arudenteな米

食と映画感想とその他もろもろ個人の趣味と主張のだらだら日記

パフューム ある人殺しの物語

2007年03月14日 | 映画
パフューム ある人殺しの物語
(PERFUME: THE STORY OF A MURDERER)

http://perfume.gyao.jp/

≪ストーリー≫
18世紀のパリ。悪臭立ちこめる魚市場で一人の赤ん坊が産み落とされる。危うく捨てられかけた赤ん坊は、生き延びグルヌイユと名付けられて育児所に引き取られる。グルヌイユは友だちもいない孤独な子どもだったが、何キロも先の匂いを嗅ぎ分ける超人的な嗅覚の持ち主だった。やがて青年となり孤児院を出たグルヌイユは、ある時運命の香りと出会った。それは赤毛の少女の体から匂い立っていた。しかし彼は、怯えて悲鳴を上げようとした少女の口をふさぎ、誤って殺してしまう。それ以来、彼は少女の香りを再現することに執着し、香水調合師バルディーニに弟子入りする…


冒頭、視覚から匂いを感じられる映像が続き、体調が悪いときにはあたるかもしれない。

ネタバレまじる感想は下に







最初の街の描写から物体の一つ一つに到るまで自分の鼻が暴れ出すかと思うくらいの匂いの洪水を擬似体験できる。
この導入部分が優れているので最期まで画面から来る彼の嗅ぐ匂いのイメージが伝わってくる。

前半、彼に関わった人物達(大抵は彼に酷い事をしている)が不幸な最期を遂げる部分は童話的だが寓話は無い。
彼の運命に触れたものが不幸になるという副題にある「ある人殺しの話」の彼が産まれながらに無意識の殺人者である事を補強していると思う。

映画全体の表現が漫画的に感じられる。
それは子供向けマンガと言うより劇画や青年漫画に近いという意味でなのだが、前半の主人公がの調香技術を身につけ一人立ちするところから幼かった主人公の成長に合わせるように童話らしさが消え、演出が歴史者の様に変わる。
主人公が少年から青年になる事を意図して変えているのだと自分は思う。
最初に殺した女性は母性のような甘えの匂いをまとっていたが後半殺される女性達は匂いの良い物品でしかない。
最期の女性が街から離れた事を鼻で察知して追いかける部分は超能力のごとく撮り、主人公の人間性が極限まで薄くなっていることもからも演出の変化は感じられる。
ラストのCMでも一部紹介があった大量の人の絡みあいは「聖マッスル」のふくしま政美のような壮大な絵を感じさせる。


少し惜しいかなと思ったのは主人公が自分の調合した香水の力に気がついた描写が弱い。
雇い主に少し効果があった描写はあったが彼の探求心なら香水の効果を実験しそうな気がするので少し残念かと。
その為、クライマックスの牢獄から貴族のような振舞いで現れる部分に繋がる部分が急すぎに感じてしまった。

映画のジャンルから「フェチ」や「変態」の言葉が浮かぶのはわかるが自分はそれほど変態もフェチも感じなかった。
コリン・ウィルソン等の殺人百科系を読み慣れているからかもしれないがそんなに珍しい嗜好ではないなぁと。
鼻の能力は珍しいがあるが。

性・愛の変わりに興味・対象が匂いというだけで彼自身に性につながる匂いがせずそれ自体は猟奇とかとは程遠いと思う。むしろ境遇が産んだ哀れな話の部類に入るかと。
最初に殺人を犯し、その後一応商売女で合法的に匂いを採取しようとするが抵抗されてからは彼は合理的に動かなくなった女性を作りだし採集を繰り返す。

普通なら充分問題になる言い方だが彼には「道徳がない」だけで合理的である。
殺す事に美学や興味があるわけでない、通俗な猟奇映画で表現されている殺人鬼では決してない。

デンマークにも女性の髪を洗髪する事に喜びを感じ、洗髪をしたいがために女性を死なせてしまった男が実際にいるがこの場合もまったく性暴行はなかった。

しかしこの話の内容、素材をしっかりと救われる話にせず安易な悲しい話にしなかった監督は尊敬に値する。 独逸出身は狂った映画監督が多いというのが自分の意見ですがこのような狂い方は多いに歓迎します。


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