象が転んだ

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『ゲティ家の身代金』〜誘拐事件における”お金”の位置づけと、大富豪の奇怪な執着と(12/29更新)〜

2018年12月28日 04時44分32秒 | 映画&ドラマ

 昨日、”マクドナルド”ブログのバックナンバーを読んで下さった方有難うです。順番がバラバラだったので、元に戻しました。少しは読みやすいかと。”その13”ももうすぐ投稿予定です、宜しくです。

 最近はよく映画を見る様になりました。というのも、TUTAYAポイントが1万点の大当たりをしたので、DVDは当分タダで借りれます。有効期限が僅か1年なので、どんどん見ていきたいと。


 さてと今日は、大好きな俳優であるミッシェル・ウイリアムズとマーク・ウォルバーグが共演する作品です。見る前からワクワクしてたんですが。結論から言えば期待通りだったです。特に、大富豪ゲティの奇怪などケチぶりは必見です。


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 1973年に実際にローマで起きたゲティ3世誘拐事件を描いたスリラー映画とあるが。スリラーというよりドラマチックなドキュメンタリーサスペンスですかね。
 
 犯人たちは、当時”世界一の大富豪”と言われたゲティオイル社社長で石油王のジャン・ポール・ゲティ氏(クリストファープラマー)に、誘拐した孫の身代金として1,700万ドル(約50億円)を要求するが。
 
 彼は支払いを断固拒否。”ここで身代金を支払えば、他の14人の孫たちも金目当てに誘拐される”というのが理由であった。総資産50億ドル(1.6兆円)を抱えるゲティ氏は、元CIAの交渉人チェイスを呼び寄せ、一切のお金を使わず、密かに孫の奪還作戦を指示します。

 とまあ、ここまではよくある誘拐身代金モノではある。ただすんなりと身代金を渡さない大富豪の気持ちは凄く理解できるし、真っ当だとは思う。ただこの老人、金に関する執着が半端じゃない。それに誘拐された孫のバカっぷりも半端ない(笑)。


 誘拐されたゲティ3世(孫)の母親ゲイル(ミッシェルウイリアムズ)は、浮気しシャブ中に陥った旦那のゲティ2世と離婚し、ゲティ氏とは息子の親権で大揉めしてた最中の出来事であったから、彼女には身代金の支払いは不可能だ。

 ”養育費も慰謝料もいらないわ、親権だけが欲しいの”、と息巻くゲイルの凛とした勇敢さには頭下がりますな。これもブロンド美人が言うからサマになるんですがね(笑)。

 メディアは、ゲイルによる”狂言誘拐”を疑い始め、ゲイルの一挙手一投足を報道しようとマスコミが付きまとい、事件は世界中を巻き込んで加熱していく。
 ”子供を誘拐されたのに涙すら見せない”のは、やはり裏で大金が絡んでるとメディアは考えたんですな。

 一方、警察や交渉人のチェイス(マークウォルバーグ)も、放蕩息子ゲティ3世の狂言誘拐と睨む。そんな中、ゲティ3世の切り取られた耳が新聞社に送り付けられる。
 
 
 ゲティ氏の遺産からすれば簡単に身代金が捻出できると見込んでたチェイスも、”金はやらん”と息巻く老資産家に愛想を尽かし、巧みな交渉術で、身代金を400万ドルにまで値切る。 
 それでも、ゲティは支払いを拒否。ブチ切れたチェイスはとうとうゲティ氏との縁を切る。命綱を失ったゲティは折れ、ゲイルが親権を破棄する事を条件に、身代金400万ドルを支払う事を約束する。

 愛する孫をゲイルと犯人から奪い返すという、ケチ親父のプランは見事ですね。よく考えてます。
 一方、”私から全てを奪う気なのね、でも息子だけは生きて返して頂戴”と、全てを破棄してまでも息子を取り返そうとする、ゲイルの鬼気迫る純真な母親像に心打たれますな。

 因みに、私生活でも彼女は旦那と死別してます。ミッシェルの等身大の怒りが映像を凌駕してます。


 その後、犯人の要求通りに身代金は支払らわれるも、今度は犯人から開放されたゲティ3世が命知らずの危険を冒し、警察に通報する。お陰で、誘拐犯に追われながらも必死の逃亡を続ける。
 ここら辺は流石にゲティ老人の狡猾な遺伝子を受け継いでますね。因みに孫の親父のゲティ2世は、単なるシャブ中のダメおやじですが。

 身代金を渡し終えたチェイスが、偶然犯人を取り押さえるという、何ともお目出度い結末だが。ここでは流石にボンボンのバカ息子を応援してましたな。ダスティンホフマンの”マラソンマン”を思い出しましたよ。


 ケチに固執し続ける大富豪と変わり者の孫。そんなバカ息子を何とか救おうとするチェイスとゲイル。そのバカ息子が最後の最後で、犯人を裏切り、必死の逃亡を続ける様は、実に清々しく頼もしいという事にしとこか。

 この映画で教えられるのは、金持ちという人種が如何に狡猾に強欲にドケチに出来てるという事。それと金持ちの息子や孫という人種が、如何にドアホでド世間ズレしてるか。百戦錬磨の冷酷な誘拐犯も、この2つの異様さには、流石についていけんかったろうに。
 この異世界に住む二人に比べると、冷酷無比な誘拐犯がマトモに見えてくるから不思議です。

 別の言い方をすれば、金持ちの理想形がここにはあるという事でしょうか。誘拐犯以上に冷酷で狡猾で強欲でなければ、金持ちはまず務まらないと。


 しかしエンディングで、そのバカ息子と母ゲイルが抱き合うシーンがあるが。少し異様に思えた。犯人は逮捕され、用意した身代金は元に戻り(実際は大半が戻らなかった)、老ゲイルは死に、母親の元に資産が転がり込み、結果オーライではあるが。少し出来すぎかな

 果たして、耳を切られたバカ息子に将来はあるのか?生きて母親のもとに送り返されただけの価値はあるのか?大富豪の孫として存続するだけの資質はあるのか?そもそも400万ドルに見合う命の価値が、この孫にあるのか?

