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象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

違法でないギャンブル〜真夜中の訪問者”その145”

2024年11月21日 05時04分53秒 | 真夜中の訪問者

 不思議なもので、夢自体は覚えてないのに、夢の中では過去に見た夢を思い出す。
 そんな夢だった。

 私は、昔ある投資の営業で面識があった男と会う約束をしていた。その男とは数年前に私にアパートへの投資を持ちかけ、契約寸前まで行った挙げ句に断った経緯があった。
 但し、アパートの棟単位の投資ではなく、部屋毎に購入でき、住むのではなく転売目的で購入するというものだ。
 期間限定で投資できてユニークにも思えた。一口20万ほどから加入できるので、満更悪い話でもなかったが、当時の私には投資なんて興味すらなかったし、地元から遠く離れ寂れた辺境の地で、アパートの価格が高騰するなんてありえないと思えた。それにアパートと言っても、長屋を今風にデザインした様な代物で、目新しいものは何も見当たらなかった。


寂れた一軒家と英国人女性

 そういう事で男には、いい印象はなかったが、不思議と記憶には残っている。というのも彼が腹黒い営業マンにはとても思えなかったからだ。
 ”今度は営業ではなく、ある人に会ってほしい。実は日本に越してきたばかりで右も左もわからない英国人女性なんだ”と言う。
 眉唾臭くも感じたが、”英国人女性”という言葉に既に騙されていたのだ。つまり、いい歳して独身の私は、ブロンドの若い女性を勝手にイメージしていたのである。
 冷静に考えればすぐに判る事だが、ど田舎の辺境の地に若いブロンド女が住み着く筈もない。だが、その時の私は少しの警戒すらもなかった。
 車で2時間ほど掛け、約束の場所で男とは打ち合う。彼は物腰の柔らかさは相変わらずだが、”投資の営業からは足を洗った”と言う。
 ハナから信用はしてなかったが、それ以上に不思議と懐かしいものがこみ上げてきた。
 もうこの時点で男のペースなのだが、彼にはそうした巧みに人を騙す才に長けてるように思う。

 ”君の話をしたら、その英国人女性がぜひ君に会いたいと言うんだ”と男は切り出した。
 私は敢えて女性の年齢は聞かなかった。幻滅するのが怖かったからだ。
 ”で、こんな辺鄙な所に英国女性が・・変わり者にも程があるのかな”と私は考えてもいない事を口にする。
 ”ま、詳しい事は後にして、先を急ごう。既に皆も待ってるから”
 ”皆って一体・・・”
 ”ああ、言い忘れてた。私が主催するサークルの仲間たちで、みんな君に会いたがってるんだ”
 ”何だか眉唾臭いけど・・”
 ”そう気にするな。これも社交辞令の一種だと思ってくれ・・”

 私たちが向かった先は、英国人女性が住むには不相応のボロい一軒家だった。一軒家と言っても2部屋ほどしかなく、昼間というのに照明は暗く、余り良い予感はしなかった。
 既に8人程の”仲間”らが揃っていたが、そこには英国の女性はいなかったし、全員が男だけというのも悲しいものがある。
 ”女性は今、買い物に出掛けている。もうすぐしたら来る頃だろう”と男は他人事のように呟く。
 もうこの時点で、結論は出かかっていたが、せっかく2時間掛けて来たのだから、話だけは聞こうと肝に銘じた。こう見えても、私は義理と人情に弱いのである。
 男は早速、本題に踏み込んだ。
 ”実はここに集まっているのは、私が主催するサークルの出資者たちだ。結論から言うと、最低1口10万円で上限はない。出資総額が100万になったら、ポーカーを始める。だが、単に勝っただけでは金はもらえない。黒の11以上という制限がある”
 ”スペードとクローバーだけが上がりって事?”と私はわざとらしく応じる。 
 ”つまりそういう事だが、既に金庫の中には1000万程がプールされている”
 ”まだ勝者は1人も出ていない・・”
 ”そういう事になるね”


違法ではないが、悪質過ぎる

 私は、ここにいる自分が情けなくなった。
 昔占い師に”自分より知能の低い人と交わると不幸になる”と諭された事があったが、全くの図星である。
 ”仲間”の1人が”ここで一発当てて家族と宇宙旅行でもしたいな”と、微妙に暗い雰囲気を吹き飛ばす様に冗談を言い放った。
 お陰で、その場は少しは盛り上がった様に思えた。
 ”こんなペテンな事やってたら、アンタら一生地獄だぜ!違法とまでは言えないけど、やってる事は単なる賭博じゃないか”と、私は彼の言葉を封じこむ。
 ”アンタ言い過ぎじゃねーか”と先程の仲間が叫ぶ。
 私はスクっと立ち上がると、その男を突き飛ばし、”家族の事を思うのなら、今すぐこの場を去れ”と睨み付けた。
 ”これは違法じゃない。仲間内のよくある賭け事だよ。みんな納得してるからここに集まってるんだ。そうだよな・・”
 悲しいかな、みな複雑な表情を浮かべている。

