新年明けましておめでとうございます。2008年も皆様にとって良い年となるようお祈り申し上げます。私にとってはどのような一年になるのか今から、楽しみでもあり、不安でもあります。このブログの運営についてはこれまで通り続けていこうと思っています。よろしくお願い申し上げます。
この話題は2年前の
2006年の正月に書いたものですが、なかなか興味深いテーマなので一部加筆修正をして再掲したいと思います。
新年はじめの話題として、「
あけましておめでとうございます」を英語でどのように言うのか取り上げてみたいと思います。日本には年賀状を友人やお世話になった方々、付き合いのある方々に送るという習慣があり、そのときに「あけましておめでとうございます」という風に書く場合が多いと思いますが、最近ではこれを英語を使って書いてある年賀状もよく目にすると思います。そのときによく書いてあるのが次の英語です。
Happy New Year!
しかし、よく考えてみるとYearは名詞だからその前にAがいるのではないかという疑問も出てきそうです。そのためかAをつけたものもよく見かけます。
A Happy New Year!
郵便局が提供している年賀状を自分で作るための支援ページ「
郵便年賀.jp」を見てみると「明けましておめでとう」の英語版にはいろいろな表現があることが分かります。
Happy New Year!
A Happy New Year!
Wishing You A Happy and Prosperous New Year!
I Wish You A Happy New Year
どれを使ってもよいのでしょうから、どれが正しいというのはないのかもしれません。どれを書いてもその真意である「めでたさ」や「新年の祝い」というものは伝わりそうですからコミュニケーションという観点から見ると問題はないと思いますが、無駄なことではあってもどれが好ましい表現なのか知りたい気持ちはあると思います。
このうずうずする気持ちを満足させてくれるだろうことが大津由紀雄氏の『英文法の疑問―恥ずかしくてずっと聞けなかったこと』に書かれています。大津先生はこの問題を調べるのに、次の8つの表現を提示して、カードに書く場合、口頭で挨拶をする場合、それぞれの場合の表現として、どう感じるかについてイギリス人の言語学者をはじめ、数人の英語を母語とする話者に尋ねたそうです。
(1)Merry Christmas!
(2)A Merry Christmas!
(3)Happy New Year!
(4)A Happy New Year!
(5)Merry Christmas and a Happy New Year!
(6)Merry christmas and Happy New Year!
(7)We wish you Merry Christmas and Happy New Year!
(8)We wish you a Merry Christmas and a Happy New Year!
その結果に関しては大津先生の本からの引用をさせてもらいます。
回答に多少ぶれ(つまり、個人差)はありましたが、だいたいのところは、ほぼ同じ意見でした。
(1)と(3)は話しことばとしてもカードに印刷された挨拶としてもまったく自然だそうですが、(2)と(4)にはひっかかりがあるといいます。実際、Good morning.などの挨拶表現でも、A good morning.とは言いませんね。
これに対して、文の形をとった(7)と(8)の場合は、冠詞が使われていない(7)は不自然で、冠詞つきの(8)が自然であるようです。挨拶表現であっても、文の形をとると、通常の文法規則に従わないわけにはいかないのでしょう。
(5)と(6)は微妙ですが、(5)のほうが自然だとする人が若干多くいました。しかし、(6)もかまわないという人もいます。(6)はMerry ChristmasとHappy New Yearのいずれも冠詞なしで釣り合いがとれています。(5)はその点で釣り合いは悪いのですが、読んだときの口調のよさが聞いているという意見もありました。(pp.184-185より) |
もうこれ以上何も補足説明をする必要はありませんね。英語の母語話者がそういっているのだからそうなのでしょう。ここらあたりにも文法が垣間見られるところが非常に興味深いところです。感覚としての文法を見た気がします。
