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衝撃の「日銀サプライズ緩和」、その効果のほどはいかに?

2016年02月03日 17時27分58秒 | 市場動向チェックメモ
http://bizgate.nikkei.co.jp/article/99125212.html


日経電子版


衝撃の「日銀サプライズ緩和」、その効果のほどはいかに?
2016/02/03
経済アナリスト 田嶋智太郎 氏


 波乱続きの相場展開となった1月がようやく終わり、最後は日銀によるサプライズ緩和の衝撃が市場を駆け巡ることとなった。周知のとおり、日銀は1月28-29日の日程で開かれていた金融政策決定会合において初の試みとなる「マイナス金利の導入」を決めた。かねて日銀の黒田東彦総裁は「できることは何でもやる」とは言っていたものの、マイナス金利導入の可能性については何度もかたくなに否定していた。それだけに今回は相当な意外感をもって受け止められるところとなり、当然、発表後の株価や円相場は強く反応した。善かれ悪しかれ、これも"黒田流"ということなのであろう。

 結果として、1月29日の日経平均株価は大幅高となり、連れて欧米の株式市場にも全体に買い安心感が広がった。外国為替市場では円安・諸外国通貨高が一気に進むこととなり、日銀によるサプライズ緩和の衝撃は年初からの円高進行をほぼ帳消しとするほどの強烈な効果を発揮した。

 果たして、その効果はある程度持続的なものか、それとも一時的なものか。冷静かつ総合的に判断し、ここで日銀サプライズ緩和後の相場の行方を展望しておきたい。

国内企業業績の下方修正見通しに歯止めがかかる

 日銀の黒田総裁は、就任以来これまでずっと「人々のインフレ期待に訴えかけること」「人々のデフレ心理の転換を進めること」が重要であると述べてきた。加えて「戦力の逐次投入(小出しの政策投入)は有効ではない」とも述べており、いずれも"おっしゃることごもっとも"であると思われる。

 実際、2013年4月の"バズーカ第1弾"、2014年10月の"バズーカ第2弾"は、ともに人々の円安進行やそれに伴う株高などに対する期待を高め、その効力を存分に発揮してきた。2015年12月の会合で日銀が打ち出した異次元緩和の「補完策」は、市場にとって「いかにも中途半端な"くせ球"」と映った模様で、後に市場の失望を買ったり「日銀限界説」に結びつけられたりした。しかし、この策は異次元緩和策を継続するうえで必要かつ適切な「補完」を文字通り行っただけで、決して「逐次投入」の類ではないと考えられる。

 そもそも、より多くの人々の期待や心理に訴えかけようとするならば、その策は極力シンプルで分かりやすくなければならない。その意味で、今回のマイナス金利導入というのは一般にもわかりやすく、ゆえに再び相応の効力を発揮することが大いに期待される。

 思えば、年明けからの相場の大波乱は、数ある個々の原因自体にも浅からぬ問題があったと言えるものの、何よりそれらが複雑に結びつくことで、結果として"負の連鎖"を引き起こしていた側面が大きい。日本株などはその典型と言え、中国向け輸出の落ち込みで一部企業の業績に対する先行き不安が台頭したかと思えば、それに円高の進行がどこまで進むかわからないという不安が追い打ちをかけ、より広く多くの業種・企業の業績について下方修正の可能性が懸念されるようになった。さらに、原油安で産油国の政府系ファンドなどが日本株から資金を引き揚げるとの憶測まで広がって、売りが売りを呼ぶ展開となる場面があった。

 その点、今回のマイナス金利導入は少なくとも「今後の円の上値を抑えることに大きく貢献する」という意味でまず大きい。もちろん、とりあえずは1ドル=121円台までの戻りを見たことで、物理的に今後の円高の発射台は随分と低くなった。年初来、2016年3月期の企業業績について1ドル=115円程度という見積もりを基に予想を下方修正する動きも目立っていたが、仮にこのまま120円近辺からそれ以上の円安水準で3月末を迎えられるとするならば、あらためて予想を引き上げることも可能になる。当然、それだけ日経平均株価のフェアバリューと考えられる水準も引き上がることとなろう。

世界的な株安の連鎖も一服

 「負の連鎖」から「正の連鎖」へという意味では今後、欧米の株価への好影響も期待できる。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、1月21日に開かれたECB理事会後の会見で、次回(3月)の会合での追加緩和実施の可能性を示唆した。とはいえドラギ総裁には、昨年10月の理事会後に次回(12月)理事会での追加緩和実施の可能性について大風呂敷を広げ、市場の期待をあおったものの、結果的には中途半端な政策の見直しに終わり、市場の失望を買ったという"前科"がある。

 よって、今回のドラギ総裁発言も"せいぜい話半分程度"に受け取るべきと考えられていたところに、今回の日銀のサプライズ緩和である。これでECBの背中が強く押される結果となるならば、今後の欧州株価には一定の上値余地が広がることとなろう。

 一方で、日銀のサプライズ緩和は今後の米利上げペースにも多少の影響を及ぼすものと考えられる。足元では対円でドルが大きく値を戻す結果となっているうえ、今後はECBの追加緩和期待によって対ユーロでもドルがより優勢となる可能性がある。すでに、米当局(FRB)がドル高の輸出に及ぼす影響に対して一定の懸念を抱いていることは明らかとなっており、更なるドル高進行に結びつきかねない一段の利上げ判断には、どうしても慎重にならざるを得まい。

 昨年12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で約10年ぶりとなる利上げ実施が決定されて以来、しばらくは「2016年に4度の利上げが実施される可能性がある」として、そのことに米株価は身構えるような展開を見せた。もともと、2014年末まで6年連続でNYダウ平均株価などが上昇し続けたこともあり、ある程度の調整はやむを得ないとしても、さすがに年初からはいささか急激に下げ過ぎた感がある。今後、一定の戻り余地が広がってくることとなれば、それは結果的に欧・日の株価にも好材料となり得る。

原油安や中国リスクへの懸念も多少は緩む?

