夕陽丘

時事問題とロースクールの日常など

◆連合の提訴

2005年06月30日 19時13分07秒 | 企業法務学習日記
 新聞報道等によると,連合が郵政民営化法案が憲法73条に反して違憲であるとして東京地裁に提訴したという。

 成立していない法案に対する抽象的な違憲確認訴訟が認容される可能性など万に一つもないにもかかわらず提訴するのであるから,この提訴がパフォーマンスでしかないことは明白だ。

 そう考えると,訴訟費用がもったいない気がするのだが,労組の組合員はこういう戦術に納得しているのだろうか。反対の姿勢をアピールするにしても,やり方というものがあると思うのだが。

◆知的財産検定

2005年06月26日 22時19分01秒 | 日記・書評
 知的財産検定2級を受検してきた。受験本に掲載されている参考問題よりも実務的な問題で解くのも楽しかった。問われている知識はごく基本的なもので特に難しいものではない感じだ。

 問題冊子の持ち帰りが許されていなかった。最近は持ち帰りを認める試験が増えていることからすると意外な感じがする。

◆企業防衛 買収防衛策導入の是非

2005年06月24日 21時04分25秒 | 企業法務学習日記
 東京エレクトロン経営陣が株主総会に提案していた授権資本枠拡大議案が6月24日の株主総会で否決された。新聞報道によると,発行済株式価値の希薄化を懸念した投資家の懸念を説得できなかったことが原因だという。一方,西濃運輸が提案していた毒薬条項導入は,24日の株主総会で承認された。信託型で,経営陣による濫用の危険性が少ない枠組みが受け入れられたのだろう。

 買収防衛策導入の是非は,株主の利益に大きくかかわる事項であるだけに,経営陣も十分な説明責任を果たして株主の納得を得る努力が必要である。従来型のシャンシャン総会とはせずにしっかりとした対話をすることが大切だろう。今回の総会は,総じて数時間単位の長い時間をかけて行われている。1時間以内で終わらせるのが理想的な総会と考えられてきた過去の総会運営と比較すると隔世の感がある。もちろん,悪いことではない。総会屋の排除が進み,株主と経営陣との実質的な意見交換が進みつつあるのだから歓迎すべきことであると思う。依然,想定問答集を使用してがちがちの答弁をする企業も多いようだが,今は過渡期として許容すべきかもしれない。

 それにしても,厚生年金基金連合会や村上ファンドなど,物言う株主が増加することで日本の株式会社を取り巻く環境は大きく変わった。時代が変化するスピードにはいつも驚かされる。

◆立法動向 共謀罪,衆院で実質審議入り

2005年06月24日 21時02分22秒 | 企業法務学習日記
 新聞報道等によると,6月24日午前,衆議院法務委員会において,南野法務大臣が組織犯罪処罰法改正案の提案理由説明を行い,同案は実質審議に入ったという。

 同改正案の中心は,共謀に加わったことのみで処罰を可能とする共謀罪(コンスピラシー)を新設する点にあり,これにより,犯罪の可罰範囲は大きく拡大することになる。

◆個人情報 全日空,顧客情報が記録されているPCが盗難

2005年06月17日 23時46分56秒 | 企業法務学習日記
◆ 概要

 6月17日,全日本空輸(全日空,ANA)は,東京都港区にある同社本社ビル内において顧客情報が入ったパソコンが盗まれたことを発表した。発表によると,盗難されたのは同社本社ビル36階にある東京支店法人販売部のノートパソコン3台で,このうちの2台に約5300人分の個人情報が記録されたいたという。同社は,警察に被害届を提出するとともに,個人情報が流出した顧客に対して謝罪の連絡をしたという。


◆ 個人情報

 記録されていた個人情報は,同社マイレージクラブ会員約3200人分,及び法人販売部の顧客約2100人分の氏名,生年月日,勤務先等の情報。


◆ 原因

 同社発表によると,6月15日夜から16日朝の間にマスターキーを使用して侵入,盗んだ可能性が高いとしている。

◆ 対策

 同社では,本年3月から顧客の個人情報をパソコンに保存することを禁止し,退社時にはパソコンをカギのかかるロッカーに収納することを社内規定に盛り込んでいたが,法人販売部ではこの規定が遵守されていなかったという。

◆個人情報 NTTコム,個人情報を記録したPCの盗難を発表

2005年06月15日 23時25分37秒 | 企業法務学習日記

◆ 概要

 6月14日,NTTコミュニケーションズは,同社の本社ビル内において顧客情報の入ったノートパソコン1台が盗まれたことを発表した。発表によると,平成17年6月7日に座席キャビネットに収納したノートパソコンがなくなっていることが6月9日早朝に判明,社内調査を実施したが発見できないため盗難と判断して6月13日に警察に被害届を提出したという。

