夕陽丘

時事問題とロースクールの日常など

◆朝まで生テレビ

2005年04月30日 02時22分32秒 | 日記・書評
 朝まで生テレビを見ていて,10年ひと昔という思いを強く抱いた。

 冒頭に福島瑞穂が発言していたが,10年前だったら福島氏の発言と同様の発言をする人が半分近くいたもんだが,今,福島氏と同様の発言をする人は,贔屓目に見ても2,3人。左派といわれる価値観を有する人はずいぶんと減った。

 反対に,保守,右派,右翼とまあ大雑把なカテゴライズではあるが,そっちの価値観を有するとみられる人はずいぶんと増えた。なんだかWEBでは右派が圧倒しているように思えるくらいだし,激変といってよいくらいだ。

 日本は,戦後50年程度,左派,左翼にかなり傾いていたことからすると,ゆり戻し現象と考えた方がいいのかなと思う。そうだとすると,左右のバランスが取れてちょうどよいのかなとも思う。

 いや,それにしても,福島瑞穂氏の発言のアナクロさは微笑ましいくらいだ。昔の映画を見て懐かしく思う感覚がそこにはある。弁護士やっていたときには,理論の明確さや議論の仕方など尊敬していた部分もあったのだが,政治家になった途端,社民党という組織の代弁者になってしまったように思える。やっぱり弁護士に戻って弱者救済や女性の地位向上といった活動を地道にやっていった方が本領を発揮できるように思えるのだけれど。

 昔の朝生と違うと思うのは,イデオロギーのぶつけ合いに終始しなくなったことかと思う。やはり,発言内容の立場性はあるものの,客観的な理由付けというのがあるように感じる。これは,日本人が「議論」になれてきたということなんだろうか?


◆介護事業と建設業

2005年04月30日 00時00分27秒 | 日記・書評
 WBSで市場規模が5兆円を突破した介護事業の現状をレポートしていた。公共事業の減少に悲鳴を上げる建設業界が積極的に参入していることは知られた話だが,工夫がないと難しい面もあるようだ。

 介護事業そのものは,20年後から30年後程度で市場規模が限界に達し,人口減少と相まって緩やかに縮小していくことから,ここ10年程度でどれくらいシェアを獲得して利益を確保できるかが勝負であるという話は以前から言われているが,一方で,その予測が過当競争を招いているともいわれている。

 そういう状況下で戦っていくには,やはり,利用者の立場に立った差別化が必要になる。しかし,知る限りでは,まだまだハード面での競争に力点が置かれていて,ソフト面はもちろん,両者を総合したモデルは提示されていないように思う。

 それと,市場規模が早晩限界に達するとの予測は,ある意味正しいのだが,誤りともいえる側面があると考える。介護保険をビジネスモデルに組み込む形では,現状では日本だけを対象とせざるを得ないが,老齢人口の増加という観点で見れば,一人っ子政策を継続している中国が将来有望な市場になりうる。もちろん,今後数十年間にわたり中国が安定的な成長を維持し開放政策を続けるか予断を許さないが,視点の転換としては面白いのではないだろうか。



◆企業防衛 松下電器産業の企業防衛策

2005年04月29日 22時21分20秒 | 企業法務学習日記
 敵対的買収に対する対抗策を検討してきた松下電器産業は,28日の取締役会で敵対的買収に対する防衛策を決定し,同日発表した。今回導入する防衛策は,総会決議が不要で即日導入された。

 導入された防衛策は,特定株主グループの議決権割合を20%以上とすることを目的とする株式買付行為,または,結果として特定株主グループの議決権割合が20%以上となる株式買付行為を大規模買付行為,大規模買付行為を行う者を大規模買付者とそれぞれ定義し,大規模買付行為が行われようとした場合,大規模買付者に情報提供など一定の遵守事項を明示,遵守された場合には経営陣による代替策を提示するなどしたうえで株主の判断に従うとする一方,遵守されなかった場合には対抗策を発動し,買収を阻止する仕組みになっている。