 もちろん、年初からの世界的な株安の連鎖や円高の進行は、原油価格の一段の下落や中国リスクに対する警戒の強まりなどが一因となっていたわけであり、いまだそれらの問題を抜本的な解決に向かわせる見通しが立ったわけではない。ただ、時間の経過とともに事態が着実に変化してきていることも事実である。

 原油価格については、1月下旬にNY原油先物価格が一時1バレル=27ドル割れの水準まで大きく下押す場面があったものの、足元では34ドル台まで大幅に値を戻す場面も垣間見られている。市場では、石油輸出国機構(OPEC)の盟主であるサウジアラビアが、非加盟国であるロシアに減産を呼び掛けたとの観測も浮上し、早ければ2月中にもOPECと非加盟国との会合が開かれる可能性があるものと期待されている。

 「非加盟国との議論が過去に実を結んだことはない」とも言われ、やはり減産へのハードルは高そうだが、サウジアラビアが相当な苦境に直面していることだけは想像に難くない。果たして、今後サウジアラビアはどこへ向かうのか。一説には「いまだOPECはカルテル機能を喪失したわけではなく、今はタイミングを見計らっているだけ」とも言われ、そうであるならば近い将来において具体的な行動がとられるであろう。

 では、もし本当に「もはやOPECはやカルテル機能を失っている」としたらどうか。当然、盟主サウジの行く末は相当に危うく、いずれサウジの国家体制をも揺るがす大きな事態に発展することも一応は想定しておく必要があろう。専門家のなかには「現石油相が解任され、石油政策が180度切り替わる」と見る向きもあれば、「王国の崩壊につながる可能性さえ秘めている」と見る向きもある。こうした地政学リスクが、いずれ原油価格の急激な反発を招く可能性もあり、善かれ悪しかれ、これまでのような原油価格のダダ下がり状態は、いずれ何らかの形で終わりの時を迎えるものと思われる。

 一方、中国の今後の行方についてはなおも不透明な部分が非常に多い。とはいえ、ここにきて中国が抱える問題を単に警戒するだけで放っておくというわけにも、その解決を中国任せにしておくというわけにもいかないといった気運が、主要国の間で広がりつつあるようにも感じられる。

 既知のとおり、中国は今年(2016年)初の20カ国・地域(G20)議長国を務めており、この2月(26-27日)には上海でG20財務相・中央銀行総裁会議が開かれる見通しとなっている。こうした場において、主要国の金融当局者が共同声明を出すなどして、市場にはびこる懸念が少しでも和らぐ方向に向かうことを期待したい。

ドル買いのチャンスを見定めたい!

 今後、原油安や中国リスクへの警戒などが多少なりとも和らいでいくとすれば、いずれ再び市場で注目度を高めるのは最も肝心な米国経済の成長度合いということになる。その点については、前回(1月6日)更新の本欄(「2016年の円相場は本当に"横ばい"なのか?」)で述べた通り、年前半は「緩慢」、年後半は「加速」との見方に変わりはない。

 つまり、その成長スピードは時間が経過するごとに加速するが、当初は非常に緩慢なものに映り、その間はドルの上値にも自ずと限りがあろう。前回「一時的にも1ドル=115円台をのぞく場面があってもおかしくはない」と述べたが、実際、すでに1月20日には一旦115円台を垣間見た。現在は、そこから120円を挟む大きな戻りとなっているが、再度ドルが一定の調整を交える場面も年前半にはあろう。まして、前述したように日銀のサプライズ緩和によって米利上げのハードルは少々高くなっている。それでも、年末に向けて130円台を目指す可能性があるという見方はなおも変わらず、対円でのドルの値動きは年間の最安値と最高値の幅が少々大きくなると考える。ミセス・ワタナベには、ドル買いのチャンスも幾度か巡ってくることとなろう。


田嶋 智太郎(たじま ともたろう)
1964年生まれ。慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券勤務を経て転身。転身後は数年間、名古屋文化短期大学にて「経営学概論」「生活情報論」の講座を受け持つ。金融・経済全般から企業経営、資産運用まで幅広く分析・研究。新聞、雑誌、Webに多数連載を持つほか、講演会、セミナー、研修等の講師や、テレビやラジオのコメンテーターとしても活躍中。主な著書に「財産見直しマニュアル」(ぱる出版)、「外貨でトクする本」(ダイヤモンド社)、「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)、「はじめてのFX『儲け』のコツ」(アルケミックス)、「日本経済沈没!今から資産を守る35の方法」(西東社)、「上昇する米国経済に乗って儲ける法」(自由国民社)など。

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