◆ 顧客情報の内容

 平成17年2月から同5月までの間にマンション向けブロードバンド回線サービスに申込をした顧客の名前,マンション名,部屋番号,電話番号,IPコネクト回線ログインID,IPコネクト回線認証パスワードが最大約13,000件記録されていた。メールアドレス等ID,パスワード,および口座番号やクレジットカード番号等の信用情報は含まれていないという。


◆ 原因

 同社では,現時点では,盗難と判断している。


◆ 対策

 本社ビルでは,ICカードによる入退出管理を実施していた。また,盗まれたパソコンには,ICカードによる認証やデータの暗号化などのセキュリティー対策が施されているという。現時点では顧客情報が第三者に流出している事実は確認されていないという。



◆立法動向 与党案,軽過失事例での金融機関負担割合75%

2005年06月08日 00時03分30秒 | 企業法務学習日記
 新聞報道等によると,6月2日に決定発表された与党の「偽造・盗難カード預金者保護法案」(仮称)は,偽造カード被害・盗難カード被害いずれも金融機関が全額補償することを原則としつつ,預金者に過失がある盗難カード被害については,預金者に重過失があることを金融機関側が立証した場合を除き,金融機関が75%補償する内容であるという。

 被害者救済及び金融システムに対する利用者の信頼を維持する観点からすれば,被害者救済に重点を置いた内容であることは肯定的に見るべきである。確かに,いわゆる「なりすまし」事例のような悪用を防止する対策が必要となるが,そのような問題点の解決について,そのコストを利用者に負荷していた現状こそが問題だったのであり,金融機関側が十分な対策を講じれば足りることと考える。

 今回の法案の面白い点は,預金者に過失があった場合の補償割合の決定理由だ。報道によれば,まず,盗難カードで預金を引き出せる脆弱なシステムを構築してきた金融機関に責任の50%を負担させ,残る50%を預金者と金融機関で折半すべきとの判断で金融機関の負担を75%としたという。

 素人の勝手な判断だが,今後,仮に金融機関が安全性の高いシステムを構築し,それをすべての取引に適用した場合,75%の算定理由である脆弱なシステムを構築してきた責任が消失することになるとも考えられ,そうした場合,裁判所が預金者の重過失をより広範囲に認定する可能性が生じる。そうした場合,今度は預金者の側にしっかりとした自己防衛が求められることになるだろう。


◆法律の条文の読み方

2005年06月07日 20時22分16秒 | 企業法務学習日記
 大学時代に作った法文の読み方等をまとめたレジュメを発見。今でも役立ちそうなので,掲載して見ます。

第一 条文の順序

1 条→項→号
2 本文と但書 但書は,本文の意味を限定する
3 前段と後段 同一の条項に2つの文や内容が含まれている場合
4 柱書    
5 準用

第二 接続詞の使い方

1 選択的接続詞

「又は 若しくは」

単一に用いるときは「又は」を用いる。例えば,民90

選択される語句に段階があるときは,大きい選択的連結には「又は」を用い,小さい選択的連結には「若しくは」を用いる。「若しくは」は,重複して用いることが許される。例えば,地方自治法152条2項

2 併合的接続詞

「並びに 及び」

単一に用いるときは「及び」を用いる。

併合される語句に段階があるときは,大きな意味の併合的連結には「並びに」を用い,小さな意味の併合的連結には「及び」を用いる。

第三 数量・時等の表示

場合,とき:状況等を表すときに用いる。
時:時期,時刻や時点を明確にするときに用いる。


◆企業防衛 ニレコの新株予約権発行に対する差止認められる

2005年06月06日 19時50分46秒 | 企業法務学習日記
1 概要

 東京地方裁判所民事第8部(鹿子木康裁判長)は,6月1日,本年3月14日に発行が決議され手続が進められていた株式会社ニレコの新株予約権発行を差し止める決定を下した。

 今回の差止請求は,ニレコが本年17年3月14日の取締役会で決議した新株予約権発行について,ニレコの株主である投資ファンド会社ザ・エスエフピー・バリュー・リアライゼーション・マスター・ファンド・リミテッド(英領ケイマン諸島)が,同新株予約権発行は,①商法が定める機関権限の分配秩序違反,取締役の善管注意義務・忠実義務違反等の法令違反にあたるものであること,②著しく不公正な方法によるものであることを理由として,5月9日に差止の仮処分を求めていたもので,ニッポン放送新株予約権発行差止事件と同様,民事第8部で審理がなされていた。