 ”悪いけど、この話はなかった事にしてくれ。10万どころか1円も出資する気はない”と静かに呟き、私はその場を去ろうとした。
 とその時、私の携帯に電話が鳴る。
 ”ハロー!初めまして、紹介にあった英国人女性です”と流暢な日本語が聞こえてきた。
 ”何だかお気に召さなかったようですわね。でもこれはほんの冗談よ、アナタを試してたの・・Mr〇〇”
 ”アンタはアホか?違法じゃなくても、これは弱者を囮(おとり)にした悪質な詐欺だ。警察に通報したら強制送還されるかもだ”
 ”そう怒らないで、Mr〇〇。でも大金には興味あるでしょ?賭博とは言っても投資とみれば合法だし、悪質でもないわ。それが証拠に簡単に1000万が集まったのだから・・それも皆貧乏人ばかりよ”

 私の興奮は、沸点に達しそうな勢いだった。
 ”アンタは悪質という言葉の本質が解っていない。例え、違法でなくとも弱者を追い詰めた時点で悪質なんだよ。このバカ女が・・”
 ”英国人女性にバカは失礼でしょ?”
 ”トルーマンも無能で無学で大バカだったが、アンタはそれ以上だな”
 ”そのトルーマンに原爆を落とすきっかけを作ったのは・・どこの国だったのかしら?”
 ”ああ、日本という大バカな国だよ。でも当時、弱者の立場にあった日本を追い詰めたのはアンタの国だ。当時の英国だって大国の米ソに追い詰められてたのに・・しわ寄せを日本に向けた”

 私は冷静さをなくしかけていた。一方で、女は冷静に私を判別していたのだ。


最後に〜夢から覚めて

 ”そういうのも含めて取引なのよ、ミスター”
 ”何が取引だ。公開鍵システムと同じで、戦争という扉を開けたら2度と出られない様な悪質なシステムを・・アンタら英国はアメリカとつるんで作り上げたのさ”
 ”でも日露戦争で勝てたのは誰のお陰?日英同盟のお陰じゃない。その後、日本が軍国主義に狂ったのは周知の事実よ”
 ”ああ、否定はしない”
 ”それに、日本が中国に攻め込んだ時には米英は反対したわ。それって間違ってた?それとも悪質な罠?”
 ”ああ、それも否定はしない。でも、全てを見通して日本が米英に戦争を仕掛ける様に仕向けたのは、間違いなくアンタらの国だ”
 ”負け犬の遠吠えに過ぎないわ。それにまんまと罠に引っ掛かったのはそっちの方よ”
 ”ああ、そうだとも。でも、アンタらがやってる事は悪質過ぎる。勝者総取りのやり方は少なくとも民主主義の理念には反するものだ”
 ”つまり、寛容も譲歩も慈悲もないってこと?”
 ”そうなるのかな。でも、民主主義の理念の言葉を知ってるだけマシな方だよ”

 私は、ここで話を切り上げようとした。

 私は最後に、”アンタに寛容や慈悲の気持ちが少しでもあるのなら、今日ここに集まった<仲間>たちを投資したお金と共に開放してもらいたい。もしそれが出来なければ、アンタは自分が今やってる事で同じ様に潰される。それだけは確実に言える”
 ”それって脅しなの?”
 ”アンタの気持ち次第さ”

 私は一方的に電話を切った。
 外に出て、家の方を振り返ると、男が立っていた。家も男も、酷く寂れてる様に思えた。
 結局、弱者はいつも強者の囮(おとり)になり、働き蜂の如く面白い様に潰されていく。
 そうこう思ってるうちに、夢から覚めた。

 英国人女性は声から判断すると、30代後半の落ち着きのある中年女に思えた。つmり、昭和の日本の贅沢な時代に嫉妬した世代の娘くらいの年頃だろうか。
 アメリカでは犯罪者が大統領に再選し、絵回の秩序は崩壊し、世界の混乱は益々深く広がる事になるだろう。故に、弱者が弱者で終わらない為にも、知恵と勇気と覚悟を持って国の指導者を見張る必要がある。
 勿論、我が国の石破首相も正論は口にはするが、実行できないのは明白だ。
 今の議会制民主主義では、当選した議員らが国民の為に尽力する事はありえないし、逆に国民という弱者から搾り取るだけである。

 夢で見た事を、ここまで詳しく覚えてる筈もないが、夢の詳細を忠実に辿ればこんな内容に落ち着くのだろう。
 つまり、”夢を描く”とはこういう事なのかもしれない。



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