 対抗策としては,新株予約権の発行と5株を限度とする株式分割を想定する。これに関連して,同社取締役会では,新株予約権の発行登録を行うことを決議した。



◆ホリエ世代 繰り返される歴史

2005年04月29日 20時52分19秒 | 日記・書評
 日経朝刊の連載記事「働くということ2005」がライブドアで働く若者を取り上げていた。「消しゴム一個,鉛筆一本まで経費は社員持ち。次々と企業買収を繰り広げながら,無駄な出費は一切許さないという経営者は「会社は人を使うためのツールにすぎない」と言い切る」のはホリエモンのことだろうが,その指揮のもとで「それでいい」と働く若者がいる。

 彼らがライブドアで働く意味を示すキーワードは,自由と焦燥感だと記事は伝えている。家業に情熱を見出せなかった若者,経験を積み重ねることより今すぐ思いを実現したいと焦りにも似た気持ちを抱く若者。今のままでは自分の思いは実現できないとの焦燥感を抱く彼らの思いは,既存の価値観への不信とその裏返しとしての自己責任の選択のように私には思えた。

 もちろん,その思いの形成は,バブル崩壊による経済不況,終身雇用の崩壊とリストラによる解雇,年功序列から成果報酬への転換といった働く環境の激変と無関係ではない。記事に登場する若者は,年齢が20代後半から30代にあるが,彼らが高校大学と10代終わりを過ごした時期にバブル崩壊に始まる環境の変化が起こっている。既存の価値観の崩壊の場に彼らは立ち会っているのである。

 記事を読むと,彼らはライブドアで働くことに充実感を抱くと同時に,このまま継続できるのかという不安を抱いていることがわかる。ライブドアを出て新しい自己実現の場を探す可能性を吐露する者もいる。記事は,そんなライブドアを「短期の利益追求を尺度とする同床異夢の集団」と評する。

 「「下積みはごめん」と先を急ぐ若者たち」の思いの底には,自分を取り巻く外部環境の激変がもたらす将来に対する不安があるように思える。そして,ライブドアの破天荒な活動の背景には,こうした不安感を抱く若者の我武者羅な生き方があるようだ。

 それにしても,歴史は繰り返すとはよく言ったものだと改めて実感する。外部環境の変化に起因する既存の価値観への不信がもたらす,既存の価値観に反する若者の生き方。考えて見れば,60年代から70年代の若者も似たようなことをやって,その時の大人と反目しあっていた。当時は「政治」という場で起こったが,今回は「経済」という場で起こっているだけとも思える。

 さて,そう考えると,今回のライブドア騒動は,光事件などと対比するより,安保闘争と対比した方がより本質が見えてくるようにも思える。

(括弧内強調部分出所:日経4月29日朝刊1面「働くということ2005 第1部 それぞれの闘い2」)


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◆裁判短信 「赤本」出版元を著作権侵害で提訴

2005年04月28日 21時28分59秒 | 企業法務学習日記
◆ 概要

 新聞報道等によると,「赤本」として著名な大学入試過去問題集に作品や論文が無断使用されたことで著作権を侵害されたとして,著作者らが出版元の世界思想社教学社(京都市)に対して約734万円の損害賠償を求める訴えを4月27日に東京地方裁判所に提起したという。

◆ 原告

 新聞報道等によれば,原告は,劇作家の平田オリザ氏,絵本作家の五味太郎氏,精神科医のなだいなだ氏,詩人の寺山修司氏の遺族等11人と川端康成氏の著作権を管理する財団法人川端康成記念会。

◆ 請求の趣旨

 新聞報道等によれば,約734万円の損害賠償請求。

◆ 請求の原因

 新聞報道等によれば,世界思想社教学社が過去約30年間出版販売している大学入試過去問題集のうち,2004年度版を中心として33大学37シリーズにおいて,川端氏の「雪国」などの作品を著作者名や作品名を記載しないまま無断で掲載したり,内容を無断で改変して掲載するなどしたことで,著作権者の複製権,氏名表示権などが侵害されたという。


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◆個人情報保護法違反に対する処分等

2005年04月28日 02時13分29秒 | 企業法務学習日記
 個人情報等が流出するなど保護法違反が発生した場合どのような処分等が課されるかについてまとめてみた。