さて、話は変わりますが、去年を表す漢字は「偽」でした。私自身、振り返ってみると私には「一」という漢字が最もふさわしいかと思います。私の名前にも「一」がついていますが、それはさておき、去年ははじめて学校の教壇に立つ経験をした年でした(教壇は実際にはありませんが…)。一には「はじめ」という意味もありますが、去年私は英語の教え方を一から考えました。授業の仕方を一から学びました。生徒との接し方を一から教えていただきました。大学を卒業して現場に出るようになり、なかなか刺激的な毎日を送ることができたと思います。夜寝るときは次の日の授業のことを考え、気が重くなるような日もありました(ほぼ毎日!)。授業前に緊張しない日はありませんでしたし、授業後はこれでよかったのかと自問自答をしない日はありませんでした。
学校現場に入っては思い知らされたことはいつが誰かが言っていた「生徒にする」という言葉のリアリティーです。子供たちは中学に入ると「児童」から「生徒」になるわけですが、校門をくぐれば「生徒になる」というわけではないのです。授業中の私語はもちろん、本を読んだり、カードゲームをしたり、飲食をしたり、はたまた立ち歩いたり、教室外へ出たり、授業妨害をしたり…などなどいろいろな問題が現場にはあり英語を教える以前に立ち向かわなければならない現実を実感しました。教師は子供たちを「生徒にする」ために日々たたかっていたのです。職員室では生徒にたいする文句(よく言えば生徒のここを正したいという点)について教員同士で意見交換なされいました。
学校を離れては、はじめて他大学(広島大学と筑波大学)に行きました。どちらも国立大学でとても広いキャンパスでした。ウォーキングコースなるものが大学構内にあったりして驚きましたし、どちらの大学でも方向音痴の私は道に迷ってしまいました。広島大学の方では特に中学カリスマ英語教師などと呼ばれるすごい先生に直接お目にかかることができたり、著書を通じて存じ上げていた先生にお目にかかることができたりして、とても楽しいときを過ごすことができました。
また拙ホームページ&ブログも開設から2年が過ぎ、3年目に突入したのも去年でした。去年書いた記事のタイトルは以下の通りです(一部にはニュースが含まれています)。
2007/12/29 文法の傍流【1】
2007/12/21 ミセス ミス ミズ
2007/12/16 指導の私道「There is[are]の導入と指導」
2007/12/09 「指導の私道」を新設
2007/12/09 自由にならない英語
2007/12/08 英語をやる理由って?
2007/12/05 鈴木孝夫先生を見たい?!
2007/12/03 田中克彦氏、TV出演
2007/12/02 『論文捏造』 村松 秀
2007/12/01 努力できる才能が。
2007/11/30 メモ帳作成の方法
2007/11/29 多聴に挑戦!オーディオブックのご紹介
2007/11/26 自由な選択授業―「トランスレイト」の試み
2007/11/24 田尻科研シンポ参加のご報告
2007/11/23 使えない英語
2007/11/23 世界一美しい言語は?
2007/11/20 ベルギーの言語対立政治にも影響、空より高い言葉の壁
2007/11/19 オーディオブックとは
2007/11/18 ディクテーションの方法
2007/11/18 たかじんのそこまで言って委員会
2007/11/17 死ぬ気でやれ!死なないから。
2007/11/16 壊れる機械―機械はいつかは壊れるんだな。
2007/11/16 生徒指導と授業―学ぶ主体だって。
2007/11/13 豪州、移民対象のテストに批判
2007/11/11 IFの活動
2007/11/11 「努力のプリント」の公開を再開
2007/11/03 年賀状を作ろう!
2007/11/02 電話表現に糸電話
2007/10/27 スティーブ・ジョブズ氏―Macworld Keynote Address
2007/10/15 ESSENTIALS OF GRAMMAR | 文法の本質
2007/10/06 ブログ【『名演説で学ぶアメリカの歴史』 上岡 伸雄】
2007/09/30 英文の整理【マッカーサー証言を読む】
2007/09/28 ブログ【中国、大学生に英語履修を義務化へ】
2007/09/28 ブログ【渡海文科相、教職員増など予算獲得に意欲】
2009/09/23 ブログ【英語を使った政治家に】
2007/09/22 ブログ【北京、ソウルで小学生の英語学習熱高まる】
2007/09/19 ブログ【「英語必修化 教員の負担が重すぎる」】
2007/09/18 ブログ【精神鑑定をめぐる宮崎・野田論争】
2007/09/17 ブログ【「一家に1枚宇宙図を」って】
2007/09/15 ブログ【クローズ・テストについて】
2007/09/11 ブログ【前倒しではないという小学校英語】
2007/09/10 ブログ【稲刈り2007】
2007/09/09 ブログ【世界自殺予防デー】
2007/09/03 ブログ【英語村について】
2007/09/02 ブログ【英語の授業数が増える?】