 でもそう考えさせるだけでも、非常に良く出来た作品ではある。
 この”ゲティ家の身代金”には悲惨で奇怪なアフタストーリーがありますが。事実、この放蕩息子はその後シャブ中に陥り、病死します。詳しくは、肱雲記さんのブログ参照です。全く大金というのは厄介ですね。


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 ただこの作品には2つの奇妙な?オチが用意されてる。
 一つは、リドニー・スコットという巨匠の作品にも関わらず、なんと公開1ヶ月前にゲティ役のケビン・スペイシーがセクハラ疑惑で降板するも、クリストファー・プラマーを代役に再撮影し、僅か9日間で撮ってしまった。
 それが実を結んだのか、プラマーはアカデミー賞助演男優賞にノミネートされる快挙です。

 2つ目は再撮影時のギャラの問題。チェイス役のマーク・ウォルバーグが150万ドルに吊り上げたのに対し、ミシェル・ウィリアムズは僅かに千ドル以下。このとんでもない賃金格差に非難が集中し、ウォルバーグがギャラを寄付した事で一件落着と。

 チェイス役では必死に身代金を値切るウォルバーグですが。一方、ゲイル役でも一銭の金も要求しない強かな母親を演じるウィリアムズは、実像そのままですね。二人とも好きな俳優さんですが、かなり印象は変わったかな。

 プラマーとウィリアムズの演技がズバ抜けてたのは、こういった背景があったんですな。母は何時の世も強しですね。
 最初はこのゲイル役にはナタリー・ポートマンの予定だったらしいですが、ミシェルで全くの正解だったですな。

 スコットの執念とプラマーの生命力とウィリアムズの強かさを印象づけた良作と言えますね。うん、ハリウッドはこうでなくっちゃね。



6 コメント

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映画の紹介を読ませてもらっただけで (びこ)
2018-12-28 06:38:42
映画を観たような感動を覚えました。

だから、わざわざ借りてきてまでは観ないと思います。

金持ちがケチというのは、よくわかります。

私の高校時代の友人にもお金持ちなことを人に自慢ばかりで、すごくケチな人がいたから。「いたから」と過去形なのは、もう仲良くしていないからです。とにかく会えば自分がいかにお金持ちかの自慢ばかりで、人にはすごくケチなのです。お金持ちほどお金に対する執着心が半端ないと思いました。その友人の息子さんは医学部を10年ほど受け続けましたが、結局医学部には合格しませんでした。なのに予備校の先生をしているのはなぜかなと思うのですが、自分は合格することができなかったけれど、10年も受験勉強し続けたから受験のエキスパートになったのかな?話が映画から逸れてごめんなさい。
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ビコさんお早うです (lemonwater2017)
2018-12-28 10:36:26
 私の親父もケチだったんです(笑)。お陰で裕福である事に変りはなかったんですが、お袋はカンカンでした。

”家での贅沢はしても外での贅沢はするな”が親父の口グセでしたが。その親父も贅沢する事なく死んでしまいました。

 残された母も兄も私も、死んだ親父の遺産を食い潰しただけで、何の為の遺産だったかなと後悔してます。

 だからこの映画を見た時、すぐにピンときました。もう1人のオレかなって(笑)、そうでもないか。

 お金ってなければ苦労するし、あればあるで駄目になるし、ビコさんの友人だった人もそのお金の犠牲になられたんでしょうね。お気持ち察します。

 私の知人に裕福な医者の息子がいるんですが。コネと潤沢な資金のお陰で国立大の医学部に進み、歯科医になったんですが。夜遊びがドを過ぎて、医者を辞めて怪しい不動産業に手を染めてるらしいです。

 大金は人を内部から破壊してしまう魔物なんですかね。
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お金持ちになると云う、インドでの占いがいまだに気になるんだけど (肱雲)
2018-12-29 01:51:38
10月のインド旅行中に「貴方はお金持ちになる」なんて言われ、いまだにそれを信じている欲深い自分が居るわ
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早速ですが (lemonwater2017)
2018-12-29 01:57:13
でもまんざら嘘ではない様な気もします(笑)。

占いって、当たらない様で当たるし、当たる様で当たらない。

お兄さんの研究論文がベストセラーになったりしてです。

ゲティ氏も石油がこんなにも大金になるとは、当初は思ってなかったでしょうに。何が幸いするかわかりませんね。
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ゲティ家アフタストーリー (hitman)
2018-12-30 12:45:53
お久し振りです。

ゲティ3世のその後は悲しい結末ですね。勿論、想定内というか。元々放蕩息子で、その上誘拐され、耳をちょん切られたら、もうその時点で終わりかなです。

大富豪のゲティ老人ですが、相当のケチだったみたいで、ウィキで調べたら、凄い伝説の持ち主ですか。世の中って広いなって。
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ゲティ家の放蕩息子 (lemonwater2017)
2018-12-30 14:48:15
hitmanさん、旧年中はお世話になりました。

私もウィキで見ました。思わず笑ってしまう程のドケチぶりですが。アメリカの石油族って皆そんなもんかもです。

孫といっても、医学的に言えば?赤の他人と同じですもの。ゲティ老人からすれば、お金こそが実の可愛い息子なんでしょうか。

金持ちからすれば、お金は熱い血を脈打つ生き物なんでしょうね。
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