1 個人情報保護法に基づく処分等

① 報告の徴収(法32条)
 個人情報保護法に基づき個人情報取扱事業者に要求される義務に違反する行為等をした場合,主務大臣により,個人情報の取扱に関し報告を求められることがある。

② 助言(法33条)
 個人情報保護法に基づき個人情報取扱事業者に要求される義務に違反する行為等をした場合,主務大臣により,個人情報の取扱に関し必要な助言を受けることがある。

③ 勧告(法34条1項)
 個人情報の取得,管理,開示等手数料の設定に関する個人情報保護法の規定に違反した場合,主務大臣により,違反行為の是正措置を実施するよう勧告を受けることがある。

④ 勧告違反による命令(法34条2項)
 ③の勧告を受けたにもかかわらず,勧告に従わなかった場合,主務大臣により,勧告に従うよう命令を受けることがある。

⑤ 緊急命令(法34条3項)
 ②にかかわらず,個人情報の取得,管理,開示等手数料の設定に関する個人情報保護法の規定に違反した場合で是正措置を緊急にとる必要があると認められる場合,主務大臣により,違反行為の是正措置を実施するよう命令を受けることがある。

⑥ 刑事罰(法56条~58条)
 まず,①に対し報告を怠りまたは虚偽の報告を行った場合,30万円以下の罰金に処せられる。次に,④⑤の命令に違反した場合,6月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる。本罪は,両罰規定であり,違反者個人が罰せられるほか法人も罰金刑に処せられる。

⑦ 行政罰(法59条)
 認定個人情報保護団体が認定業務を廃止する場合に要求される届出を怠り又は虚偽の届出をした場合,または,認定個人情報保護団体でないのに認定個人情報保護団体という名称又は紛らわしい名称を使用した場合,10万円以下の過料に処せられる。

2 その他法令に基づく処分等

① 各種業法等に基づく処分
 当該個人情報取扱事業者にかかわる業法等に基づき,業務改善命令等の処分を受ける可能性がある。

② 民法に基づく損害賠償
 個人情報の流出があった場合等でプライバシー侵害その他損害が生じた場合,民法709条に基づいて損害を賠償する責任が生じる可能性がある。

3 その他社会的制裁
 個人情報保護法違反事実が明らかになることにより,まず,顧客・取引先等の信用を失う可能性がある。これにより,営業上の様々な不利益が発生する可能性がある。また,上場会社であれば株価の大幅な下落リスクを負う可能性を生じる。


◆企業防衛 テレビ朝日社長,民放各社で株式持合いを検討

2005年04月27日 05時47分43秒 | 企業法務学習日記
 日経新聞4月27日朝刊によると,テレビ朝日の広瀬社長が26日の定例会見で,敵対的買収を防ぐため在京キー局5社で株式持合を検討する方針を明らかにしたという。広瀬社長は,各局が2%保有すれば合計8%になるので敵対的買収に反対する発言力になると指摘したという。

 確かに,持合により8%の安定株主を確保できれば,敵対的買収を抑止する効果を期待できる。毒薬条項などが敵対的買収に対する防衛策として検討されているが,設計の難しさや導入コスト,手続の煩雑さや場合によっては有効性が問題になりうることから,現状では持合が最も有効と判断したとも考えられる。

 放送業界は,もともと外資規制もあるし公共性の強い業界であるから,株式持合がそのまま投資を手控える要因にはなり難いが,このまま株式持合が他の業界にも広がることは,やはり外資に対する過剰反応として海外からの投資を減退させる要因になりかねない。ライブドア騒動の負の側面が現れた格好になる。

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◆憲法改正 論じられない基本中の基本

2005年04月27日 01時58分09秒 | 日記・書評
 衆参両院の憲法調査会の報告を受けて,憲法改正に関する議論が一歩前進したように思える。55年体制下の不毛な議論に比べれば,近時の憲法改正に関する議論は内容のあるものになっており,有意義だと思う。