2007/09/01 ブログ【「誰かに」やってもらう宿題】
2007/08/31 リーディングプリント【Billy and the Queen】
2007/08/25 【ブログ【カタカナの王様!万歳!】
2007/08/19 ブログ【リーディングプリントを公開】
2007/08/19 どっぷり【2年生用リーディング課題「Animals in Danger」を追加】
2007/08/17 ブログ【アクセスカウンターを設置】
2007/08/17 どっぷり【2年生用リーディング課題「A Magic Box」を追加】
2007/08/15 備忘録【代々木ゼミナールの英語学習支援】
2007/08/14 備忘録【英語が世界を支配?】
2007/08/10 備忘録【表現に関する基本的事項】
2007/08/01 備忘録【あだ名は英語じゃなくタイ語で タイ政府が奨励策】
2007/08/01 備忘録【エスペラント―異端の言語 [著]田中克彦】
2007/07/30 ファイル【Reading Time】
2007/07/29 ブログ【選挙の朝】
2007/07/26 ブログ【自民党「英語が使える日本人育成」】
2007/07/25 ブログ【公明党「小学校で英語教育を必修に」】
2007/07/23 備忘録【接頭辞〔お試し的な作成・公開〕】
2007/07/23 ブログ【次世代を育てる責任~田尻悟郎氏】
2007/07/21 備忘録【「英語が使える日本人」の育成のための行動計画】
2007/07/21 備忘録【語学ビジネス市場に関する調査結果 2007】
2007/07/19 ブログ【雑記〔2007.07.18〕】
2007/07/18 ブログ【義家氏(ヤンキー先生)を生で見ちゃった!】
2007/07/17 ブログ【百ますを英語に】
2007/07/16 備忘録【アルファベット 筆記体の練習】
2007/07/16 ブログ【藤原正彦、小学校英語を語る】
2007/07/15 ブログ【〔プロフェッショナル 仕事の流儀〕】
2007/07/14 ブログ【非常勤講師!2ヶ月が経過!】
2007/07/01 英語の教材作成
2007/06/30 The Beatles - Hello Goodbye
2007/06/30 言語事件簿
2007/06/30 英語学習の方法について
2007/06/30 日本人はなぜ英語を学ぶのか(資料)
2007/06/30 小学校での英語必修化問題
2007/05/26 ブログ【広島市の小学校英語に注目】
2007/04/28 藤原正彦氏「小学校英語教育反対」
2007/04/16 備忘録【印刷設定時に入力すると便利な記号(ヘッダーとフッター用)】
2007/03/31 「私の日常」を開始(読者は限定)
2007/03/16 ブログ【英語の学習方法について】
2007/03/03 備忘録【This is a pen.への弁明】
2007/02/26 ブログ【杉村太蔵氏の小学校英語論にケチをつける!(2/2)】
2007/02/26 ブログ【杉村太蔵氏の小学校英語論にケチをつける!(1/2)】
2007/02/24 備忘録【ピアジェ(J. Piaget)の認知発達段階論】
2007/02/23 備忘録【イマージョンプログラムのタイプ】
2007/02/22 ブログ【Don't mind.は新英語?】
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2007/02/14 ブログ【『外国語で発想するための日本語レッスン』 三森ゆりか】
2007/02/12 ブログ【米国単独ライブ大成功の「なかやまきんに君」:ボンバー!?】
2007/02/12 備忘録【Charlie Chaplinの「独裁者」】
2007/02/12 備忘録【Martin Luther King Jr - I have a dream speech - Aug 28 1963】
2007/02/11 備忘録【息抜きとしての会話】
2007/02/10 ブログ【「偶有性/ぐうゆうせい」】
2007/02/09 ブログ【英会話がしたい!】
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2007/02/06 ブログ【『15(フィフティーン)』 中嶋洋一, 大津由紀雄, 佐藤礼恵, 幸若晴子, 柳瀬陽介】
2007/02/05 ブログ【韓国の英語熱:海外逃亡!】
2007/02/04 ブログ【『なぜあなたは英語が話せないのか』 東後勝明】
2007/02/03 ブログ【『世界の言語を楽しく学ぶ』 井上孝夫】
2007/01/31 ブログ【『語学の脳みそ―11ヵ月で4ヵ国語をマスターした僕の語学のツボ』 矢部 太郎】
