸福”って感じです。
嗚呼、日本はどうなる?
子供受けする映画の方が作る側は楽でしょうね。駄作だと判ってても、その駄作に釣られてみんな見に生きますから。
これこそ一石二鳥と言うんですね。
でも、アバターは観てますね。「もののけ姫」をパクった?って思いましたが。もののけ姫と、ナウシカなんかの宮崎映画をごちゃまぜにした感じ。宮崎駿をリスペクトしているのでしょうか?映像は綺麗でした。でもストーリーは忘れました。3Dで観たのですが、メガネのニオイに、ずっとクラクラしてました。もう3Dは見ません。
ディープインパクトなんかも、鉄腕アトム参考にしてない?とか思っちゃいます。日本のエンターテイメントって、やっぱり凄いと思います。
きっとE.T.はお嫌いでしょうね。私は子どもの頃映画館で見て号泣しました。エリオットがE.T.と同じ様に瀕死状態になった時、E.T.が「エリオット、来ちゃダメ‥」と、うわ言で引き止めるんです。私はそこで号泣。今、その場面は「エリオット、一緒に行こう」に変わってます。もう、夢か幻だったのだろうなと思える程に。
ブログいっぱい拝見しようと思いましたが、毎日のように更新していらっしゃるのできっと一生かかってしまいます。
またコメント見つけたら、相手してやってくださいm(__)m
話は古くなりますが、スティーブ・マックィーンが活躍してた70年代が全盛期かなと思います。
今は北欧サスペンス一色ですかね。ブログで書いた「残された者」には背筋が凍りつく程の感動で、涙すら出ませんでした。
ブログはジャンル毎に分けてるので、好きなものを選んで、暇な時に見てくれたら嬉しいです。
これからも宜しくです。