 現在でも,なお改正=戦前の復活という図式から脱却できない人たちも多い(社民党・共産党等々)。誤解を恐れずにいえば,そういう人たちは現憲法を経典として奉じる憲法原理主義教団の忠実な信徒だと私は思う。憲法にしても他の法律にしても,法は,私たちの社会を構成するルールとしての道具である。政治的信条は別にして,道具を棚に飾っておくだけでは意味がない。どういう道具を必要とするかは時代により異なる。不磨の大典にすることなく,絶えず議論を続けることこそが重要ではないのだろうか。

 とはいえ,現在の議論のままの早急な改正には,実は反対である。それは,国民レベルでの議論の積み上げが未成熟であることと,議論の内容が現憲法の問題点の修正に重点が置かれていて,改正後の具体的国家像に関する議論が十分にはなされていないからである。

 この点で,日経新聞4月26日の「経済教室 憲法>>1」が興味深かった。憲法学者である長谷部恭男東京大学教授の論考だが,そこで長谷部教授は,国家の基本的構成原理を示す憲法という成文の憲法典の背後にある見えざる憲法について検討を加えている。

 要旨はさておくとして,国家の基本的構成原理を示す「憲法のあり方は,日本が他の国,特に他の立憲主義諸国とどのような関係に立つかを基本的に決定する」「議会制民主主義の枠組みの下で,多様な人々に共通する利益とは何かを冷静に議論し,合意を目指していくことで国家像や国家の役割を追求すべきであろう。それがこれからの憲法の礎となるはずだ」という長谷部教授の帰結には大いに賛同する。

 日本における国家の基本的構成原理を示す憲法を考えた場合,大日本帝国憲法においては,帝政ドイツを手本として天皇を頂点とした絶対君主制的国家像が前提とされていたと考えられる。これは,それ以前,つまり江戸時代の日本の国家像を基本的には引き継ぐものと考えられるから,憲法典と現実の国家像に乖離は少なかった。しかし,日本国憲法においては,敗戦という事実のもとで一気に体制の転換が行われた結果,憲法典と現実の国家像には大きな隔たりが生じたと考えられる。戦後60年を経て,その乖離の度合いは小さくなったと考えられるが,完全な一致には至っていないと考えられる。憲法についての議論が,形而上学的神学論争とまでいわれてしまうのは,ひとつにはこのような憲法典と現実の国家像ないし国家の基本的構成原理を示す憲法との乖離が関係していると思える。

 現実の憲法改正を考えた場合,このような乖離が残ったまま議論が進んでしまうことは避けるべきだろう。それは,究極的には改正憲法の正当性にもかかわるし,その後の運用にも支障をきたすと考えられるからだ。その意味で,改正論の前提として,具体的国家像,言い換えれば,国家の基本的構成原理を示す憲法についての議論は必須ではないだろうか。自由な個人による共同体を国家の基本とする立憲民主主義を前提としても,個人と国家の関係の規定の仕方は様々である。そこで規定される具体的な国家像と論理的関係を構築しうる憲法典になるよう憲法を改正しなければならないと考える。

 国会議員の先生方には,ぜひこの点についても活発な議論を行い,さらに国民レベルでの議論を誘発していただきたい。

 なお,長谷部教授は,Jurist5月号で,日経紙面に書かれたものと関連する憲法変動に関する論考を掲載されている。


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◆戦略法務 トレンドマイクロ 賠償しない方針に転換

2005年04月27日 00時14分49秒 | 企業法務学習日記
 報道によると,トレンドマイクロ社製のウイルス対策ソフトを更新した企業などでシステム障害が相次いだ問題について,トレンドマイクロ社は,被害を受けた顧客への損害賠償を検討するとしていた当初の方針を一転させ,損害賠償を行わないとする方針を発表したという。また,これに関連して,障害の原因となった更新ファイルの名称に合わせてチェン社長の報酬を月額594円に減らし,検査担当責任者の給与の50%削減するなどの処分を明らかにしたという。

 報道によれば,今回の問題で障害が発生した企業は652社にのぼり,現時点でも6社で復旧していないという。約350万人にのぼる個人ユーザに発生したであろう障害に至っては,被害状況の把握も困難である。このような状況の中で損害賠償実施の当初方針がどのような議論の結果変更されたかは明らかではないが,この方針変更は,トレンドマイクロ社のブランドイメージ毀損等のマイナス効果を生じざるを得ないと考えられる。

