夕陽丘

時事問題とロースクールの日常など

◆企業犯罪 三菱ふそう,リコール対策済み車でも事故・不具合が発生

2005年03月26日 19時09分51秒 | 企業法務学習日記
 新聞報道によると,サスペンション部品の欠陥によるリコールが届けられていた三菱ふそうトラック・バスの車両で,リコール後も事故・不具合が25件発生しており(7件が火災),同社が国土交通省への報告を怠っていたことが25日に明らかになったという。問題のサスペンション部品の欠陥は,一連の欠陥隠蔽とは別に昨年9月22日にリコールが届けられていたもので,事故・不具合は,昨年9月末から発生し,うち修理済み車や新車では9件発生していた。

 三菱ふそうによると,問題の欠陥部品は,後車軸を車枠に固定するサスペンションVロッド。欠陥は,Vロッド中央部のボールジョイント部において,ナットが走行中の振動,荷重で緩み脱落。そのため,Vロッドから車軸が離脱し,後車軸が横方向にずれて操縦安定性が損なわれたり,タイヤホイールが車体と接触し,最悪の場合,車両火災が発生するという。

 国土交通省は,昨年9月28日の火災事故の際に,同社に報告を要求したが,同社からの報告は,今年2月2日。しかも,報告までに事故・不具合が12件発生していたが,報告は,国土交通省が要求した最初の1件だけだったという。また,今月14日にも火災事故が発生したことを受け,国土交通省が報告を求め,同社は16日に報告したが,14日の事故以外は報告しなかったという。

 国土交通省では,依然として「欠陥隠し」が続いていた疑いもあるとみて,同社から事情を聴いているという。三菱ふそうは,報道機関に対して,「他の事故は聞かれなかったので答えなかった。結果的に公表が遅れただけで,『欠陥隠し』をしたつもりはない」旨説明。同社の秋川文雄コーディネーションオフィス室長は「隠蔽の意図はなく,技術的に説明がつくようになってからと思っていた」と説明したという。

 説明の趣旨が,三菱ふそうの本意だとすると,同社のコンプライアンス意識は依然としてかなり低いものといわざるを得ない。隠蔽の意図はないとしているが,技術的に説明がつくまで報告・公表しないことについて認識認容はあるわけだから,隠蔽の故意があると考えられてしかるべきだからだ。

 国土交通省から要求された事件のみ報告している点も,不利益な情報はできるだけ公表したくないというマインドが背景に存在すると考えられる。しかし,コンプライアンスにおいて重要なのは,自己に有利不利を問わず,法令を遵守するという意識であり,問題が生じた場合,速やかに改善する意識だ。

 一連の隠蔽の影響で,同社は多大な社会的・経済的影響を受けているが,今回の件で同社に対する影響は当分継続することになったと思われる。経済的損失も相当なものになると考えられる。コンプライアンス違反の影響力の大きさを再認識させられる出来事であると思う。

 なお,同社は,不具合に対する緊急対策を実施する。詳細は,三菱ふそうトラックバスホームページを参照。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。