 今回の地裁決定は,請求理由のうち①については認めなかったものの,②につき,事前の防衛策として不適当として差止を認めた。新聞報道等によれば,決定の特徴の1つは,防衛策を発動する際の取締役会の恣意的判断を排除する枠組について,経済産業省研究会の報告よりも厳しく設定することを要求している点であるという。
 
2 判旨

◆ 法令違反であるかについて

 裁判所は,本件新株予約権発行が法令に違反しているとの主張について,以下のような理由で排斥した。

 まず,商法が定める機関権限の分配秩序違反,及び,取締役の善管注意義務・忠実義務違反との主張については,法令違反にいう法令とは新株発行に際して会社が遵守すべき具体的規定をいうところ,機関権限の分配秩序は商法全体の趣旨から導出されるものであり,また,取締役の善管注意義務・忠実義務は新株発行に際して会社が遵守すべき具体的規定には含まれないと解すべき,として本件新株予約権発行は法令違反ではないとした。

 次に,株主平等原則違反 及び,株式の自由譲渡性を定める規定に違反するとの主張については,本件新株予約権は割当基準日における株主全員に持株数に応じて割り当てるもので株主平等原則に違反せず,また,本件新株予約権発行により株式譲渡制限がかかるわけではないので自由譲渡性を定める規定に違反するものではない,として法令違反ではないとした。 

 また,証券取引法106条の32に違反するとの主張については,同条の名宛人は証券取引所であるから予約権を発行する会社には適用されない,として法令違反には当たらないとした。

◆ 不公正発行といえるかについて

 裁判所は,本件新株予約権発行目的を「株式会社の経営支配権に現に争いが生じていない場面において,将来,敵対的買収によって経営支配権を争う株主が生じることを想定して,かかる事態が生じた際に新株予約権の行使を可能することにより当該株主比率を低下させることを主要な目的として発行されるもの」と認定した上で,事前防衛策として新株予約権発行が許容される要件について述べている。

 まず,商法上,取締役は株主総会により選任・解任される立場にあるところ,取締役が株主構成の変更を主要目的とする新株等発行を認めることは「商法が機関権限の分配を定めた法意に明らかに反する」として原則として禁止されている旨明らかにした。そして具体的に,有事の場合,原則として,株主構成の変更を主要目的とする新株等の発行は認められないが,相手がグリーンメーラーのような場合は緊急避難的措置として許される場合があるとした。しかし,平時において,事前の防衛策として株主構成の変更を主要目的とする新株等の発行を行うことは緊急避難的措置ともいえず,株主総会の意思によらず取締役会の判断で発行することは原則として許されないとした。そして,例外として発行が許される要件を次のように述べる。

「 したがって,本件のような事前の対抗策としての新株予約権の発行は,原則として株主総会の意思に基づいて行うべきであるが,株主総会は必ずしも機動的に開催可能な機関とは言い難く,次期株主総会までの間において,会社に回復し難い損害をもたらす敵対的買収者が出現する可能性を全く否定することはできないことから,事前の対抗策として相当な方法による限り,取締役会の決議により新株予約権の発行を行うことが許容される場合もあると考えられる。しかし,その場合であっても,少なくとも事前の対抗策としての新株予約権の発行に株主総会の意思が反映される仕組みが必要というべきであり,また,新株予約権の行使条件の成就の判断を取締役会に委ねることについては,現経営者による権限の濫用のおそれが必然的に随伴するから,取締役会の恣意的判断の防止策も必要である。
 そうであれば,取締役会の決議により事前の対抗策としての新株予約権の発行を行うためには,①新株予約権が株主総会の判断により消却が可能なものとなっているなど,事前の対抗策としての新株予約権の発行に株主総会の意思が反映される仕組みとなっていること,②新株予約権の行使条件の成就が,取締役会による緊急避難的措置が許容される場合,すなわち敵対的買収者が真摯に合理的な経営を目指すものではなく,敵対的買収者による支配権取得が会社に回復し難い損害をもたらす事情がある場合に限定されるとともに,条件成就の公正な判断が確保される(客観的な消却条件を設定するとか,独立性の高い社外者が消却の判断を行うなど)など,条件成就に関する取締役会の恣意的判断が防止される仕組みとなっていること(なお,敵対的買収者に対し事業計画の提案を求め,取締役会が当該買収者と協議するとともに,代替案を提示し,これらについて株主に判断させる目的で,合理的なルールが定められている場合において,敵対的買収者が当該ルールを遵守しないときは,敵対的買収者が真摯に合理的な経営を目指すものではないことを推認することができよう。),③新株予約権の発行が,買収とは無関係の株主に不測の損害を与えるものではないことなどの点から判断して,事前の対抗策として相当な方法によるものであることが必要というべきであり,こうした事情を会社側が疎明,立証した場合は,将来における敵対的買収者の持株比率を低下させることを主たる目的とする新株予約権であっても,その発行を差し止めることはできない。