 仮に,自らの非は簡単には認めてはならないという欧米流の法務戦略を前提とした意思決定がなされたとすれば,それは間違った意思決定といわざるを得ない。何となれば,自動更新が一般的になりつつある現状で,しかもトレンドマイクロ社の過失によって発生したことが明らかである今回の事例において損害賠償がなされないならば,自己防衛の観点から,トレンドマイクロ社の製品を利用しないという処置をとらざるを得ないと考えるのが通常であるからだ。

 方針変更にかかるトレンドマイクロ社の意思決定において,仮に,損害賠償に要する費用の総額が損害賠償を行わないとした場合の減益等の総額を著しく上回るとの結論を得ていたのであれば,ひとまず方針変更の合理性も担保しうるが,そのような結論が出てくるとは考えがたい。

 いずれにしても,トレンドマイクロ社の方針変更は,経営戦略上重大な問題がある。早急に再検討するべきだろう。

 なお,エバ・チェン社長の報酬カット等の処分は,責任の取り方として不十分である。同処分は,会社内部の問題として管理責任を負う趣旨であるから,せいぜい株主に対する責任を果たす性質を有するにすぎず,ウイルスバスター利用者に対する責任を果たしたことにはならない。この点でも再検討を要するだろう。

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◆JR福知山線事故 正直さを担保するもの

2005年04月26日 20時56分39秒 | 企業法務学習日記

 JR福知山線の脱線事故で、快速電車が事故直前、伊丹駅で実際には40メートルのオーバーランをしながら、運転士(23)と車掌(42)が口裏合わせをし、8メートルだったとJR西日本に報告していたことが26日、分かった。車掌が25日夜、同社に明かした。
(出所:読売新聞HP2005年4月26日 但,氏名省略)


 昨日の段階では,8メートルと発表されていたが,乗客の証言との食い違いが指摘されていた。結局,40メートルのところを8メートルと虚偽の報告をしていた事実が明らかになった。

 上記記事によれば,「オーバーランの際には車掌が非常ブレーキをかけなければならないが、車掌はブレーキをかけず、40メートル過ぎた所で運転士が電車を止めたとい」い,「車掌は出発後、運転士から車内連絡電話を受け、「(オーバーランを)少し短く報告しよう」と言われたという。」この場合,車掌も責任を問われるという事情が口裏合わせの原因のようである。

 近時,日本人の規範意識の減退が指摘されているが,企業内部においてもそれは同様のようだ。不正報告も,いってみればコンプラ違反になるわけだが,今回のような事故が発生した場合,企業側にしてみれば,正確な事実の把握ができなければ,広報などの事後対応に支障が出ることは言うまでもないのであって,ここでのコンプラ違反は厳に抑止しなければならない。そのため,コンプラの観点から,正確な報告を担保する仕組みが必要だが,今回のJR西日本の場合,そのような仕組みは機能していなかったといえる。

 その原因は様々考えられるが,基本的には,オーバーラン時の動作に対するサンクションは措置されているが,不正報告に対するサンクションは措置されていなかったということではないだろうか。そこには,もちろん,報告者を信用するという性善説的な発想があったのかもしれないが,正確な事実の把握という情報の重要性に対する認識の欠如があったように思える。

 コンプラの基本は,コンプラの意味を従業員に理解させること,言い換えれば,従業員に対する倫理教育にあるが,そこでは,コンプラ遵守のメリットと違反のデメリットを明確にすることが重要になる。その意味で,不正報告に対するサンクションが明確なデメリットとして従業員に伝達されていなかったであろうことは大きな問題である。


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◆日本版ポリティカルコンパスの結果

2005年04月25日 23時03分03秒 | 日記・書評
 「The Political Compass」の日本版「日本版ポリティカルコンパス」ができたというので,さっそくやってみた。本家「The Political Compass」をやったときには,おもいっきり左派になってしまい驚いたものだが,今回はどうだろう…