2007/01/30 ファイル【語源カード(接頭辞編)】
2007/01/29 ファイル【アメリカ英語とイギリス英語の語彙】
2007/01/28 ブログ【“Why Is English Like That?” Schmitt & Marsden】
2007/01/27 ブログ【『日本の英語教育200年』 伊村元道】
2007/01/27 ブログ【『英語を学べばバカになる グローバル思考という妄想』 薬師院仁志】
2007/01/25 ブログ【教育再生会議の第一次報告】
2007/01/23 ブログ【「英語は選択に」 グレゴリー・クラーク】
2007/01/22 ブログ【『言語を生み出す本能』 スティーブン・ピンカー】
2007/01/20 ブログ【『絶対音感』 最相葉月】
2007/01/17 ブログ【「語源を利用して効果を上げる」 竹岡広信】
2007/01/17 ブログ【『これが正しい!英語学習法』 斎藤兆史】
2007/01/17 ファイル【オーストラリアの言語事件】を公開
2007/01/12 ブログ【努力のプリント】
2007/01/07 ブログ【「英米か!」というツッコミを。】
私がいま興味を持っているのは新年早々すこし重たい話題かもしれませんが「ミセス ミス ミズ」で触れたような男女の間にある不条理な差をなくすための運動です。私はこれに反対したい。芸人などがどう対処してよいか分からないような話題の振られ方をしたときに「無茶振りやん!」と言いますが、私には「ミズ」などという汚い音は「無茶振り」の一種だと思われるのです。
今、私はスペースワールドの近くのホテルに泊まっていてこの記事を書いています(スペースワールドで遊ぶ計画でしたが、ジェットコースターの故障で数名が怪我をされたようなのでスペースワールドはキャンセルしました←残念)。そこでの話をチョット。私が泊まっているホテルには大浴場があり、私も入ったのですが、突然、「お風呂のおばちゃん」が入ってきました。お掃除おばちゃんではなくバケツ直しおばちゃんです。身体を洗うのに使うバケツ(桶)をイスの上にきちんと直すおばちゃんです。髪や体を洗うところが7つくらいあり、私は一番はしっこに座ったのですが、そのおばちゃんは一番奥のほうからわたしのほうに向かってバケツの位置を整えはじめたのです。お風呂ですから、もちろん私は裸。一つ一つバケツを丁寧に直し、いよいよ私の隣までやってきました。私が顔をやると、おばちゃんはニコッと笑って何もなかったかのように向かい側のほうを直しに行きました。これは男子風呂におばちゃんという組み合わせだったために許されることで、逆に、女子風呂にオッサンだったら大問題になるんだろうなと思いながら、身体を洗い、お風呂の水につかりました。私はおばちゃんに素っ裸を見られちゃったわけですが、私はこれはこれでよいのだと思うのです。男と女の扱われ方を同じにしようと言って、おばちゃんを追い出す必要性を感じないのですね。おばちゃんにジロジロと見られたら少し困ってしまいますが、常識の範囲内であれば全然OKだと思うのです。若い女性におばちゃん役をされたら私も少し恥ずかしいかもしれませんが、おばちゃんも「自分が少々見たって男の人がどうこういうことはない」と了解し、男のほうも「おばちゃんに見られるくらいなんともない」と思っている。それならそれでよいと思うのです。逆にこういう光景は私などにとっては心の豊かさを意識できるものとなっており、良き習慣であるとさえ言ってもいいくらいだと思うのですが。
「ミセス ミス ミズ」の問題もこれと同じように考えればよいのではないでしょうか。「ミセス、ミス」をやめて「ミズ」にするという発想はおばちゃんにおじちゃんの格好をさせるようなものではないかという…ことでしょう。話は少し変わりますが、名前の問題もそうです。中国に行けば「ヤマダ」さんは「シャン ティェン」さんになるわけですが、これは中国人が山田さんを「ヤマダ」さんと呼びたくないわけではなくて、中国語はこういうものなのだと思えばよいのではないでしょうか。自分の名前をローマ字にしたとき、[名+姓]にするか[姓+名]するかという問題があり、ある人は日本語で「姓+名」で呼ぶのだからローマ字でも「姓+名」でよいというわけですが、英語という言語の構造が日本語の構造を鏡に映したようなものだとすれば、名前の問題は英語の世界への入り口だと見れなくもない。目くじらを立てて[姓+名]にこだわる必要もないわけです。
話がまとまりませんが、この話題も含めていろいろな話題を今年も取り上げていければと思います。
I wish you a happy new year!
今年もよろしくお願いします。
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