東京地裁決定全文


◆個人情報 三菱信託銀行,約17万人分の顧客情報を紛失

2005年06月02日 20時30分12秒 | 企業法務学習日記
 新聞報道等によると,6月1日,三菱信託銀行は,全国44の本支店で管理している約17万3000人分の顧客情報を記録したフィルム資料を紛失していたことが判明したと発表したという。同行の調査によると,原因は,誤廃棄の可能性が高く,外部流出の可能性は低いという。現在のところ,流出及び流出による被害は確認されていないという。

 同行のプレスリリース等によると紛失判明までの経過は次のとおり。

 同行は,顧客情報の管理徹底を目的として,顧客情報が記録されたデータ(マイクロフィッシュ)を同行事務センターにて集中保管することとし,本年4月より事務センターへの移管作業を進めていた。そして,同作業の一環として全店における当該データの保管状況の調査をしたところ,昭和46年(1971)から直近に至る間の一部のデータ(マイクロフィッシュ)が紛失していることが判明したという。

 紛失したのは,マイクロフィッシュという微細な文字で顧客情報が書き込まれたフィルム媒体合計251枚。書き込まれていた顧客情報は,約13万4000人分の顧客の氏名のほか,電話番号,入出金の明細,残高などが記載してあるという。

 移管作業を進めていたマイクロフィッシュは,全部で約300万枚にのぼるとされており,この点からすれば,第三者的に見ても誤廃棄の可能性が高く,個人情報の漏洩事例ではないといえる。また,報道対応にもとくに問題はなさそうである。ただ,HP上のプレスリリースの内容はより詳細なものとするほうが妥当ではないだろうか。あの内容では,銀行側の見解が示されているのみで,客観的に経過等を読み取ることが難しい。IR等の観点からしても詳細な情報開示が行われることが信頼性の向上に資すると考えられる。



◆anegoにみる今という時代

2005年06月02日 00時17分32秒 | 日記・書評
 日本テレビ系のドラマ「anego」を見た。30代,独身,キャリアか結婚か迷う女性を主人公に設定するあたりは負け犬という言葉がはやる昨今の時流をとらえているということなのだろう。何回か見ているが,今という時代を適度に切り取っていておもしろい。

 ドラマの要素を取り出してみて,ふと思った。30代の働く女性,上司(男性)からは信頼され,同世代や年下の同僚(女性)からも慕われている。もちろん仕事にもやりがいを感じている。そこには,かつてのお局様的イメージはない。目下の恋人候補は,年下のイケメン新入社員で能力も将来性もありそう。他方,会社社長と結婚退職したかつての同僚は,結婚生活がうまくいっておらず精神内科のお世話になっていたりする。主人公と対比すると,「負け犬万歳」という設定なのだろうか? 件の会社社長とイケメン新人とを両天秤にかけそうな一方,結婚への願望とその実現への伏線もありそうなストーリー。最後は,やっぱり負け犬万歳なのか,それとも若く将来性あるイケメン君をダンナにするという先物買いなのか,はたまた杉田かおる的勝ち犬?で終わるのか,多少なりと興味がある。

 それにしても,今という時代は女性にとっては生きやすい時代なのだろう。何かの調査で,「生まれ変わったら男と女どちらがいい?」と聞かれて,諸外国では多くが男を選択したのに日本は女を選択した人が圧倒的だったという話も聞く。もちろん,依然として男女差別的な土壌というのは残っているけれど,改善される方向にあっても悪化する方向にはない。生き方が規定されやすい男の人生と比べて,女性は自由にも思える。原始,女性は太陽であったと誰かがいっていたが,日本は本質的には女性優位の女系国家なんだろうか?

 立ち飲み屋で女性だけで飲んでいるシーンが度々出てくるが,これってかつてはオヤジの専売特許だったよな,などとふと思う。まあ,フィクションドラマで世相を考えることはある意味愚かではあるけれど。

 何はともあれ時間があれば来週も見てみようか。



◆中国テレビ大手が知財権共同利用等で合意

2005年06月01日 00時13分26秒 | 企業法務学習日記
 5月31日付日経新聞の報道によると,TCL集団等中国テレビ大手9社が,各々が保有する知的財産権の共同利用や貿易摩擦問題への共同対処等で合意したという。記事によれば,9社は,知的財産権・技術標準化・国際市場・国内市場の4分野について専門委員会を設置し,共同利用・通商問題・国内競争等について協力,共同対処するという。

 合意内容の詳細が不明なので内容についての検討はできないのだが,記事によれば,過当競争に歯止めをかける意図もあるようで,一種カルテル的な色彩を含んでいるように思える。