 結果↓

政治的な右・左度(保守・リベラル度) 3 
経済的な右・左度(市場信頼派・政府介入派)-1.85
あなたの分類は 保守左派 です。

 政治面では保守よりになったので,まあこんなもんかなと思うものの,経済面では左派なんですね。そうでもないと思うのだけれど…


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◆JR福知山線事故 ヒューマンエラーの恐ろしさ

2005年04月25日 18時45分19秒 | 日記・書評

 25日午前9時20分ごろ、兵庫県尼崎市のJR福知山線尼崎―塚口間で宝塚発同志社前行き上り快速電車(7両編成)が脱線して転覆、先頭車両などが沿線のマンションに激突し大破した。兵庫県警は乗客50人の死亡を確認、230人以上が病院に搬送された。鉄道事故としては42人が死亡した1991年の信楽高原鉄道事故を上回る大惨事となった。(出所:NIKKEI NET 18:32)


 平成に入って最悪の鉄道事故が起きた。現時点では,遅れを取り戻そうとして行った運転士の速度超過が主な事故原因と考えられているようだ。それが事実ならば,小さなヒューマンエラーが引き起こす問題の大きさを改めて認識させられる事故といえる。

 トレンドマイクロの問題もそうだが,小さなミスが際限のない巨大な問題に変化することは往々にある。失敗を事前に想定し,予防措置を講じることの重要性を実感する。


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◆中国ビジネスのリスクヘッジ 勢力均衡論の視点から

2005年04月24日 23時13分41秒 | 企業法務学習日記
 数週間にわたって継続した中国各地における反日騒動も中国政府の強力な介入の結果ひとまず収束に向かいそうである。次のきっかけは五四運動の記念日である5月4日前後の週末ともいわれているが,中国政府の姿勢に変化がない限り,今回起こったような大規模なデモや暴動に近い破壊活動にまでは至らないのではないかと考えている。もっとも,在留邦人に対する嫌がらせのような個別の問題は当分継続すると考えるべきであるから,日系企業としては,日本を強調するような活動を控えざるを得ないだろう。

 多少皮肉なのは,当初中国政府が「デモは自主的」で「邦人保護等には万全をつくした」といっていたことが,政府の強力な介入によりデモを見事に封じ込めたことで,単なる言い訳に近いことが明確になってしまったことだろう。

 今回の騒動は,国際的にも大きな関心を集めた。概ね,日本政府の歴史問題に対する対応に問題はあるものの今回の問題そのものは中国政府の側に責任があるという論調が多いように思う。

 日経新聞で現在連載されている記事に「第四の極 中国 ■世界の視線」というのがある。第3回目である今日の記事は,エマニュエル・トッド氏のインタビューが内容だったのだが,トッド氏が日本がロシアとの協力関係を進めるべきとしていることに興味を引かれた。

 エマニュエル・トッド氏は,現在,フランス国立人口学研究所研究員を務めている著名な歴史学者で,とくに,著書「帝国以後」は日本でも大きな注目を集めたことは周知のことだ。

 そのトッド氏いわく「米国依存を強める小泉純一郎首相の選択は極めて危険だ。台湾有事の際にも中国は日本を米国と一体とみなしかねない。地政学的に日本が組むべき戦略パートナーは地域のもう一つの極,ロシアだ。中国の台頭は両国共通の脅威だからだ」「ロシアの国内メディアには『なぜ日本は中国,韓国と周囲に敵ばかりつくってロシアと結ばないのか』との論調もある。勢力均衡論から考えて,日本と核抑止力を持つロシアが関係を改善すれば,中国も対日関係の安定を望むだろう」(日経4月24日朝刊4面)

 勢力均衡論の本場であるヨーロッパの学者らしい思考だなという感慨を抱く発言だが,日本を取り巻く地政学的要因をみれば,その発言は理に適っていると思える。

 というのは,冷戦終結と中国の台頭という2つの要因が日本の地政学的位置づけを大きく変化させている現実があるからだ。トッド氏の「日本の悲劇は地政学的に不安定な米中という二極に挟まれ,安全保障では米国,経済では中国に依存していることだ」(前記日経紙面引用)という発言にあるように,安全保障面では日米安保を軸としている一方で経済的には日米の貿易量を日中の貿易量が凌駕するという現実があり,もはや米国一方に依存していればよい時代ではなくなってしまっている。かといって,日本の一部にある脱欧米入亜論のように中国に依存すればいいわけでもない。最低限どちらとも良好な関係を維持していかなくてはならないのが現実だ。

 ただ,台湾有事のような問題が起きた場合,双方との良好な関係維持は困難にならざるを得ない。米中対立の場合に日本が全くの中立を保つことなど米中両国が認めることはないと考えられるからだ。そして,それは結局,日本が米中二極以外の自立した勢力ではないことと,さらに,環太平洋圏においては,歴史的に勢力均衡論が存在していないことが問題となっていると考えられる。仮に,環太平洋圏で勢力均衡が機能し,かつ,日本が1つの勢力として自立的であるならば,米中が対立しても日本としては,日本の国益にとりメリットの大きな方につくか,あるいは,他の勢力と連携して第三の極として米中双方に影響力を行使すればいい。そうすることで,安全保障・経済の両面で米中との相互の関係を維持しうることになる。

 その場合,重要になるのは,やはりロシアということになるのだろう(東南アジア諸国との連携もありうるが,直接的には国境を隣接するロシアだろう)。

 ここまでくると,中国とのビジネス上のリスク云々ではなく,国家レベルでの中国リスクの話になってしまうが,今回の騒動で明らかになった中国国民の深層にある反日感情という問題を考えた場合,国家レベルでの勢力均衡論の採用が結果的には対中ビジネスリスクを低減する効果を有すると考えうる。まあ,いきなり勢力均衡論といっても,歴史的経験がないから簡単ではないだろうが,少なくとも,リスクヘッジの意味で環太平洋圏での多極化を推進することは考えるべきではないだろうか。その意味で,ロシアとの関係改善は重要になってくると考えられる。

 こう考えて見ると,トッド氏のいうことは,正しいのだろうなと思う。とはいえ,勢力均衡論が数百年の歴史を有するヨーロッパと異なる環太平洋圏では,その実現はやはり難しい気はするのだが。

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◆裁判短信 シャープが東元電機を再提訴

2005年04月23日 00時57分27秒 | 企業法務学習日記
●シャープは,台湾の電機大手東元電機の日本法人三協株式会社が4月12日に提起した不正競争防止法に基づく訴訟に関して同社が報道各社向けに発表したプレスリリースに虚偽の内容があり,それがシャープのブランドを毀損したとして,4月21日,不正競争防止法に基づいて,虚偽事実の告知の差止,損害賠償(約5億円),謝罪広告の掲載を求める訴訟を東京地方裁判所に提起したと発表した。

●シャープは,今年3月,東元電機製の20型液晶テレビが自社の画素欠陥修正技術の特許を侵害したとし,三協を相手取り製品の製造・輸入・販売の差止めと損害賠償などを求め提訴している。これに対し,三協も今月12日に損害賠償を求め逆提訴している。

●また,特許庁は,本件に関する画素欠陥修正関連特許に含まれる3つの発明のうち1つを有効,2つを無効と判断した。これを受けてシャープは,知的財産高等裁判所に審決取消訴訟を提起するという。訂正審判を特許庁に対し請求することも検討しているという。

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◆本日のお薦めレポート 企業活動とコンプライアンス

2005年04月22日 02時33分38秒 | 日記・書評
今井 猛嘉・白石 賢・岡田 大作 「企業活動とコンプライアンス-アンケート調査を踏まえた法的責任のあり方について-」 経済社会総合研究所

 要旨によると,本レポートは,「企業の不祥事・犯罪の実態やそれに対する企業の現実の対応について、これらを統計的に明らかにしたものは少なかった。そこで、今回、企業の不祥事・犯罪の実態やそれに対する企業の対応に係る実態について、アンケート調査により解明を試みた。それを基に企業の社会的責任、特に企業による反社会的行為が生じた際の、当該企業に対する刑事責任のあり方について基礎的な考察を加えた。」というもの。

 企業の実施するコンプラプログラムの意味を再認識する上で興味深いレポートである。

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